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海外ドラマ『バリー』シーズン4感想|元殺し屋は善人になれるのか?

Oh, wow.

- Barry Berkman, Barry

 

 元海兵隊員の殺し屋、バリー・バークマン。罪を償って善人になることを目指していた彼は、しかしながら裏切りに遭ってしまいました。それでも、彼は善人になることができるのか。バリー・バークマンの物語、第4幕にして最終章。

 

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 海外ドラマ『バリー』全シーズンは2023年9月30日現在U-NEXTで独占見放題配信中。

 

 

 

基本データ

  • 原題:Barry
  • 放送局:HBO
  • 放送期間:2023年4月16日~5月28日
  • 話数:8
  • 監督:ビル・ヘイダー
  • 出演:ビル・ヘイダー、サラ・ゴールドバーグ、アンソニー・キャリガン、ヘンリー・ウィンクラー、スティーブン・ルート

予告編

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※以下、ネタバレを含みます。

 

バリーは収監中

 前半は、刑務所に入ることになったバリーと、その出来事に多かれ少なかれ影響を受けている人々の話。バリーは、演劇と人生の師として信頼していたジーン・クジノーに裏切られたことで、生きる道標をなくした宙ぶらりんの状態になってしまいました。

 

 面会に来たサリーにも良い顔はされませんでしたが、ただ一言だけ「あなたといると安心できた」と肯定的なことを言われ、藁にも縋るような思いでこの言葉を人生の指針にするようになります。サリーのもとにいれば彼女を安心させることができて、それはバリーの生きる意味にもなるので、なんとしても実現しようというわけです。

 

 そのために、バリーはFBIと司法取引をします。ノホ・ハンクを含め、ロサンゼルスのギャングたちのことを全部話すから、代わりに自分とサリーには安全な人生を用意してくれと要求します。

 

 その頃、おとり捜査でバリーを逮捕に導いたジーン・クジノーは、安心して調子に乗ったのか、雑誌記者に一連の顛末を汗だくで演じて見せます。いかにもジーン・クジノーな行動です。人から注目を浴びることが大好きです。

 

 でも、それをバリーが快く思うわけはありません。だから、バリーはノホ・ハンクにクジノー殺害の命令を出します。ところが。、ノホ・ハンクは、バリーが自分のことを裏切ってFBIに話したことを知っているので、命令を受けるわけがありません。逆に、バリーを殺すために、腕利きの殺し屋を刑務所に向かわせます。

 

 捜査官と話していたバリーは、その中の一人が殺し屋だと見抜きます。そりゃあ、あんなに緊張してトンデモナイ顔をしていたら、バレますよ。銃撃戦が起こって捜査官たちが全員殺されると、バリーはちゃっかり刑務所から脱獄します。

 

 サリーは、演技講師の仕事をしていました。暴言動画で炎上してしまい、表舞台に出られなくなった役者のセカンドキャリアとしては、これが良いそうです。それなら、今頃、ハリウッドでは往年の俳優たちがぞろぞろと演技講師をしているんですかね。

 

 とはいえ、サリーが役者になる夢を諦められているわけはなく、映画監督に必死にアピールします。その監督というのが、映画『コーダ あいのうた』でアカデミー賞を受賞したシアン・ヘダー。その1話前の冒頭のシーンには、なぜかギレルモ・デル・トロも出ていました。ビックリしちゃいました。

 

 ノホ・ハンクは、恋人のクリストバルとともに砂不足に着目して、輸入砂ビジネスを始めます。砂漠の中で砂不足の話をしているのは面白すぎましたけど、本当にあるんですかね。まぁ、蟻地獄ならむ人地獄を作る用の砂だったら、輸入品の方が良いのかもしれません。海外産なら、綺麗に人が砂の中に吸い込まれていきますから。

 

 ノホ・ハンクは、砂の中に埋まってしまったクリストバルを助け出すも、仲間たちを皆殺しにしてしまったことで口論になり破局。直後に、クリストバルは殺害されてしまいます。ツラみが深い。

