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海外ドラマ『シャープ・オブジェクツ』~鳥肌必至のホラーミステリー~

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 It's safer to be feard than loved.

- Camille in Sharp Objects  episode 6 "Cherry" 

 

 怖い怖い。幽霊とか化け物は出てこないのですが、とにかく人間が怖い。『シャープ・オブジェクツ』は、これまで観た映画・ドラマの中でもダントツと言っても良いぐらいに怖かったです。それでいて、ミステリーとしても凄くちゃんとしているので、非常に見応えのある作品です。

 

追記:現在このドラマは、U-Nextで『シャープ・オブジェクト KIZU-傷-:連続少女猟奇殺人事件』のタイトルになって配信されています。

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『シャープ・オブジェクツ』基本データ

・原題:Sharp Objects

・放送局:HBO

・放送日:2018年10月15日~12月3日

・話数:8

・一話あたりの長さ:49~61分

・原作:ギリアン・フリン『KIZU-傷-』

・あらすじ:

 若手記者のカミール・プリーカーは、少女連続殺人事件を取材するために故郷の町に向かう。取材していくうちに徐々に町の闇が明らかになり、彼女は自分の過去と対峙することになる。

・予告編:

www.youtube.com

※『シャープ・オブジェクツ』は、1シーズンで完結するミニシリーズ(リミテッドシリーズ)です。シーズン2以降はありません。

 

『シャープ・オブジェクツ』キャスト&スタッフ

 『シャープ・オブジェクツ』の主演は、映画『メッセージ』や『アメリカン・ハッスル』に出演しているエイミー・アダムスです。エイミー・アダムスは、すでにアカデミー賞に6回もノミネートされている実力派女優です。彼女は、今回『シャープ・オブジェクツ』で初めてテレビドラマの主演を果たしました。『シャープ・オブジェクツ』では、暗い過去を持つくだびれた若手記者という役どころなのですが、これも見事に演じきっています。

 

 主人公の母親を演じるのは、パトリシア・クラークソン。HBOのドラマ『シックス・フィート・アンダー』にも何度かゲスト出演しています。パトリシア・クラークソンは、今回の役でゴールデングローブ賞を受賞しています。

 

 主人公の妹を演じるのは、エリザ・スカンレン。今年公開予定の映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』で四姉妹の三女ベス・マーチを演じることでも話題です。

 

 主人公の幼少期(とは言っても高校生ぐらいですが)は、映画『IT/イット ”それ”が見えたら、終わり』やドラマ『ノット・オーケー』でブレイクし、Itガールとなっているソフィア・リリスが演じています。

 

 『シャープ・オブジェクツ』は、全話を映画『ダラス・バイヤーズ・クラブ』やドラマ『ビッグ・リトル・ライズ』シーズン1でも知られるジョン=マルク・ヴァレが監督します。

 

 原作者のギリアン・フリンは、映画『ゴーン・ガール』の原作者でもあります。また、Amazon製作のリメイク版『ユートピア』の制作・脚本も務めるそうで、こちらにも期待です。

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 制作スタジオは、『ゲーム・オブ・スローンズ』『ウエストワールド』のHBOもいるのですが、今回はブラムハウス・プロダクションズが参加しているのにも注目したいところ。ブラムハウス・プロダクションズは、映画『ゲット・アウト』『ブラック・クランズマン』『ハッピー・デス・デイ』『透明人間』(2020年)など、比較的低予算ではありながらも、クオリティの高い作品を生み出していることで注目のスタジオです。

 

以下、ネタバレを含みます。最終話まで観ていない方はお気を付けください。

 

感想(ネタバレあり)

 前置きが長くなりました。やっと感想です。まず言わせて。これ、めちゃくちゃ怖いです。化け物は出てこなくて、いわゆる人間が怖い系なのですが、とにかく怖いのです。BGMはほとんどなく、ストーリー上でもそれほど派手なことは起こりません。でも、フラッシュバックや幻覚なんかも多く、徐々に不気味さが増していきます。

