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『デクスター:ニュー・ブラッド』第10話(最終回)ネタバレ感想&あらすじ

I've never felt love. Real love. Until now.

- Dexter Morgan, Dexter: New Blood

 

 8年ぶりに復活した『デクスター:ニュー・ブラッド』は、第10回で最後となります。デクスターは、自身に掛けられた嫌疑にどう立ち向かうのか? 最大の危機を抜け出すことはできるのか? 最終回をネタバレありのあらすじと感想で振り返っていきます。

 

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他の回のあらすじ&感想

第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話

 

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あらすじ

 デクスターとハリソンが家に戻ってくると、そこは先ほど2人で処刑したカートが放火したせいで全焼していた。アンジェラ・ビショップ署長には、カートから封筒が届いており、その中には息子のマットの脚のボルトが入っていた。アンジェラは、デクスターの家の燃え後から同じボルトを見つけ、デクスターが殺人犯であることを確信する。

 

 アンジェラとローガン巡査部長は、マット殺害の容疑でデクスターを逮捕する。アンジェラは取り調べを始めたが、デクスターは証拠が弱いことに気づいていた。アンジェラは、デクスターの正体はベイハーバー切り裂き魔だと推理しており、マイアミ市警のエンジェル・バティスタに応援を頼んだ。

 

 デクスターは、カートが連続殺人犯であることをアンジェラに告げ、遺体の在り処も教えた。アンジェラが警察署を出ていった隙に、デクスターはローガン巡査部長を殺害し脱出。ハリソンに電話をして、一緒に町を出る準備をするように知らせた。

 

 待ち合わせ場所に来たハリソンは、デクスターに着いた血を見て、高校のコーチでもあったローガンを殺して脱出したことを知る。デクスターは悪人だけを殺すはずが善人も殺していたことに気づき、ハリソンはデクスターに銃を向ける。観念したデクスターは、息子に最後の教えを授け、ハリソンは引き金を引いた。その直後、アンジェラがやってきたが、彼女はハリソンに対して逃げるように言う。ハリソンは、一人で町を出ていった。

 

 

感想

 これで終わりです。本当の終わりです。いずれ、こういう日も来てしまうのかなという予感はありました。これまで100人以上を殺して、無事に生きてこられた方が不思議です。しかし、幸運はいつまでも続かず、ついにそのときが来てしまいました。

 

 最終回を順番に振り返っていきます。今回、まず衝撃的だったのが、デクスターが逮捕されたことです。これまでも何度か容疑を掛けられたことはありますが、実際に逮捕されたことはなかった気がします。

 

 デクスターにとっては初の逮捕ですが、案外、証拠が大したことはありません。ボルトの件はカートが仕込んだと言えば何とでもなりますし、注射針の跡も間接的な証拠に過ぎません。直接的にデクスターを指し示す証拠は、まだ見つかっていませんでした。マット殺しに関しては、悠然と構えていても大丈夫だったでしょう。

 

 問題は、ベイハーバー切り裂き魔事件と関連付けられて、元同僚のバティスタを呼ばれてしまったことです。バティスタは、ラゲルタの資料を持って駆けつけることになります。ラゲルタはマイアミ市警の元警部で、デクスターがベイハーバー切り裂き魔ではないかと疑っていましたが、シーズン7のラストでデボラによって殺害されてしまいました。ラゲルタの名前が書かれたファイルにどんな証拠があるのか知りませんが、デクスターにとっては万事休すの状況になってしまいます。

 

 そこで、デクスターは自分が持っている最強の切り札、カートが連続殺人犯である証拠をアンジェラに差し出します。もちろん、ただの親切心で教えてあげたわけではありません。その目的は、警察署からアンジェラを追い払うことでした。一人になったローガン巡査部長を誘い出し、鍵を盗むために殺害。署から脱出したデクスターは、ハリソンに電話をかけて逃げ出す準備をするように言います。

