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海外ドラマ『ダーク・マテリアルズ/ライラと黄金の羅針盤』シーズン3感想|壮大な最終章

Love is never small to those who discover it for the first time.

- Xaphania, His Dark Materials season 3

 

 私の偏愛するドラマ『ダーク・マテリアルズ』が、ついに完結しました。ライラたちの冒険はまだまだ観ていたかったですが、ここで区切りを付けなければいけません。早速、シーズン3を振り返っていきましょう。

 

 シリーズ最終章となる『ダーク・マテリアルズ/ライラと黄金の羅針盤Ⅲ』は、U-NEXTで独占見放題配信中。初回31日間は無料です。

 

基本データ

  • 原題:His Dark Materials
  • 放送局:BBC(イギリス)、HBO(アメリカ)
  • 放送期間:2022年12月5日~26日
  • 話数:8
  • 原作:フィリップ・プルマン『琥珀の望遠鏡 ライラの冒険Ⅲ』
  • 脚本:ジャック・ソーン
  • 出演:ダフネ・キーン、アミール・ウィルソン、ルース・ウィルソン、ジェームズ・マカヴォイ

予告編

www.youtube.com

 

以下、ドラマ『ダーク・マテリアルズ』シーズン3のネタバレを含みます。

 

これまでのシーズンの感想

シーズン1 シーズン2

 

偽りの創造主を倒せ!

 ジェームズ・マカヴォイ演じるアスリエル卿は、シーズン1からときどき顔を見せていましたが、シーズン3になってようやく活躍し始めます。

 

 

 ライラの親友のロジャーを殺して異世界への扉を開いたアスリエルは、仲間を集めて自分の共和国を作っています。たぶん、オグンウェ将軍とその部下の軍人たちは現実世界の人間だと思います。その他に、アスリエルは魔女や天使も何人か味方に付けていました。

 

 アスリエルの目的は、オーソリティと呼ばれる神のような存在へ反旗を翻すこと。アスリエルいわく(そしてこれは真実であるのですが)世界を支配するオーソリティは「創造主」を自称する天使に過ぎないといいます。現在、オーソリティは箱の中で隠居しているので、今は摂政のメタトロンという元人間の天使が世界を仕切っています。

 

 アスリエルの行動の目的はよく理解できます。オーソリティと教権(マジステリアム)が神話を作り上げて、人々を支配しているというのですから、そんなものは破壊するべきでしょう。しかし、いかんせんアスリエルという人物がクズすぎるので、賛同しきれない気持ちがあります。

 

 ロジャー殺しを筆頭に、どんな犠牲を払っても自分の目的を成し遂げようとするアスリエルの姿勢は、賛否両論あるでしょう。娘のライラのことも微塵も気にかけてはいないようです。仲間たちも、そんなアスリエルの態度に度々眉をひそめているのですが、それでも目的のために妥協しているようです。

 

 では、コールター夫人はどうなのでしょう。シーズン1では子どもたちをダイモンから切り離す極悪非道な実験を行っていましたが、シーズン3ではすっかり反省し、ライラのために献身的な行動を取っています。シーズン中盤ではライラへの爆弾を止めるために様々な手を施し、終盤ではライラのためにメタトロンとの対決に挑みます。

 

 ただ、コールター夫人には、1つ疑問があります。彼女は、一体何者なのでしょう? ただの人間かと思っていたら、急にスペクターの大軍を追い払ってみせました。メタトロンからも「特殊な存在だ」などと言われ、天使になって仲間になることを提案されています。まぁ、特殊だから特殊なんでしょうね(?)

 

 コールター夫人のダイモンのサルが、ここに来てとても良い味を出していました。普通、ダイモンと人間は大の仲良しなのですが、コールター夫人はサルを何度も殴ったりしています。しかも、このサルは喋りません。これまでは、さほど存在感のあるサルでもなかったのですが、シーズン3ではコールター夫人に逆らったり仲直りしたりと、感情面で大活躍。最後の最後にライラに触れられない切なさも巧みに演じていました。サルを演じている人がいるのか知りませんが。

 

死者の国へ

 ライラは、シーズン3当初は、しばし昏睡状態に陥っていました。シーズン3の序盤はは微妙にエンジンがかかっていないような印象を受けたのですが、それはライラがいなかったからですね。やはりライラがいてこその『ダーク・マテリアルズ』です。

 

 ウィルが、コールター夫人のもとからライラを救い出すと、再び2人での旅が始まります。すると、2人は早速口論を始めます。ウィルは父親に言われた通り、アスリエルのところに行きたいのに、ライラは夢で見たロジャーがいる死者の国に行きたいと言い出します。

 

 妙なことかもしれませんが、この口論を観て、やっとライラが帰ってきたなと実感しました。ライラは、人に言われたからといって素直にそれに従うような人ではありません。いちいち反論するのです。やっぱりライラはそうでないと。大人しく寝込んでいてはいけません。

 

 

 結局、ウィルが折れて、2人は死者の国へ行くことになります。「死者の国へ行ったら二度と帰ってこれないぞ」と何度も警告されながらも、2人は無視してそのまま進んでいきます。死んだらそれでお終いなんだから、いくら悲しくても諦めるしかないよなぁと私なんかは思ったりするのですが、信教がある人はまた違うんでしょうか。

 

 死者の国にダイモンは連れていけないので、ライラは涙ながらパンを置いていくことになります。胸が張り裂けるようなツラさとは、まさにこのこと。

 

