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海外ドラマ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』シーズン3感想~警察は街のために何が出来るのか?~

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Conscience do cost.

- The Wire season 3

 

 『THE WIRE/ザ・ワイヤー』が、なぜ史上最高のテレビドラマと言われるのか。それは、『THE WIRE/ザ・ワイヤー』シーズン3を観ればわかるでしょう。そんなシーズン3のテーマを挙げるとするなら「警察」。これまでも、もちろん警察のことは扱われてきたのですが、シーズン3ではさらに本質的な問いを投げかけてきます。

 

これまでの感想

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『THE WIRE/ザ・ワイヤー』シーズン3基本データ

・原題:The Wire

・放送局:HBO

・放送日:2004年9月19日~12月19日

・話数:12

・一話あたりの長さ:58分

・あらすじ:

 市長の要請により、ボルティモア市警では犯罪発生率を下げる取り組みが行われていた。そんな中、退職間近のコルヴィン警視はある前代未聞の策を思いつく。一方で、ストリンガーはボルティモアの売人たちをまとめあげたが、タワーの取り壊しや新参者の参入により、”ゲーム”は新たな展開を迎える。

・オープニング(シーズン3):

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あらすじ(ネタバレあり)

 翌年に選挙を控えたボルティモア市長のクラレンスは、市警に検挙率を上げて犯罪を減らすよう要請する。そこで、ロールズらは各部署に犯罪発生率を下げるよう厳しく指示を出す。しかし、そう簡単に犯罪を減らすことも出来ず、多くの部署では統計を誤魔化していた。

 

 半年後に退職するコルヴィン警視は、自分が警官になったときからボルティモアの街が何も変わっていないことを感じ、ある大きな計画を立てる。それは、ストリートの売人たちを決められたいくつかの地区(ハムステルダム)に集め、そこでの売買ならば警察は何も関知しないというものだった。いわば、地域限定で麻薬を合法化するのだ。

 

 コルヴィン警視は上層部には無断で、この前代未聞の計画を実行に移す。結果、いくつかの困難はあったものの、コルヴィン警視の思惑通りに街から売人は一掃され、犯罪発生率は急激に減少する。

 

 やがて、警察長や市長もこの計画を知ることになる。いくら犯罪が減っているとはいえ、麻薬を合法化するなど許せないとし、彼らはハムステルダムの売人を一斉に捕らえ、街は元に戻る。

 

 一方で、ボルティモアを舞台にした”ゲーム”も大きな変化を見せる。ストリンガーは、ボルティモアの麻薬売人たちをまとめあげ、組織間の抗争をなくすことに成功した。同時に、ストリンガーは不動産業にも力を入れ始める。

 

 ストリートでは、マルロという若い売人がエイヴォンのシマで商売を始めていた。なんとか話し合いで決着を着けようとするストリンガーだったが、出所したばかりのエイヴォンは戦争を始めてマルロを倒すことを頑なに主張する。

 

 エイヴォンは、ディアンジェロの死の真相やブラザー・ムゾーンが追い返された経緯を知り、さらにストリンガーへの不信感を強める。一方、ストリンガーもエイヴォンへの不信感も持ち、エイヴォンの住処の情報を警察に渡す。2人がボルティモアの街を眺めて語り合った翌日、ストリンガーはブラザー・ムゾーンとオマールにより殺される。そして、エイヴォンらはストリンガーの情報により、逮捕された。

 

 市長選挙が控える中、公安小委員会のトミー・カルケティが動き出す。カルケティは白人であるが、次の市長選挙への出馬を画策していた(ボルティモアは白人より黒人の方が多いため、選挙で白人は不利)。最終的に、カルケティはハムステルダムの件を利用して、有利に事を進め始める。 

 

 まだまだストーリーはあるけど、あらすじなのでこれくらいで。

 

感想(ネタバレあり)

 『THE WIRE/ザ・ワイヤー』シーズン3は、とてつもなく素晴らしかったです。自分はあまり「傑作」という言葉を安易に使いたくないため、このブログでは『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』シーズン1にしかこの言葉を使っていなかったのですが、ついに2つ目を見つけました。『THE WIRE/ザ・ワイヤー』シーズン3は、傑作です。シーズン1,2ももちろん素晴らしいのですが、シーズン3は格別です。

 

①ストリンガーVSエイヴォン

 シーズン2から、自分は完全にストリンガー推しでしたね。ストリンガーは、見た感じめっちゃ腕っぷしが強そうですし、たぶん実際にそうなんでしょう。でも、彼は常に腕ではなく頭で行動します。慎重に行動してきたことで、これまで警察に捕まることはなく、麻薬売買の方でも着実に利益を上げていました。

