Disney+(ディズニープラス)で配信されている『アボット・エレメンタリー』は、今最も注目したい海外ドラマの一つです。米批評サイトRotten Tomatoesでは98%フレッシュを獲得し、TV Guideが発表した「The 100 Best Shows on TV Right Now」では数多の人気作を押しのけて第1位に選ばれています。なぜ『アボット・エレメンタリー』はこれほど絶賛されているのでしょう? ネタバレなしで解説していきます。
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基本データ
- 原題:Abbott Elementary
- 放送局:ABC
- 放送期間:2021年12月~
- 脚本:クインタ・ブランソン
- あらすじ:教育予算の少なさを嘆きながらも、子どもたちにより良い教育を提供しようとする公立小学校の教員たちの姿を追うシットコム。
予告編
海外ドラマ『アボット・エレメンタリー』は、ディズニープラスで配信中。月額料金は990円(税込)、年間プランなら9,900円(税込)です。
海外での評価
冒頭でも書いた通り、批評サイトのRotten Tomatoesでは43人の批評家から98%フレッシュ、一般視聴者からは90%フレッシュを獲得しています。IMDbでは、1万人のレビューにより☆8.2の評価を受けています。
2022年のエミー賞では、コメディ部門の作品賞を含めて7部門にノミネートされています。クリエイターと主演を務めるクインタ・ブランソンは、TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」にも選出されました。現在32歳のブランソンは、このドラマで一気に注目を集めるクリエイターになりました。
近年、高い評価を得ているドラマはもっぱらケーブルテレビ局かストリーミングサービスの作品なのですが、『アボット・エレメンタリー』は地上波局のABCで放送されています。もしも今年のエミー賞で作品賞を受賞した場合、地上波局のドラマが受賞するのは2014年の『モダン・ファミリー』以来になります。
なぜ絶賛されているのか?
『アボット・エレメンタリー』がこれほど高い評価を受けている一つの理由は、その共感しやすさにあります。舞台となっているのが公立小学校ということで、多くの人にとって馴染みがあり、懐かしさを感じられる場所です。
公立というのが上手いところで、教員たちはしょっちゅうお金がないと嘆きながらも、様々なタイプの子どもたちと接しなければいけません。子どもたちのいたずらや奇行を見ていると、こんなことしてる奴いたよなぁなんてことを思ったりもします。
この2つの点は、アメリカの教育問題にも関連しています。公立学校は、本当にお金のやりくりに苦労しているそうです。また、子どもたちの中には家庭環境が良いとは言えない場合や、逆に能力が高すぎて普通の授業では満足できない場合もあります。『アボット・エレメンタリー』では、これらの教育問題にもさらっと触れてみせます。
ただし、あくまでもコメディドラマなので、これらの問題にそこまで深入りするわけではありません。リアルな教育問題を知りたかったら『THE WIRE/ザ・ワイヤー』のシーズン4を観てください。アメリカの教育の何が問題なのか? なぜ教育問題に真剣に取り組む必要があるのか? が身にしみてわかります。
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アボットの話に戻ると、もう一つ、キャラクターの良さもあります。教員たちは、だいたい良い人です。主人公のジャニーンは若手で、教育への情熱がありますが、時にそれが空回りしてしまいます。ベテランのメリッサとバーバラも子どもたちのことは第一に考えており、的確なアドバイスをくれます。
一方、臨時教員のグレゴリーにとって、教員という仕事はキャリアアップの手段でしかありません。当初は子どもたち想いとは言い難い先生ですが、その気持ちは少しずつ変わっていきます。校長のエヴァは、子どもたちのことも学校のことも教員たちのことも、全く考えてはいません。自分大好き人間です。こういうキャラクターがいるので、コメディドラマとしては全体のバランスが取れています。
ドラマの視点は、子どもたちに対しては特に優しく、短い出演時間でも成長などが見られるようになっています。教員たちへの視点も優しく、子どもたちだけでなく先生たちも一緒に成長していく様子が描かれています。
そして、最も重要なのは、コメディドラマである『アボット・エレメンタリー』が、ちゃんとコメディとして面白いということです。ネタの多くは、ブラックジョークや下ネタではないので、年齢や国籍も関係なく楽しめるコメディになっています。
モキュメンタリー形式
このドラマがモキュメンタリーであることに関しては、賛否入り交じった意見があるかもしれません。モキュメンタリーとは、あたかもドキュメンタリー番組であるかのように撮影・編集された映画やドラマのことです。『アボット・エレメンタリー』の場合は、登場人物がカメラ目線になったり、カメラに向かって話す場面がよく登場します。
このジャンルの最も代表的な作品は、イギリス版およびそのアメリカ版リメイクのドラマ『ジ・オフィス』です。どこにでもありそうなな平凡なオフィスの日々を映し出した『ジ・オフィス』は、イギリスとアメリカでどちらも絶大な人気を獲得しました。
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『アボット・エレメンタリー』の形式は、ほとんど『ジ・オフィス』と同じ。キャラクターにも共通点があります。ちょっとこじれた職場恋愛や自分大好きな上司などは『ジ・オフィス』にも出てきます。ただし、ブラックジョークと下ネタが満載だった『ジ・オフィス』と比べると、『アボット・エレメンタリー』のネタはずっと穏やかなので、家族で観るのにもおすすめです。
強いて言えば『アボット・エレメンタリー』のモキュメンタリーは、どこかぎこちないように感じます。もっとモキュメンタリーであることを活用した方が面白くなるのではないかと思いましたが、それは今後の伸びしろですねぇ!
まとめ
以上、アメリカで絶賛されているドラマ『アボット・エレメンタリー』の魅力を解説してきました。が、本当の面白さはコメディであること、すなわち笑えるということなのですが、笑いを解説するなんて野暮なことはやりません。とりあえず、Disney+(ディズニープラス)で本編を観てみることをおすすめします。一話あたり22分だけです。何話か観てみれば、その面白さは十分わかってもらえるでしょう。
海外ドラマ『アボット・エレメンタリー』は、ディズニープラスで配信中。月額料金は990円(税込)、年間プランなら9,900円(税込)です。