He’s wearing sunglasses inside. It looks like as if Santa Claus was a hitman.
室内なのにサングラスをかけている。殺し屋のサンタクロースみたいだ。
- Greg Hirsh, Succession season 4
年末恒例の新作ベスト10です。2023年に新たに日本で配信された海外ドラマを対象に、最も面白かったと私が思うものをランキング形式で紹介します。加えて、演技賞ベスト8も選出しました。2023年の海外ドラマを総まとめする特集です。
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↓ ポッドキャストでも2023年新作海外ドラマベスト10を発表しています!
演技賞ベスト8
2023年の新作海外ドラマの中で、最も素晴らしい演技を見せてくれた8人を紹介します。順不同です。
ジェレミー・ストロング『メディア王~華麗なる一族~』
キーラン・カルキン『メディア王~華麗なる一族~』
サラ・スヌーク『メディア王~華麗なる一族~』
ジェレミー・アレン・ホワイト『一流シェフのファミリーレストラン』
ダムソン・イドリス『スノーフォール』
メリル・ストリープ『マーダーズ・イン・ビルディング』
ソフィー・ネリッセ『イエロージャケッツ』
ベラ・ラムジー『THE LAST OF US』
まずは『サクセッション』こと『メディア王~華麗なる一族~』ファイナルシーズンからロイ兄妹3人組。ケンダル・ロイの虚無、ローマン・ロイの自己崩壊、シヴ・ロイの浅薄さを体現したのはこの3人です。21世紀最大の悲喜劇を最後まで演じ切ったジェレミー・ストロング、キーラン・カルキン、サラ・スヌーク、並びに共演者一堂に大きな拍手を。
『ザ・ベアー』こと『一流シェフのファミリーレストラン』シーズン2で、シェフ・カーミーの出番はシーズン1より減りましたが、最終話の冷蔵庫のシーンにはやられてしまいました。6年以上に渡って『スノーフォール』の主人公を演じ続けてきたダムソン・イドリス。テレビドラマ史に残るべきアンチヒーローの誕生から大成まで、迫力たっぷりに魅せてくれました。
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紹介するまでもない大女優のメリル・ストリープは、ドラマに出ても名優なのです。シーズン3第8話「ジッツプローベ」は、シリーズ最高のエピソード。ただし、未来の名優は『イエロージャケッツ』のソフィー・ネリッセかもしれません。多くのキャラクターが登場するドラマですが、喪失と誕生を実質1人で経験することになるティーンエイジャーのショーナを演じたソフィー・ネリッセの演技は際立っています。
8人目は『THE LAST OF US』のベラ・ラムジー。第8話「困っている時は」を筆頭に、ペドロ・パスカル演じるジョエルが戦闘不能になる場面でも、生き抜いていこうとするエリーを力強く演じていました。
作品賞ベスト10
本題のベスト10です。今年、私が観た新作は全部で39シーズン。記事末尾にリストを載せています。この中から、10作品を選びました。私の今年ハマった10本の海外ドラマです。
10位『イエロージャケッツ』シーズン2
サバイバル×カニバリズムドラマのシーズン2。極限状況でどのようにカルトが台頭するかというのが最も興味深い表向きのテーマ。同時に、強烈すぎるキャラクターたちの巻き起こすカオスを楽しむブラックコメディでもある。泥臭くも生き残るために必死な女子たちから目が離せない。品質は昨年より良く有望だが、演者のテクニックが重要な作品だった。
配信:U-NEXT
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9位『リハーサル -ネイサンのやりすぎ予行演習-』
人生の重大局面は、事前に入念なリハーサルをしておけば上手くいく? 奇妙なテーマから始まり、さらに奇妙な展開をしていくリアリティ番組。現実の模倣をしていくうちに模倣と現実の境目の見分けが付かなくなる摩訶不思議な場面を体感させてくれる唯一無二の作品。意外と笑えるところもあるんです。記憶に残る素晴らしい出来栄えの作品。
配信:U-NEXT
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8位『カササギ殺人事件』
数年前に日本でも推理小説界隈で大きな話題になったベストセラーを、売れっ子脚本家でもある著者のアンソニー・ホロヴィッツ自身がドラマ化。原作の時点で十分すぎるほどに面白かったが、いくつかあった難点をドラマ化に際して映像ならではの演出で華麗に解消。フレッシュな香りと上品なタンニンがある超一流ミステリーに仕上がった。
配信:U-NEXT
