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映画『ベイビーティース』ネタバレ感想:パステルカラーの空に想う

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 映画の公開延期が続き、特に洋画ファンにとっては、かなりの供給不足を感じているかもしれません。映画館にぜひとも足を運んでくださいとは言いにくい時世ですが、たぶん『ベイビーティース』なら大丈夫。公開初日で、10人ぐらいしか入っていなかったので。それになにより、この映画は良作です。目の肥えた映画ファンの方でも満足できる映画体験ができることでしょう。

 

 

映画『ベイビーティース』基本データ

・原題:Babyteeth

・製作国:オーストラリア

・公開日:2021年2月19日(日本)、2020年7月23日(オーストラリア)

・上映時間:117分

・監督:シャノン・マーフィー

・予告編:

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ミラ役のエリザ・スカンレンとは何者か?

 私が、映画『ベイビーティース』を観に行こうと思った最大の理由。それは、エリザ・スカンレンが主演しているからです。彼女は、最も将来性のある女優の一人でしょう。

 

 彼女の出演作で最も有名なのは、2020年公開の『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』だと思います。エリザ・スカンレンは、この映画でマーチ四姉妹の三女のベスを演じていました。エイミーは、他の3人と比べるとやや地味ながらも、四姉妹を繋げる重要な存在であり、エリザ・スカンレンはこの役を見事に好演していました。

 

 私が彼女に注目するようになったのは、HBOのリミテッドシリーズ『シャープ・オブジェクツ』による影響です。このドラマでエリザ・スカンレンは、エイミー・アダムズ演じる主人公の妹役を演じていました。ローラースケートで走り回る彼女の姿は、とても強く印象に残っています。

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 それ以降、私はエリザ・スカンレンのことが気になって仕方がなかったのです。ハリウッドにも多くの若手俳優がいますが、その中でもエリザの実力はトップクラスだと思っています。本当に。今後、何十年にも渡ってスクリーンで活躍することでしょう。

 

 『ベイビーティース』は、そんなエリザ・スカンレンの映画初出演作です。日本では『ストーリー・オブ・マイライフ』の方が先に公開されましたが、最も早いのはヴェネチア国際映画祭で公開された『ベイビーティース』になります。したがって、映画初出演ながら主演ということになるのですが、『シャープ・オブジェクツ』での彼女を見れば、それも頷ける話でしょう。

 

 ちなみに、『ストーリー・オブ・マイライフ』『シャープ・オブジェクツ』『ベイビーティース』には、奇妙な共通点があります。それは、どの作品でもエリザ・スカンレンが演じる人物は、病弱なのです。キラキラしたティーンエイジャーの役では、エリザ・スカンレンの無駄遣いになってしまうので、より演技力が必要とされる病弱な少女という役があてられるのは、わからなくもないんですけどね。

 

 

 

『ベイビーティース』あらすじ(ネタバレ) 

 女子高生のミラは、重い病を抱えていた。ミラは、駅で身投げを考えていたところを、モーゼスに救われる。モーゼスは母親から堪当され、家に帰れなかった。2人は一気に親しくなるも、年が離れすぎているとして、モーゼスはミラの両親からは嫌われる。

 

 ある日、モーゼスがミラの家に侵入したところ、母親のアナに見つかってしまう、アナは、モーゼスに薬を与えることで、彼がミラの元に留まるようにした。しかし、そのことはミラにバレてしまう。

 

 後日、ミラはモーゼスの元に遊びに行き、パーティーに参加する。そこで、モーゼスの3歳年上の"彼女"に出会う。失望したミラは、一人でパーティーを歩き回る。モーゼスはそんなミラをパーティーから引きずり出し、2人は建物の屋上で夜を明かす。翌朝、ミラの体調は非常に悪くなっており、入院をすることになった。

 

 父親のヘンリーは、残り時間の少ないミラのために、モーゼスがいた方が良いと考え、薬を渡す引き換えに家にいてもらう。だが、このこともまたミラにバレてしまう。

 

