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Apple TV+ドラマ『サイロ』シーズン1ネタバレ感想|謎が謎を呼ぶ極限のSFミステリー

The not knowing, it's going to haunt you forever.

- Sheriff Holston, Silo

無知は一生君に付きまとうだろう。

ーホルストン保安官『サイロ』

 

 地下144階建ての円筒形の巨大建造物「サイロ」。140年前に人類のほとんどが死に絶える出来事が起こったため、生き残りの子孫の約1万人が、サイロの中で少ない資源を活用しながら生きています。

 

 サイロには、「協定」によって定められた奇妙なルールがいくつかあります。その中で最も重要なのが、決してサイロの外に出ようとしないこと。もし、サイロの外に出たいという要望を一度でも口にしたら、外に放り出されてしまいます。

 

 なぜ、サイロの外に出たいと思うことすら禁じられているのでしょう? そもそも、サイロの住人は、なぜ人類がサイロの中に住むことになったのかを知りません。一体、140年前に何が起こったのでしょう? なぜ、サイロでは昇降機を使うことが禁止されているのでしょう? なぜ、拡大鏡の使用もダメなのでしょう? 謎が謎を呼ぶ『サイロ』の物語が始まります。

 

 ドラマ『サイロ』はApple TV+で独占配信中。Apple TV+は初回7日間無料、その後は月額900円(税込)です。Apple TV+で配信されている作品は、すべてここでしか観ることができない独占配信作品です。

Apple TV+

 

 

 

基本データ

  • 原題:Silo
  • 配信:Apple TV+
  • 配信日:2023年5月5日~6月30日
  • 話数:10
  • 原作:ヒュー・ハウイー『サイロ』シリーズ
  • 原案:グラハム・ヨスト
  • 主演:レベッカ・ファーガソン
  • あらすじ:140年前に地球が荒廃する出来事が起こって以来、地下に埋められた144階建ての建造物「サイロ」の中で約1万人が暮らすようになった。彼らは、なぜサイロが作られたのかを知らず、外の世界に出ることを禁止されていた。しかし、その規則に疑問を抱き、外の世界の本当の様子を知りたいと思う人物もいた。

予告編

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ジュリエット・ニコルズ

 主演は、スウェーデン出身のレベッカ・ファーガソン。映画『ミッション・インポッシブル』シリーズに、5作目の「ローグ・ネイション」から参加。『DUNE/デューン 砂の惑星』にも重要な役で出演しています。他にも『ドクター・スリープ』『グレイテスト・ショーマン』『レミニセンス』など、近年のハリウッド映画に続々と出演しています。美人でアクションもできるので、それは重宝されますよね。

 

 そんなレベッカ・ファーガソンが『サイロ』で演じているのが、機械工から保安官になった主人公のジュリエット・ニコルズ。感情を表情には出さないタイプですが、心の中で色々なことを感じていそうです。死んでしまった元彼のジョージ・ウィルキンスには、だいぶ一途だったようです。死の謎を解明するために、これほどの大冒険をしているわけですから。

 

 ジュリエットは、自分が決めたら絶対にやるという強い意志を持っている人物です。でも、ジョージに関する新事実が明らかになると、真顔のままちょっと俯きがちになって、精神的にダメージを受けています。平気なフリして、ちょくちょくショックを受けがちなのです。精神的・肉体的なタフさを持っていると同時に、ときどきメンタル面での脆さが見え隠れするのが、キャラクターとして面白い。

 

以下、『サイロ』シーズン1のネタバレを含みます。

 

 

不妊の謎

 このドラマには、数々の謎が登場します。シーズン1の時点では解決していない問題も多いですが、いくつか解決したものもあるので、おさらいしておきます。

 

 一つは、子どもの出産に関する事柄です。サイロは、人口を厳しく調整する必要があるため、毎年、決められた夫婦にのみ子どもが生めるようにしていました。対象ではない夫婦の妻は、常に避妊具を付けています。逆に、子どもを持つことが許可された夫婦の妻は、医者によって一時的に避妊具を取り除かれます。

 

 第1話に登場するベッカー夫妻は、しかしながら3年経っても妊娠することができませんでした。妻のアリソンは、同じく子どもを持てなかったというグロリア・ヒルデブラントの話を聞いて、子どもが持てないのは陰謀のせいではないかと考え始めます。そして、アリソンは、取り除かれたと思われていた避妊具が実は取り除かれていなかったことを自分の身体を使って確かめました。

 

