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海外ドラマ『シタデル』シーズン1感想|有名スパイ映画のパッチワーク

 Amazonプライムビデオの新作ドラマ『シタデル』は、鳴り物入りで始まった超大作です。製作総指揮は、映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』のルッソ兄弟。シーズン1の製作費は2億ドルを超えると言われており、これは『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』に次いで歴代2位。現在、イタリア、インド、メキシコ、スペイン各国でのスピンオフの制作も進んでいます。

 

 実際、視聴者数も『力の指輪』に次いで、Amazonプライムビデオ史上歴代第2位となり、多くの人に観られたようです。でも、それは、Amazonが一生懸命宣伝を行ったおかげで、第1話を観てくれた人が多かったというだけのことでしょう。

 

 今回のレビューは辛口であることを予め警告しておきます。ドラマ『シタデル』に関して、そういったレビューを読みたくない気分の場合は、この記事の続きを読む必要はありません。

 

 

 昨年のAmazonオリジナルドラマ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』のときは、高額な製作費は権利使用料と視覚効果のために使われていました。一方『シタデル』には原作がないので、製作費は基本的に壮大なアクションシーンを作るために使われたと考えることができます。

 

 確かに、アクションシーンは、様々な場所で撮影されています。同時に、CGIも多用されています。これが相乗効果で上手くいくかと思いきや、その逆で、互いの良さを潰してしまっています。ロケ撮影をするのは、現地の風景をドラマに使いたいからです。それなのに、そこにCGIを被せたら、ロケ撮影の意味がないではありませんか。

 

 妙にSFっぽさが出ていたのもいただけません。記憶操作技術はSFらしいものですが、それを除けば大半は現実に存在し得るものなので、ドラマ全体としてSF風味を押し出す必要を感じません。荒唐無稽なガジェットが出てくる『007』も『ミッション・インポッシブル』も、別にSF風味ではありませんよね。

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

 このドラマの設定は、あまりにもありきたりなので、そういった既存のスパイ映画と比較されることは避けられません。記憶喪失のスパイは『ボーン・アイデンティティー』でしょう。どこの国にも属さない国際的な諜報機関というのは『キングスマン』でしょうか。核兵器を巡る攻防というのもありがちな設定ですが、あえて言うなら『ジャック・ライアン』あたりにありそうです。

 

 そんな調子で『シタデル』のストーリーは、そのほとんどすべてが既存のスパイ映画で観られるようなものばかりです。あたかも、あらゆるスパイ映画の要素を継ぎはぎして脚本を書いたかのように感じられます。まるでChatGPTが書いたかのようです。

 

 例えば、記憶喪失の主人公の扱い方に関することです。記憶喪失の主人公は、シタデルの技術屋のバーナードなどに会って、自分が元敏腕スパイだったことを知ります。しかし、視聴者は第1話の冒頭ですでに、彼がスパイだった頃の映像を観ているので、このことを聞いたところで1ミリも驚きません。

 

 第4話のラストでは、捉われていたシタデルのスパイが、裏切り者はナディアだと指し示します。しかし、第4話までで過去のストーリーもたっぷり扱われていたので、ナディアが裏切り者であることは視聴者全員がすでに知っていることです。またしても驚きがありません。

 

 サプライズも確かにあります。現代パートでのカイルの妻がシタデルのスパイだったということ。ナディアに子どもがいたということ。真の裏切り者がメイソンだったということ。ところが、1つ目はともかく、他の2つに関してはまだまともな説明がなされていません。衝撃の事実だとしても、だから何なのかと言いたくなります。

 

 これは一般に言えることだと思うのですが、視聴者の得ている知識量が登場人物よりも多いと、視聴者は退屈を感じます。なぜなら、例えば、カイルが元スパイだということを視聴者はすでに知っているのに、カイル自身が元スパイであることに気づくためのストーリーを延々と観る羽目になってしまうからです。要は、ネタバレされているような気分なのです。

 

 このドラマの欠点は、挙げ始めたらキリがないほどです。国際的なスパイスリラーの割に、なぜこれほどスケールが小さく感じられるのでしょう。メイソンとナディアの恋愛事情で世界を危機にさらさないでほしい。しかも、せっかく作戦を実行する段になっても、あっさり始めてあっさり終わってしまいます。最終話の地下潜水艇の作戦など、20分ほどしか掛かっていません。それだけなのに、なぜか部下が裏切りを起こして、しかもそれもすぐに対処されています。

 

 褒めるべきところは、リチャード・マッデンとプリヤンカー・チョープラーの変わらぬセクシーさぐらいでしょうか。結局、このドラマは真剣に観るような代物ではありません。スマホでもいじりながら、横目で観るくらいでちょうど良い作品です。

 

 脳ミソを空っぽにして観られるようなドラマがあっても良いとは思います。しかし、それに歴代第2位などという製作費をかけるべきではありません。このような高額ドラマを作るために、打ち切りになったと言われるドラマもあります。この1年間にAmazonによって打ち切られたドラマ(『ザ・ワイルズ』『思うままの世界』『ペーパー・ガールズ』『ナチ・ハンターズ』『カーニバル・ロウ』『プリティ・リーグ』)が、これでは浮かばれないでしょう。

 

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