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Netflixドラマ『クリックベイト』感想&レビュー:デジタル社会の本格派ミステリー

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 Netflixの新作ドラマ『クリックベイト』を鑑賞しました。ショッキングというか大袈裟とも感じられるあらすじを見て、内容にはそこまで期待してはいなかったのですが、意外とちゃんとしたミステリーでした。

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Netflixドラマ『クリックベイト』基本データ

・原題:Clickbait

・配信:Netflix

・配信日:2021年8月25日

・話数:8

・脚本:トニー・エアーズ、クリスチャン・ホワイト

・あらすじ:

 「500万回再生されたら私は死ぬ」「私は女性を虐待した」という衝撃的な言葉が書かれた紙を持った男の動画がアップロードされた。事件は予想外の展開を迎える。

・予告編:

www.youtube.com

 

 ちなみにクリックベイトとは、オンライン広告やネット記事などで、クリック数や閲覧数を稼ぐために、中身とはほとんど関係ないような誇張をしたタイトルを付けることです。要は「釣りタイトル」とかそんな感じです。

 

登場人物

ニック・ブルーワー:誘拐される男

ソフィー・ブルーワー:ニックの妻

イーサン・ブルーワー:長男

カイ・ブルーワー:次男

ピア・ブルーワー:ニックの妹

ロシャン・アミリ:刑事

エマ・ビーズリー:ニックの愛人

サラ・バートン:ニックの愛人

ベン・パーク:記者 

 

キャスト

 誘拐される男ニックを演じたエイドリアン・グレニアーは、HBOのドラマ『アントラージュ★俺たちのハリウッド』で若手ハリウッドスターの主人公を演じてブレイク。映画『プラダを着た悪魔』にも出演しています。

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 妹のピアを演じたゾーイ・カザンもHBOと縁は深く、ドラマ『DEUCE/ポルノストリート in NY』『プロット・アゲンスト・アメリカ』などに出演しています。映画『ルビー・スパークス』では脚本も書いています。

 

 ニックの妻のソフィを演じたベティ・ガブリエルは、映画『ゲット・アウト』『アップグレード』などに出演。『ゲット・アウト』を観たことがあれば、泣きながら笑っていたメイドの人を覚えているかもしれませんが、あの人です。HBOのドラマ『ウエストワールド』シーズン2にも出演しています。

 

ここからネタバレあります。お気を付けを!

 

 

感想

①サスペンスというよりミステリー

 「500万回再生されたら私は死ぬ」「私は女性を虐待した」という衝撃的な言葉が書かれた紙を持った男の動画がアップロードされた!

 

 予告などでは、この要素が前面に押し出されているので、第1話を見ると少し意外な感じを受けます。なんと、動画はあっという間に500万回再生されてしまうのです。あらすじを聞いたときには、登場人物たちが500万回再生を防ぐために様々な手段を講じいきながら犯人を追う話なのかなと思っていたのですが、そうではありません。

 

 第2話の最後には早くも死体が見つかり、話は完全に事件捜査ドラマの展開になっていきます。この後も、ドラマはサスペンスというよりミステリードラマの様相を呈してきます。自分は、ミステリードラマが好物なので、これはこの展開として面白かったです。

 

②デジタル社会ならではの謎解き

 『クリックベイト』がミステリーとして面白いのは、現代のインターネットを取り巻く環境を巧みにストーリーに取り入れているところにあります。最初の動画をきっかけに、人々がニック探しに熱中し、ニックを探すために「GeoNicking」というサイトまで出来ます。中には、それを使って悪ふざけをする者も出てきます。

 

 また、ニックが出会い系サイトを使っていたことが中盤で明らかになり、これが事件の鍵になってきます。ニックは、複数の出会い系サイトを使って、妻以外に多くの女性と交際していた……と思われていました。結論を言うと、それは全てなりすましによるものでした。

 

 出会い系サイト上で交際をしていたエマは、本当にニックと愛し合っていると錯覚するほどでした。4話にエマとニックの情事のシーンが何度かあるので騙されてしまうのですが、それらは全て妄想だったということです。4話中盤では、ホテルの部屋に戻ったエマが事件後であるにも関わらずニックの姿を見てしまうシーンがありましたが、これが伏線になっていました。

 

 なりすましニックに騙されていた女性は、他にも何人かいました。その中の一人のサラは、その後に自殺をしてしまいます。チャットと通話だけで、そこまで深い関係を築くことが出来るのか、自分にはあまりピンとこなかったのですが、そういうこともあるのでしょうか??