 

 

バリーは逃亡中

 後半は一転して、10年ほど後の話になります。ノホ・ハンクは「ノホバル」という会社で成功し、フュークスは出所しました。バリーとサリーは逃亡生活を続け、その間に子どもを一人もうけていました。

 

 バリーは、それなりに自分が望んでいた生活を送っているように見えます。「平凡な家庭」を築くことが夢だったバリーにとって、たとえ偽名を使っているにしても、実際に子どもやサリーと一緒に暮らしているので文句はないでしょう。

 

 それでも「善人になる」という目標を達成できているかどうかについては自身がなさそうです。過去によく人を殺していたという事実は消すことができないからです。だから、リンカーンの粗探しをしたりして、偉人であっても後ろ暗いところはあるのだと言うことで自分を納得させようとしています。

 

 サリーは、この暮らしをどう思っているのでしょう? サリーは、偽名を使うだけでなく、毎日カツラを被って出勤しています。わざわざそんなことをするなら、髪を黒く染めれば良いのに。まだ役者魂が抜けていないんですかね。

 

 サリーは、本来バリーと一緒に逃げる必要はないので、自発的にバリーとともに逃亡生活をしています。ということは、サリーもこの暮らしを望んでいるわけです。職場でのサリーは決して楽しそうではないですが、少なくとも家にはバリーがいて「安心することができる」ので、今の暮らしをしているのでしょう。

 

 シーズン4前半のサリーの日常を思い返してみれば、確かに安心感はほとんどありませんでした。暴言動画でハリウッドでの居場所をなくし、実家に帰ってもバリーのことで嫌味を言われ、演劇教室を始めても生徒に逃げられてしまいます。ただ一人自分を頼りにしてくれる生徒も、自分より注目を集める存在なので、劣等感を感じてしまいます。

 

 それに、サリーはシーズン3の最終話で人を殺しています。その事実は、バリー以外の誰とも共有することができません。でも、バリーは殺しのこともよく理解してくれますし、サリーのことを頼りにしています。だから、バリーとの暮らしを10年以上続けているのだと思います。

 

 殺人を犯した経験のある2人は、今はクリスチャンになっています。キリスト教は、悔い改めればやり直せるという考え方があるので、犯罪者にとっても都合が良いですね。

 

 そういえば、2人は逃亡生活をしているのに、子どもがいるのは不自然だと最初は感じました。でも、2人が厳格なクリスチャンなら理由もわかります。要は、子どもができちゃった以上は、キリスト教の教義によっておろすことができなかったのかもしれません。それに、子どもがいるからには、バリーも大事に育てたいと思ったのでしょう。

 

 

バリーは襲撃中

 でも、平穏な生活には突如、終止符が打たれます。ハリウッドでバリーの半生を映画化する企画が持ち上がり、そこにジーン・クジノーも関わってきたのです。これでは、再びバリーに世間の注目が集まってしまいます。そこで、バリーはジーンを殺すためにハリウッドに向かいます。

 

 ジーンは、実は映画化を止めようと思っていました。元恋人のジャニスとの思い出を汚されたくないからだそう。たぶん、これは本心です。でも、映画化を中止させようとキャンペーンを行ったせいで逆に注目を集めてしまい、ジーン自身も自分の役をダニエル・デイ=ルイスが演じると聞いて気持ちが変わってきました。

 

 バリーもバリーで、ジーンの家に来ると、ジーンに孫がいるのを見て、計画を中止してしまいます。自分も父親になって共感したんですかね。……というのはわかるんですけど、個人的に、ここらへんのバリー自身のストーリーがそんなに好きではありません。

 

 バリーは、この後、ジャニス刑事の父親に一時的に捕縛されますが、なんだかんだ逃げ出します。そこに、サリーと子どもを捕らえたノホ・ハンクから電話が掛かってきたので、装備を固めて救助に向かいます。このあたりは、子どもと恋人を守るために男が命を張るという、あまりにも定番の構図になっていて、このドラマには似つかわしくないと思うのです。

