I like hurting human beings as much as the next guy, but this is really f**king good.
- Roman Roy, Succession season 1
今年に入りゴールデングローブ賞、エミー賞を席巻している注目海外ドラマ『キング・オブ・メディア』。世界最大のメディア複合企業を所有する超リッチな一家の泥沼の闘いを覗いてみましょう。
※『メディア王~華麗なる一族~』『サクセッション』も同じ作品です。
↓登場人物及び家系図・相関図はこちら(ネタバレなし)
『キング・オブ・メディア』シーズン1基本データ
・原題:Succession
・放送局:HBO
・放送日:2018年6月3日~8月5日
・話数:10
・一話あたりの長さ:58分
・クリエイター:ジェシー・アームストロング(ドラマ『ピープ・ショー』)
・製作総指揮:アダム・マッケイ(映画『バイス』『マネー・ショート』)
・あらすじ:
ケンダル・ロイは、メディア複合企業ウェイスター・ロイコのCEOローガン・ロイの息子であり、次期CEOになると見られていた。しかし、ローガンはまだケンダルにCEOの座は譲らないと言い出す。
・予告編:
※ドラマ『キング・オブ・メディア』シーズン1はAmazonプライムで配信中。『メディア王~華麗なる一族~』のタイトルでDVDリリースもされています。
注目海外ドラマ『キング・オブ・メディア』とは?
今、かなり注目度の高いドラマがHBOの『キング・オブ・メディア』。というのも、ノミネート作品が発表された2020年エミー賞で『キング・オブ・メディア』シーズン2は作品賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、監督賞、脚本賞を含め18部門でノミネートされています。今年1月のゴールデン・グローブ賞では作品賞(ドラマ部門)と男優賞(ブライアン・コックス)を受賞しています。
「現代版リア王」とも言われる『キング・オブ・メディア』では、大金持ち一家が大企業のCEOの座を巡る熾烈な争いが描かれます。その描き方はとても皮肉っぽいところがあり、所々で笑わされてしまいます。一般人からは想像もつかないところにいる一家による、世界経済を賭けたお家騒動が見どころです。
自分は『キング・オブ・メディア』を観ていて、『VEEP/ヴィープ』っぽいところがあるな(あれほどふざけてはいませんが)とも感じました。ただ、それもクリエイターを務めるのジェシー・アームストロングが、『ピープ・ショー』『フレッシュ・ミート』といった英国コメディドラマを手掛けていた人物だと知り納得。なんなら『VEEP/ヴィープ』のアーマンド・イアヌッチとドラマ『The Thick of It』も手掛けていますし、『VEEP/ヴィープ』S1EP8の脚本も書いています。
『キング・オブ・メディア』について一つやっかいなのが、日本語のタイトル問題です。スターチャンネルで初放送されたときは原題どおり『サクセッション』だったのですが、DVDリリース時には『メディア王~華麗なる一族~』、Amazonプライムビデオで配信されるときには『キング・オブ・メディア』になってしまいました。その後、スターチャンネルで放送されるときのタイトルは『キング・オブ・メディア』になったので、この記事もその表記に統一しています。
↓ネタバレなしで魅力を語る。
感想(ネタバレあり)
『キング・オブ・メディア』に関しては「お家騒動」とか「大金持ち」というキーワードを聞いていたので、肩肘張って見始めてしまったのですが、意外とコメディです。というか、完全にコメディ。そして、笑いの取り方は凄くイギリス的。登場人物全員が皮肉っぽいし、誰一人として素直じゃないんですよね。まあ、グレッグは素直な人間なので、彼のおかげで普通のレベルを再認識させられる感じです。
個人的にツボだったのは、ケンダルが何をしても父親に一杯食わされてしまうところ。その度に間の抜けた顔になってしまうんですよね。不謹慎かもしれないし、凄く可哀そうなんだけど、笑えちゃうんだよなぁ。
もちろん、それだけじゃなくって各々の策略合戦が面白いんですよね。ケンダルの策略はだいたいローガンにつぶされてしまうのですが、シヴも色々と企んでいますよね。最終話でコナーは大統領になるとか言い出すし、グレッグは意外にもずる賢さを発揮します。グレッグが書類廃棄をしているシーンで「これはコピーで」とか言ってたので、証拠隠滅するのに何故コピーしてるんだ?と思ってたんですけど、ここの伏線になっていたのですね。シーズン2が楽しみな展開です。
先ほども少し書きましたが、『キング・オブ・メディア』は『VEEP/ヴィープ』に似ていると思うのです。『VEEP/ヴィープ』は、『キング・オブ・メディア』と同じくHBOのドラマで、アメリカ初の女性副大統領の周辺で起こるドタバタ劇を描くコメディドラマです。ドタバタ劇とは言っても、シーズンが進むごとに政治風刺的な要素が強くなっていきます。会話劇がメインだったり、現代民主政治・資本主義を痛烈に風刺しているという点で、『VEEP/ヴィープ』(特にシーズン3以降)と『キング・オブ・メディア』はとても似通っているなと感じます。
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『キング・オブ・メディア』が目にも豪華ですよね。第1話から豪勢なランチに、家族全員ヘリコプターで移動しています。一方で、グレッグは貧しい家庭の出身であったり、野球に参加させられる中流家庭の少年(可哀そうだったなぁ)などもいます。この対比から、彼らがいかに常識はずれな生活をしているかが示されます。というか、食事とか服装とか本当に金が掛かってそうな感じがします。豪華に”見える”のではなく、本当に豪華なのが凄いところですね。
ストーリー展開としては、やはりHBOらしい。前半にはそこまで盛り上がるポイントがないものの、後半から徐々に盛り上がってきます。特に第6話でケンダルがローガンの不信任決議を提案する場面は面白い。どっちに転ぶかわからず、裏切りが次々と発覚していく流れに、とてもハラハラさせられました。
ただ、本当に面白くなってくるのはシーズン2からかなという気もします。シーズン1は助走なのかもしれません。実際にゴールデングローブ賞を獲っているのもシーズン2なので、次のシーズンにはさらに期待したいと思います。