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Amazon『ジュリー・デューティ~17日間の陪審員体験~』感想|とてつもなく壮大なドッキリ裁判

 Amazonプライムビデオで配信されている『ジュリー・デューティ』は、あまりにも壮大で奇想天外な番組です。主人公のロナルド・グラッデンは、何も知らない一般人。彼は、ある民事裁判の陪審員に選ばれて、裁判に参加することになります。

 

 しかし、その裁判は、実はすべて嘘でした。判事も弁護士も原告も被告も、ロナルド以外の11人の陪審員も、全員役者です。いわば、壮大なドッキリ番組です。ただ、スケールが違います。裁判の初日から最終日までの17日間、ずっとロナルドを騙し続けようというわけです。

 

 規格外のスケールのドッキリです。これほどのものは、到底YouTuberなどには真似できません。『ジュリー・デューティ』は、たっぷり笑えることができるとともに、ドッキリものでありながら、最終的にとても温かい気持ちになれる番組でもあります。

 

 

基本データ

  • 原題:Jury Duty
  • 配信:Amazon Freevee(アメリカ)、Amazonプライムビデオ(日本)
  • 公開日:2023年4月7日~4月21日
  • 話数:8
  • 主人公:ロナルド・グラッデン

予告編

youtu.be

 

 アメリカのドラマをよく観ている人なら、陪審制度はすっかりお馴染みのものだと思います。日本の裁判員制度のようなものですが、アメリカの場合は民事事件でも陪審審理が行われるので、陪審員に招集をされることも多いと言います。

 

 そんな背景があるので、陪審員として招集されたロナルド・グラッデンも、特に疑問は抱かなかったのでしょう。その際に、番組のクルーから、陪審員に密着するドキュメンタリー番組の撮影をしたいと連絡されており、彼は快諾しています。

 

 本来は、陪審員は他の陪審員以外と事件の話をしてはいけないので、密着ドキュメンタリー番組を撮影できるはずはありません。でも、偽の裁判でなら可能です。日本に住んでいる人などからすると、そもそもこうやって陪審員の日常を見ることができるのも興味深いです。

 

 裁判の初日に、ロナルドは俳優のジェームズ・マースデンに出会います。ジェームズ・マースデンはそれなりに有名な俳優なので、彼だけは本人役で出演しています。そして、いかにも嫌な感じの自己主張の激しいハリウッドスターを演じています。

 

 この役を演じているのがジェームズ・マースデンというのが面白い。これがトム・ハンクスやトム・クルーズだったら全然違う意味を持ってしまいますが、ジェームズ・マースデンはまさに「それなりに有名」というくらいです。

 

 彼は、『X-MEN』シリーズでサイクロプス、『魔法にかけられて』ではエドワード王子を演じ、他にもドラマ『ウエストワールド』など多くの作品に出演しているので、言われれば認識できるという人も多いんだと思います。イケメンであることには間違いありませんし。だからこそ、自己中で嫌な感じのハリウッドスターという役柄にはピッタリだと感じました。

 

 他の陪審員も強烈です。トッドは、機械人間になることを目指しており、いつも様々な発明品を身に付けています。ノアは、彼女が友達と旅行に出かけてしまったので、浮気をされていないか心配しています。居眠りしがちなバーバラや賭け事が大好きなケンもいます。

 

 そもそも、裁判の内容から妙です。原告によると、Tシャツ製造工場の従業員の男がラリって作業中に寝てしまい、Tシャツの上に尿や糞を垂れ流してしまったため、1800万ドル(26億円)の損害賠償をしてほしいというのです。

 

 アメリカだったら実際にありそうな訴訟ではあります。限りなくジョークに近い実際の事件という感じがします。裁判でも、弁護人や証人がたまに変なことをします。本当に笑ってしまうような出来事ですが、法廷という場でもあるので、大笑いができない空気がシュールで面白い。

 

 あまりにも変なことが毎日起こっていますが、ロナルドは一向に気づく様子はありません。何度か「変なことばかり起こって、まるでリアリティ番組みたいだ」なんてことを言うので冷や冷やさせられますが、あくまでジョークとして言っていて、本気でリアリティ番組だと思っているわけではないようです。

 

 

 この番組を観ていくと、ロナルドという人間の良いところがどんどん見えてきて、好きになってきてしまいます。例えば、発明家のトッドは明らかに奇行を繰り返していますが、ロナルドはそんなトッドを疎ましく思うどころか、むしろトッドに「君は才能があるんだから、他人の目なんか気にしないで自分に自信を持ってほしい」と応援します。

 

 嫌味なハリウッドスターのジェームズ・マースデンに対しても、ロナルドは誠実に接しています。ジェームズのために、秘密を隠す手伝いをしてあげるほどです。他の陪審員とも積極的に仲良くなろうとしていますし、最後の審議でも陪審員長として頑張って陪審団をまとめていたのが印象的でした。

 

 こんなに理不尽な状況なのに、物事をポジティブに捉えられるロナルドは凄いなと思います。それだけに、最終話で裁判がすべてドッキリであったと明かされて人間不信に陥ってしまったら可哀そうだなと感じるようになっていました。でも、さすが我らが主人公のロナルド。最初はあまりにも奇想天外な真実に少し混乱しながらも、気持ち良い後味を残してくれます。

 

 ロナルドは、最初からあまり我が強い方ではなく、他者の引き立て役をやっていることが多いように感じます。それは、この番組で何らかの出来事を起こすのがいつも役者側である以上、必然でもありますが、彼自身もそういう性格を持っています。

 

 でも、この番組の真の主人公は、紛れもなくロナルドであり、ロナルドほど相応しい人はいませんでした。これほど優しさと誠実さに溢れた人物に、私は出会ったことがありません。

 

 ロナルドは、Varietyのインタビューでこんなことを言っています。

 

「皆、僕のことをヒーローと呼んでくれて、それはとても嬉しいんだけど、僕はただちゃんとした人間であろうとしていただけなんだ。人に優しくしたり、敬意を払ったり、助けが必要な人を助けたりするけど、それは誰もが当たり前にやるべきことだと思うからやっただけだよ」

 

インタビュー動画

youtu.be

 

 この言葉だけ抜き出すと、ちょっと偽善的な印象を受けなくもないですが、『ジュリー・デューティ』を観た後ならば、彼が本当にそう思っていて、これらの行為を実行していることがわかります。この番組を観て、ロナルドの稀有な人間性を知ることができたのはとても良かったですし、これからは自分の心の中にも小さなロナルドを育んでいきたいな、なんて思ったりしました。

 

 なお、ロナルドは、この番組の公開以降、一躍アメリカの愛されキャラとして有名になりました。そもそもテレビに出るつもりすらなかったロナルドが、何の風の吹き回しか、いつの間にか自分が主人公の全8話の番組が作られていて、賞賛を浴びています。

 

 今は、束の間の有名人として、他の有名人に会ったりして忙しくしているようです。私としては、ロナルドがこの狂騒が去った後も、番組のキャストとも引き続き交友を深め、愛犬のコーギーと楽しく暮らしていってくれることを願うばかりです。

 

 

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