アイオウ・エディバリー(Ayo Edebiri)は、2022年にシーズン1が配信された『一流シェフのファミリーレストラン』で若きシェフを演じて一躍注目を浴び、翌年には、声優としての仕事を含めると出演映画5本、出演ドラマ8本が公開されるほどの人気者になりました。
ドラマ『一流シェフのファミリーレストラン』では真面目な役を演じていますが、そもそもコメディアンという面もあり、コメディ作品への出演が多く、インタビューでも気の利いたジョークを放つことの多いアイオウ・エディバリー。今回は、そんな彼女のプロフィールや代表作などを特集します。
*日本語では「アヨ・エデビリ」と表記される場合もあります。
アイオウ・エディバリーの生い立ち
アイオウ・エディバリー(Ayo Edebiri)は、1995年10月3日にマサチューセッツ州ボストンで生まれ、バルバドス出身の母とナイジェリア出身の父のもとで育ちました。一人っ子で、兄弟姉妹はいません。両親は敬虔なペンテコステ派のキリスト教信者だそうです。
エディバリーが、最初に演劇に触れたのは、8年生の演劇の授業にて。それから、improvと呼ばれる即興コメディに興味を持つようになります。ニューヨーク大学に進学すると、最初は教育を専攻していたものの、後に脚本に専攻を変えています。この大学時代に、当時演劇を専攻していたレイチェル・セノットと出会い、意気投合しています。
アイオウ・エディバリーは、スタンドアップコメディアンとしてキャリアをスタートさせ、2014年には、早くもComedy Centralの番組にも出演しています。大学卒業後の2020年には、Comedy Centralでレイチェル・セノットとともにコント番組『Ayo and Rachel are Single』を制作しています。
2019年にはNBCのシットコム『Sunnyside』のスタッフライターとして仕事をし、2020年の映画『Shithouse』では映画初出演を果たします。2020年からは、Netflixのアニメ『ビッグマウス』のミッシー役に抜擢され、シーズン4から現在まで演じています。
その後も、Apple TV+のドラマ『ディキンスン~若き女性詩人の憂鬱~』やFX on Huluの『ザ・プレミス』でスタッフライターなどを務めた後、2022年からFX on Huluで配信が始まったドラマ『一流シェフのファミリーレストラン』で準主役のシドニーを演じます。本作はスマッシュヒットを記録し、アイオウ・エディバリーの知名度を高めるとともに、エミー賞やゴールデングローブ賞の栄誉にも輝きました。
同年にはFXのシットコム『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』のシーズン4第5話「私立学校」の脚本も手掛けており、全米脚本家組合賞などにノミネートされています。2023年には、ABCの人気シットコム『アボット・エレメンタリー』に出演し、映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』ではグローリー・グラントの声優を演じています。また、レイチェル・セノットとともに主演したコメディ映画『ボトムス ~最底で最強?な私たち~』は、Rotten Tomatoesで90%フレッシュなど批評家と観客から高い支持を得ました。
アイオウ・エディバリーの代表作
ドラマ『一流シェフのファミリーレストラン』2022年~
経営が傾いているシカゴのレストランを再生させるために奮闘する人々を描いたヒューマンドラマ。原題は『The Bear』。アメリカのFX on Huluで配信され、事前の注目度は低かったものの、口コミを中心に大絶賛と噂が広まり、大ヒットしている。エミー賞作品賞受賞。アイオウ・エディバリーは、新たにレストランにやってきた才能豊かな料理人のシドニー役。コメディ的な見せ場はないものの、才気溢れる若者を巧みに演じています。
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映画『ボトムス ~最底で最強?な私たち~』2023年
女子のためのファイトクラブを創設することになったレズビアンの親友2人組が主人公の学園コメディ映画。『スーパーバッド 童貞ウォーズ』や『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』のように、下品なネタが盛り沢山で、華やかではない方の青春を懐かしくも面白おかしく描いた秀作。アイオウ・エディバリーは、主人公の1人を演じている。内気なレズビアンで、レイチェル・セノット演じるもう1人の主人公とは対照的な性格をしている。ツッコミ役のようでもある。
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ドラマ『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』2022年
ニューヨークに暮らすヴァンパイアたちの共同生活を描いたシットコム。アイオウ・エディバリーは、出演はしていないが、シーズン4第5話「私立学校」の脚本をShana Gohdとともに担当している。ヴァンパイアならではの奇天烈な展開が面白く、全米脚本家組合賞にノミネートされ、ハリウッド批評家連合が主催するアストラ賞を受賞している。
