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ドラマ『VEEP/ヴィープ』シーズン7感想:大統領になりたいだけなのに

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 アメリカHBOでの放送から2年。ついに『VEEP/ヴィープ』ファイナルシーズンが日本に上陸しました。時事ネタも多いので、もっと早く観たかったところですが、とりあえずは観られたことを喜んで、早速いきましょう。

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『VEEP/ヴィープ』シーズン7基本データ

・原題:Veep

・放送局:HBO

・放送期間:2019年3月31日~5月12日

・あらすじ:

 政治家を休んでいたセリーナ・マイヤーだったが、再び2020年の大統領選に出馬することを決める。義妹と結婚したジョナも、大統領選に出馬することに。エイミーは妊娠し、ダンとの関係を前進させたいと願う。

 

波乱の予備選

 シーズン7は、2020年の大統領選に向けた民主党の予備選の話です。立候補していたのは、次の5人。

 

セリーナ・マイヤー:元大統領

ケミ・タルボット:初の黒人女性大統領を目指す上院議員

バディ・カルフーン:ネバダ州知事

ジョナ・ライアン:ニューハンプシャー州選出の下院議員

トム・ジェームズ:元副大統領候補

 

 トムは立候補したり、取りやめたりしています。ケミのキャラクターは、完全にカマラ・ハリスがモデルになっています。今や、カマラ・ハリスは実際にアメリカ初の女性副大統領になっているのですが。

 

 この5人の中だと、やっぱりケミが良さそうに見えます。ただ、あれほど「黒人」「女性」ばかり全面に押し出されるとキツい。やはり、政治家は政策で勝負してほしい。次が、トムかなと思ってたけど、首席補佐官と寝ているのはやっぱりマズい。この点に関しては、セリーナの熱弁は説得力がありました。

 

 最悪の候補は、他ならぬジョナ・ライアン。ジョナの戦術は、トランプっぽいところがあります。人々の分断を招くことで、一部の有権者から熱狂的な支持を得る方法がそっくり。数学はアラビアの数字だから有害だというのは、もはやトンデモ思想です。でも、こういう意見も実際アメリカにはあったりします。

 

 後半では、ジョナが次々と選挙人を獲得していくという悪魔的展開がありましたが、これにはどうしても笑いが止まりませんでした。なんでだ!なんでジョナが支持を得るんだ!でも、あり得ないわけじゃない。ありえちゃうんです。もう、怖い。怖すぎて笑うしかありません。

 

 怖いと言えば、セリーナの選挙戦で中国が介入している話も怖かった。明らかに、トランプの選挙戦へのロシア介入疑惑を参考にしています。このドラマも、怖れ知らずなことをやります。そんなことをやって大丈夫なのでしょうか。まぁ、むしろこのくらいの政治風刺画が許される国はまだ健全に思えます。

 

 ジョナの意外な躍進によって、セリーナはある予想外の決断をしました。ジョナに副大統領のポストを与えるというのです。エイミーとケントは土下座をして、その提案だけはなんとか取り下げさせようとします。

 

 ただ、この決断はちゃんと彼女自身の経験に基づくもの。副大統領は、名前だけが立派そうで、実際には何もしない役職であることを身をもって知っています。一番の無能を置くなら、このポジションしかありません。セリーナは、どんなにめちゃくちゃに見えても、こういった賢さがあるのが良い。

 

大統領になりたいだけなのに

 セリーナはクズですよ。クズなんだけど、自分のやりたいことにどこまでも忠実で、もはや清々しいほどです。セリーナの願いはただ一つ「大統領になりたいだけ」。大統領になって何をしたいのかは特にありません。

 

 セリーナを、そこまで大統領の座に駆り立てるものは、一体何なんでしょう?自分だったら、いくら積まれたって政治家になどなりたくありません。セリーナを駆り立てたものが何なのかはよくわかりませんが、少なくとも彼女には政治家の素質があります。議論や人をまとめるのが上手いわけではありませんが、強引にでも物事を進める精神的タフさを持っています。

 

 そんなセリーナと言えども、一人の力では大統領になれないので、周りには助けてくれる人がいます。助けている?邪魔している?セリーナが周りの人間に片っ端から暴言を吐きまくるので、彼らの貢献度を正当に判断することが全然できません。たぶん、もの凄く頑張っている人もいます。エイミーとかベンとかケントとか。もちろん、ゲイリーも。

 

 しかし、セリーナは全く彼らに報いようとしません。これまでも、そして最後まで。特に、ゲイリーの展開は衝撃でした。あれほど、忠実にセリーナに仕えてきたのに。セリーナがいなければ生きていけない男なのに。最後には、基金の不祥事のスケープゴートとしてFBIに逮捕されました。不憫だ。棺にリップを置くシーンは、なんだか泣けてきそうです。

 

 セリーナは、ゲイリーが逮捕されたときに、若干後悔しているような表情も見せるんです。でも、止めることはしませんでした。自分が大統領になるためには、ゲイリーは逮捕されなければいけなかったのです。

 

 それは、大統領になるためには払わなければならない代償なのか。セリーナにとっては一見軽そうに見える代償ですが、ホワイトハウスで一人でいるときのちょっと寂しげな表情を見るに、その道であまりにも多くのものを失ってしまったように見えます。

 

 最後の場面では、セリーナの葬儀の様子が映し出されているのですが、その途中で「アメリカの象徴」である俳優トム・ハンクスの訃報によって遮られます。セリーナがあれほど苦労して掴んだアメリカ大統領の座であっても、人々の記憶には残らないということなのでしょうか。

 

 セリーナはクズかもしれません。しかし、元からクズだったとは思いたくありません。セリーナのクズ度合いはシーズンが進むごとに増していったのですが、これこそが以前はクズではなかったことを示しています。元は人並み程度に人間味があったのが、政治の世界に長くいるせいで、それが失われていってしまったのではないかと思います。

 

 悪い政治は、国民の政治を脅かすだけでなく、自ら政治家たちを腐らせていきます。いつになってもクズのような政治家が現実の世界で消えないのは、民主主義の宿命なのかもしれません。不条理だけど、このドラマを観ていると、そんな気持ちもしてきます。

 

 

 

まとめ

 トムの首席補佐官、いわゆる“トムのエイミー”の配役には驚きました。『ベター・コール・ソウル』というドラマで主役の1人のキム・ウェクスラーを演じているレイ・シーホーンです。かなり気分が上がりました。『VEEP/ヴィープ』の世界にも合っていたので、もっと見たかったな。最終的には、セリーナの大統領首席補佐官になっているので、あの世界では大活躍していそうです。

 

 と、シーズン7も色々ありましたが、これでセリーナ・マイヤーの政治奮闘劇はおしまいです。本当に面白かった。シーズン7も笑いまくっていました。全員が面白いし、それをさらにセリーナがバサバサ切っていくから面白い。こんなに笑えるコメディはなかなかありません。それだけじゃなくて、政治風刺だったり政治の駆け引きも面白く見せてくれるのは、やっぱり凄い。コメディドラマの歴史を変える一本です。

 

↓『VEEP/ヴィープ』にハマった人は『メディア王』もぜひ。

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