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海外ドラマ『FARGO/ファーゴ』シーズン1~シニカルな笑いが効いた秀作~

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Lorne Malvo: Did you know the human eye can see more shades of green than any other color?

Gus Grimly: What?

- Fargo season 1 episode 4
 

 コーエン兄弟の映画『ファーゴ』を観たことはあるでしょうか? 今回ご紹介するのは、その後日譚のドラマ『FARGO/ファーゴ』です。映画版の独特な雰囲気を継承しながらも、新たに紡ぎだされる悲喜劇に注目です!

 

 

 

『FARGO/ファーゴ』シーズン1基本情報

・原題:Fargo

・放送局:FX

・放送日:2014年4月15日~6月17日

・話数:10話

・一話あたりの長さ:50~65分

・製作総指揮:コーエン兄弟

・脚本:ノア・ホーリー(『レギオン』『BONES』)

・あらすじ:

 2006年冬、ミネソタ州ベミジーで殺し屋のローン・マルヴォとダメ男のレスター・ナイガードが、ひょんなことから出会ってしまった。すると、なぜか数多くの死体が出てくる大事件に発展していってしまった。

・予告編:

www.youtube.com

 

『FARGO/ファーゴ』シーズン1登場人物/キャスト

ローン・マルヴォ/ビリー・ボブ・ソーントン

 殺し屋。依頼されて男を殺すためにベミジーにやってきたが、その際に自動車事故で頭を怪我してしまう。その治療のために行った病院でレスターと出会う。依頼されたときだけでなく、趣味(?)で人を殺すこともある。その腕は一流。

 

レスター・ナイガード/マーティン・フリーマン

 ベミジーで保険のセールスマンをやっているダメ男。高校時代からいじめられっ子で、妻にもうんざりされている。高校時代のいじめっ子サム・ヘスに出会って、”誤解”から鼻を怪我し、病院に行くことになる。

 

モリー・ソルヴァーソン/アリソン・トルマン

 ベミジー警察署の副署長。事件捜査には人一倍情熱を持って取り組むが、それゆえに他の署員と上手くやっていけていない。父親のルー・ソルヴァーソンも元保安官で、今はダイナーを営んでいる。

 

ガス・グリムリー/コリン・ハンクス

 ミネソタ州ダルース警察署の警官。最初の事件の日に、ローン・マルヴォが盗難車に乗っているのを見つけ不審感を抱くが、マルヴォに脅されて見逃す。妻とは死別しており、娘が一人いる。

 

ビル・オズワルド/ボブ・オデンカーク

 ベミジー警察署の新署長。一連の事件を適当に片付けようとしており、モリーの話に耳を傾けない。レスターとは高校時代の同級生だった。

 

ナンバーズ&レンチ/アダム・ゴールドバーグ&ラッセル・ハーバート

 サム・ヘス殺しの犯人を追うためにファーゴの密輸組織から送られてきた二人組の殺し屋。レンチは口がきけないため、二人は手話で会話をする。

 

スタブロス・マイルズ/オリヴァー・プラット

 地元の大手スーパーを経営する事業家。妻と一人の息子がいる。脅迫状が送られてきて、大金を要求されている。昔に大金を得た経緯から、信心深い。

 

チャズ・ナイガード/ジョシュア・クローズ

 レスターの弟。仕事で成功しており、妻と一人の息子がいる。兄のレスターのことをバカにすることがある。違法な銃を持っている。

 

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映画『ファーゴ』との関連

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https://www.imdb.com/title/tt0116282/?ref_=nv_sr_srsg_3

 

 ドラマ『FARGO/ファーゴ』は、1996年に公開されたコーエン兄弟が監督・脚本を務めた映画『ファーゴ』に着想を得た物語です。しかし、これらの作品には、ほとんど関連がありません。そもそも、映画『ファーゴ』の舞台は1987年冬のミネソタ州ミネアポリスですが、ドラマ『FARGO/ファーゴ』シーズン1の舞台は2006年冬のミネソタ州ベミジーです。加えて、登場人物は一人も共通していません。

 

 そのため、映画版を観ていなくてもドラマ『FARGO/ファーゴ』は十分楽しむことができます。あの雪の中の大金の件だけは、映画『ファーゴ』の設定が活用されていますが。映画では、100万ドル得た悪党二人組の一人が雪の中にブリーフケースを埋めている場面がありましたが、ここに対応しています。まあ、このことは知らなくても大した問題はないでしょう。

 

 それでも、ドラマ『FARGO/ファーゴ』は、映画『ファーゴ』の世界観を存分に踏襲したものになっています。例えば、以下のような点が映画とドラマで共通しています。

 

・最初に「This is a true story」と嘘のテロップが入る

・季節は冬、雪が積もっている

・ノースダコタ州ファーゴがメインの舞台となるわけではない

・優柔不断なダメ男、成り行きで犯罪を犯す

・家庭的な人間でありながら、正義感の強い女性保安官

・テンポの悪い会話

・メイン以外の登場人物の感情が薄め

 

 こういった要素は映画『ファーゴ』でしか見られないものでした。例えば、「This is a true story」というのが嘘で、実はすべて嘘だというのは有名な話ですが、今回のドラマもその嘘を貫いています。タイトルの割に、ファーゴがメインの舞台にならないというのもちょっと皮肉ですよね。

