2022年もまとめの時期になり、そろそろ毎年恒例(といってもまだ2回目)の年間ベスト海外ドラマを決めます。ですが、その前に、部門賞を決めてみても良いんじゃないかと思いました。題して「クリエイティブアーツ・パンチ・アワード2022」。2022年の海外ドラマを総括する上で、どうしても称えておきたい各部門を選びました。受賞者には、後日、フルーツポンチの液体が贈呈されます。
なお、記事の最後に対象作品一覧、すなわち私が今年観た新作海外ドラマがまとめてあります。作品賞ベスト10および演技賞などは、改めて後日発表します。
*シーズン〇第△話を「S〇E△」と略記しています。
関連記事:2022年新作海外ドラマベスト10【作品賞・監督賞・演技賞】 - 海外ドラマパンチ
最優秀キャラクター賞
ミッキー・ハラー『リンカーン弁護士』
クレオ・シュトラウブ『KLEO/クレオ』
ミスティ『イエロージャケッツ』
ユニークで愛すべきキャラクター3人にこの賞を贈ります。マイクル・コナリー原作のNetflixドラマ『リンカーン弁護士』の主人公ミッキー・ハラーは、親しみやすいキャラですが、頭脳派で意外としたたかなところもあるのが面白い。
Netflixドイツ製作のスパイドラマ『KLEO/クレオ』に登場したクレオ・シュトラウブは、ハードボイルドな生き方をしていますが、愛らしくもあります。
クリスティーナ・リッチ演じる『イエロージャケッツ』のミスティは、クレイジー過ぎて笑っちゃうタイプのキャラクターです。この前までは『オザークへようこそ』のウェンディ・バードがそのポジションにありましたで、代替わりということで。
最優秀視覚効果賞
『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』
視覚効果賞なら、これしかありません。テレビドラマ史上最高の製作費が掛けられたAmazonプライムビデオの『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』の映像は、比類なく美しいものでした。中つ国の世界をまるごと作ってしまっています。4K UHD/Dolby Atomosでも配信されているので、ぜひご家庭でできる限り最高の視聴環境を用意して観てみてほしいです。
最優秀アクションシーン賞
『ジャック・リーチャー~正義のアウトロー~』S1E6
~必殺!ネクタイ吊り~
一番喧嘩に強い人間は、体がデカくてムキムキの男です。Amazonのドラマ『ジャック・リーチャー』は、まさにそんな男が敵を倒しまくる話。戦闘シーンは、意外とグロいところもあり、本当にアウトローっぽい。シーズン1第6話の最終シーンは、スーツを着たまま階段での戦闘です。手近な物を使いながら相手の体を器用に使い、ネクタイに吊り下がってフィニッシュする一連のアクションは、独創的で痛快でした。
最優秀コメディシーン賞
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』S3E8
~エアロビをするナンドール~
情け容赦しないヴァンパイアとして知られるナンドールが人間になりたくてウェルネスセンターに入所する回です。ナンドールがエアロビクスをしている2分ぐらいのシークエンスにネタが詰め込まれていて、何度見ても笑ってしまいます。動きがシュールすぎる。
最優秀気まずいシーン賞
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』S1E9
~ラリスを刺激する生足魅惑のアリセント~
これは衝撃シーンでした。登場人物がたくさん死にまくるドラマなのに、一番衝撃を受けたのはアリセントが生足を披露した場面でした。それほどエロティックなシーンでもないのですが、ラリスにとっては違うようで、それはもう満足なようです。観ているこちらはどんな顔していれば良いんでしょう???