 では、なぜベッカー夫妻は子どもが持てないように細工されたのでしょう? この疑問の答えは、たぶん第7話で明らかになりました。第7話で、ジュリエットは、入院中のグロリアを病室から連れ出して話を聞きます。そのときに出てきたのが「炎の番人」の話です。

 

炎の番人

 炎の番人は、サイロよりも過去のことを伝えようとする人々のことです。司法部は、真の歴史ではなく偽りの歴史を人々に信じ込ませているので、このような存在は都合が悪いわけです。そこで、炎の番人の人たちは、子孫を残せないようにしました。グロリアもその1人だったので、ずっと子どもが生めませんでした。直接言及はされませんでしたが、おそらくベッカー夫妻のどちらか(たぶんアリソン)も炎の番人の子孫だったので、子どもが生めないようにされたのでしょう。

 

 グロリアは、ジュリエットの母親も炎の番人だったと言います。確かに、ジュリエットの母親は、禁制品とされている拡大鏡を使ってウサギの解剖をするなど、好奇心の強い人物でした。そして、ジュリエットは炎の番人の最後の1人だと言われます。急にジュリエットが運命の英雄っぽくなってきました。

 

 ただし、この「炎の番人」というものが曖昧な概念です。もし、サイロの真の歴史について口伝的に伝えられている人だけが炎の番人ならば、それはそれでわかります。でも、ジュリエットは別にそんなものを母親から伝え聞いてはいません。グロリアも、サイロ以前の自然に関する本は持っていましたが、歴史自体はよくわかっていませんでした。つまり、炎の番人とは、単にサイロの真の歴史を知ろうという好奇心を強く持っている人たちのことを指しているのだと考えられます。

 

 子どもを産めないようにするとか言うと、血筋の話のように聞こえますが、たぶん血筋は関係ありません。炎の番人に子どもがいたら、その子どもは、親の影響でサイロの歴史に疑問を持つようになることが想定されます。それこそが、司法部の恐れていることなのだと思われます。

 

 なお、そもそも子どもが持てるかどうかは抽選制なので、最初から炎の番人が抽選で当たらないようにすれば良いではないかとも思います。でも、一生で一回も抽選に当たらないというのはさすがに不自然なので、抽選には当たっても妊娠できないような仕組みを作ったのでしょう。

 

 

禁制品の謎

 細かい謎はいくつかあります。サイロは144階建てでありながら、その中にはエレベーターがありません。昇降機の類いは「協定」によって禁止されています。拡大鏡も禁止されています。サイロ以前の遺物を所持することも基本的には禁止されています。

 

 このような細かなルールの中には、理由がわかるものもあります。例えば、遺物が禁止なのは、サイロ以前の歴史を探られては困るからです。拡大鏡も、おそらく遺物やそれに関連するものを調査されるのを防ぐために禁止されているのだと思われます。

 

 では、なぜ昇降機はダメなのでしょう? 理由がいくつか考えられないこともありません。サイロの住人は外に出られず、ずっと室内のみを移動していることになります。もしもエレベーターがあったら、運動不足になってしまうかもしれないので、階段を使わせているのかもしれません。あるいは、人々が無暗に上階に来たり外に出ようとしたりするのを防ぐためかもしれません。上階には、司法部や市長室などがあり、最上階には外へ出る扉があります。人々に階段を使わせることで体力と時間を浪費させ、暴動が起こっても上階へ上がって来にくいようにしているのでしょうか。

 

 昇降機がない本当の理由はわかりませんが、少なくともストーリー上は良い設定になっています。人々は階段を使うしかないので、階段に検問を設ければ捕まえたい人を捕まえられます。最終話でも、ジュリエットはダストシュートの中の梯子を頑張って昇り降りしていましたが、そのせいで上から粗大ごみを落とされたときには危機一髪の状況に陥っていました。なにより、下階の人間が大変な苦労をしなければ上階に行けないというのが、サイロの中の格差社会をよく反映しています。

 

外の世界の謎

 では、最大の謎を検討していきましょう。サイロの外の世界は、一体どうなっているのでしょうか? サイロができる以前には、一体何が起こったのでしょうか? そして、司法部はなぜ真実を隠そうとしているのでしょうか?