 

 それも、ただ自分の直感だけに従っているわけではなく、ちゃんと大学に通って改めてビジネスの勉強をしているんですよね。そして、それを素直に麻薬売買の方に応用しています。この謙虚な姿勢というのは、なかなか持っているものではないですし、ストリート出身ならばなおさらだと思います。この点では、自分はストリンガーを尊敬すらしています。

 

 とは言っても、ストリンガーにも慣れないことがあり、失敗することも少なくありません。不動産開発の件では、議員に一杯食わされてしまいました。また、「兄弟」としてずっと一緒にやってきたエイヴォンとの関係も悪化していきます。

 

 この2人の関係が、シーズン3では熱い!おそらくほぼ無一文から始まったのであろう2人が、今ではボルティモアを裏で支配できるぐらいになっていたのです。ストリンガーの死の前日に、2人はボルティモアの街を見ながら、語り合います。そこで、ストリンガーは「We ain't gotta dream no more, man.(もう夢を見る必要はないんだ)」と言うんですよね。カッコ良すぎる……。

 

 しかし、このときの2人は腹の中では完全に敵意を持っています。翌日、ストリンガーはエイヴォンの差し金により、オマールとブラザー・ムゾーンに撃たれます。順調にゲームを勝ち上がっていたと思われたストリンガーが、過去のミスにより破滅を招いた瞬間でした。

 

②警官であるということ

 『THE WIRE/ザ・ワイヤー』シーズン3の一つのテーマは、「警官が街のために何が出来るのか」ということではないでしょうか。シーズン1,2で、ボルティモアの街を隅から隅まで描いてきた『THE WIRE/ザ・ワイヤー』は、シーズン3で、そんな街における警察の役割は何なのか?という疑問を投げかけてきます。

 

 退職を間近に控えたコルヴィン警視は、麻薬を地域限定で合法化するという前代未聞の計画を実行に移します。ただし、そこにはれっきとした論理があります。コルヴィン警視は、警官として30年以上働いてきたものの、ボルティモアの街は良くなるどころか、むしろ悪くなっていることを憂えていました。そして、小さな麻薬売買などにいちいち気を取られていては、街を善くすることが出来る”本当の”仕事が出来ないと考えたのです。

 

 この取り組みの結果、街の犯罪は劇的に減りました。しかし、ハムステルダムにも元からの住人がいないわけではありません。多数の幸福のためならば、少数の犠牲は仕方がないのか。そもそも、大儀のためとはいえ、違法なものを取り締まらないというのは良い行為なのか。警官は、法を守らせることが使命であり、それはいかに不合理な法であってもそうなのではないか。コルヴィン警視は、このような問いを深く突きつけてくる存在です。

 

 シーズン3で、警官という存在に対して問いを投げかけてくるのはコルヴィン警視だけではありません。マクノルティは、レスターやコルヴィンから「警官は仕事が捜査が全てじゃない。それではダメだ」という教えを受けます。しかし、マクノルティは元妻との関係を修復することは出来ず、キーマやダニエルズもパートナーとの関係が上手くいっていません。

 

 さらには、シーズン3で亡くなった刑事を追悼するために皆で酒を飲む場面や、プレッツの誤発砲事件もあります。このように、『THE WIRE/ザ・ワイヤー』では、「警官」という生き方にも問題提起をしているのです。

 

 警官個人の存在から、犯罪の減らない街における警察の存在意義、さらには正義のあり方といった問いを深く突きつけてくる『THE WIRE/ザ・ワイヤー』シーズン3は、類まれなる傑作と言って良いでしょう。

 

 

 

まとめ

 シーズン1で、麻薬組織の内部を徹底的に描くことで、善悪の基準をぶち壊した『THE WIRE/ザ・ワイヤー』は、シーズン3にきてさらに高次の問いをしてきます。ステレオタイプな正義観のままでは、これほど深い問いは出来ないでしょう。しかし、シーズン1,2を観てきた人にとって、すでに正義と悪の境界はぐちゃぐちゃになっています。そこに、シーズン3は「警察は街のために何が出来るのか」という本質的な問いを投げかけてきます。

 

 『THE WIRE/ザ・ワイヤー』シーズン3は、シーズン1,2があるから出来ることをやってのけたわけで、これが史上最高のテレビドラマと言われる理由も納得です(シーズン1,2だけでも素晴らしいけどね)。どのシーズンが好きかは、人によると思いますが、自分は刑事や正義に関して問いかけてくるような作品(『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』シーズン1もそう)が好きなので、『THE WIRE/ザ・ワイヤー』シーズン3が今のところ一番好きです。

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