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2021年に読んだ本【海外ドラマと科学とミステリーと】

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 2021年も、まとめの時期になってきました。海外ドラマブログらしい2021年まとめ記事は追って書きますが、まずは今年の自分の読書記録です。新作などは全く読んでいないのですが、2021年に読んで印象的だった本を11冊さくっと紹介します。

 

 

 

 

海外ドラマクリエイターの著作

 「海外ドラマクリエイター」という言葉は、あまり馴染みがないかもしれませんが、これは海外ドラマを制作する際に全体の指揮を執っている脚本家のことです。今年は、名作海外ドラマを作った3人の脚本家の作品を読んだので、その短評を記しておきます。

 

『逃亡のガルヴェストン』ニック・ピゾラット

 HBOの刑事ドラマ『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』の脚本家として知られる著者が2010年に刊行した長編小説。2018年には映画『ガルヴェストン』として映画化もされている。

 

 映画を先に観ていたので内容は知っていたが、原作の方がよりユニークな構成になっている。粗筋だけ抜き出すと、アウトローの男が娼婦の女を救出して逃避行に出るという話なので、特に目新しくはない。が、2つの時間軸で物語が同時進行し、最終的に繋がってエモーショナルなフィナーレを迎える構成は面白い。後にピゾラットが手掛ける『TRUE DETECTIVE』のプロットにも近いものがある。

 

『晩夏の墜落』ノア・ホーリー

 こちらは、ドラマ『FARGO/ファーゴ』の脚本家による長編小説。大西洋に墜落した飛行機から生還した男と少年のその後を描く。2017年のエドガー賞を受賞。

 

 エドガー賞受賞作なので、ミステリーだと思って読み始めたが、そうではなかった。主人公たちに襲い掛かる過熱報道が、一応のメインストーリー。とはいえ、あまりにも期待していたものと違っていたため、面白くはなかった。登場人物たちのエピソードが語られていくだけであり、意外な真相やクライマックスも一つとしてない。

 

『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』アンドリュー・ロス・ソーキン

 ドラマ『ビリオンズ』のクリエイターであり、ニューヨーク・タイムズの現役記者である著者による金融ノンフィクション。世界金融危機が起こった2008年に、ウォール街のトップたちが何を考え、何をしたのかが克明に描かれていく。

 

 今年読んだ本の中では、これがダントツで面白かった。ウォール街への信頼が急速に失墜していく中、金融市場の崩壊を防ぐために奔走する人々の姿にハラハラ。明日にもアメリカ有数の会社が潰れようとしているところ、とてつもないスピードで進められる合併協議や政策立案の過程はスリリング。

 

 なぜ、リーマン・ブラザーズは破綻したのか?言い換えるなら、なぜ、リーマンだけは破綻したのか?(メリルリンチ、AIG、モルガン・スタンレーなど、倒産間近だったが最悪の事態を避けられた会社も多い)という疑問にも迫る。極限の状況に置かれた金融エリートたちの人間模様は、金融知識関係なく面白い!

 

科学とSF

『2001年宇宙の旅』アーサー・C・クラーク

 キューブリック監督による有名な映画版と同時進行的に書かれたSF小説。映画とは、微妙に内容が違う。映画もそうだったが、こちらも科学描写は非常に正確。後半のブラックホールの近くを航行している場面は、キューブリックの映像も絶妙に脳内でミックスされ、凄く美しく感じた。映画以上に圧倒された。

 

『三体』劉慈欣

 日本でもヒットている中国のSF小説の第一巻。序盤の天安門事件から、後半の壮大なSFストーリーへ進んでいく展開は豪快。個人的にはハードSFの方が好きなので、この奇想天外SFにはそこまでハマらなかったが、ビジュアルはめちゃくちゃ面白い。Netflixでドラマ化される予定なので、そのときは絶対に観たい。

 

『困ります、ファインマンさん』リチャード・P・ファインマン

 物理学者ファインマンによる自伝的エッセイ第二弾。前半はファインマンさんの愉快なエピソードの数々が紹介され、後半ではスペースシャトル・チャレンジャー号の事故調査委員会での経験が綴られる。特に、後半は科学を志す者ならば必読。