 

 今回もまた、シーズン8のラストのように、デクスターは無事に逃げ出すことができるのではないかとうっすら期待してしまいます。しかし、ハリソンと対面した直後から雲行きは一気に怪しくなります。ハリソンは、デクスターが善人のローガン巡査部長を殺したことを責め、デクスターのせいで母親(リタ)や叔母(デボラ)が死んだことを責め、自分が10年間も父親に見放されていたことを責めます。

 

 そうなんです。デクスター・モーガンは、極悪人なのです。殺している相手が凶悪犯だから良いじゃないかと彼自身は思っていますが、善人も少なからず彼のせいで死に至っています。おまけに、息子を見捨てたことがあります。ハリソンは、一度はデクスターを許したものの、完全には許すことができませんでした。

 

 結局、死に至る責任は、すべてデクスター自身にあったんだと思います。息子を見捨てたのは自分勝手でしたし、息子とともに町から逃げ出そうという提案も、自分がそうしたかったからです。ハリソンは、アイアンレイクに残りたいと言っていました。殺人を犯したことのないハリソンを、自分と同じく闇のヒーローを気取る殺人鬼に育てようとしたのもデクスターの意向です。

 

 私たちは、デクスターの目線でドラマを観ているので、ついついデクスターに同情してしまうのですが、傍から見れば彼はろくな人間ではありません。大量殺人鬼であるだけでなく、ろくでなしの父親です。息子によって死がもたらされたのも必然だったと言えるかもしれません。

 

 自分の死を悟ったデクスターが、息子に銃の使い方を指導するのは奇妙な感じもしましたが。息子が闇のヒーローになってくれる可能性を最後まで捨てきれず、人殺しの方法の指南をせずにはいられなかったのでしょうか。直後にやってきた署長が、今さっき殺人を犯したばかりの連続殺人犯の息子を見逃す判断をしたのも奇妙ですが、当時のアンジェラは30体もの死体を見た直後だったので気が動転していたのでしょう。後々、その判断を後悔しているかもしれません。

 

 ともあれ、ちょっとしんみりした気持ちになっています。デクスターは悪人だったかもしれませんが、彼のことはどうしても好きにならずにはいられませんでした。この結末には文句はありません。こういう宿命だったと思いますし、良い最終回でした。でも、寂しいものは寂しい。あの怪しい笑顔が恋しくて堪らない!

 

 

レビュー|意義のあるリブート

 ここからは、もう少し冷静になって『デクスター:ニュー・ブラッド』のレビューをしていきましょう。近年はリブートブームなので、人気があった作品がたくさん復活しています。『セックス・アンド・ザ・シティ』しかり『ゴシップ・ガール』しかり『iCarly』しかり。『デクスター』も人気があったからリブートされたのですが、それとは別に、このドラマにはリブートすべき正当な理由がありました。

 

 それは、最終回の評判を挽回するためです。ドラマ自体は非常に人気があり、評価も高かった作品です。しかし、シーズン8の最終回だけは酷評されました。詳しいことは以下の記事に書いてありますが、酷評された主な理由には次の2つがあります。

関連記事 海外ドラマ『デクスター』シーズン8感想:デクスターと教範 - 海外ドラマパンチ

 

①デクスターがデボラを安楽死させ、過去にデクスターが殺してきた殺人鬼たちと同じように遺体を船から海に葬った。

②息子のハリソンを当時の彼女のハンナに預け、自分だけ姿を消した。

 

 リブート作『デクスター:ニュー・ブラッド』は、この2点を何かしらの方法で解決しなければいけません。一つずつ検討していってみましょう。

 

①デボラの最期

 まず、デボラの最期に関する①ですが、これはデボラの亡霊を出すことで解決を図っています。デボラは、デクスターのせいでシーズン7の最後でラゲルタを殺す羽目になり、シーズン8の最後でオリバー・サクソンに致命傷を負わされています。デクスターが安楽死をさせようとさせまいと、彼女の死はデクスターの責任です。