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ドラマ『アボット・エレメンタリー』2023年
公立小学校の教員たちが主人公のシットコム。アイオウ・エディバリーは、シーズン2で主人公の妹役として出演した。主演のクインタ・ブランソンとは、即興コメディから興味を持ち始め、脚本家兼俳優として活動し、アニメ『ビッグマウス』の声優を務めたことがあるなど、共通点が多い。第75回エミー賞では、クインタ・ブランソンが『アボット・エレメンタリー』の演技でコメディ部門の主演女優賞、アイオウ・エディバリーが『一流シェフのファミリーレストラン』の演技で同部門の助演女優賞を受賞した。
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映画『シアター・キャンプ』2023年
夏の演劇学校を描いたコメディ映画。『一流シェフのファミリーレストラン』シーズン2で共演したモリー・ゴードンが監督・脚本・主演を務めている。アイオウ・エディバリーは、経歴詐称をしている演劇講師を演じた。出演時間が少なく、彼女が得意とするコメディ演技が十分に見られるとは言えないが、「軍団(*1)」の作品の一つなので、らしさはある。
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*1 私が勝手に「軍団」と呼んでいる、最近のハリウッドのコメディ映画界隈で勢いのある1995年生まれの女性映画クリエイターたちのこと。レイチェル・セノット、エマ・セリグマン、アイオウ・エディバリー、モリー・ゴードンが主なメンバー。中心人物がわからないので、何軍団と呼べば良いかは現在思案中。
映画『サンダーボルツ』2025年予定
アイオウ・エディバリーがついにマーベルに進出します。2025年に公開予定のMCU映画『サンダーボルツ』において、エディバリーが演じる役はまだ明かされていませんが、フローレンス・ピューやセバスチャン・スタン、ジュリア・ルイス=ドレイファス、オルガ・キュリレンコら豪華キャストと共演することになります。
アイオウ・エディバリーの嘘設定
アイオウ・エディバリーは、いくつかの嘘設定があります。コメディアンとしてのジョークなのですが、インタビューやSNSでなどで1年以上に渡って嘘設定を突き通すこともある徹底ぶりです。
一つは、アイオウ・エディバリーがNetflixのドラマ『コミンスキー・メソッド』のショーランナーだということ。かつてのツイッターのアカウント(今は削除)のプロフィール欄に書いてあり、The Hollywood ReporterのRound Tabelインタビューでは女優のエル・ファニングやナターシャ・リオンからも言及されています。
このジョークの真相は、アイオウ・エディバリー自身がThe Late Show with Stephen Colbertに出演した際に明かしています。『コミンスキー・メソッド』は、マイケル・ダグラスとアラン・アーキンという大御所俳優が主演するコメディドラマ。エミー賞にもノミネートされている高評価の作品です。
アイオウ・エディバリーはこの作品には全く関わっていませんが、そのようなベテランの白人男優2人が主演するドラマを、若い黒人の女性である自分が作っていたら面白いだろう、という趣旨のジョークです。冗談で言っているだけなので、説明してしまったら何も面白くないのですが、そういうことです。『コミンスキー・メソッド』を批判する意味合いはありません。
もう1つは、アイオウ・エディバリーがアイルランド人だというもの。実際には、バルバドス出身の母とナイジェリア出身の父のもとで生まれ、ボストンで育ったので、アイルランドとは全く関係ありません。
このジョークが始まったのは、2023年3月のある授賞式のレッドカーペットにて。当時、賞レースで話題になっていた映画『イニシェリン島の妖精たち』に言及し、この映画の撮影で4ヶ月間アイルランドにいたと語っています。そして、アイオウ・エディバリーが演じていたのは、ロバのジェニーだそう。ずっとロバの役で大変だったが、アイルランドの景観は美しかったとか。
もちろん、アイオウ・エディバリーはロバを演じていないどころか、やっぱり『イニシェリン島の精霊たち』にも全く関わっていません。それでも、ジョークは広まり続け、2024年1月のクリティクス・チョイス・アワードの受賞スピーチでアイルランドに感謝を捧げるまでになっています。
これも他愛のないジョークですが、アイルランド出身の俳優がイギリス出身と言われがちな現状(SCREEN誌よ!お前のことだ!)を上手く皮肉っているとの指摘が上がり、最近になってさらなる広まりを見せています。
アイオウ・エディバリーのSNS
アイオウ・エディバリーは、インスタグラムのアカウントを持っており、定期的に更新しています。フォロワー数はつい先日100万人を超えました。
なお、かつてはツイッターのアカウントを持っていましたが、現在はアカウントを削除しています。
アイオウ・エディバリーのまとめ
以上、アイオウ・エディバリーのプロフィールや代表作などを紹介してきました。役者としても脚本家としてもコメディアンとしても才能があり、今まさにハリウッドを席巻しているところです。今後も、ドラマ『一流シェフのファミリーレストラン』シーズン3を始め、様々な映画やドラマで顔を見たり声を聞いたりすることができるでしょう。とても楽しみにしています。