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海外ドラマ『ゾーイの超イケてるプレイリスト』感想

 海外ドラマの作り手たちは、ときどき本当に妙なことを思いつくなと感心します。『ゾーイの超イケてるプレイリスト』の主人公のゾーイは、他人の感情が音楽になって聞こえます。しかも、ダンサー付きで踊っているのです。

 

 こんな奇妙な設定なのでコメディに向いていそうですが、むしろこのドラマはヒューマンドラマとして面白い作品になっています。今回は、海外ドラマ『ゾーイの超イケてるプレイリスト』シーズン1のレビューをしていきます。

 

 

 

基本データ

  • 原題:Zoey’s Extraordinary Playlist
  • 放送局:NBC
  • 放送年:2020~2021年
  • シーズン数:2
  • 話数:25+クリスマス・スペシャル
  • 主演:ジェーン・レヴィ
  • 予告編:

    youtu.be

 ジェーン・レヴィ主演の『ゾーイの超イケてるプレイリスト』は、NBCで2シーズン放送された後、視聴者数が少なかったことを理由に打ち切られました。しかし、その後、ストリーミングサービスのThe Roku Channelがクリスマス・スペシャルに相当する映画版『Zoey’s Extraordinary Christmas』の製作を決定。2021年末に配信されました。このクリスマス・スペシャルの評判次第ではRokuがシーズン3を製作すると言われていますが、現時点では未定です。

 

 フラッシュモブの振り付けを担当したマンディ・ムーア(女優のマンディ・ムーアとは別人)は、映画『ラ・ラ・ランド』やドラマ『glee/グリー』、アカデミー賞授賞式のパフォーマンスも担当したハリウッドきっての振付師です。今作の振り付けでエミー賞を受賞しました。

 

感想

 主人公のゾーイは、有能なプログラマーであるものの、元々は音楽を嗜むような趣味はありませんでした。”理系の人間らしく”、他人の感情を読み取るのも得意な方ではありません。その割に、紙のメモ帳を使っているのは、本当にIT業界で働いている人間なのか疑いたくなりますが、ひとまず無視しておきましょう。

 

 ところが、MRIを検査を受けているときに地震が起こったせいで、他人の感情が歌で聞こえるようになってしまいます。設定は理解不能ですが、このまま受け入れなければいけません。そうしないと先に進めないので。

 

 周りの人々が歌い出すなんて最初は楽しそうだと思ったのですが、ゾーイの身にしてみれば、迷惑で仕方がなさそう。いきなり歌で本音をぶつけられて困っています。しかも、ゾーイが悩みを解決してあげない限り、歌は永遠に続くとされています。そりゃあ面倒な能力を身に着けてしまったものです。

 

 疑問なのが、ゾーイの頭の中で音楽が響いているとき、現実のゾーイは一体どんな状態なんでしょう? いきなりボーっとして、魂が抜けた状態になっているのでしょうか。でも、歌を歌っていない現実の相手とちゃんと会話できることもあります。

 

 しかも、歌とダンスは頭の中だけのはずなのに、歌が終わると現実の人間もちゃんと心歌(ハートソング)が終わったときの位置にいます。わかってます。そんな細かいことはどうでも良いんです。言ってみただけです。

 

 そういう細かいことは無視しておくとして、ゾーイはその能力を生かして人々を助けていきます。自殺した父親を悲しむ同僚のサイモンや、ノンバイナリーとして苦労している隣人のモーの悩みに付き合って解決していきます。

 

 ゾーイ自身も悩みを抱えています。ゾーイの父親のミッチは、PSPという難病により全身の筋肉をほとんど動かすことができません。意思疎通の手段は、ブザー(『ブレイキング・バッド』のヘクター・サラマンカみたいだ!)かコンピューターだけ。本人も大変ですが、介護をする家族も大変です。でも、ゾーイの心歌の中では、父親も自由に動き回り、思う存分に気持ちを伝えることができます。

 

 ゾーイは、職場では三角関係を引き起こしてしまいます。親友だと思っていたマックスからいきなりラブソングを歌われたら、戸惑ってしまうのも頷けます。マックスと上手くやれば良いじゃないかと個人的には思っていたのですが、ゾーイは婚約者持ちのサイモンとも距離を縮めていきます。悩ましいのが、2人ともとても優男なのです。この三角関係、しばらく終わりそうにありません。

 

ベストソング3選(シーズン1ネタバレ)

第2話 I've Got the Music in Me

 一番楽しいパフォーマンスでした。エピソードが始まるとすぐに全キャストが歌って踊って、気合いが入っています。曲は、キキ・ディーというイギリスの歌手によるものだそう。2022年のアカデミー賞を受賞した映画『コーダ』の終盤でも、この曲は歌われていました。

 

第8話 Crazy

 第8話は神回です。笑いが止まりませんでした。冒頭でゾーイが披露するCrazyは、いつも通りゾーイの頭の中だけのことだと思っていたら、なんと実際に歌って踊っていたのです! しかも、ゾーイ自身にはそれを止めることができず、真面目な会議の最中にも歌い出してしまいます。やめろーー!と叫びながら大笑いしていました。

 

 このエピソードでは、冒頭でゾーイが「昨日ジム・キャリーの映画『ライアーライアー』を観た」という台詞があります。『ライアーライアー』は、普段は嘘ばかり吐いている弁護士が、一日だけ本当のことしか言えなくなってしまうコメディ映画です。このエピソードも、ゾーイが本音を歌でぶちまけまくる一日の話だったので、暗示的でしたね。

 

第12話 American Pie

 父親の余命は最初から短かったので、すぐにその日は来てしまいます。父親を送り出す曲であり、シーズンを振り返る曲(The day the Music died.という歌詞が頻出する)としてもとして良い曲だったのではないでしょうか。

 

 Spotifyにある『ゾーイの超イケてるプレイリスト』のプレイリストを貼っておきます。劇中の曲はすべて公式サウンドトラックとして配信されていて、このプレイリストはドラマと同じ順番で並んでいます。42番のAmerican Pieまでがシーズン1、102番のI Melt With Youまでがシーズン2、その後がクリスマス・スペシャルです。

 

 

総括

 設定は奇想天外ですが、『ゾーイの超イケてるプレイリスト』の中身はしっかりしたヒューマンドラマであり、笑いと感動のある良いドラマでした。特に、第8話はたっぷり笑わせてくれて、死期の近い父親との関係を見つめ直すストーリーには感動させられました。

 

 一方、個人的には、登場人物があまりにも善人すぎたり、歌う曲がいずれもベタベタの名曲だったのは物足りなく感じるところもありました。ラップや近年のヒット曲なども使えば、もっとプレイリストの幅も広がって、人気も出たんじゃないかと思ったりもします。

 

 それでも、『ゾーイの超イケてるプレイリスト』の大胆な試みは成功し、現代的なヒューマンドラマとミュージカルドラマは見事に融合されています。シーズン3が作られるのかどうか知りませんが、打ち切りだったとしても一見の価値はあるでしょう。

 

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