 

 『ご冗談でしょう、ファインマンさん』及び本著の前半を読めばわかるように、ファインマンは純粋に科学を追究し、誠実に向き合ってきた人だった。そんな彼が、政府の事故調査委員会で直面したのが、官僚的で非効率な調査方法。面倒なプロセスや報道に何度も困らされるファインマン。それでも、事故調査は誰よりも丹念に行い、一般人にもわかりやすく説明責任を果たしていく。科学者のお手本にしたい。

 

ミステリー

『悲しみのイレーヌ』ピエール・ルメートル

 フランスの推理作家ルメートルの処女作。部屋いっぱいに死体がバラバラに散らばって血まみれになっている描写は、文章で読んでいてもグロかった。決して後味が良くはない、むしろ読み終わった後に本を投げ飛ばしたくなる秀作ミステリー。

 

『暗闇坂の人喰いの木』島田荘司

 こっちも、なかなかグロい。巨大な楠が人々を食べてしまったかのような奇妙な事件に、お馴染みの名探偵・御手洗潔が挑む。『占星術殺人事件』『斜め屋敷の犯罪』と同じように、謎はとても奇妙で、どう見たって解けそうではない。しかし、そこを解いてしまうのが御手洗潔。そんな謎を考えてしまうのが島田荘司。驚愕の真相に衝撃を受けずにはいられない。でも、改めて思い描いてみると、とんでもない豪快トリックにちょっと笑えてくる一種のバカミス。好き。

 

アメコミ

『Skyward』Joe Henderson

 もしも、地球の重力が突然なくなってしまったら……?という設定のグラフィックノベル。ストーリー展開はありきたりだったが、設定とその世界観が面白い。例えば、無重力の地球では、空に雲は出来なくて、巨大な水の塊が宙に浮かんだ状態になるとか。画もカラフルなので、見ていて楽しい。

 

『Y: ザ・ラスト・マン』はこちらの記事で詳しく

psbr.hatenablog.com

 

『Hawkeye: My Life as a Weapon』はこちらの記事で詳しく

psbr.hatenablog.com

 

その他

『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ

 日本でもベストセラーとなった本書。やっと読みました。人類史を、3つの転換期から捉えるのは、シンプルで分かりやすかった。気に入っているのは、人間が小麦を栽培して広めたのではなく、小麦が人間の進化に乗っかって広まった説。まさに逆転の発想。この説が真実なのかは知らないが、話としては興味深い。

 

『春にして君を離れ』アガサ・クリスティー

 ミステリーの女王として知られるクリスティー。でも、ミステリーではない。話の内容を要約してしまえば、子育てを終えた既婚女性が、旅先の宿に一人で何日間も足止めを食らってしまうだけ。特別なことは何も起こらない。

 

 しかし、読み進めていくにつれて、ちょっと怖くなってくる。読み終えた頃には、何も信じられなくなってきてしまう。人間不信になる。主人公の設定と近い状況の人だったら、もっととてつもない衝撃を受けるのではないだろうか。アガサ・クリスティーが、ミステリーの領域に留まらない超一流のストーリーテラーであることを示す隠れた名作。

 

まとめ

 自分は、最近はそれほど本を読む人間ではないのかもしれませんが、読書自体は好きです。今年11月頃には急に読書欲が出てきたので、勢いで15冊ぐらい買ってしまいました。既に6冊は読んでいるので、この調子で読んでいけば、積読状態にはならなくてすみそうです。

 

 そういえば、今年もアンソニー・ホロヴィッツが海外ミステリーランキングを独占しています。現時点で「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」の海外編で『ヨルガオ殺人事件』が1位を獲得しています。どちらも4年連続でホロヴィッツの作品が獲得しています。まだ『その裁きは死』も読めてないのですが、必読ですね。

 

 ホロヴィッツといえば、イギリスのドラマ『刑事フォイル』の脚本を書いていたので、海外ドラマファンにも馴染みがあるかもしれません。現在、彼が書いた小説『カササギ殺人事件』は、ドラマ版が制作されています。イギリスでは、2022年中にお目見えとなる予定。これも楽しみ!

 

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