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人生を目の当たりにするドラマ『シックス・フィート・アンダー』紹介&感想

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Once it's over, it's over. Dreamless sleep forever and ever. So, why not be happy while you're here. 

- Nate Fisher in Six Feet Under

 

 近年、人気のヒューマンドラマといえば『THIS IS US 36歳、これから』などが挙げられるかもしれません。実は、時代はやや遡るものの、非常に話題を呼んだヒューマンドラマがあります。それが葬儀屋一家を舞台にしたドラマ『シックス・フィート・アンダー』。ブラックなユーモアに交えて、人生の意味を問い続け、その最終回は「史上最高のエンディング」としても名高いドラマ『シックス・フィート・アンダー』に注目です。

※この記事の前半にはネタバレはありません。

 

 

 

 

ドラマ『シックス・フィート・アンダー』基本データ

・原題:Six Feet Under

・放送局:HBO

・放送期間:2001~2005年

・シーズン数:5

・話数:63

・一話あたりの長さ:55分

・クリエイター:アラン・ボール(映画『アメリカン・ビューティー』脚本)

・あらすじ:

 葬儀屋を営むフィッシャー家の家長ナサニエル・フィッシャーが死んだ。遺された妻のルース、放蕩息子のネイト、父と同じく葬儀屋で働くデイヴィッド、高校生の娘クレアらが、ナサニエルを失った悲しみから再生し人生の意味を見つけ出す過程を描く。

・予告編:

www.youtube.com

 

ドラマ『シックス・フィート・アンダー』とは?

 2001~2005年に放送された葬儀屋一家を舞台とするドラマ『シックス・フィート・アンダー』は、HBOで放送された作品の中でも名作として知られるものの一つです。このドラマは、多くの人にとっては何度かお世話になったことはあっても、あまり実態を知らない葬儀屋を舞台に、人生の意味を問いかけてきます。

 

 手掛けたのは、映画『アメリカン・ビューティー』でアカデミー脚本賞を受賞したアラン・ボール。『アメリカン・ビューティー』は、一般的な家庭が徐々に崩壊していく様をブラックユーモアを交えて描いた作品ですが、その巧みなストーリーテリングの腕は『シックス・フィート・アンダー』でも、最大限に発揮されています。

 

 参考までに、世界最大の映画・ドラマレビューサイトのIMDbにおいては8.7/10という高評価を得ており、2002年にはゴールデングローブ賞の作品賞(ドラマ部門)を受賞しています。

 

 中でも特に高く評価されているのは、その最終話。テレビドラマ史上最高のエンディングとも称される名エピソードと言われています。個人的にも、これまで観てきた中で断トツで素晴らしいエピソードでした。このためだけでも『シックス・フィート・アンダー』を観る価値があると言って良いでしょう。ぜひ、最終話は落ち着いた場所でじっくり観てみて下さい。

 

ドラマ『シックス・フィート・アンダー』登場人物

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↑左から、ルース、クレア、デイヴィッド、キース、ネイト、ブレンダ、フェデリコ、ジョージ(シーズン4から)

 

ネイト・フィッシャー/ピーター・クラウス

 フィッシャー家の長男。昔から放蕩息子で、久しぶりに家に帰ってきた。父親が亡くなったことにより、仕方なく葬儀屋の仕事を継ぐことになる。気ままな生活が好き。

 

デイヴィッド・フィッシャー/マイケル・C・ホール

 フィッシャー家の次男。兄が家を出ていってしまったため、ずっと葬儀屋で働いている。堅物。自分がゲイであることは、家族にも隠している。

 

クレア・フィッシャー/ローレン・アンブローズ

 フィッシャー家の長女。友達の少ない高校生。ガブリエルと付き合っている?読書好き。霊柩車で学校に通っている。

 

ルース・フィッシャー/フランシス・コンロイ

 3人の母親。夫を亡くして悲嘆に暮れていたが、第二の人生を謳歌しようとする。夫が生きている間も、理髪師の男性と不倫をしていた。

 

フェデリコ・ディアス/フレディ・ロドリゲス

 フィッシャー&サンズ葬儀社に勤める凄腕エンバーマー(遺体を修復する人)。遺体を完璧に修復する技術を持ち、そのことを誇りにしている。妻と息子がいる。

 

 ブレンダ・チェノウィス/レイチェル・グリフィス

 ネイトの彼女。指圧師。両親は精神分析家。ネイトとは空港で会ったばかりであり、謎が多い。

 

キース・チャールズ/マシュー・セント・パトリック

 デイヴィッドの彼氏。警察官。とても優しいが、デイヴィッドと衝突することも多い。

 

ナサニエル・フィッシャー/リチャード・ジェンキンス

 フィッシャー&サンズ葬儀社を経営していた父親。第一話冒頭で、交通事故により亡くなる。

 

