以前からコンサルタントが何をする仕事なのかよくわかっていませんでしたが、このドラマを観てされによくわからなくなりました。映画『ザ・コンサルタント』も観たことがありますが、もしかしたら、コンサル業というのは殺し屋と同じ意味だったりするのでしょうか?
ドラマ『コンサルタント』シーズン1基本データ
- 原題:The Consultant
- 配信:Amazonプライムビデオ
- 配信日:2023年2月24日
- 話数:8
- 原作:ベントリー・リトルの同名小説
- 脚本:トニー・バスギャロップ
- キャスト:クリストフ・ヴァルツ、ブリタニー・オグラディ、ナット・ウルフ
- あらすじ:あるゲーム会社のCEOが殺された。その夜、リージャス・パトフと名乗るコンサルタントが会社にやってくる。彼は、生前のCEOから仕事を依頼されていたのだという。強引に会社を仕切り始めたパトフだが、彼の過去には多くの謎があった。
予告編
以下、ドラマのネタバレを含みます。
謎の男リージャス・パトフ
クリストフ・ヴァルツは、いつも映画『イングロリアス・バスターズ』や『007 スペクター』などでクセの強い悪役を演じている印象があります。でも、今回の役はこれまで以上に濃くて、強烈なキャラクターです。
リージャス・パトフ。その名前は、Reg. U.S. Pat. Off.(アメリカ特許商標庁の登録商標)から取ったものに過ぎません。サンウCEOの死後に唐突に会社にやってきた彼は、ニタニタと不気味な薄笑いを浮かべながら、慇懃無礼な態度で勝手に会社を仕切り始めます。
謎の男パトフに関する事柄は、物語が進むにつれて明らかになっていきます。まず、監視カメラの映像から、パトフがサンウに性的奉仕をさせていたことが判明します。初手が強い。少しづつ卑劣さがレベルアップしていくかと思いきや、最初に判明したのが最も卑劣な行為です。
パトフが、サンウの死に関係していることも明らかです。実際に襲撃したのは子どもでしたが、パトフは後に、少年院に入っているその子のもとを訪れて新作スマホゲームをやらせてあげています。
なぜ、パトフはそんなことをやったのか? それは、パトフがサンウと契約したからでした。サンウは、自分の会社を立て直すため、また自分の死後にも功績を残すために、パトフの提案にすべて乗ったのでした。
サンウも相当追い詰められていたのだろうと思います。一度自殺を試みたほどですから。パトフは、そこに付け込んだのです。パトフが、どうしてサンウの状況をそれほど詳細に知っていたのかはわかりませんが、自分の現状を完璧に言い当てられてしまったサンウはパトフの要求をすべて飲んでしまいます。
それでは、サンウは自分の望みをすべて叶えることができたのでしょうか? パトフは、非常に不気味な人物で、殺人も平気でやりそうなところがありますが、案外とコンサルタントの仕事もちゃんとやっています。
サンウの死後に社員に給料を払うことで、必要な人材をちゃんと会社に引き留めています。また、リモートワークの社員をすべて会社に呼び出しています。リモートワークの是非はともかく、現実の有名CEOたちもしばしば同じことをやっています。あと、会社にあった卓球台か何かを売っているようにも見えました。色々なところでコスト削減を図っています。
契約の通り、サンウの名前を後世に残すという仕事もしっかりやっています。社内には、サンウの全身をかたどった巨大像が設置されました。まぁ、チ〇コしか目に入らなかったですけど。加えて、新作ゲームは「ミスター・サンウのジャングル大冒険」というタイトルにして、サンウの名前まで冠しています。
パトフの正体
パトフはこれだけの仕事をやっておきながら、報酬をほとんど得ていないように見えます。現実のコンサルタントは、そこまで寛容なわけがありません。では、パトフは一体何者なのでしょう? 直接的には一度も明かされていませんが、彼の正体が「悪魔」であることは繰り返し示唆されています。
このドラマには、キリスト教的なモチーフがしばしば出てきます。サンウの母親は「息子は悪魔の所業によって殺されてしまった」といったようなことを言っています。敬虔なカトリック教徒のパティに連れられて一緒に教会に行くようになったクレイグは、後に神父に悪魔払いのことを聞いています。
クリスチャンのパティが、パトフと教会で密会する夢を見るようになったり、最終的に地下の資料室で奴隷のように働くようになったりしているのを見ると、やはり悪魔によって堕ちてしまったように思えます。
悪魔パトフの力は強力なので、周囲の人間をどんどん堕落させていっています。サンウの元秘書で、企画アドバイザーという謎の肩書きを自称しているエレインは、パトフの恐ろしさに薄々気づいていながらも、どんどんパトフ的な人物になっていってしまいます。
象徴的だったのは、第5話のオフィス争奪戦です。パトフの「一番オフィスが欲しい奴にくれてやる」発言により、社員は醜い争いを繰り広げ始めます。最初は我関せずの態度だったエレインも、パトフにそそのかされて、別の社員のオフィスをちゃっかり奪います。
第5話のラストで、エレインがオフィスに入っていくときに流れていた曲が、エルヴィス・プレスリーの (You're the) Devil in Disguise でした。「君は天使みたいだけど、本当は変装した悪魔なんだ」という歌詞は、まさに象徴的です。
キリスト教的なモチーフはもっとたくさんある気がしましたが、私もそれほど詳しくないので、これ以上はよくわかりません。金の骨に関しては、聖書に何か記述があったりするのでしょうか。パトフの骨が金でできていることはわかりますが、悪魔の骨が金だとは初耳です。
トイレ問題もあります。クレイグがパトフのスマホを追跡したところ、彼は丘の上のある場所に何度も行っていることがわかりました。普通に考えれば、そこにはパトフの家があるはずですが、実際にあったのは仮設トイレだけでした。あのトイレは、地獄と繋がっているのでしょうか? それとも、ただ単にパトフは、会社でトイレに行けないタイプの悪魔だということでしょうか?
最終話のラストで、エレインが「パトフはただ仕事をしただけ」みたいなことを言って、ちゃっかりCEOになる展開もよくわかりません。要は、エレインもほとんど悪魔になってしまったということだと思いますが、何か違うような気がします。
リミテッドシリーズではないので、視聴数や評判が良ければシーズン2が製作されると思います。中途半端に色々謎が残っているので、やることはありそうです。でも、このゲーム会社の話は、これ以上語ることはなさそうな雰囲気です。クリストフ・ヴァルツが出るなら、そのときはまた観るかもしれません。
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