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Netflixドラマ『オザークへようこそ』シーズン1感想:ファミリービジネス

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A family is like a small business. And with a small business, at times, there comes a bit of transition.

- Marty Byrde, Ozark season 1 episode 2

 

 ミズーリ州オザーク湖。おそらく琵琶湖よりも遥かに大きいこの湖を舞台に、バード一家は麻薬カルテルの資金洗浄をすることになります。今回はNetflixのドラマ『オザークへようこそ』シーズン1のネタバレあり感想です。

 

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『オザークへようこそ』シーズン1基本データ

・原題:Ozark

・製作:Netflix

・配信日:2017年7月21日

・話数:10

・キャスト:ジェイソン・ベイトマン、ローラ・リニー

・あらすじ:

 財務コンサルタントをしていたマーティ・バードは、麻薬カルテルの資金洗浄をするために、リゾート地のオザーク湖へ家族とともに移住することになる。

・予告編:

www.youtube.com

 

『オザークへようこそ』シーズン1ネタバレ感想

①意外となかった資金洗浄ドラマ

 麻薬犯罪を扱った海外ドラマは、今となっては山ほどあります。先駆けとなったのは、ボルティモアでの麻薬組織と警察の対決を描いた『THE WIRE/ザ・ワイヤー』や、高校の化学教師が高純度の薬物を製造する『ブレイキング・バッド』などの名作ドラマたち。

 

 その後も、コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルを主人公とする『ナルコス』、80年代ロサンゼルスを舞台にコカインブームを描く『スノーフォール』、主婦が大麻を売る『Weeds ママの秘密』、高校生が麻薬販売を始める『ドラッグ最速販売マニュアル』などなど、枚挙に暇がありません。

 

 麻薬を作る人、流通させる人、販売する人のことはすべてやっているので、もう麻薬ものはやり尽くしたんじゃないかと感じるほどです。が、実はあと一つ、麻薬ビジネスにおいて欠かせない仕事があります。資金洗浄です。

 

 麻薬販売で得た金は、明らかに違法なものであり、もしもお金の出所をDEA(麻薬取締局)が調べたりしたら、すぐに逮捕されてしまいます。金の出所を隠すためには、金を適当に行ったり来たりさせる必要があります。これが資金洗浄、英語ではマネーロンダリングです。

 

 ここまでは、自分も知っていました。『THE WIRE/ザ・ワイヤー』のマルロ・スタンフィールドみたいに、札束を洗濯機で洗うだけだけではないことはわかっています。でも、実際に何をしているのか?それは、自分も知りませんでした。

 

 『オザークへようこそ』は資金洗浄の話です。財務コンサルタントの仕事をしていたマーティ・バードは、その裏で麻薬カルテルの資金洗浄をしていました。ある出来事をきっかけに危機的状況に陥ったマーティは、組織のために800万ドルの資金洗浄をすると約束して、自分と家族の命をすんでのところで守ります。

 

 シカゴにいては都合が悪くなったので、マーティは多くの現金を得られる観光地のオザークへ家族とともに引っ越します。お金の出所をわからなくするのが資金洗浄なので、クレジットカードや口座振り込みをされた金は利用しにくいというのです。なるほど。

 

 マーティの基本的な資金洗浄の方法は、大体こんな感じ。まずは、商売に困っていそうな業者に投資を持ち掛けます。そこで、経営者として改装・改築などをするとともに、会計処理を担当します。このときに、帳簿上で経費を上乗せします。5000ドルで済む作業を1万ドルで発注するなど。かさ増しした分がドラッグマネーです。こうなれば、まともな事業で稼いだお金を業者に渡しただけにしか見えないので、資金洗浄完了となるわけです。

 

 このドラマを観れば、あなたも立派にマネーロンダリングが出来るようになります。『ブレイキング・バッド』でドラッグの製法を学び、『THE WIRE/ザ・ワイヤー』でその販売方法を知れば、もう自分で麻薬ビジネスができますね。

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②ファミリービジネス

 設定は『ブレイキング・バッド』(BrBa)に似ているところが多くあります。主人公が中年の白人男性。頭が良く、妻がいて子供もいます。麻薬カルテルのせいで、無理難題を押し付けられています。ドラマを観始める前はBrBaに似てるなぁと思っていましたし、観始めてからもしばらくはそう思っていました。

 

 でも、第2話のラストを観て、その考えはすっかり変わりました。妻のウェンディが子供たちに資金洗浄のことを言ってしまうのです。これは驚きました。そもそもマーティがウェンディに資金洗浄ビジネスのことを話しているのも意外でしたが、子供たちともその秘密を共有することになるとは!