人間関係の謎と解決

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 『シックス・フィート・アンダー』がヒューマンドラマです。ただ、自分にはこれは一種のミステリーなのではないか、とも思うのです。その点で、他のヒューマンドラマとは一線を画する作品にもなっています。

 

 というのも、登場人物は話の中で様々な行動をとり、決断をしたりするのですが、最初はいまいちなんでそんなことをするのか理解できないことが多いです。たぶん、どんなにしっかり観ていても、一筋縄では理解できないと思います。それゆえ、その理解できない行動に、最初は観ている方もイライラすることがあるかもしれません。

 

 しかし、シーズン後半になると、その行動の原因が解明されます。この行動の理由というのが、それなりに筋が通っていることもあるため、100%同意することは難しくてもある程度は理解できるかもしれません。

 

 これって、実際の人間関係でも同じなんですよね。ただ、実際はほとんど解決されることがないというだけで。私たちは、他人がなぜそんな行動をするのか、どうしても理解することが出来ないことがしばしばあります。『シックス・フィート・アンダー』では、この他人と理解し合うことの難しさを示し、その行動の原因を後に説明をしてくれます。

 

セクシャリティの問題

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 『シックス・フィート・アンダー』には、多くの登場人物が登場し、多くの物語が綴られていくのですが、その一つがデイヴィッドの物語です。デイヴィッドはゲイです。そのため、生活をする中で偏見による苦痛もあり、そういった点もドラマの中で描かれるのですが、注目したいのはそれだけではありません。

 

 というのも、『シックス・フィート・アンダー』では、デイヴィッドの普通の日々も描かれるのです。当然と言えば当然ではあります。でも、同性愛を扱った映画の場合はどうしても偏見やそれに立ち向かう姿に重点を置きたいので、それ以外の要素は削らざるを得ません。

 

 でも、ゲイの人だって普通の恋愛もするはずです。振った振られたの話だってあるでしょう。カミングアウトだって、必ずしも劇的なものとは限らないですよね。実際、デイヴィッドの兄妹のネイトとクレアは意外とすんなり受け入れました。

 

 もちろんデイヴィッドが、周囲の偏見を打ち破っていこうとする姿も描かれ、その物語も非常に見応えがあります。その背後にデイヴィッドの日常の姿も描かれることで、より彼を応援したくなってくるのかもしれません。

 

 セクシャリティに悩むのは、デイヴィッドだけではないのですが、ネタバレにもなりそうなのでこのくらいにしておきます。20年前と言えば、今ほどセクシャリティの問題が盛んに扱われていた時期ではありませんでした。それでも、自身もゲイであると公表しているアラン・ボールが手掛けた『シックス・フィート・アンダー』では、すでにこのテーマが丁寧に扱われています。

 

 

 

ハイレベルな芸術センス

 『シックス・フィート・アンダー』の一つの魅力として、このドラマが非常に芸術的な視点で作られているということがあると思います。クレアは、芸術が得意であるため、ドラマの中でも芸術に関して言及することしばしばあります。その芸術談義や登場するアート作品がとても面白いのですが、それだけではありません。

 

 『シックス・フィート・アンダー』自体が、すでに立派な現代アートの一つの作品になっています。例えば、第1話には葬儀屋の製品のCMが何回か流れます。現代の葬儀屋ビジネスを皮肉った演出の一つなのですが、深読みするなら現代の消費社会を風刺しているとも言えます。

 

 そこまでうがった見方をせずとも、毎話冒頭のオープニングを観ていれば、『シックス・フィート・アンダー』の芸術に対する意識はよくわかります。繋がっていた2人の手が離れるシーンから始まり、カラスや萎れる花など、死を暗示するものが映し出されていきます。一応オープニングには死体も映りますが、それがなかったとしても、このドラマが死にまつわるものであることが完璧に伝わってきます。

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シーズンあらすじ&感想(ネタバレあり)

シーズン1

 第1話冒頭でナサニエル死亡。ネイトは家業の葬儀屋を継ぐことになる。デイヴィッドは、自分がゲイであることを家族にも伝えていない。悲しみに暮れていたルースだったが、徐々に第二の人生を謳歌しようとする。

 

 第1話で扱われるのがナサニエルの葬儀でした。現代の葬儀文化を皮肉りながらも、家長を失った家族の姿が描かれていました。このエピソードを観て「これは、絶対に面白いドラマだ」と自分は確信できました。

 

 第9話でクレアの彼氏の弟が銃の暴発で亡くなり、第11話では乳幼児突然死症候群で亡くなった乳児の葬儀が扱われ、この2エピソードはとても辛い気持ちにもなります。でも、第11話のラストでフェデリコの子供が誕生するシーンでは、これまで感じたことがないほど深い部分で感動させられました。

