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海外ドラマ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』シーズン2感想~港湾だってボルティモア~

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What they need is a union.

- The Wire season 2

 

 名作ドラマ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』も第2章に突入。今度の舞台は港湾だ。ん?港湾って何も起こらなそうな雰囲気が…?いやいや、そんなわけはありません。さらに大きな犯罪がそこにはあるのです。

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『THE WIRE/ザ・ワイヤー』シーズン2基本データ

・原題:The Wire

・放送局:HBO

・放送日:2003年6月1日~8月24日

・話数:12

・一話あたりの長さ:58分

・あらすじ:

 港湾警察に左遷されたマクノルティだったが、水死体や13人の身元不明遺体の発見により、再びボルティモアにはびこる大きな犯罪に挑むことになる。

・オープニング(シーズン2):

www.youtube.com

 

『THE WIRE/ザ・ワイヤー』シーズン2あらすじ(ネタバレ)

 舞台はシーズン1の後のボルティモア。バークスデール捜査の件でマクノルティは港湾警察へ、ダニエルズは証拠保管課に左遷されていた。ある日、マクノルティはボルティモア沿岸で水死体を発見する。当初、自殺だと思われていた遺体だったが、実際には殺人だと判明。さらに、港のコンテナから13人の身元不明女性の遺体が発見される。

 

 殺人課のバンクレスターらによる捜査の結果、14人は海外から売春のために不法入国しようとしていた女性たちだと判明。その中の一人が船員と争いになり殺され、それを目撃した残りの13人もコンテナの中で窒息死させられたのであった。

 

 一方で、港湾労働者組合の会長であるフランク・ソボトカが妙にお金を持っていることが怪しんだバルチェク警視正は、この件を調べるようロールズに命じる。ロールズは、マクノルティを除くバークスデール捜査のメンバーを招集し、徹底的な捜査を開始する。

 

 組合会長のフランク・ソボトカは、港湾の仕事を仕切るとともに、密輸をして稼いでいた。彼の息子のジギーも港で働いているが、頭は良くない。ジギーは頭の切れるいとこのニックとともに、船の積み荷を盗んで稼ぐ。そのうち、悪事に慣れてきたニックは麻薬を仕入れるようになり、売人として麻薬を売りさばくようになる。

 

 実は、フランク・ソボトカやニックらに密輸を指示して報酬を与えていたのは、”グリーク”をボスとするギリシャ人の集団だった。ダニエルズら特別捜査班により、この組織の大半のメンバーは逮捕されたが、ボスの”グリーク”と右腕のスピノスは跡形もなく消えてしまった。

 

 一方、シーズン1で起訴されたバードの裁判も始まる。その証人としてオマールが出廷し、バードは執行猶予なしの終身刑を言い渡される。

 

 刑務所の中にいるエイヴォン・バークスデールディアンジェロは疎遠になっていた。エイヴォンは、気に入らない刑務官を追い出すために、ストリンガーに指示をして、その刑務官が刑務所に仕入れている麻薬に毒を混ぜさせる。結果、刑務所内の麻薬ルートが明らかになり、刑務官は逮捕される。

 

 塀の外でビジネスとして麻薬取引を続けているストリンガーだったが、実は彼はディアンジェロの妻と不倫をしていた。エイヴォンは裏切り者であってもディアンジェロを気に掛け続けていたが、ストリンガーにとっては組織に対する裏切り者であるだけでなく、人間関係においても邪魔であった。そこで、ストリンガーはエイヴォンには秘密に、刑務所の中の仲間に指示してディアンジェロを殺させる。

 

 ストリンガーは麻薬販売が上手くいかず、東ボルティモアと組んで経営しようとする。しかし、エイヴォンは東の連中が高層住宅にやってくるのを好かず、ブラザー・ムゾーンを雇って追い出させる。

 

 ストリンガーはブラザー・ムゾーンを追い払うためにオマールを利用しようとするが、オマールがブラザー・ムゾーンを殺そうとした時にストリンガーが嘘を吐いていたことがバレる。そのため、オマールはストリンガーへの恨みをより一層強めることになる。

 

(『ザ・ワイヤー』のあらすじは難しい。群像劇だから、いくつものストーリーが同時進行していて、まとめるのが大変。観ている分には大体わかるんだけどね。)

