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ドラマ『プロット・アゲンスト・アメリカ』はアメリカ民主主義の危うさを描く恐怖の物語

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 大統領選も控える今年、HBOで放送されたドラマ『プロット・アゲンスト・アメリカ』が伝えたかったことは何なのか?

 

↓ネタバレなしの紹介はこちら。リンドバーグは本当に大統領になっていたかもしれない話など。

HBOの歴史改変ドラマ『The Plot Against America/プロット・アゲンスト・アメリカ』の評判は?日本で観る方法は? - 海外ドラマパンチ

 

 

『プロット・アゲンスト・アメリカ』基本データ

・原題:The Plot Agaist America

・放送局:HBO

・放送日:2020年3月16日~4月20日

・原作:フィリップ・ロス著『プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが…』

・クリエイター:デヴィッド・サイモン&エド・バーンズ

・あらすじ:

 アメリカの英雄として有名な一方、反ユダヤ思想を持つチャールズ・リンドバーグが、もしもアメリカ大統領になっていたら……という世界。中流家庭のユダヤ人一家に焦点を当て、彼らの生活を描く。

・予告編:

www.youtube.com

※ドラマ『プロット・アゲンスト・アメリカ』は、2020年10月2日までAmazonプライムビデオチャンネルの「スターチャンネルEX」で配信中。 

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『プロット・アゲンスト・アメリカ』登場人物&キャスト

ハーマン・レヴィン/モーガン・スペクター

 ニュージャージー州ニューアークに住む保険会社の社員。仕事は順調。政治に熱心で、毎晩ラジオでニュースを聞くのが日課になっている。

 

エリザベス・”ベス”・レヴィン/ゾーイ・カザン

 ハーマンの妻。子供たち思いの母親。政治にそこまで口出しをするタイプではない。

 

サンディ・レヴィン/ケイレブ・マリス

 レヴィン家の長男。絵を描くのが得意。リンドバーグを英雄視している。

 

フィリップ・レヴィン/アジー・ロバートソン

 レヴィン家の次男。切手収集が趣味。ませた少年のアールや、近所に住むチェス好きのセルドンが友達。

 

アルヴィン・レヴィン/アンソニー・ボイル

 ハーマンの甥。政治に関心が強い。

 

エヴリン・フィンケル/ウィノナ・ライダー

 ベスの姉。独身で、そろそろ結婚したいと思っている。

 

ライオネル・ベンゲルドーフ/ジョン・タトゥーロ

 ユダヤ教の聖職者であるラビ。

 

チャールズ・リンドバーグ

 人類初の大西洋単独無着陸飛行を成し遂げたアメリカの英雄。第33代アメリカ大統領。

 

 

 

『プロット・アゲンスト・アメリカ』考察

 怖い。『プロット・アゲンスト・アメリカ』は観て感じたのは、他ならぬこの感情でした。これは、とてつもなく恐ろしい物語です。

 

 このドラマでは、民主主義に上に成り立つアメリカという国が、ナチス・ドイツに変貌していく過程が克明に描かれます。ルーズベルトが大統領である第1話の時点では、反ユダヤ主義者もいるものの、ユダヤ人の一家は普通の生活を送れています。しかし、リンドバーグが大統領になったことにより、徐々に彼らの生活は脅かされていきます。

 

 歴史改変を扱っている作品は、必ず何か現代に対する警鐘が込められています。『プロット・アゲンスト・アメリカ』の場合は、アメリカの民主主義の危うさを指摘しています。アメリカといえば、「自由」と「民主主義」を何よりも重んじる国です。民主主義というのは、一見すると民意を反映した完璧な政治方式に思われるのですが、そうとは限りません。

 

 民主主義を担う人たちが良識を持って判断すればその通りですが、実際にはそうではありません。ドラマの中では、リンドバーグは完全に民主的な方法で選出され、その政策も多くの支持を得て行っています。しかし、それらは明らかにユダヤ人の自由を損なうものでした。始めはユダヤ人の少年に田舎の生活を体験させるだけのプログラムでしたが、次にユダヤ人の家族を半ば強制的に移住させる政策になります。民衆の行動も徐々にエスカレートしていき、最終的にはユダヤ人を殺していくほどになります。

 

 これらは、すべてリンドバーグが大統領になったことに端を発しています。なにしろ、もしルーズベルトが大統領を続けていれば、現実に起こった通りアメリカがナチス化することはないからです。このリンドバーグ大統領のしていることは、現アメリカ大統領も想起させます。

 

 ドナルド・トランプもリンドバーグも、過去には人種差別的な発言をしていましたが、さすがに大統領に就任してからはそのような発言はしていません。リンドバーグ自身は直接言っていたわけではありませんが、彼の政策は「アメリカ・ファースト」だと言われていました。そしてもちろん、2人ともアメリカ国民により民主的に選ばれています。

 

 何も、トランプとリンドバーグに共通点があるからと言って、今のアメリカがドラマのようにナチス化するとは思いません。でも、アメリカの民主主義がそのような危険性を孕んでいるということは考えなければいけないでしょう。『プロット・アゲンスト・アメリカ』は、現状の民主主義国家アメリカが、ナチス・ドイツのように成り得るということを証明してみせているのです。

 

『プロット・アゲンスト・アメリカ』感想

 自分の中で『プロット・アゲンスト・アメリカ』の一番の注目ポイントは、名作『THE WIRE/ザ・ワイヤー』を手掛けたデヴィッド・サイモン&エド・バーンズがクリエイターを務めているという点でした。

 

 元新聞記者のデヴィッド・サイモンと元刑事のエド・バーンズによる『THE WIRE/ザ・ワイヤー』は、その圧倒的なリアリティが高く評価されている作品でもあります。そんな彼らが今度の題材に選んだのは。歴史改変ものでした。2人は、「もしも大統領がルーズベルトではなくリンドバーグだったら……」という一点のみを実際の歴史から変更し、あとは起こり得ることを現実の出来事のように綴っていきます。

 

 もう一つ注目したいのが、このドラマは政治を描いているにも関わらず、物語のメインとなるのは一般的なユダヤ人家庭であるという点です。この悲劇の元凶であるリンドバーグ自身は、ドラマの中にはほとんど登場しません。それは、このドラマが政治が我々の生活にどのように影響を与えるかを描いた物語であるためです。政治に無関心な人が増えつつある現代に対する警鐘とも言えるでしょう。

 

 おそらく原作もそのような視点で書かれていたと思いますが、それをドラマ化するに当たりデヴィッド・サイモンとエド・バーンズを起用したのは大当たりだったと言えるでしょう。彼らの『THE WIRE/ザ・ワイヤー』は、まさに行政が街にどのように影響を与えるかを、市民の視点(ディケンズ的視点)から描いたドラマだったのですから。

 

 役者陣については、フィリップ役の子のくりくりした目が可愛かった。自分はゾーイ・カザンのファンなので、もちろんゾーイ・カザンも良かったです。ゾーイ・カザンが母親役なんだなぁということに、妙な感心もしていました。

 

 ハーマンを演じたモーガン・スペクターとラビのベンゲルドーフを演じたジョン・タトゥーロが演技面では特に良かったです。2人が対面する場面は緊張感がありました。

 

総括

 現代アメリカの危うさを指摘する作品として、『プロット・アゲンスト・アメリカ』はその役割をしっかりとまっとうしています。このドラマを観た人ならば、政治に無関心であることはあまりにも恐ろしく、良識を持って投票をしたいと思うようになるに違いありません。

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