 

 バリーは、バリーなりの論理で常人にはちょっと理解できないことをするから面白い。その極端さとかシュールさが良いんです。シーズン3で、ジーンからの許しが欲しいからジーンを縄で縛って車で連れまわすとか、めちゃくちゃじゃないですか。そういうのが自分は好きです。

 

 それに比べると、バリーがジョンとサリーを守りたいという気持ちは分かり易すぎます。駄目ではないけど、らしくない。バリーが「普通の」人間的な倫理観を獲得したという解釈もできますけどね。だから、このシーズンでは最後までバリー自身が殺しをすることはないのだと。

 

 ノホ・ハンクは、最後まで「らしさ」がありました。まず、フュークスを殺したくて腕利きの殺し屋を雇います。このドラマは「腕利きの殺し屋」と呼ばれる人がほいほい出てきて面白い。しかも、揃いも揃って誰も腕利きじゃなくて、すぐに殺されてしまいます。

 

 これでは仕方ないので、ノホ・ハンクはロケットランチャーを持ってフュークス邸に狙いを定めます。しかし、一発しか用意していなかったので、余計な注意を引いただけで終了。この情けなさ。最高!

 

 でも、ノホ・ハンクはイケメンですよ。バリーとサリーの子どもを危険に晒すことは望んでいませんでしたし、最後の最後は、クリストバルを殺してしまったことを悔い、黄金のクリストバル像の手を握って息絶えます。ずいぶん泣かせてくれるじゃないか!

 

 バリーにも、間もなく最期のときがやってきます。それは、突然にやってきました。ジーンは、今でもジャニスが殺されたことへの恨みと、誤って息子を殺してしまったことへの八つ当たり的な思いをずっとバリーに対して抱いていたのでしょう。バリーは、頭に一発、あっけなく死んでしまいます。これはこれで、バリーらしい最期です。

 

 それから5年ほどの時が経ちます。ジーンは、ジャニス・モスおよび自分の息子、そしてバリー殺害の容疑で逮捕されます。バリーの人生を映画化した作品も公開され、ダニエル・デイ=ルイスでもマーク・ウォールバーグでもない人たちがバリーたちの物語を語り直していました。ただし、ジーンを悪党として。

 

 これを観たバリーの息子のジョンは何を思ったのでしょう? ジョンは、銃撃戦の直前にサリーから両親が人殺しである真実を聞かされています。でも、その後にサリーが詳細を話をしたとは思えません。だから、ジョンはそれ以上の事柄を報道から知ったのではないでしょうか。とするなら、ジョンもジーン犯人説を信じていたのだと思います。

 

 映画は、その考えをさらに強くするものであり、ジョンは父親のバリーのことをさらに尊敬するようになったのではないかと、私は考えています。バリーにとっては、少しだけハッピーエンドというわけです。

 

 

まとめ

 シーズン3の衝撃的な最終話の後、このドラマはどう続くのか気になっていました。正直、バリーが逮捕されるところで、このドラマは完結すると思っていたので。実際、シーズン4はエピローグ的な印象もあったと感じました。

 

 シーズン4は、これまでのシーズンと比べるとコメディもアクションも控えめで、バリーが殺し屋らしさを発揮することもありません。だから、必然的にだいぶ大人しいシーズンになっていて、『バリー』らしさも薄れています。

 

 ただ、バリー・バークマンという人物の物語を描く上では、綺麗なファイナルシーズンだったと思います。バリー自身は、シーズン3以降、自分の過去の罪を清算して善人になることができるのかを悩んでいました。

 

 バリーは、一時は平穏な生活を手に入れたものの、最終的には過去に恨みを買った人物から逆襲に遭っています。だから、端的な回答をするなら、バリーは過去の罪をきちんと清算することはできなかったということになります。

 

 納得感のあるフィナーレだったと私は思います。バリーの子どもが出てきたせいで、後半のストーリーはやや定番じみたところもあったものの、全体的にはとても楽しめました。アデュー、バリー・バークマン!

 

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