 

 打ち明けたのはウェンディの独断でしたが、マーティも別にそのことで彼女のことを特段怒ったりはしていないようです。もう言ってしまったなら仕方ないと思ったのか、子供たちには正直にいるべきだという考えに共感したのか。ウェンディとは、そもそもビジネスを始めたときから正直に話し合っていたので、後者の可能性も全然あり得ると思います。

 

 BrBaのウォルター・ホワイトだったら、絶対に打ち明けることはしません。何としてでも、秘密は隠し通そうとするでしょう。妻にだって知られたら困るのですから、子供ならばなおさら。

 

 この点で『オザーク』とBrBaは決定的に違っています。BrBaは徹底的にウォルターの物語という感じでしたが、『オザーク』は秘密を共有することになった一家の物語でもあります。

 

③正直さの功罪

 「正直さ」は『オザーク』の一つの特徴でもあるようです。シーズン1中盤で、マーティは湖で説教を行っていた牧師のために教会を建てようと思いつきます。しかし、湖上での説教はスネル家が麻薬を売るのにも使っていたので、マーティはスネル夫妻から教会建設を中止するようにと脅されます。

 

 マーティは、建設を中止するために牧師を説得しようとするも、牧師はなかなか折れません。そこで、マーティはスネル家のことをバラしてしまいます。事情を承知した牧師ですが、それでも麻薬売買をやめてほしいので、スネル家に訴えかけにいきます。すると、今度はスネル夫妻がマーティの資金洗浄のことをバラしてしまいます。オザーク湖は、人々を正直にさせる力でもあるのでしょうか?

 

 一般に、正直であることは良いことで、嘘や隠し立ては良くないだとされています。それならば、マーティやスネル夫妻が牧師に真実を伝えたことで、事態は好転したのでしょうか?マーティのせいで牧師は悩み始め、スネル家といざこざを抱えることになり、妻は殺されてしまいます。この件に関しては、牧師は真実を知らない方がずっと良かったのではないかと思ったりもします。

 

 正直さが、実際に良いことだったりもします。マーティとウェンディが子供たちに正直になったことにより、2人は移住の理由を知り、警戒するようになります。親とは言っても子供たちの面倒をずっと見ていられるわけではないので、自分たちでも警戒してもらうと多少は安心だったりもします。そうは言っても、ジョナが銃を持って歩き回っているのは心配なのですが。

 

 家族に正直になったことで、もう少し直接的なメリットもありました。800万ドルを洗浄したマーティは、今度は5000万ドル分を依頼されます。しかし、そんな大金を置く場所はそうありません。一人で保管するのも大変です。そこで、子供たちにも手伝ってもらって、札束をラップでくるみ、地下室の壁に隠すことにしました。一件落着。

 

 バード家は、シカゴに暮らしていた頃は、そんなに仲が良い家族というわけではありませんでした。子供たちが両親とまともな会話をすることは稀なようです。オザークに来て秘密を打ち明けられたことで、子供たちはさらに悩みを抱えることにもなるのですが、同時に家族と協力する必要に駆られる場合も出てきます。

 

 家族円満でハッピー♫というほど単純な話ではないのですが、危機的な状況の中でバード家の関係は以前より改善されていっているようにも見えます。

 

まとめ

 2022年1月にNetflixで配信が始まるシーズン4までに追いつこうということで、観始めた『オザークへようこそ』シーズン1。確かに面白いのですが、本当に面白くなるのはシーズン2からとも聞きます。ということで、シーズン2,3もどんどん観ていきたいと思います。

 

 ちなみに、ルース・ラングモアは、父親や従兄弟たちとの関係も含めて好きなキャラクターでした。でも、今後もルースは登場するということなので、彼女の話はシーズン2の感想ですることにしましょう。

 

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