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7位『マーダー・イン・ザ・ワールドエンド』
王道本格ミステリードラマ。推理小説好きとしては堪らないほどコテコテの新本格ミステリーをやってくれたので、その点でまず大満足。エマ・コリン演じる主人公の探偵は、ルックスからして猛烈にクールですが、高校生時代の話も儚く描かれており、沼る魅力があります。最終話があっさりしすぎだとしても、Z世代探偵や最新テクノロジー、アイスランドといった独特の世界観にはどっぷり浸かることができました。みずみずしさが感じられる素晴らしい品質の作品。
配信:Disney+
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6位『ダーク・マテリアルズ/黄金の羅針盤』シーズン3
フィリップ・プルマンの『ライラの冒険』を実写化したドラマのファイナルシーズン。子どもが主人公のファンタジー作品でありながら、宗教的なテーマを含んだ哲学的な作品で、内容がとても深い。様々な世界のガジェットが集結する最終決戦はビジュアル的にも新鮮で面白く、その後のフィナーレも美しかった。3年連続で偉大な作品になりました。
配信:U-NEXT
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5位『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』シーズン5
ヴァンパイアコメディのシーズン5。このドラマは、どんなにヘンテコなものでも、ヴァンパイアのせいだと言えば出すことができるという最強のカードがあります。それを最も活用したのが今シーズン。不気味でシュールなクリーチャーがわんさか出てきて、これぞヴァンパイアコメディだと実感しました。ここ数年で最高のシーズンです。
配信:Disney+
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4位『シュリンキング:悩めるセラピスト』シーズン1
笑って泣けるコメディの完成版。妻を失くして失意の中にいるセラピストが生きる意味を見出だしていく物語。主演のジェイソン・シーゲルがたっぷり笑わせてくれて、温かい気持ちにもなれる。主人公の同僚のセラピストを演じたハリソン・フォードもユーモラスで良い味を出しています。豊かな果実味と程よい酸味が調和した秀作。
配信:Apple TV+
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3位『THE LAST OF US』シーズン1
原作のゲームをやったことがなかったので、最初はどれほど楽しめるか心配でしたが、それは全く杞憂でした。ゾンビものとは言っても、主題は完全に人間ドラマ。特に、極限状況で生きなければいけない人間たちのドラマです。ジョエルとエリーの固い絆もさることながら、印象深いサブキャラクターたちの物語も私の心には深く刻み込まれました。繊細でしっかりとした骨格のある作品だと言えるでしょう。
配信:U-NEXT
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2位『一流シェフのファミリーレストラン』シーズン2
昨年の1位に選んだ新ドラマは、シーズン2でさらに磨きがかかって帰ってきました。今回の順位が2位なのは単に1位が強すぎただけで、第6話「フィッシュ」や第7話「フォーク」を筆頭に、シーズン2はシーズン1よりも各エピソードの完成度が高くなっています。主人公以外のキャラクターも深く掘り下げられ、これからがまだまだ楽しみ。並外れて素晴らしい傑作ドラマです。
配信:Disney+
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1位『メディア王~華麗なる一族~』シーズン4
ついに迎える「継承」のとき。シェイクスピアの『リア王』と現実の「メディア王」ルパート・マードック一族をモデルに作り上げられた現代の悲喜劇は、壮絶なファイナルシーズンを迎えました。どんどん洗練されていく演出。しかし、状況はどこまでも泥沼化。父親の呪縛から逃れられない子どもたちとその様子を虎視眈々と笑いながら見守る関係者たち。最後に笑ったのは誰か。エレガントで味わい深く、珠玉のヴィンテージとして歴史に刻まれるであろう、100年に1度の出来栄えのドラマです。
配信:U-NEXT
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コメント
昨年は、『ザ・ベアー』シーズン1を1位、『サクセッション』シーズン3を2位に選んでいたので、その順位が逆転するという結果になりました。ベスト10ということで順位を付けてはいますが、実際には1位から3位までが圧倒的に面白く、4位から10位までは順位に関係なく大体同じくらいの面白かったという印象です。