 

 デボラは、生前はどこまでもデクスターの味方でした。デクスターの正体を知っても警察に通報しないだけでなく、自分から進んでかばっていきました。しかし、デクスターのせいで死んでしまった今、彼女の亡霊はデクスターを激しく憎んでいます。あくまでも亡霊ですから、これはデクスターの良識の現れなのですが、デボラがデクスターを憎むであろうと想定するのは妥当です。

 

 そういう意味では、デボラの亡霊は①に対して一応の解決を与えていると言えるでしょう。ただし、『デクスター:ニュー・ブラッド』という作品においてデボラの亡霊が必要だったがと言えば、個人的には疑問が残ります。今回のデボラは、デクスターに向かって騒ぎ立てることしかしていません。ジェニファー・カーペンターの姿を再び見られたのは嬉しいものの、このような形での復活は不要だったのではないかと思います。

 

②見捨てられたハリソン

 こっちの方が大事です。デクスターは、実の息子を見捨て、自分だけちゃっかり生き残りました。とてつもなく自分勝手な行動です。『デクスター:ニュー・ブラッド』では、ハリソンがデクスターの居場所を突き止め、会いにやってきます。

 

 デクスターはハリソンとの再会を喜ばしく思い、今度こそ良い父親になろうと決心します。でも、ハリソンはそう簡単にデクスターを許すことはできません。父親は死んだと言い聞かされていただけでなく、ハンナへの手紙では「闇の兆候」などという奇妙な言葉で息子を化け物扱いするようなことが書かれています。

 

 親子関係はどんどん悪化していきましたが、カート事件をきっかけにデクスターが自分の正体を明かし、一気に関係は回復します。「闇の兆候」を説明するには、そうするしかありませんから。意気投合した2人は一緒にカートの処刑を行いますが、ハリソンは死体の解体作業の途中で部屋を出ていってしまいました。ハリソンには、デクスターほどの殺人衝動はなく、喜んで人を殺す趣味などないことがわかります。

 

 この後は最終回の内容なので、さっきも書いた通り。結局、デクスターはろくでなしの父親なのです。数日間の努力では、10年間死んだフリをしていたことの償いはできません。しかも、自分勝手な都合で、悪人だけでなく善人さえも死に追いやります。償う方法は一つしかなかったということでしょう。

 

 これは、十分に②の解答になっているのではないかと思います。息子を見捨てたことへの償いであるとともに、数十年間に渡る悪行の償いですから。シーズン8最終回の汚名を挽回し、より良い形でフィナーレを迎えることができたのではないでしょうか。これでこそ、リブートの意味があったというものです。

 

 なお、現在のところ『デクスター:ニュー・ブラッド』シーズン2が作られる予定はありません。脚本を担当したクライド・フィリップスは、ハリソンを主人公にした続編を作ってほしいという依頼が放送局のShowtimeからあれば喜んで製作するつもりだと述べています。

 

シーズンレビュー

 『デクスター:ニュー・ブラッド』は、それ単体としても非常に面白い作品でした。主演のマイケル・C・ホールの演技は今回も素晴らしく、観ているこちらも楽しかったです。スリリングなストーリー展開も健在で、宿敵カートとデクスターの対決が繰り広げられる第7話と第8話は特に手に汗握る面白さでした。

 

 加えて、過去作のリブートとしても、息子のハリソンを中心人物の一人にすることで、興味深い作品になっています。普段ならリブートはあまり好ましくないと思うことが多いのですが、このようなリブートなら大歓迎。とても満足できるシーズンでした。

 

 今回『デクスター:ニュー・ブラッド』が観られて良かったですし、そもそも『デクスター』というドラマに出会えたことも、とても良かったです。デクスター・モーガン、あなたのことを一生忘れません。大好きです。

 

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