 

 また、『ファーゴ』特有のテンポの悪い会話も度々出てきます。会話中にやたらと「Pardon?」とか「What?」とか言って聞き返すので、妙に会話がまったりとしているのです。映画版では、「Oh, yeah.」という気のない返事が特徴的でしたが、あれはフランシス・マクドーマンドの特権なのか、今回はあまり登場しませんでした。

 

 そういった点で、ドラマ『FARGO/ファーゴ』は、映画版独特の空気感をしっかり受け継いだものになっています。そのため、映画版と話は繋がっていなくても、これは間違いなく映画『ファーゴ』と同じ世界線で起こっていることだと確信できます。

 

 

キャスティングの妙

 
 
 
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 ドラマ版の『FARGO/ファーゴ』は、映画版に劣らず、キャスティングが最高なのです!まず、レスター役のマーティン・フリーマンがハマリ役です。レスターは、妻に文句を言われるダメ男なのですが、最初の登場シーンからそんな雰囲気が存分に出ていて笑わせてくるんですよ。立ち方や行動からして、もう面白いのです。大好き。

 

 殺し屋役のビリー・ボブ・ソーントンも良かったです。この殺し屋は、見た目はちょっと独特ですが、振舞いとかは基本的に紳士です。そんな男がほいほい歩いて、人を殺したりしているのが最高です。ちょっとしたことを人に言って、その人を不幸にするイタズラが好きなのも、殺し屋独特のユーモアっぽくて好きです。

 

 映画版でのフランシス・マクドーマンド的な立場の女性保安官を演じたのは、アリソン・トルマンです。どうしてもフランシス・マクドーマンドが演じたマージのカッコよさと比べてしまうのですが、今回のアリソン・トルマンもとても良かったですね。『ファーゴ』の保安官というのは、正義感だけでなく、家庭的な要素を併せ持っているのが重要です。そこが、主人公のダメ男と対比される点ですからね。ドラマ版でもそんな要素が色濃く出ていました。

 

映画『ファーゴ』との違い(ネタバレ)

 
 
 
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 もちろん、ドラマ『FARGO/ファーゴ』が一から十まで映画『ファーゴ』と全く同じことをやっても仕方がないです。そこで、今回のドラマ版では、犯罪が成功した後のレスターが描かれています。映画版では尺の関係もあり、一連の事件を一端逃げおおせた後の男を描くことは難しかったのですが、ドラマではそこもしっかりと描いています。

 

 具体的には第8話あたりでそれは描かれます。レスターは、妻殺しの容疑を自分の弟に着せ、おまけに甥の鞄に銃を入れました。これで、容疑が晴れた彼は、ついに自分の欲望に忠実になって生きる決意をします。サム・ヘスの奥さんと寝て、新しい洗濯機を買い、職場の女性と仲良くなります。むかつきますねぇ(笑) 第8話の冒頭が、やたら平和な雰囲気なのも、またむかつきます。

 

 そんな生活が、1年間も続いてしまいます。その間に、レスターは仕事で大成功をし、モリーはガスと結婚して妊娠しています。ある意味、この期間は何の事件も起こっておらず、平衡状態にありました。しかし、そんな中でもモリーとガスは決して事件のことを忘れてはいなくて、ローン・マルヴォも足を洗ったわけではありませんでした。

 

 そんな平衡状態を崩してしまうのが、これまたレスターです。彼のせいで再びマルヴォが人殺しを始め、事件が起こります。その中で、レスターは自分の妻にオレンジ色のダウンを着せて、自分の身代わりにするという行動します。1年経ってもクソ野郎でした。

 

 そして、最終的にレスターが成敗されることで、この事件は終わりを迎えます。事件終盤に再び鼻を怪我し、一度は回避した冬の湖での死を迎えるという結末は、かなり皮肉が効いていますね。

 

 事件解決の背後には、当然モリーとガスの努力と勇気があったわけで、これを忘れるわけにはいきません。個人的には、第6話でモリーが撃たれてしまって、これはビックリ。ここからの展開はシリアスにならざるを得ないんじゃないかと一瞬心配しました。しかし、撃ったのはガスだったし、モリーも生きてました。いやー、ガス。お前バカだなぁ。

 

『FARGO/ファーゴ』シーズン1まとめ

 以上、『FARGO/ファーゴ』シーズン1の感想を書いてきました。個人的には、栄羽版よりもこのドラマ版の方が好きというぐらい、このドラマは面白かったです。映画『ファーゴ』らしいブラックユーモアとゆるい雰囲気を受け継ぎながらも、第8話以降ではまた新しい視点を導入していて、ストーリー面で厚みがもたらされています。

 

 そして、マーティン・フリーマンが最高!役者としてもそうだし、第1話や第8話の冒頭の雰囲気なんかは大好き。ダメ男からクソ男への変貌っぷりが良いですねぇ。

 

 シーズン2になると、今度はキャストも時代も変わってしまうのは少し寂しいのですが、こちらも評価はかなり良いので期待しておきたいと思います。なお、『FARGO/ファーゴ』シーズン1は、現在U-NEXT,Amazon Prime Video,hulu,Netflixで配信中です。

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