 死者の国で、2人は青ざめたロジャーとリー・スコースビー、さらにウィルの父親のジョパリに再会します。そして、ハゲワシと交渉し、神秘の短剣を使うことで、死者たちを解放することに成功しました。これで、死者たちは煉獄をひたすら彷徨わずに済みます。

 

 私としては、死後は何もないという事実を受け入れるのが大人になるということなのかなと考えたりしますが、これもまた何を信じるかの話。死んだ後のことなど、どうせわからないので、好きなように考えれば良いと思います。

 

 ところで、フィリップ・プルマンの原作は、しばしば反キリスト教的だと批判されることがありますが、こういう展開を見る限りでは、十分キリスト教の思想を反映した内容になっていると感じます。煉獄の概念は破壊したとしても、死後の世界は完全に肯定しているわけですから。

 

最終決戦

 ライラとウィルのおかげで、人々の死への恐怖は和らいだようです。とはいえ、もし新たにできた崖に落ちてしまったら、忘却の彼方に行ってしまいます。死ぬより恐ろしいことだそうです。むしろ、これこそが無信教の人が考える死の概念に近いものに思えますが。

 

 人々はアスリエルとともに、クラウデッド・マウンテンの天使たちに戦いを挑みます。この壮大な戦いを見ると、このドラマが他のファンタジーと一線を画していることがわかります。良い意味でのごった煮といった感じです。いかにもファンタジーらしい天使や崖鬼(クリフガースト)もいれば、現実世界にもいるような兵士たちが銃を持って戦っていたり、さらにはとてもSFチックな見た目をした意思機という飛行装置も登場します。

 

 ファンタジーに見えて、SFのようでもあり、そうは言っても現実世界の道具もたくさん登場します。全体的にはマルチバースの話ですが、そこに宗教的な要素もたっぷり取り込んでいます。色んなジャンルから色んな要素を集めて、それを一つの物語にまとめているのは、凄い力量です。

 

 そんなこんなで、コールター夫人とアスリエル卿はライラのために協力して、メタトロンを倒します。意外にも、ライラとウィルは、この戦いでは活躍しないんですよね。短剣で天使を殺すとか何とか言っていた気もしますが、結局は、忘却の彼方への崖ができたおかげでいらなくなったということでしょうか。

 

フィナーレ

 最終決戦は、第7話で終わります。ライラとウィルは、メアリー・マローン博士のいる平和な土地にやってきます。まだ1人だけライラを狙っている教権の人間がいましたが、こいつは天使によって殺されました。バイバイ。

 

 ライラは、運命の少女だと言われ続けていましたが、このシーズンに入ってからライラはイヴであると言われるようになります。そして、博士はヘビの役割を果たすというのです。聖書では、ヘビがアダムとイヴに禁断の実を食べるようそそのかしたことで、人々は原罪を負うようになったと書かれています。

 

 今回、博士はライラとウィルに禁断の実をあげたりはしませんでしたが、その代わりに自身の恋愛体験を話しました。そして、ライラとウィルは互いへの想いに気づき、そのおかげでマルチバースのダストの流れが安定しました。

 

 おうおうおう、ちょっと待てよと。急展開です。確かに、そういう雰囲気は前からなくもなかったような気はします。特に、ウィルはライラのことをかなり意識してたと思いますよ。冒険もやっと一段落つき、2人で水遊びなんか始めたら、そりゃあそうなってしまうのでしょうか。年齢も、冒険を始めたときからは2つくらい上がって、16歳頃でしょうか。

 

 それで2人が幸せなら文句は言いません。良かったじゃないかと微笑ましく思い始めた矢先、今度は離れ離れにならなければいけないようです。付き合い始めたばかりだから別れも簡単かというとそうでもありません。でも、マルチバースのために文句は言っていられません。2人は1年に1回だけ同じ場所に来て互いを想い合うと約束して別れます。

 

 いざ別れるとなったら、それはそれでこっちも切なくなってきてしまいました。まぁ、それほど別れるのが辛いのは、2人の間に愛があるからではなく、強力な絆があるからだと私は信じていますけどね。

 

まとめ

 これで終わりです。切ないエンディングでしたが、すべてが収まるべきところに収まったように感じます。異世界間の窓を少しだけ残して、2人が会えるようにしておいても問題はないだろうと思ってしまいますが、そういう気持ちにさせられるほどにはライラとウィルにすっかり思いを寄せてしまっていました。

 

 振り返ってみると、本当に素晴らしいドラマだったと思います。フィリップ・プルマンの名作『ライラの冒険』シリーズは、2007年に一度映画化されたものの、結局、第1巻の出来事を描いただけで続編の企画は打ち切られてしまいました。今回はドラマ版として、全3巻をきっちり映像化してくれました。ありがとうございます。

 

 原作は読んだことがありませんが、この『ダーク・マテリアルズ』は私にとって最も思い入れの深いファンタジーの一つになりました。『ハリー・ポッター』や『ロード・オブ・ザ・リング』よりも好きです。やんちゃなライラも好きだし、裏切りばかりするコールター夫人も好きだし、勇猛なイオレク・バーニソンも好きです(イオレクを嫌いな人はいませんよね?)。ウィル、パンタライモン、アスリエル、リー・スコースビー、ロジャー、……みんな愛おしすぎます。

 

 ドラマも終わってしまったので、今度は原作にも手を付けてみようかと思います。ドラマも、あと何回かは観ます。そして、今後のキャスト陣の活躍、特にライラ役のダフネ・キーンの活躍もとても楽しみにしています。THE END.

 

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