4位から10位と同じレベルの作品として、Disney+で配信中の『正義の異邦人:ミープとアンネの日記』と『フィラデルフィアは今日も晴れ』シーズン16、Amazonプライムビデオで配信中の『ボッシュ:受け継がれるもの』シーズン2も挙げておきます。ベスト10に入れなかった理由は特にありません。どれもとても面白かったです。
参考記事
毎年、絶妙なキャッチコピーをつけるボジョレー・ヌーボー | エンジョイ!マガジン
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エピソード賞
ベストエピソードのランキングも作ってみました。作品賞のトップ3『サクセッション』『ザ・ベアー』『THE LAST OF US』は、いずれも一つ一つのエピソードの完成度が高く、オールタイムベスト級の回が連発していたため、1作品1エピソードまでとしています。
1位『メディア王~華麗なる一族~』S4E3「コナーの結婚式」
2位『一流シェフのファミリーレストラン』S2E7「フォークス」
3位『THE LAST OF US』S1E3「長い間」
4位『マーダーズ・イン・ビルディング』S3E8「ジッツプローベ」
5位『リハーサル -ネイサンのやりすぎ予行演習-』S1E4「フィールダー・メソッド」
6位『ファウンデーション』S2E9「プライム・レイディアント」
7位『ダーク・マテリアルズ/黄金の羅針盤』S3E7「クラウデッド・マウンテン」
8位『フィラデルフィアは今日も晴れ』S16E8「デニス・テイクス・ア・メンタル・ヘルス・デー」
9位『ジュリー・デューティ~17日間の陪審員体験~』S1E8「評決」
10位『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』S5E3「プライド・パレード」
壮大な『ファウンデーション』S2E9やシュールな『フィラデルフィアは今日も晴れ』S16E8など、作品賞のベスト10に入れた作品以外にも個性的なエピソードが多かった印象です。改めて、テレビドラマとは一話一話のエピソードが積み重なってできるものであり、個々のエピソードに作り手の思いがこもっているのだなと感じました。
新作鑑賞リスト
以下が、私が2023年内に視聴した新作海外ドラマ全39シーズンのリストです。なお、ここでいう「新作」とは、2023年のうちに日本の動画配信サービス(Netflix、Amazonプライムビデオ、Disney+、U-NEXT、Apple TV+、スターチャンネルEX)で最終話が配信されたドラマのことを指します。
U-NEXT
『THE LAST OF US』シーズン1
『メディア王~華麗なる一族~』シーズン4
『バリー』シーズン4
『イエロージャケッツ』シーズン2
『ホワイトハウス・プラマーズ/米国政治の失墜を招いた男たち』
『リハーサル -ネイサンのやりすぎ予行演習-』シーズン1
『ダーク・マテリアルズ/黄金の羅針盤』シーズン3
『キリング・イヴ』シーズン4*
『カササギ殺人事件』*
*この2作品は、昨年WOWOWで放送され、WOWOWオンデマンドでも配信されていたが、U-NEXTで配信されたのが今年なので新作として扱う。
Amazonプライムビデオ
『コンサルタント』シーズン1
『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』
『シタデル』シーズン1
『僕は乙女座』シーズン1
『ジェン・ブイ』シーズン1
『アップロード~デジタルなあの世へようこそ~』シーズン3
『ボッシュ:受け継がれるもの』シーズン2
『グッド・オーメンズ』シーズン2
『ジュリー・デュティ~17日間の陪審員体験~』シーズン1
Apple TV+
『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』シーズン3
『シュリンキング:悩めるセラピスト』シーズン1
『シュミガドーン!』シーズン2
『サイロ』シーズン1
『ハイジャック』シーズン1
『クラウデッド・ルーム』
『ファウンデーション』シーズン2
Disney+(ディズニープラス)
『私のスーパーパワー』シーズン1
『キンドレッド 時間を超えた絆』シーズン1
『一流シェフのファミリーレストラン』シーズン2
『FBIアカデミー クラス・オブ・09』
『フィラデルフィアは今日も晴れ』シーズン16
『アボット・エレメンタリー』シーズン2
『スノーフォール』シーズン6
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』シーズン5
『マーダーズ・イン・ビルディング』シーズン3
『正義の異邦人:ミープとアンネの日記』
Netflix
スターチャンネルEX
『ステージド3 俺たちの舞台、もうおしまい!?』シーズン3