 

 

 

『THE WIRE/ザ・ワイヤー』シーズン2感想(ネタバレあり)

 わかってきたよ。『ザ・ワイヤー』の面白さが。シーズン1ではあまりノリ切れなかったけど、しばらく間を空けるとわかってきました。というのも、シーズン2を観始めて、シーズン1のメンバーをまた観られるのが楽しいのです。「あ、バンクじゃん」「ダニエルズは左遷されちゃったなぁ」「ストリンガーはちゃんと勉強してるね」「オマールが戻ってきた!」「バブルスは相変わらずだなぁ」という感じ。

 

 『ザ・ワイヤー』は群像劇なので、登場人物がとても多いのですが、それでも一人一人のキャラクターが魅力的なので、印象深く記憶に残っています。しかも、ただ「嫌い」という人物はあまりいなくて、誰もが「憎めない」人物なのです。『ザ・ワイヤー』では、麻薬組織側だけでなく警察側の人間も含めて、全員が何かしら罪な部分を持っています。それでも、そこには何か理由があったりするので、どこか憎めない存在になっています。

 

 シーズン2で新しく出てきた人物の中では、フランク・ソボトカが凄く良いキャラをしていましたね。彼は密輸を引き受けていた人物なので、単純に言えば悪であることは間違いないでしょう。でも、常に組合を第一に考え、息子のジギーの心配もする姿はとても人間的でした。そこまで無私の姿勢になれるところは、むしろ尊敬したくなるところでもあります。

 

 他に、オマールの裁判シーンも良かったなぁ。あれは名場面でしょう。自分のことを何も偽らず、「物を盗んで生きているんだ」と言い切るオマール。そして、相手の弁護士を指して「俺はショットガンを使うけど、お前はカバンを使うだけで、やってることは何も変わらねぇよ」(意訳)と論破します。カッコいい!

 

 ディアンジェロ(ディー)の死は悲しかった。シーズン1の序盤でチェス盤を使って組織の説明をするシーンから、ディーは自分にとってのお気に入りキャラだったので辛い。シーズン2では、生きているのかわからないほど生気をなくした様子でしたが、それでも自分の生き方を貫こうとする姿は良かった。これからも見守っていきたかったけど、その世界に入ってしまった以上、命の危険があるのはどうしようもない。R.I.P.

 

 『ザ・ワイヤー』が印象的なのは、登場人物だけではありません。ストーリーもそうです。ボルティモアの街にはびこる犯罪を徹底的に描き出す手腕は見事。常に警察側と犯罪組織側に立ち、犯罪の全体像を余すところなく見せるところは素晴らしい。

 

 まだグリーク周辺の関係は不明だけれど、すでにボルティモアの麻薬の流通ルートはほとんどわかったようなものです。ソボトカが税関の目をくぐり抜けて密輸し、グリークらのところに卸して、東ボルティモアの組織が購入。彼らはストリンガー率いる西ボルティモアと協力したりしなかったりして、最終的に市民の手に麻薬が行き渡ります。受け渡しのときは、お金を渡すところと麻薬を渡すところは別々でなきゃ危ないということも、私はちゃんと知っています笑

 

 このように、ボルティモアはおろかアメリカに一度も行ったことがない自分でも、複雑な麻薬の流通ルートがすんなりと頭に入ってきてしまうのです。もし『ザ・ワイヤー』が警察側あるいは犯罪組織側どちらか片方の視点に重きを置いたドラマであったなら、ここまでボルティモアの街を描き切ることは出来ないでしょう。

 

 ちなみに、アメリカではこのシーズン2の評価がやや低いらしいのですが、まあ誤差の範囲でしょう。確かにシーズン1の方が上手いのかなと思うところもありますが、シーズン2だって見どころはたくさんあります。そもそも、シーズン2の評価が低いとは言ったって”『ザ・ワイヤー』の中では”ですからね。他のドラマよりは、はるかに良く出来ているのです。

 

 自分としては、シーズン1を観終わってから様々な評判を見聞きするうちにその面白さに気づき、シーズン2を観始めて自分でも確認できた感じなので、これからがとても楽しみです。特に、ストリンガーvs.オマールの戦いがこれから熱くなってきそうな予感なので、注目していきたい!

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