 

③ネット批判だけではない

 一方で、このドラマはネットの危険性だけを語っているわけではありません。高校生の長男イーサンは、最初からスマホで何者かとチャットで会話をしていました。これが怪しさ満点なんですよね。チャットの相手が事件の犯人なのではないかと思ってしまいます。

 

 でも、その心配は杞憂に終わります。チャットの相手は実際に同年代の女性であり、社会不安障害を抱えていました。

 

 これは、ネットのメリットの一つではあります。外に出ることが出来ず、他人と交流することが出来なかった人でも、現代では容易に人々との接点を持つことが出来ます。そうでなくとも、コロナ禍によって外出が自粛される現在、Zoomなどのオンライン交流ツールは欠かせないものになっています。

 

 とは言え、ネット上で知り合った人に、安易に情報を渡すのは危険です。今回のイーサンは無事だったとは言え、その行動が安直だったのは間違いありません。

 

④真犯人は誰?

 事件捜査の話に戻ると、果たしてなりすましをしていたのは誰なのか?というのが問題になってきます。妹のピアが調査をしたときは、ニックの同僚のマットのPCから証拠が見つかります。しかし、真犯人は別の人物でした。ドーンという事務員だったのです。

 

 この二転三転する展開は面白かったですね。最初に犯人だと思われたのが、自殺したサラの兄でした。彼がニックを誘拐して動画を上げたのは、確かにそうなのですが、殺してはいません。ニックが実はなりすましの被害者であることに気付いて、サラの兄はニックを解放します。

 

 解放されたニックが、なりすましの件について尋ねるためにドーンの自宅を訪れ、そこで殺されてしまったのです。あ、そうか。殺したのはドーンの夫だから、真犯人はドーンの夫か。

 

⑤MeToo運動は扱わないが……

 物足りなさがあるとすれば、MeToo運動というテーマを扱っていなかったことでしょうか。動画の中で「私は女性を虐待しました」と言っており、これに対する反応はまさにMeToo運動でよく見られるもののようでした。

 

 後には、ニックの同僚が女生徒と交際していて、破局後にリベンジポルノをしていたことが明らかになっています。このことに関しては、最後に彼が告発されたという事実が伝えられるのみで、詳しくは描かれません。近年は、性加害者の男性が復讐を受けるという内容の作品が作られていますが、そういった類のドラマではなかったということです。

 

 でも、それはMeTooがこのドラマのテーマではなかったということであり、それだけの話です。そもそも、メインテーマと思しきネット問題に関しても、イーサンのチャットの件がなんだかんだOKとなっているので、あまり問題提起になっていません。

 

 確かに、このドラマは社会問題テーマを十分には扱えていません。それでも、ドラマはドラマです。あくまでもエンターテインメントです。社会問題テーマを扱うならば、それはそれで素晴らしいのですが、扱っていなくてもそれは構わないでしょう。

 

 

まとめ

 ドラマ『クリックベイト』は、現代のミステリードラマとしてよく出来ています。インターネットを用いたトリックは今の時代に相応しく、それでいて天才ハッカーによる知能犯罪ではないので、もしかしたら現実にあるかも⁉という恐怖もあります。

 

 なりすましやエマの幻想などは、推理小説ならば一種の叙述トリックと呼ばれそうな類のもので、日本の新本格ミステリーの主流だったりもします。『クリックベイト』は、釣りっぽい(それこそクリックベイト的な煽りっぽい)予告編とは裏腹に、中身は端正な本格派ミステリーだったので、自分はとても楽しめました。

 

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