最優秀取り調べシーン賞
『ブラック・バード』
~猟奇犯罪容疑者との気さくな会話~
実話を基にした『ブラック・バード』では、刑務所に収監されている男が、殺人容疑者との会話を通して証拠を引き出そうとします。この容疑者というのが曲者で、キモいんだけど殺人まではしなさそうな雰囲気があります。それゆえ、会話の中でじりじりと真実が語られていく場面はなおさら怖さと興奮でゾクゾクします。
最優秀ゲスト俳優賞(コメディ)
グレター・リー『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』
シーズン1から出演時間は減ったものの、強いインパクトを残していったグレタ・リー演じるマキシン。主人公のナディアも十分個性的で面白いキャラクターですが、マキシンはさらにその上です。登場するシーンはいつも面白いので、いつの間にか彼女の登場を楽しみにドラマを観ていました。
最優秀ゲスト俳優賞(ドラマ)
レイ・リオッタ『ブラック・バード』
惜しくも今年5月に亡くなってしまったレイ・リオッタですが、最後まで名優でした。『ブラック・バード』でレイ・リオッタが演じたのは、主人公の父親役。徐々に認知症を患っていく過程は見ていてツラいものがありましたが、息子との複雑な関係を素晴らしい演技で魅せてくれました。
最優秀オープニング賞
『セヴェランス』
ドラマのテーマである日常と職場の二面性を表現しているのはもちろん、とても不気味で、しかもちょっとしたユーモアもあるオープニングになっています。鳥肌ものの傑作アートです。
最優秀主題歌賞
ミック・ジャガー"Strange Game"『窓際のスパイ』
いまどき、主題歌がある海外ドラマの方が珍しい。主題歌がないか、あったとしても既存の曲を使っている場合がほとんど。そんな流れの中で、あのミック・ジャガーに主題歌を依頼したのは『窓際のスパイ』製作陣の英断です。落ちこぼれスパイ集団のドラマらしく、負け犬たちをユーモラスに歌った曲はカッコいい。ミック・ジャガーの歌声もまだまだ現役だなと感じさせてくれます。
最優秀作曲賞
セオドア・シャピロ『セヴェランス』
ニコラス・ブリテル『メディア王~華麗なる一族~』
イザベラ・サマーズ『ジ・オファー~ゴッドファーザーに賭けた男~』
この部門の受賞者は3人。1人目は、Apple TV+『セヴェランス』のセオドア・シャピロ。もの凄く不思議な音楽です。2人目は、『メディア王』シーズン3で今回も素晴らしいサウンドトラックを作ってくれたニコラス・ブリテル。最終話の最後のあの曲が耳にこびりついて忘れられません。3人目は、『ジ・オファー』のイザベラ・サマーズ。映画『ゴッドファーザー』といえば、ニーノ・ロータの超有名なテーマ曲がありますが、そのエッセンスを取り入れたオリジナルのサウンドトラックも見事。
最優秀選曲賞
『ピースメイカー』
ジェームズ・ガンの大好きなロックンロールの数々が全編を通して流れる『ピースメイカー』に最優秀選曲賞を贈ります。正直、その曲を使いたさすぎて、ドラマのシーンと選曲がミスマッチしているときもあるのですが、オープニングのDo Ya Wanna Taste Itを筆頭に、隠れた名曲の数々を再発掘した功績は大きい。
最優秀衣装デザイン賞
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』
衣装に関して言えば、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、もしかしたら『ゲーム・オブ・スローンズ』より良いんじゃないでしょうか。前作のアイコニックなアイテムを取り入れながら、王族の服装らしくエレガントな仕上がりになっています。加えて、今回は黒装派と翠装派の対立の話なので、服の色は非常に重要な意味を持ちます。特に、レイニラの結婚式でのアリセントの衣装! 『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』では、ぜひファッションにも注目してみてほしいです。
最優秀モノローグ賞
『ベター・コール・ソウル』S6E13
~最後の宣誓証言~
ジミー・マッギルが輝くのはやはり法廷でした。『ブレイキング・バッド』から続いてきた物語を総括する法廷シーンには、驚きと感動がありました。喋っているのはジミーだけですが、キム・ウェクスラーの視線のおかげで、この場面は何倍にも優れたものになっています。
最優秀ダイアログ賞
『ペーパーガールズ』S1E5
~新たなピリオド~