 ミラの誕生日に、家に全員が集まる。モーゼスはダンスをし、ミラとアナはそれぞれヴァイオリンとピアノを演奏する。その夜、ミラはモーゼスに自分を殺してくれと頼む。しかし、モーゼスは実際にミラを殺すことが出来なかった。その後2人は、ベッドをともに一夜を過ごす。翌朝、ミラはベッドで死んでいた。

 

 誕生日には、みんなでビーチに遊びに行っていた。ミラは父親に「疲れてしまった」と語っていた。

 

ミラとモーゼスの関係

 ミラは重い病を患っており、学校では疎外感を感じています。そのせいで、最初のシーンから、自分の人生を終わらせたいと願っていました。しかし、モーゼスに出会ったことで、その気持ちは変わります。モーゼスは、6歳ほど年上で、薬物中毒の青年です。自分とは何の共通点もない他人に対して、人はしばしば惹かれるものです。

 

  一方、モーゼスがミラを恋愛対象として見ていたかは微妙です。実際に、3歳ほど年上の彼女がいました。年齢差を考えるならば、モーゼスがミラを恋愛対象として見ていないのは、いたって健全です。

 

 ですが、モーゼスがミラのことを何とも思っていないというのは、さすがに考えにくいことです。薬のためだけに、ミラとあれほど親密な関係になれるものでしょうか?そうは思いたくありません。

 

 最も妥当な考え方は、モーゼスはミラを妹のように愛していた、というものかもしれません。2人の間に、疑似兄妹愛のようなものがあったと考えるのです。これは、これで一つの可能性として十分あり得るでしょう。

 

 それとも、愛の定義を、そこまで狭める必要はないのかもしれません。すなわち、ここまではモーゼスに彼女がいて、彼がちゃんと彼女を愛しているから、ミラを恋愛対象として見ていないのだろうと考えています。しかし、このことでモーゼスがミラとプラトニックな関係を築けないと考えるのは早計だったかもしれません。

 

 ミラとモーゼスの関係を"兄妹愛"だと言ってしまうのも、ある意味では味気ない考え方です。2人の関係は、他ならぬ2人だけしか築けない独自の関係性であり、2人だけの愛の形なのでしょう。

 

パステルカラーとポップなサウンド

 ミラ&モーゼスの関係を含め、『ベイビーティース』はそこまで単純な話ではありません。ミラの両親の心理を読み取るのも、そう簡単ではなさそうです。下手をしたら、わけがわからないと放り出してしまいそうになるかもしれません。

 

 しかし、おそらくそんな事態にはならないでしょう。ミラはヴァイオリンを習っており、アナも元ピアノ奏者ということで、この映画は音楽が一つのキーにもなっています。ミラが、音楽教室で踊っているシーンなどは、とても印象的でした。

 

 パステルカラーの色彩も目を引きます。空、プール、ミラの髪、最後の海のシーンには、共通して水色が使われています。この水色をベースカラーとし、家の外壁や扉、砂浜の色など、パステルカラーが至る所で見られます。パーティーで、色とりどりの光線と背景の花火に照らされたミラと謎の人物のシーンは、この映画のハイライトと言っても良いでしょう。

 

 

 

まとめ

 久しぶりに、こういったミニシアター系の良作を映画館で観られたな、というのが今の率直な感想です。色々な映画が公開延期しすぎている、というのが主な理由なんですけどね。自分も『ベイビーティース』がちゃんと理解できたかと言うと、そんなことはないでしょう。それでも、この独自の世界観に浸ることが出来て、やっぱり映画館って良いところだなと再確認できたりします。

 

 目当てだったエリザ・スカンレンの演技もたっぷり楽しむことが出来たのですが、それと同じくらいに他の俳優陣の演技も良かったですね。モーゼスを演じたトビー・ウォレス、アナを演じたエシー・デイヴィス、ヘンリーを演じたベン・メンデルソーンは、いずれも充実した演技を見せてくれています。

 

 また新たな青春映画の良作を観ることが出来たようです。

 

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