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英国ドラマ『ブロードチャーチ 殺意の町』シーズン2感想:悪夢は終わらない

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 イギリスの田舎町ブロードチャーチを舞台に起こった少年殺害事件。シーズン1で終わったと思われた悪夢は、再び刑事と町人たちを襲います。

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英国ドラマ『ブロードチャーチ 殺意の町』シーズン2基本データ

・原題:Broadchurch

・放送局:ITV

・放送期間:2015年

・話数:8

・脚本:クリス・チブナル

・キャスト:デヴィッド・テナント、オリヴィア・コールマン、ジョディ・ウィテカー、アンドリュー・バカン、イヴ・マイルズ

・あらすじ:

 ブロードチャーチで起こった少年殺害事件の裁判が始まる。自供までしていた被告人だが、直前に無罪を主張し始める。一方、アレック・ハーディーとエリー・ミラーの2人の刑事は、アレックが過去に解決できなかった少女殺害事件に挑む。

・予告編:

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以下、ネタバレを含みます。

 

裁判

 『ブロードチャーチ』シーズン2では、シーズン1で解決した事件の裁判が描かれます。シーズン1の最後で犯人が捕まり、自供もしているので、すぐに決着が出るだろうと思ってしまうのですが……。被告人は無罪を主張します。

 

 も~~~ねぇ、遺族の表情を見てると、ツラくていたたまれない。やっと気持ちの整理がつくかと思ったら、事件が掘り返されてしまいます。そうすると、弁護側が色々なことを突っ込んでくるので、事件の真相はまたしても闇の中になってしまいます。シーズン1では何とも思われたことでさえ、突かれるのです。

 

 例えば、アレックとエリーが最後にホテルの部屋で話していたのが、弁護側から浮気だったのではないかと指摘されます。シーズン1を観ているときには、全くそんなことは思わなかったのですが、確かに傍から見ればその解釈があり得てしまうのです。

 

 あるいは、エリーが取調室でジョーを殴ったことも非難されます。シーズン1ではドラマ的な演出として、まぁ良いかなと思ってしまうのですが、実際にはそんなことをしたら起訴できなくなってしまうかもしれません。

 

 シーズン2では、このようにシーズン1で描かれた出来事を改めて検証していきます。メタ的に言えば、ストーリーの見直し作業です。ドラマチックな展開も含めて裁判の俎上に載せ、検討していくのです。そうすると、シーズン1を観ているときには絶対に犯人だと思っていた被告人のジョーについても、本当にそうなのか?という疑問が湧いてきます。

 

 こういうタイプの刑事ドラマのシーズン2の作り方は面白いですよね。おそらく、脚本のクリス・チブナルがシーズン1を書いているときには、シーズン2のことはほとんど考えていなかったでしょう。そこで、自分が作ったシーズン1の事件をもう一度検討することになり、そのプロセスをそのままシーズン2のストーリーに組み込んだのです。最初から裁判のことを考えた脚本ではなかったので、実際に弁護士になった気分でストーリーが組み立てられています。

 

 その結果として出た判決は、非常に残酷なものでした。ここまで救われない判決が出るドラマも珍しいです。有罪になればハッピーエンドだし、審理無効にすればうやむやのまま終わらせられます。しかし、今回は完全なる無罪です。ジョーが、何の罪にも問われずに社会に出ていきます。

 

 これでは遺族が全く報われません。牧師を含め、みんなの総意でブロードチャーチの町からジョーを追放することにします。ダニーの母親などは、ジョーを殺したいほどの気持ちがあるでしょうが、そこはグッとこらえていきます。

 

 ただし、この場面を逆の視点から見ることも出来ます。このドラマは刑事や遺族の視点に立っていますが、弁護士視点のドラマも世の中には多くあります。その視点からすると、ジョーが無罪になったのは弁護側の大勝利であり、ハッピーエンドなのです。

 

 ジョーは裁判で無罪と認められたのにも関わらず、町の人々や家族は受け入れてくれません。理不尽ですよね。おまけに、町から追放されてしまうので、とんでもない話です。私刑の恐ろしさとも言えますね。

 

 遺族の側からすれば、町から追放しただけで満足しているわけはありません。一方の被告人からすれば、無罪を勝ち取っても人々は全く信用してくれません。実際にはジョーが犯人なのでしょうが、裁判で無罪となったら、社会的には無罪です。それでも、誰一人として幸せにはなれませんでした。

 

 結局は、これが裁判の限界なのだと思います。被告人は疑わしきは罰せずなので、少しでも無罪の可能性があれば無罪です。一方で、他に真犯人が見つからないと、誰も罰せられずに事件は終わってしまいます。悔しいところですが、公正な裁判のためには、これ以上どうしようもないのでしょう。

 

 

 

少女殺人事件

ペッパ・ギレスピー:当時12歳だった被害者

リサ・ニューベリー:ペッパの従姉であり、当時17歳だった被害者

ケイト・ギレスピー:ペッパの母

リッキー・ギレスピー:ペッパの父

リー・アシュワース:隣人、最重要容疑者

クレア・リプリー:リーの妻

 

 ダニー少年殺人事件の裁判と並行して、アレックとエリーは、過去の少女殺人事件を追います。

 

 事件の概要はシンプル。ケイトとリッキー夫妻が知人の結婚式に行っている間に、娘のペッパと従姉のリサが失踪。ペッパは3日後に川で遺体が見つかり、リサはまだ見つかっていません。事件の最重要容疑者が隣人のリーでしたが、その妻のクレアの証言により無罪放免になっています。

 

 事件の関係者は4人だけなのですが、それぞれの証言がころころ変わるので、真相が全く見えてきません。物的証拠はペンダントのみで、これも最初はペッパのものだと思われていましたが、後にクレアのものだったことが明らかになります。

 

 まさに、事件は藪の中です。黒澤明の『羅生門』を観たことがあれば、事件はまさにそのような様相を呈しています。全員が何かを隠している中で、誰の証言を信じれば良いのか。最後に明かされる真相は、想像とは全く異なるもので驚かされます。

 

まとめ

  シーズン1に引き続き、キャストも素晴らしいですね。デヴィッド・テナント、オリヴィア・コールマン、ジョディ・ウィテカーらの演技は、今回もとても見応えのあるものでした。

 

 シーズン2から新しく加わったイヴ・マイルズ、シャーロット・ランプリング、マリアンヌ・ジャン=バプティスト、ジェームズ・ダーシーも良かったです。

 

 イヴ・マイルズと言えば『ドクター・フー』のスピンオフドラマ『秘密情報部トーチウッド』の主演なので、またしてもDWキャストが参戦したということですね。あとは、近年話題のフィービー・ウォーラー=ブリッジが出てきたのは驚きでした。

 

 全体的にも、刑事ドラマのシーズン2の作り方として興味深く面白かったです。シーズン1で完結した事件を再び扱って、これほど面白く見せられるのは、非常に巧みだなと思います。

 

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