不運にもAmazonによってシーズン1で打ち切られてしまった『ペーパーガールズ』ですが、その脚本にはいくつか優れたところがありました。第5話では、時間を旅する4人組が生理の話をしているのですが、妙にじっくり語っていて、結構笑えます。
最優秀時間トリック賞
『デビルズ・アワー~3時33分~』
次点『ウエストワールド』S4, 『シャイニング・ガール』
今年は時間トリックを山ほど観ました。時間トリックとは、タイムトラベルなど時間に関する事柄を使って意外な展開を起こす手法のことを言います。私が、そう決めました。映画だったら『メメント』『インターステラー』なども時間トリックに分類します。
近年増えてきています時間トリックものの中でも『デビルズ・アワー~3時33分~』は、さらにその一歩先に踏み出したネタバレ厳禁の大胆なトリックの使い方が驚きでした。
『ウエストワールド』シーズン4第4話には、これまでのシーズン以上に強烈な衝撃をくらいました。シーズン4第6話のアーロン・ポール回も面白かった。『シャイニング・ガール』は、トリック自体はよく理解できなかったものの、謎の提示の仕方とストーリーとの絡み具合が良かったので、名前を挙げておきます。
最低作品賞
『令嬢アンナの真実』
アンナ・ソローキンの実際の詐欺事件をドラマ化したNetflixドラマ『令嬢アンナの真実』は、主演のジュリア・ガーナーが頑張って演技をしていること以外に褒められるところはありません。特に、被害者とされている関係者を実名のまま登場させて、主人公以上に偽善者扱いしていることに終始首をかしげざるを得ませんでした。
最低エピソード賞
『オザークへようこそ』S4E14
Netflixドラマ『オザークへようこそ』ファイナルシーズンには、実は褒めたいところもあります。特に、1月に公開された前半7話は面白く、そのまま行けばトップ10入りもありえました。しかし、4月に公開された後半7話はエピソードが進むほどにつまらなくなり、最終話は肩透かしの連発。残念。
では、2022年最高の海外ドラマは一体何でしょう? 以下の記事で新作海外ドラマベスト10および演技賞、監督賞を発表しています。
対象作品
今年、私が観た新作海外ドラマのリストです。「新作」とは、日本初上陸日が2022年内であることを基準としています。ただし『原潜ヴィジル 水面下の陰謀』は昨年12月30日に最終話が配信されていますが、今回のリストに含めています。
Netflix
『オザークへようこそ』S4
『令嬢アンナの真実』
『リンカーン弁護士』S1
『ストレンジャー・シングス 未知の世界』S4
『KLEO/クレオ』S1
Apple TV+
『セヴェランス』S1
『シャイニング・ガール』S1
『パチンコ』S1
『窓際のスパイ』S1
『フォー・オール・マンカインド』S3
『ブラックバード』
『バッド・シスターズ』S1
『神話クエスト』S3
Amazon
『エクスパンス~巨獣めざめる~』S6
『リーチャー~正義のアウトロー~』S1
『ザ・ボーイズ:ダイアボリカル』S1
『アップロード~デジタルなあの世へようこそ~』S2
『アウターレンジ~領域外~』S1
『ボッシュ:受け継がれるもの』S1
『ザ・ボーイズ』S3
『ペーパーガールズ』S1
『ペリフェラル~接続された未来~』S1
『デビルズ・アワー~3時33分~』S1
HBO & HBO Max
(いずれもU-NEXTで見放題配信中)
『メディア王~華麗なる一族~』S3
『ピースメイカー』S1
『レイズド・バイ・ウルブス 神なき惑星』S2
『バリー』S3
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』S1
『ウエストワールド』S4
『WE OWN THIS CITY-不正と汚職が支配する街-』
FX & Hulu & FX on Hulu
(いずれもDisney+で見放題配信中)
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』S3~4
『アトランタ』S3
『一流シェフのファミリーレストラン』S1
『マーダーズ・イン・ビルディング』S2
『DEVS/デヴス』
『リブート』
Showtime & Paramount+
『イエロージャケッツ』S1
その他
『ベター・コール・ソウル』S6
『アボット・エレメンタリー』S1
『独身女の禁酒ライフ』S1
『スーパーマン&ロイス』S1
『超サイテーなスージーの日常』S1
『ランドスケーパーズ 秘密の庭』
『絶叫パンクス レディパーツ!』S1
『原潜ヴィジル 水面下の陰謀』