2022年、過去最高レベルで非常に多くの海外ドラマが日本上陸しています。ハリウッドもコロナ以前の活気を取り戻し、新たに製作されたドラマが2022年に入って一気に公開されるようになりました。動画配信サービスの拡大もあり、日本で観られる海外ドラマの数も増えています。
2022年も折り返しを迎えるこのタイミングで、自分が観た新作ドラマ・新シーズンを総レビューしていきます。加えて、ほぼ日本初配信の新作と言えるような作品は「準新作」として、こちらもまとめてレビューしています。レビューなので厳しめの評価をしているものもあります。面白そうな新作ドラマを見つける一助になれば幸いです。
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新作
『イエロージャケッツ』
昨年末から今年始めにかけてアメリカで放送されスマッシュヒットしたのが、サバイバル・ミステリー・ホラー・青春ドラマ『イエロージャケッツ』です。日本では、U-NEXTで配信されています。このドラマには、2つのストーリーがあります。一つは、1990年代に飛行機が墜落してしまい、山の中でサバイバルをすることになってしまった高校女子サッカーチームの話。もう一つが、事故を生き残った人々の25年後の話です。
この構成により、本作は青春サバイバルドラマだけでなく、多くの謎が登場するミステリーとしても見応えのあるものになっています。アメリカでヒットしたのも、様々な謎をめぐる議論がネット上で盛んに行われていたからだそう。ただし、あらかじめ言っておくと、シーズン1が終わった時点では謎のほとんどは解決されません。シーズン2が配信される前ぐらいに観てみるとちょうど良いかもしれません。
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『令嬢アンナの真実』
ジュリア・ガーナー主演のNetflixドラマ『令嬢アンナの真実』は、2月に公開されました。富豪令嬢のフリをして詐欺を繰り返した実在の人物を描くリミテッドシリーズです。世界的にヒットしましたが、はっきり言ってこのドラマは面白くないです。「~の真実」というタイトルの割に、最後までアンナ・デルヴェイの真の姿がよくわからないまま終わってしまいます。ストーリーも演出も洗練されておらず、単に、実際の事件の話題性に便乗しただけようなドラマです。
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『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』
4月にディズニープラスで配信された『ドロップアウト』は、若き女性CEOのエリザベス・ホームズが率いたシリコンバレーの医療関連企業「セラノス」による大規模な詐欺事件の実話を描いたリミテッドシリーズです。主演のアマンダ・サイフリッドの演技が素晴らしく、ときに情熱に燃え、ときに追い詰められる起業家を熱演しています。ビジネスパーソンに特におすすめ。
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『スーパーマン&ロイス』
現在、NHK総合で放送中の『スーパーマン&ロイス』は、DCコミックスの超有名ヒーローの物語です。スーパーヒーロードラマではあるものの、内容はスーパーマンと妻のロイス、2人の子供たちとの関係にフォーカスされています。ファミリードラマ色が強いので、アメコミファンでなくても十分楽しめる作品になっています。9月には配信&Blu-ray/DVDリリース予定。
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『アウターレンジ~領域外~』
AmazonプライムビデオのSF×カウボーイドラマ『アウターレンジ~領域外~』は、奇妙な謎の数々は魅力的であるものの、シーズン1が終わった時点では、ひたすら風呂敷を広げまくっただけ。非常に多くの謎が残り、もやもやしています。シーズン2があるならば、それ次第でさらに面白くなる可能性もありますが、ひとまず視聴は保留しておいて良いでしょう。
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『リンカーン弁護士』
5月に配信されたNetflixオリジナルの新作ドラマ『リンカーン弁護士』は、軽めのノリと堅実なストーリー展開が心地よく、あらゆる海外ドラマファンにおすすめできる作品です。世界的にもヒットしており、シーズン2の製作も決定しました。
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『ボッシュ:受け継がれるもの』
昨年、第7シーズンで完結したAmazonオリジナルドラマ『BOSCH/ボッシュ』の続編ドラマ『ボッシュ:受け継がれるもの』も5月に始まりました。本家と同じく徹底したリアリティによるハードボイルドな面白さは健在です。刑事ドラマファンの方は、今からでもぜひ『BOSCH/ボッシュ』を。
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新シーズン
『ベター・コール・ソウル』