 

 サイロの中には、外の世界を映した画面が各所に存在しています。人々は、日常的にそれを見ています。そこに映し出されている世界は、灰色で、枯れ果てた植物と「清掃」に出された人々の死体があります。サイロの中の多くの人たちは、子どもの頃からずっとこの風景を見てきているので何の疑問も抱いていませんが、実際にはこれは画面越しの世界に過ぎません。映像は、いくらでも加工が可能です。

 

 第1話で外の世界に出たアリソンは、自分が期待していた通り、緑の世界を目の当たりにします。このことを人々に知らせなければと思い、カメラのレンズの清掃を行います。過去の人々も全員清掃をしたそうなので、外の世界に出た人は全員がこの緑の風景を目撃したと考えられます。

 

 さらに、第2話でサイロ全体の電力が落ちる直前には、サイロ内の画面が一瞬バグって灰色ではなく緑の世界を映しだしました。ということは、外の世界は緑の世界なのでしょうか? それはそれで、あからさますぎて怪しい気がします。そもそも、第1話で緑の世界を見せてしまっているので、それがそのまま真実だというのでは、ちょっとサプライズに欠けるのではないかという穿った考えもあります。それに、外が本当に緑であふれているなら、なぜアリソンも、その夫の保安官のホルストンも、清掃から数分後には死んでしまったのでしょう?

 

 外の世界に関する謎は、司法部がサイロ以前の歴史をひた隠しにしようとしていることとも関係があるはずです。サイロの人々は、なぜ人類がサイロの中で生活するようになったのか知りません。私は、なんとなく核戦争のせいで人類がほぼ全滅してしまったのかなと考えていましたが、そのことを裏付ける証拠はありません。感染症のせいで人類が減ってしまった可能性もあります。あるいは、地球外生命体のせいかもしれません。それとも、ゾンビでしょうか?

 

 なぜ、140年前のことを誰も知らないのか、という点も気になります。140年前くらいのことであれば、祖父母の祖父母くらいは生きています。多少なりとも、祖先から伝え聞いた話があっても良いはずです。「創造主」は、140年前に、当時の人々の記憶を一気に消してしまったのでしょうか?

 

 

真相?

 最終話で、ジュリエットは、ついに外の世界に追放されてしまいます。彼女が、外に出て最初に見た景色は、アリソンたちと同じく緑の世界でした。でも、ジュリエットは気づきます。緑の世界も、ヘルメットの画面越しに見た景色に過ぎないのです。外の世界が実際に危険なものである可能性はまだ残っています。

 

 ここで、テープに関する伏線が回収されます。これまでの清掃人たちは、意図的に脆いテープが使われていたため、防護服の接合部から有害物質が入って数分で死んでしまいました。でも、ジュリエットの防護服は、機械部の丈夫なテープを使っています。それは、おそらく直前の場面でマーサが勇気を振り絞って部屋から出て、資材部に届けたものだと思われます。だから、ジュリエットは数分経っても死にませんでした。

 

 すると、ヘルメットの画面の効果が消えてしまいます。すると、ついに真の景色が見えるようになります。それは、灰色の世界でした。サイロの入り口は、クレーターのように形成された土地の中央部にあり、遠くには工場跡が見えます。そして、隣にもクレーターがあります。その隣にもあります。そう、サイロはジュリエットたちがいたものだけでなく、無数にあったのです。

 

 こうなると、さらに疑問が増えます。外の世界が灰色だったならば、サイロの中から見えていた景色はすべて本物だったことになります。それなら、なぜヘルメットの中からだけ緑の世界が見えるようにしたのでしょう? 死の直前にカメラのレンズを清掃させる動機付けのため? それとも、サイロに住んでいる一部の勘の鋭い人々に希望を与えるためでしょうか?

 

 そして、司法部はどうして他のサイロの存在を隠し続けていたのでしょう? 近隣のサイロとは、多少なりとも協力関係があっても良さそうなものです。ジュリエットのもののように、少し強固な防護服を作れば、互いに行き来をすることだって十分可能に見えます。

 

 これこそ、まさに謎が謎を呼ぶ展開です。一つの謎が明らかになったと思ったら、さらに多くの謎が湧き出てきます。ミステリーとしては、理想的だなと思います。ただ、これだけ謎を増やしすぎて、はたしてちゃんと納得の行く解決があるのかは疑問ですが。幸いにも、ストーリーのスケールを広げすぎているわけではないので、収拾が付かなくなるということはなさそうではあります。

 

 ドラマ『サイロ』は、すでにシーズン2に更新されました。シーズン1は、全体的に閉塞感が強いとは感じたものの、これは設定上仕方ありません。新市長が明らかに怪しいのにジュリエットが中盤では普通に信用していた点など気になることがないわけではありませんが、終盤のミステリー&サスペンス展開は特に面白かったです。シーズン2にも期待しています。

 

 ドラマ『サイロ』はApple TV+で独占配信中。Apple TV+は初回7日間無料、その後は月額900円(税込)です。Apple TV+で配信されている作品は、すべてここでしか観ることができない独占配信作品です。

Apple TV+

 

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