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海外ドラマ『FARGO/ファーゴ』シーズン4感想~これがアメリカの真の歴史だ~

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You know why America loves a crime story? Because America is a crime story.

- Josto Fadda, Fargo season 4

 

 10月後半に入って気温が急激に下がり、冬を感じさせる気候になってきました。冬の海外ドラマといえば『FARGO/ファーゴ』ですね。コーエン兄弟の映画『ファーゴ』に着想を得たオリジナルストーリーで展開するクライムドラマです。

 

 この度、待望のシーズン4がHuluとAmazonプライムビデオで配信が始まったので、早速観ました。『FARGO/ファーゴ』は、これまで観てきた海外ドラマの中でも大好きな作品の一つなのですが、その評価はさらに確実なものになりそうです。

関連記事:海外ドラマ『FARGO/ファーゴ』シーズン4についてわかっていること - 海外ドラマパンチ

 

 

 

基本データ

・原題:Fargo

・放送局:FX

・放送日:2020年9月27日~11月29日

・話数:11

・脚本:ノア・ホーリー

・あらすじ:

 ミズーリ州カンザスシティでは、イタリア系マフィアと黒人ギャングが、それぞれの一家の子供の一人を交換することで平和を保っていた。ある日、マフィアのボスが死んでしまう。均衡が保たれていた町には、途端に血が流れ始めることになる。

・予告編:

www.youtube.com

 

登場人物

ロイ・キャノン

黒人ギャングのリーダー。息子のサッチェルをイタリア系マフィアに預けている。頭は良く、リーダーの素質もある。

 

ジョスト・ファッダ

イタリア系マフィアのボス。息子のゼロを黒人ギャングに預けている。ファッダ家の長男だからボスになっているのだが、正直その器ではないように見える。

 

ガエターノ・ファッダ

ジョストの弟。イタリアからやってきた。戦闘に強いが、短気なところがあり、後先考えず行動してしまうこともしばしば。

 

オラエッタ・メイフラワー

看護師。弱った患者を毒殺し、所持品を奪っている。自信過剰。何事も恐れない。恐れろ。

 

ラビ・ミリガン

アイルランド系マフィアからユダヤ系マフィアに預けられ、実の父親を殺し、今度はイタリア系マフィアに預けられて、そのままそこにいる。サッチェルの面倒を見ている。根は優しいのかもしれないが、裏社会に慣れているため、やるときはやる。

 

オーディス・ウェフ

チック症の刑事。ファッダ家から賄賂を受け取っている。権力を持っていることで、チック症を抑えられると語る。

 

エセルリダ・スマトニー

葬儀屋の娘。頭が良く、学校の勉強もよく出来る。

 

ゼルメア・ルーメット&スワニー・キャップス

脱獄囚。ゼルメアはエセルリダの叔母。大胆な犯罪でも成功させるプロ。

 

ネタバレ感想

①今回もキャラが濃ゆい!

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 3年ぶりの新シーズンは、キャストが発表されたときから楽しみでした。ジェイソン・シュワルツマンですよ!ベン・ウィショーですよ!ジェシー・バックリーも最近はかなり気になる俳優の一人です。

関連記事:今最も才能ある女優ジェシー・バックリーの代表作7選 - 海外ドラマパンチ

 

 『ファーゴ』といえば濃いキャラがたくさん登場するのですが、今回もまた然り。全くマフィアのボスの風格がないイタリア系マフィアのボス。やってることも考えてることも理解不能すぎるスーパーポジティブ看護師。解雇されるときに、あんなに大胆な態度を取るのは、むしろ恐ろしいほど。

 

 医者(ドクター)でも上院議員(セネタ―)でもないドクター・セネター。優しそうな見た目と態度とは裏腹に、実の家族を裏切った過去を持つラビ。さらに、チック症の刑事、脱獄囚2人組、葬儀屋の娘などなど。あいかわらず濃い!