 

 シーズン1では、デイヴィッドが周りの人たちにカミングアウトをしていく場面やとても堅物だったデイヴィッドが徐々に殻を破り自分らしく生きていくようになる過程が見どころです。

 

シーズン2

 ネイトは、脳に病気があることが発覚。ブレンダとネイトは結婚も視野に入れている関係にあるものの、2人の間にはどんどん隙間が広がっていく。一方で、クローナ―社がフィッシャー・アンド・サンズを買収しようと様々な策を巡らせる。

 

 シーズン2では、ネイトに大きな変化が訪れます。ブレンダとネイトの2人は、とても相性が良さそうに見えます。しかし、責任から逃れたいネイトと他人と親密になることが出来ないブレンダが、それぞれに相手との距離を広げてしまうのが辛い…。

 

 ルースは、新しい彼氏を作ったり、自己啓発セミナーに通ったりして、第二の人生をパワフルに生きています。夫が生きていたときは家庭が第一だったルースですが、彼女もまた自分の殻を破り、新たな人生を歩んでいくところは興味深いです。

 

シーズン3

 シーズン2のラストで脳の手術を受けたネイトのその後から始まる。第1話では、最初はネイトが手術で亡くなったように思えたが、どうやら実際には生きていたよう。ただ、ナサニエルが言っていたように、ネイトが生きている世界と死んでいる世界が両方あるのかもしれません(量子力学の多世界解釈みたいな)。

 

 そして、ネイトはリサと結婚し、親バカになっていた。デイヴィッドはキースと同居するが、果たして性格が真逆な2人は上手くいくのか。クレアは芸術学校に行き、ついに自分のやりたいことを追求できるかと思いきや…。

 

 そんな中、フェデリコの家庭にも危機が訪れる。妻のヴァネッサが鬱気味になってしまう。葬儀屋には、新たにインターンとしてアーサーという青年がやってくる。礼儀正しい彼はルースと意気投合するものの…。

 

 シーズン3の一番の見どころは、ブレンダではなくリサと結婚したネイトの家庭模様でしょう。子供のこと溺愛しているものの、リサのことを本当に愛しているのかはネイト自身はっきりわかっていなかったのですが、終盤で明らかになります。

 

シーズン4

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 ネイトの家庭を襲った最悪の悲劇からシーズン4はスタートする。一方で、フェデリコとヴァネッサとの関係はますます悪くなっていく。デイヴィッドは、車強盗に襲われて以降PTSDのような状態になる

 

 クレアは、女友達も出来てアートな毎日を送っています。自分から見ても、イーディはめちゃくちゃカッコよかった。後半でクレアは、人物写真をちぎって再び顔の形に貼り合わせた作品を発表するのですが、こっちも作品自体が面白かった。まさにキュビズムやダダイズムの系譜に合ったものに感じられたので、『シックス・フィート・アンダー』の制作陣には、きっとナチュラルにアートへの造詣が深い人がいるのでしょう。

 

 リサのことを本当に愛し、これから上手くやっていきたいと思っていた矢先にリサが亡くなってしまったネイトと、離婚寸前のフェデリコ。シーズン4では、特にこの2人がが揃って遺族の対応をする場面が多いです。遺族には亡くなった人の配偶者も含まれるわけで、2人は様々な夫婦の関係を見ていくことになります。

 

シーズン5

 ネイトはブレンダと結婚し、マヤを含めた3人で再出発をする。大学を辞めたクレアは、ビリーとともに生活し始めるものの、ルースとの仲は酷く悪くなる。デイヴィッドとキースは家庭に子供を欲しいと感じ、代理出産や養子といった手段を検討し始める。ルースは、治療を受けているジョージの介護をする生活に嫌気が差していた。

 

 ルースが抱える問題って、今の日本の老々介護の問題にそのまま当てはまります。老々介護に限らず、介護問題一般に関して、仕事でもないのに介護をしなければならないというのは相当な苦労でしょう。

 

 シーズン5は、デイヴィッドとキース、そして子供たちの話が良かったな。衝突を繰り返しながらも、徐々に親子としての繋がりを築いていく4人の姿に心が温まります。この子供たちとマヤ、ブレンダの娘は、フィッシャー家の新世代ということにもなるので、そういう意味でも将来に思いを巡らすことが出来て嬉しいです。 

 

最終話

 『シックス・フィート・アンダー』の最終話は、「史上最高のエンディング」とも言われているのを私も聞いたことがあったので、かなりハードルを高めにして観始めました。それはもう、想像をはるかに超える素晴らしいエンディングでした。

 

↓最終回の感想・解説を書いていたら長くなってしまったので、こちらの記事にまとめました。 

psbr.hatenablog.com