 

 特に、お母ちゃん。最初から、カミールに対する態度が冷たすぎて嫌な奴なんです。終盤になると、なぜそれほど冷たいのかがわかるわけですが、そうするとさらに怖くなってきます。なにしろ、普通にカミールを殺しにかかっていますからね。しかも、「私が世話を焼かなくちゃいけないのね」なんて言いながら、笑顔でやってるんですよ。もうもうもう、そりゃ怖くてたまらない。

 

 地味にお父ちゃんも怖いんです。全体を通して何をしているかよくわかりません。爆音で音楽を聴いていたりするけど、特に何かをしている様子はなし。おそらく妻の行動は薄々知っていたのだろうと思いますが(最終話でリチャード刑事を追い返していたので)、見て知らぬふりをするばかり。

 

 このドラマは、何かとその衝撃のラストが強調されがちな作品ではあります(もし、途中までしか観てなかったら、絶対に最後まで観て)。実は、犯人はあいつだったということですね。被害者の2人の女性と親しい関係だったので、動機はいくらか考えられますね。そして、全体的に病んでいる一家なので、何かが高じて殺人になったと考えてもそれほどおかしくないでしょう。そういう意味で、伏線もちゃんとあり、後出しじゃんけんなどではありません。

 

 私は、このラストで『シャープ・オブジェクツ』に対する印象がが3割増しになりました。推理小説などでは、最後の最後にどんでん返しを食らわせることを「最後の一撃」などと言ったりします。ただ、闇雲にどんでん返しをすれば良いというわけではなく、伏線がきちんとあったり、物語上のカタストロフィーとして必然的なものでなければいけません。これまで映像作品でミステリー的な最後の一撃が綺麗に決まる例は少なかったと思うのですが、『シャープ・オブジェクツ』は完璧に最後の一撃を決めています。見事です。

 

 ただ、もちろん『シャープ・オブジェクツ』は最後の一撃だけの作品ではありません。最後の一撃が強すぎて他の印象が薄れてしまうかもしれませんが、これはカミールの物語としても見応え十分です。最後の一撃がなくても、自分の中では満点の作品です。

 

 というのも、『シャープ・オブジェクツ』は全体としてカミールが自分の過去と向き合う話なんです。カミールは何か暗い過去があることはわかるんですが、最初は私たちにはよくわかりません。徐々に、それは精神病院で同居者が自殺した事件や、アメフト部の部員に集団レイプされた事件、そして亡くなった妹のことであることがわかります。それらの結果として、自傷行為という後遺症を彼女に残すことになります。

 

 『シャープ・オブジェクツ』は、そんなトラウマから逃れるためにセントルイスへ行ったカミールが、故郷へ帰って過去と向き合う過程を丁寧に描いた作品なのです。決して、最後の一撃だけの作品なのではなく、カミールとその家族の物語なのです。

 

 特に印象的だったのが、最終話でカミールが自分の記事に書いていた「私はもう一人の妹を育てる。世話をするのは優しさからか?母の病気を受け継いだからか?まだよくわからない。」という部分。後者の可能性に気づかされて、自分は鳥肌が立ちました。

 

 

 

まとめ

 『シャープ・オブジェクツ』は、非常に完成度の高いホラー・ミステリーです。まず、ホラーとしてめちゃくちゃ怖い。そして、一般には映像作品といまいち相性の悪いとされるミステリーをきちんと実現しています。ホラーとミステリーが見事に融合している作品です。

 

 自分は、『シャープ・オブジェクツ』は日本の推理作家の綾辻行人のホラー系諸作品に通じるところがあるなと思ったりします。綾辻行人の作品は、ホラーであっても必ずミステリー要素があります。小説『フリークス』など、心の病を抱えた人物を描くことも多くあります。そういった意味で、『シャープ・オブジェクツ』は日本人とも相性が良いかもしれません。

 

 ↓エリザ・スカンレン主演映画

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