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Netflixドラマ『チェスナットマン』感想:秋の夜長に北欧ミステリーを

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 10月の日本は意外と暑かったりするのですが、10月のデンマークはだいぶ寒そうです。2021年9月29日からNetflixで配信が始まったデンマークのドラマ『チェスナットマン』は、秋の夜長にぴったりの上質な北欧ミステリーになっています。

 

 

 

 

Netflixドラマ『チェスナットマン』基本データ

・原題:The Chestnut Man

・製作:Netflix

・公開日:2021年9月29日

・話数:8

・原作:セーアン・スヴァイストロプ『チェスナットマン』

・主演:ダニカ・クリチッチ(映画『特捜部Q キジ殺し』,ドラマ『ザ・ミスト』)

・あらすじ:

 手首が切断された女性の遺体が見つかり、現場には失踪した少女の指紋が付いた栗人形“チェスナットマン”が置かれていた。

・予告編:

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ネタバレなし短評

 北欧ミステリーと言えば、映画『特捜部Q』『ドラゴンタトゥーの女』シリーズや、ドラマ『THE KILLING/キリング』『THE BRIDGE/ブリッジ』などがありますが、Netflixの『チェスナットマン』もまさにこの系譜に連なる一作です。

 

 そもそも原作者のセーアン・スヴァイストロプが『THE KILLING』のクリエイターなので、これらの作品と『チェスナットマン』の雰囲気は共通するところがあります。原作は英国推理作家協会(CWA)新人賞にもノミネートされるなど、高い評価を受けています。ミステリーとしての面白さはお墨付き。

 

 ドラマ序盤はややスローな展開にも感じますが、話が進むにつれて北欧ミステリーらしいジメっとした深い闇が現れてきます。ミステリーファンには、ぜひともおすすめしたいドラマです。

 

 ちなみに、主演のダニカ・クリチッチは『特捜部Q キジ殺し』でキミーという人物を演じていました。相棒の刑事を演じるミケル・ボー・フォルスゴーも『特捜部Q 檻の中の女』に出演しています。

 

登場人物

クリスティン・ハルトゥンク:誘拐された少女

ローザ・ハルトゥンク:社会大臣

スティン・ハルトゥンク:ローザの夫

フレデリック・フォーゲル:ローザの部下

リヌス・ベッカー:誘拐事件を自白した犯人

ラウラ・ケア:第一の被害者

ハンス・ヘンリック・ハウゲ:ラウラの恋人

アンナ・サーエ=ラッセン:第二の被害者

ジェシー・クヴィウム:第三の被害者

ベネディクテ・スカンス:看護師

ナイア・トゥーリン:担当刑事

リー・トゥーリン:ナイアの娘

アクセル:ナイアの義父

マーク・ヘス:担当刑事

シモン・ゲンツ:鑑識官

ティム・ヤンセン:誘拐事件を担当した刑事

 

 

 

ネタバレあらすじ

 デンマーク・フースムで、左手首が切断された女性の遺体が見つかった。現場の付近には、栗で作られた人形“チェスナットマン”が置かれていた。そこに残されていた指紋は、かつて誘拐され殺害されたと思われていた社会大臣の娘のものだと判明する。

 

 第二の被害者は、両手が切り取られていた。現場には、またしてもクリスティンの指紋が付いたチェスナットマンが置かれていた。2人の被害者はともに、匿名の人物によって児童虐待疑惑で福祉施設に通報されていた。

 

 ヘスがラウラの子供の部屋を捜索した際に、ラウラの彼氏のハウゲによって襲われ、彼が児童ポルノの撮影を行っていたことが明らかになる。アンナの夫も、浮気をしており子供を虐待していた。

 

 トゥーリンとヘスは、福祉施設への通報を調べることで、第三の標的がジェシーであることを突き止める。犯人逮捕の作戦もむなしく、別荘に隠れていたジェシーは殺害されてしまう。

 

 社会大臣のローザは、過去に自分の政策によって恨みを買った人物を調べ、看護師のベネディクテ・スカンスを特定する。スカンスの彼氏は、ローザの運転手を務めており、ローザの息子は誘拐されてしまう。その夜のうちに逃走した車が発見されたが、そこにはスカンスと彼氏の死体が残されていた。

 

ここから本当にネタバレします!