 

 話はイタリア系マフィアと黒人ギャングの抗争がメインなので、これまでのシーズンのような一般人巻き込まれ型サスペンスとは異なる印象を受けます。悪い人たちが悪いことをするのは当たり前みたいなところはあるので、正直、前半の話は思ったほど盛り上がりません。

 

 それでも、ガエターノが衝動的に一般人を射殺し、ドクターを殺害していくあたりから、エンジンがかかり始めます。ここからは、血で血を洗う抗争が繰り広げられます。シーズンを通した流血量は、他のシーズンと比べてもおそらく最多。容赦ないです。

 

②ラビとサッチェルの逃避行

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 特殊だったのが第8話。ラビとサッチェルの逃避行が白黒で描かれます。サッチェルは、露骨に人種差別的な待遇を受けます。そんなときに、ラビが竜巻に巻き込まれて死亡。「俺が帰ってこなかったら、死んだか逮捕されたかと思え」は現実になってしまいました。サッチェルは、犬とともに歩いて帰ることになります。

 

 道路に掲げられた看板には「The FUTURE is NOW!」と書かれています。ちょっと意味がわからなくて最初に見たときには笑ってしまったのですが、文化人類学者のマーガレット・ミードの名言らしいですね。今の積み重ねが未来に繋がるとか。

 

 でも、サッチェルにとっては違う意味を持っていたかもしれません。人種差別がはびこるのが今ならば、もっとましな未来を目指したいものです。しかし「未来が今」と言われてしまっては、未来がないのも同じ。残酷なメッセージにも見えてきます。

 

 そういえば、シーズン4の舞台はカンザスシティ。カンザスに竜巻に犬とくれば、おのずと『オズの魔法使い』が思い出されます。確かに『オズの魔法使い』の舞台はカンザス州ですが、今回はミズーリ州のカンザスシティ。カンザス州にもカンザスシティという地名はあるそうですが、それとは違います。ラビがエメラルドシティで生きていたら……とは思うのですが、それは叶わぬ夢か。

 

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↑ 『FARGO/ファーゴ』の女性キャラクターはいつも独特の個性があって最高だ。シーズン4では、ケルシー・チャウとカレン・オルドリッジ演じる強盗2人組、ジェシー・バックリー演じる毒殺看護師、イマイリ・クラッチフィールド演じる聡明な女学生が登場する。それぞれタイプは異なるが、いずれも忘れ難い。

 

③”それ”は何なのか?

 シーズン1で空から降ってきた大量の魚、シーズン2のUFO、シーズン3で全く反応しなかった人感センサー。ドラマ版『FARGO/ファーゴ』には、奇妙なファンタジー要素が少しだけ含まれます。シーズン4では、謎の幽霊。強盗2人組の部屋に現れたり、刑事がスワニーを撃つときに現れます。メイフラワー看護師がエセルリダを毒殺しようとしたときにも現れ、危機一髪のところを救います。

 

 ただし、この幽霊が他のシーズンのファンタジーたちと異なるのは、実在していたかどうかが判然としないのです。大量の魚は確実にありましたし、人感センサーも全く反応しませんでした。UFOも何人もの人が同時に目撃していました。でも、幽霊は見えているんだか、見えていないんだか微妙なのです。

 

 私たちも、シャワーを浴びているときに、ふと後ろに誰かいるんじゃないかと思うことがあります。今回の幽霊はそれに近いようにも感じます。そんなはずはないのに、誰かに見られていると感じる気持ち悪さ。”それ”はメイフラワーの最後の犯行を止めたのでした。

 

④人種差別との戦い

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 イタリア系マフィアと黒人ギャングの抗争と言えば、しばらく前に観た『ザ・ソプラノズ』シーズン4でも、そんな話がありました。黒人が人種差別を受けていた(いる)ことは有名ですが、イタリア系への偏見や差別も根強いものがあるそうです。第1話で、ファッダのボスが病院を断られたのは、単に反社会勢力だからだけでなく、そういった背景もあったのでしょう。

