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海外ドラマ『ピースメイカー』シーズン1感想|ダサくてもヒーローやって良いんだ

Eat peace, motherf**kers!

- Peacemaker, Peacemaker season 1

 

 映画『ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党、集結』のスピンオフ『ピースメイカー』は、「平和」という名目で平然と悪事をこなすあの男が主人公のドラマです。映画ではクソ野郎だなと思っていても、不思議なことに、爆笑しながらシーズン1を観終わる頃には「最高なクソ野郎じゃないか!」と思えるようになること間違いなし。ドラマ『ピースメイカー』シーズン1のネタバレ感想をまとめていきます。

 

 

 

基本データ

  • 原題:Peacemaker
  • 配信:HBO Max(アメリカ)、U-NEXT(日本)
  • 公開年:2022年
  • 話数:8
  • 監督・脚本:ジェームズ・ガン
  • 主演:ジョン・シナ
  • 概要:スターフィッシュ計画の後、ピースメイカーは新たな仲間とともに新たな極秘作戦を割り当てられる。今度の敵は、あらゆる人間に寄生している謎の地球外生命体「バタフライ」だった。

予告編

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 海外ドラマ『ピースメイカー』は、U-NEXTで独占見放題配信中。シーズン2の制作も決定しています。

 

あらすじ(ネタバレ)

 ピースメイカーは、政府の極秘チームとともに「バタフライ」と呼ばれるエイリアン集団と戦うことになる。バタフライは、人間を殺してその体内に入り込むことで、人間のフリをしてあらゆるところに潜んでいた。極秘チームのリーダーのマーンも実はバタフライだった。ただし、バタフライの集団にも2種類あり、一方は地球で穏やかに暮らしていこうとしており、もう一方は人類を侵略しようとしていた。バタフライの食料はカウと呼ばれる巨大生物から得られる黄色い粘性のある物質だけ。侵略を目指す集団はこれを安全なところに移送しようとしたが、ピースメイカーたちにはこれを阻止した。

 

最高なクソ野郎

 2021年に公開された映画『ザ・スーサイド・スクワッド』は、近年のアメコミ原作映画の中でも抜群にハジけていて、笑えて、痛快な作品でした。映画のジャンルの性質上、批評家からは大して評価されていませんが、一般の観客からはとても愛されていた作品でした。日本でも、THE RIVERの一般投票やアフター6ジャンクションのリスナー投票などで2021年のベスト映画に選ばれています。

 

 映画『ザ・スーサイド・スクワッド』は私もとても楽しんだのですが、ピースメイカーというキャラクターには、さほど親しみを感じませんでした。ちょっと笑えるキャラではあったし、「平和」を主張し続けてヴィランになっているところは面白いなと思いましたが、映画ではもっと良いキャラクターもたくさんいましたから。ラットキャッチャー2とかキングシャークとか。おそらくピースメイカーの最も面白い部分は、このドラマのために取っておいたのでしょう。

 

 映画の中で、ピースメイカーは「平和のため」と言って政府の秘密計画の証拠を隠滅しようとします。それに反対した軍人フラッグともみ合いになり、フラッグは最後に「平和の使者だなんて冗談だろ」と言い残して死んでいきました。このときのピースメイカーは、世界平和のためには多少の人間が死ぬことは全く問題ではないと考えていました。

 

 しかし、今回の作戦を通してピースメイカーは心機一転、ほとんど人を殺さないようになりました。ドラマでは、ピースメイカーが誤って人を殺してしまうことはあっても、狙って殺すのは数回のみ。最終決戦では、バタフライが寄生している人間の体は撃ちましたが、バタフライ自身は殺していません。「人を殺さないバットマンは腰抜けだ」と言っていたときとは大違いです。

 

 バタフライたちは自分たちの惑星を追われてやってきたので、もしピースメイカーがバタフライたちを徹底的に殺せば、種族は絶滅します。だからといって、全人類に寄生されてしまっては、人間が実質的に絶滅してしまいます。ということで、ピースメイカーは、人間を侵略しようとしない限りは、地球にいても構わないと判断したということでしょうか。

 

 まだ人類には勝手に自滅する可能性が残っていますが、やり直すチャンスがあって良いはずだとピースメイカーは考えています。彼自身が、過去の自分への反省からやり直しをした人間だからです。

 

 ピースメイカーが唯一自発的に殺したのは、自分の父親だけ。ピースメイカーはずっとクソ野郎だと思われていましたが、それは父親の影響でした。ピースメイカーの父親は、白人至上主義者で、子どもたちを大事にしようとせず、殺しの方法を教え込むような人物でした。アデバヨによれば、ピースメイカーの中には優しさがあるけれど、父親のせいでクソ野郎になってしまっているだけだそう。

 

 父親殺し以降、ピースメイカーは本当の意味で心を入れ替え、新たな平和の使者として活動をしていきます。でも、父親を自ら殺したと言っても、ホワイトドラゴンが唯一の父親であったことには変わりありません。だから、ときどきピースメイカーは父親のことを思い出したりもします。一筋縄でいかない感情です。

 

最高すぎるダサOP

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 まず最初に度肝を抜かれるのが、毎話のオープニングで目にすることになるダンスです。ピースメイカーを始め、ドラマに登場する登場人物たちがWig Wamの「Do You Wanna Taste It」に合わせて真顔でダンスを披露しています。絶妙にダサい。曲は最高だし、みんな頑張って踊ってるのに、ダサい。

 

 そんなOPから始まってドラマを観ていくのですが、みんな確かにダサいんです。ピースメイカーは、黙ってキレキレのアクションでもしていれば、見た目はカッコよくなりそうなものですが、そうではありません。とんちんかんな発言をしたり、ちょくちょく泣いています。ハーコートもサバサバ系アクション要員かと思いきや、意外と友情を大事にしてたりします。

 

 スーパーヒーロー的なカッコよさのある人物は、このドラマには登場しません。どいつもこいつもダサい。でも、このドラマはダサさを全肯定してくれます。ダサくたって良いじゃないか。寂しくて泣いたって良いじゃないか。友達を欲しがったって良いじゃないか、と。

 

 最終決戦でも再びOP曲が流れてきますが、今度の彼らは凛々しく見えます。完璧からは程遠いそれぞれのメンバーが、ここまで築き上げた友情と信頼の力が発揮されるわけです。アツい! 完璧なヒーローの集合体であるアベンジャーズやジャスティス・リーグとは違う興奮があります。

 

 ジェームズ・ガンは、2010年の映画『スーパー!』で脚本と監督をしていました。この映画は、コミックオタクの中年が、自らヒーローになって正義を果たそうとするという内容です。『ピースメイカー』と比べると『スーパー!』の後半は、かなりビターな味わいになっていますが、ダサい生き方にも光を当てていく姿勢はこのときからありました。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』も、マーベル映画の中では、そういった路線にあります。

 

 ドラマ『ピースメイカー』では、ジェームズ・ガンの脚本の上手さを存分に楽しむことができます。「ダサいヒーロー」というジェームズ・ガンの長年の題材を、ドラマの尺でたっぷり描くことができたんじゃないのかなと思います。コメディとしてもめちゃくちゃ面白いですし。

 

 音楽も好き放題使っている感じがしますよね。好きなロックを全部流してやるぞ!という勢いで「いつだってロックして良いんだぜ」と言い放ち、これでもかとロックが詰め込まれています。本作で使われているすべての曲をまとめたプレイリストは、以下のリンクからSpotifyやApple Musicなどで視聴できます。

Peacemaker Official Playlist

 

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