2022年上半期、最も話題になった海外ドラマといったら『ベター・コール・ソウル』ではないでしょうか。超名作ドラマ『ブレイキング・バッド』の前日譚にして、本家を超えると言っても過言ではない傑作ドラマです。4~5月にファイナルシーズンの前半7話がNetflixで配信され、7~8月に後半6話が配信予定です。
時系列的に『ブレイキング・バッド』の直前となるシーズンということで、『ブレイキング・バッド』に出てきたようなアイテムや人物が続々と登場しています。ウォルター・ホワイトの時代に着実に近づいていっていることが感じられます。裏を返せば、本家シリーズに登場しない人物は、どこかで退場することになります。これが怖ろしい。『ベター・コール・ソウル』と『ブレイキング・バッド』が繋がる瞬間まで目が離せません。
『メディア王~華麗なる一族~』
現代の海外ドラマが凄いのが、史上最高クラスの作品が一つだけではないことなんです。今最も面白いもう一つの傑作海外ドラマが、U-NEXTで配信中の『メディア王~華麗なる一族~』です。2月からシーズン3が配信されました。シーズン2がエミー賞作品賞を受賞し、現在、シーズン3があらゆる賞レースを総なめしています。
こういった説明をすると、なんとなく堅苦しそうな印象を受けてしまいます。巨大メディア企業の次期CEOをめぐる跡継ぎ争いの話だなんて聞けばなおさらです。でも、実はこのドラマ、ほとんどコメディです。コメディドラマより笑える場面が多いぐらいです。皮肉たっぷりのブラックジョークがほとんどなので好みは分かれるかもしれませんが、これほど笑えるドラマはなかなかありません。
そんなコメディの皮を被りながらも、常に駆け引きや裏切りが行われています。笑いと緊張感のメリハリが凄まじい。豪華絢爛な衣装やセットも見どころの一つです。最もリッチで最も笑えて最もゲスいドラマ。それが『メディア王』。その面白さは、私が保証します。
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『オザークへようこそ』
1月にファイナルシーズンの前半7話、4月に後半7話が公開されて完結したNetflixオリジナルドラマ『オザークへようこそ』。麻薬カルテルの資金洗浄をすることになった家族の物語は終わりを迎えました。前半はとても面白かったです。知的な戦略合戦、そこに突如現れる予測不能なアウトサイダー、その結果としてもたらされるカオス。『オザークへようこそ』特有のスリリングな面白さを感じることができました。しかし、最終回はあまりにも不満が残るものでした。残念。
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『エクスパンス~巨獣めざめる~』
ファイナルシーズンが配信されたドラマはさらにもう一つ。Amazonプライムビデオで配信されている本格SFドラマ『エクスパンス』も1月にフィナーレを迎えました。これまでのシーズンより短い全6話ということで、ボリューム的な物足りなさはありましたが、最終話を筆頭に映像的な見ごたえは今回も十分。素晴らしい終わり方でした。SFドラマの金字塔として、今後も強くおすすめしていきたい傑作です。
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『デクスター:ニュー・ブラッド』
表の顔は警察で働く鑑識官、でも裏の顔はシリアルキラーという男が主人公の大ヒットドラマ『デクスター』の約9年ぶりの続編が『デクスター:ニュー・ブラッド』です。好きなドラマが復活するのは嬉しいものですが、そのクオリティが本家と比較すると残念なことになっていることも少なくありません。でも、本作に関してはそんな心配をする必要はありません。『デクスター』を一度でも好きだったファンならば絶対に観てほしい作品です。
主人公デクスター・モーガンだけでなく、あのヒリヒリするようなスリルやブラックユーモアも帰ってきて、面白かった『デクスター』を再び観ることができるのです! しかも『デクスター:ニュー・ブラッド』は、評判の芳しくなかったシーズン8最終回へのアンサーにもなっています。そういう意味で、本当にリブート=再始動させる意味のあるドラマだったなと思います。
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『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』
4月にシーズン2が公開されたNetflixオリジナルドラマ『ロシアン・ドール』。今シーズンは、タイムループではなくタイムトラベルです。シーズン1と比べると設定が平凡なので、物語自体の面白さはさほどではないかもしれません。でも、主人公のキャラクターの面白さは今回もピカイチ。ナターシャ・リオン演じるナディアのことを好きにならずにはいられません。
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『アップロード~デジタルなあの世へようこそ~』
こちらは2月にシーズン2が公開されたAmazonオリジナルドラマです。こちらも『ロシアン・ドール』と同じく、第2シーズンという性格上、斬新な設定による面白さはなくなっています。仕方ありません。それでもコメディドラマとしては手堅い作りになっており、随所で笑わせてくれます。