 

 警察が、ロイ・キャノンの息子を逮捕する展開などもありましたが、あのあたりはBlack Lives Matter運動を反映させたものだと思われます。イタリア系からは賄賂を受け取るが、黒人ならばトランペットを吹いているだけでも逮捕。1950年代に限った話ではありません。

 

 『FARGO/ファーゴ』特有の、意味がありそうでそんなにない語りの数々の中でも、印象に残っているのはドクターが話していたナチスの取り調べの逸話です。ナチスの高官の取り調べを任されたドクターは、「アメリカの勝利」と「黒人の勝利」の2つを同時に実現できる絶好の機会だとして、尋問を見事に成功させます。

 

 完成させたレポートを上官に渡したところ、しかしながら、レポートはそのままゴミ箱に入られれてしまいます。上官いわく「黒人に取り調べをされるという屈辱をナチスに受けさせたかった」というのです。

 

 また、ロイ・キャノンの「俺はイタリア人と戦っているだけじゃない。400年の歴史と偏見と戦っているんだ」という台詞も印象的でした。

 

 

シーズン2との関連(ネタバレ)

 『FARGO/ファーゴ』はアンソロジーシリーズなので、ストーリー自体は他のシーズンとは繋がっていません。ですが、世界は共通しているため、いくつかの点で関連が見られます。

 

 例えば、第9話(白黒の回)の冒頭で「The History of True Crime in the Mid West」(中西部における犯罪の歴史)という本が登場し、この本の第7章に書かれていることが、シーズン4の内容だと示されています。

 

 この本は、シーズン2第9話の冒頭にも出てきました。そのときには、第14章の内容が、シーズン2の内容にあたると示されていました。

 

 話の設定としても、シーズン2でもシーズン4と同様にギャングの抗争が扱われていました。最終的には、どちらもファミリービジネスの終焉を描いており、これは両シーズンに共通するテーマになっています。

 

 最後のシーンでは、シーズン2のあのキャラが再登場します。シーズン4の放送前に登場人物一覧を見て、ベン・ウィショー演じる「ラビ・ミリガン」という名前を発見したときには、もしかしてマイク・ミリガンと関係あるのかな?とは思っていました。でも、ラビ・ミリガンは白人で、マイク・ミリガンが黒人なので、家族とは考えにくく、それきり忘れていました。

 

 マイク・ミリガンとは、シーズン2に登場した殺し屋です。そのときは、カンザスシティの組織の依頼で殺しをしていました。シーズン2の感想でも書いたのですが、彼は個人的にお気に入りのキャラクターの一人。シーズン2の後半では一匹狼のようになり、「俺がこの国のキングだ!」と言って闊歩していました。

 

 実は、ロイ・キャノンの息子のサッチェル・キャノンが、マイク・ミリガンだったのです! ラビからミリガンという名前をもらったという展開は胸アツ。ラビが死んだ後に、道路で車に乗っていた白人男性に銃を突き付けて「This is my world. I'm the boss.」という様は、まさにマイク・ミリガン。ダサかっこよさがあります。

 

 余談ですが、銃を持って犬とともに歩き、1950年代の曲が掛かっているシーンは、とても『Fallout 4』みたいだなと思っていました。

 

まとめ

 シーズン4も、とても面白かったです。50年代という設定と映像のせいか、実話とうそぶいていながらも、ミニチュアの箱庭の世界で繰り広げられる寓話といった印象を受けます。衣装や車やインテリアも可愛らしい。

 

 それでいて、中身は血みどろ。おびただしい数の人が死にます。誰かに殺された者もいれば、事故で死んだ者、本当にささいなことで死んでしまった者もいます。人間なんていつ死んでしまうのかわからないので、今を大事に生きるべきでしょう。

 

The FUTURE is NOW!

 

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