 

 スカンスがチェスナット事件の犯人ということで、警察は事件を終わらせようとしていた。だが、トゥーリンは、チェスナットマンの栗がクリスティンが使っていたものと現場に残されていたものとでは異なることを発見する。

 

 一方のヘスは、誘拐事件を自白して逮捕されていたリヌスが、警察のネットワークに侵入して閲覧していた事件の写真を見て、あることに気付く。1985年に夫婦とその実子たちが惨殺された事件(第1話冒頭の映像)でも、現場にチェスナットマンが残されていたのだ。この事件では、虐待されていた双子の養子だけが生き残っていた。

 

 ローザは、子供時代にチェスナットマンを作っていたことを思い出す。養子として引き取られたローザの家庭には、2ヶ月ほど双子の養子がいた。ローザは、里親に嘘を吐いて双子を家から追い出していた。

 

 犯人は、この双子のトーケだった。もう一人のアストリッドは、クリスティンの世話をしていた。シモン・ゲンツと名前を変えた彼は、ローザへの復讐、また子供たちを守るために犯行を実行した。

 

感想

 北欧ミステリーと言えば、闇の深さです。凄惨な殺人事件それ自体も人間の闇が表出したものですが、刑事たちが捜査を通して明らかにする真相はさらに闇が深いのです。

 

 『チェスナットマン』の遺体も手首が切断され、無残な恰好で置かれた凄惨なものです。現場に置かれていたのが、栗の人形のチェスナットマン。さらに、失踪した少女の指紋付き。これらのアイテムは、ミステリーファンの心を猛烈にくすぐってきます。

 

 殺人は、さらに2件起こります。3人目のときは、事前に犯人の標的が分かっていたにも関わらず、殺されてしまいます。もうちょっと警察も頑張ってほしいなとは思います。

 

 そもそも主人公刑事のトゥーリンとヘスは、全然強くありません。第2話のラストで、ヘスは地下室に閉じこめられ、銃を持っていたトゥーリンも倒されていました。最終話でも、トゥーリンは真犯人に眠らされ、助けに来たヘスは殴られ、一度脱出したトゥーリンはまたしても殴られます。

 

 刑事ならば、銃の使い方を多少は練習しておいてほしいものです。それでも、今度からトゥーリンはIT課勤務になるので、そういった機会もなくなりそうですが。

 

 話を第4話のところに戻しましょう。ここで、最重要容疑者として看護師のスカンスの名前が挙がります。その彼氏が、ローザの運転手だったのですが、彼には最初から若干怪しいところはありました。第1話で、わざわざ運転手をローザに紹介するシーンがあったので。結局、彼は真犯人ではなかったということは、わざと怪しいシーンを入れていたということなのかな?

 

 第5,6話で真相が明らかになるのですが、これがなんともツラい。里子として引き取られた双子は、里親から虐待を受けていました。このときに、地下室でたくさん作っていたのがチェスナットマンです。

 

 1985年の惨殺事件は、双子のトーケが起こしたものだったのですが、同情したくなってしまうところはあるんですよね。家庭内での子供への虐待は、なかなか外からはわからないものです。だから、その状況から子供たちが抜け出すためには、自分たちで里親を殺害するしかなかったののです。

 

 どんな理由があっても殺人はアウトという前提はあるにしても、心の一部ではトーケの事件はやむなしと思ってしまうところがあります。

 

 児童福祉施設がきちんと機能できれば良いのですが、通報があったとしても虐待が見逃されてしまうことは、現実でもあります。子供が死亡した後に虐待が明らかになるケースは、日本でもしばしば報道されている通りです。

 

 トーケが、子供たちを守るためという理由で有害な親たちを殺害していたのも、そう考えると分からなくはありません。さすがに、このときのトーケは大人なので他の手段もありそうですが、そこは殺人犯の心理ですから。ローザへの復讐という意味合いもありますし。

 

 殺すなら父親じゃないの?とも思ったのですが、それも殺人犯の心理ということでブラックボックスにしておきます。車中でのトゥーリンとの会話を聞くに、母親こそが育児において重要であるという考えの持ち主のようなので、そのことが関係しているのかもしれません。

 

 事件を解決した後に人間・社会の闇が明らかにされ、苦い気持ちにさせられる北欧ミステリー特有の味を『チェスナットマン』は存分に見せてくれます。良作。もし『チェスナットマン』を気に入って、まだ『特捜部Q』シリーズを観たことがなかったら、こちらもぜひ。

 

↓『チェスナットマン』の原作はこちら

 

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