『ザ・ボーイズ』
6月からAmazonプライムビデオでシーズン3の配信が始まったアンチヒーロードラマ『ザ・ボーイズ』は、今回も絶好調。悪趣味なまでのバイオレンスと最低スーパーヒーローたちの活躍が続きます。ただし、このドラマの本質は社会風刺。どれだけえげつない映像や展開であっても、風刺ドラマとしてもの凄くスマートな内容になっているのも面白さの秘訣です。
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『アトランタ』
ドナルド・グローバーが製作・主演するドラマ『アトランタ』の4年ぶりの新シーズンが6月に配信開始されました。まだ1話しか観ていないのですが、すでに圧倒されています。未だ根強く残る人種差別を厳しく、ときに強烈な皮肉を通して暴き出しています。
準新作
『ゾーイの超イケてるプレイリスト』
CS放送ではすでにシーズン2が放送されましたが、Huluでは5月からシーズン1が配信されました。主人公が突如として他人の感情がミュージカルになって聞こえてしまう能力を獲得するというなかなか攻めた設定になっています。クレイジーな設定の割には、内容はとてもハートウォーミングなものでした。
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『スノーフォール』
現在までに全5シーズンが放送されている『スノーフォール』は、今年からディズニープラスで見放題配信が始まりました。1980年代のロサンゼルスで起こったクラックコカインのブームを背景に、一人の青年がのし上がっていく姿を描きます。様々な危機に直面したときに機転の良さで切り抜けていく様がカッコいい。
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『ジ・オフィス』(US)
世界的に圧倒的な人気を誇るものの、日本では長らく視聴できなかったコメディドラマ『ジ・オフィス』全9シーズンがついにHuluで初上陸しました。舞台は、何の変哲もない製紙会社のオフィス。社員たちの日常がドキュメンタリー形式で描かれます。そこそこブラックなジョークもありますが、徐々にその社員たちに親近感が湧き、やがて彼らなしでは日々が生活できないほどになります。これが、世界で最も愛されているシットコムの力です。
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『フィラデルフィアは今日も晴れ』
こちらも海外では高い人気があるものの、長らく日本では観られなかったコメディドラマです。現在は、ディズニープラスで全15シーズンが独占配信されています。主人公となる5人組は、揃いも揃って筋金入りのクズばかり。社会的なタブーを破りまくる彼らのアホっぷりは、好き嫌いが分かれそうですが、唯一無二のシットコムであることは間違いありません。
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『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』
こちらもディズニープラスで配信中。ヴァンパイアたちのユニークな日常をドキュメンタリー形式で撮影した『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』は、ブラックジョークとシュールなネタが満載で自分は大好きです。下ネタが非常に多いので苦手な人は注意してください。
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新シーズン開始
『マーダーズ・イン・ビルディング』
ディズニープラス配信中のミステリーコメディドラマ『マーダーズ・イン・ビルディング』は、シーズン2がスタートしています。シーズン1を先日観たのですが、笑いあり、ほっこりする展開あり、意外な展開ありと、三拍子揃っていてとても楽しめました。シーズン2もそんな調子だと嬉しいですね。
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『フォー・オール・マンカインド』
Apple TV+で配信されているSFドラマ『フォー・オール・マンカインド』は、月面に初めて着陸したのがアメリカではなくソ連だったら……? という設定から始まり、架空の宇宙開発史を描いていきます。シーズン2の評価が非常に高く、現在配信中のシーズン3にも期待が掛かっています。ただし、個人的にはキャラクターにリアリティを感じられず、辛めの評価になっています。
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まとめ
この記事のタイトルに書いた通り「今一番おすすめしたいドラマ」を決めておきましょう。今一番面白いのは『ベター・コール・ソウル』と『メディア王~華麗なる一族~』です。ぜひ観てほしいです。
新作に絞るなら、今一番おすすめしたいのは『リンカーン弁護士』ですかね。これは、誰におすすめしてもハズれないと思います。テンポが良く、面白いドラマのセオリーをきっちり押さえています。シーズン2も決まり、今後も安定に面白いドラマであってくれると期待しています。