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Netflixドラマ『オザークへようこそ』シーズン4パート2感想:家族の運命

Welcome to my fucking world.

- Ruth Langmore, Ozark season 4 episode 8

 

 泣いても叫んでもこれで終わりです。Netflixのドラマ『オザークへようこそ』ファイナルとなるシーズン4パート2が配信されました。果たして、オザークから生きて脱出できるのは誰なのか? オザークの覇権を握るのは誰なのか? シーズン4パート2の感想をネタバレありでまとめていきます。

関連記事 Netflixドラマ『オザークへようこそ』シーズン4パート1感想:家族のために - 海外ドラマパンチ

 

 

 

基本データ

  • 原題:Ozark
  • 製作:Netflix
  • 配信日:2022年4月29日
  • 話数:7
  • キャスト:ジェイソン・ベイトマン、ローラ・リニー、ジュリア・ガーナー
  • 予告編:

    youtu.be

 

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感想(ネタバレあり)

ルースの復讐

 ファイナルシーズン後半戦の最初のエピソード(第8話)は、ルースの復讐劇です。前回、従兄弟のワイアットを殺されたルースは、ハビを殺しにシカゴへ向かいます。製薬会社の前でハビを射殺するつもりです。そんなに衆人環視の中で人を殺したらすぐに逮捕されてしまいますが、今のルースにとってそんなことは関係ありません。どんな代償を払ってでも、ハビを殺してやろうと思っていました。

 

 しかし、実際にハビが目の前に現れると躊躇してしまいます。頭の中で考えるとの実際に引き金を引くのとは違います。マーティからはその判断を褒められたものの、ルースとしては悔しくて仕方ありません。ワイアットを殺した男が生きているなど許されません。

 

 その夜には、ルースはバード夫妻と製薬会社のクレア・ショーの会食にお邪魔して、会社のオフィスに連れて行かせます。そこでルースがバード夫妻に放った言葉は、2人の性格を巧みに表しています。

 

"Wendy, she is fucking soulless. She will rip your heart out of your chest, if it helps her get what she wants. She is like a fucking predator that doesn't even know why it's killing anymore." 

ウェンディは筋金入りの冷血。自分の要求を通すためなら人の心臓をえぐり出す。目的を失っても殺し続ける捕食者。

 

"And Marty, he pretends to care. But really, he doesn't have any real emotion, or he is too fucking cunt-struck to even know who he is anymore. "

マーティは人を思いやるフリ。でも生身の感情がない。それか妻に夢中すぎて自分を見失っている。

 

 その後、ウェンディはハビを呼び出します。ルースは今度こそハビを殺すことができました。

 

 
 
 
 
 
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ボスはお前だ

 マーティは、刑務所にいるオマール・ナバロの代わりにメキシコに行ってカルテルを仕切ることになります。これまではこき使われる立場でしたが、今回はオマールの部下たちに指示を出す立場です。威厳ある姿を見せ、自分がオマールから直々の指令を受けている者だと印象付けなければなりません。

 

 マーティは、帳簿をチェックしているときに、一部の利益がかすめ取られていることに気づきました。ちょうどその頃、刑務所ではオマールが襲われ、意識不明になるほどの重傷を負っていました。マーティは、この2つの出来事の犯人を同一人物だと早とちりし、男を拷問にかけてしまいます。かつて彼自身が受けたのと同じように。

 

 結局、男が耐えきれなくなって横領だけでなくオマール殺害未遂のことも自白したため、マーティは彼を殺すように指示しました。本来のマーティならば処刑のための殺しはしないのですが、メキシコではマーティではなくオマールにならなければいけません。冷酷になる必要がありました。

 

 後に、殺害未遂の件は拷問した男ではなくオマールの姉が指示していたことがわかります。このことで、マーティは苦悩します。でも、やってしまったことはやってしまったこと。取り返しはつきませんし、正直、マーティ以外は誰も気にしていません。

 

ラングモアとして

 復讐を果たした後のルースは、カジノ経営に本腰を入れたいと思うようになります。そこで訪ねたのが、かつてオザークでホテルを経営していたレイチェル(シーズン1~2に登場)でした。彼女ならカジノ免許も取ることができそうで、観光施設を経営していた経験もあります。以前、レイチェルがやっていたホテルは、マーティが来るまで赤字だったのですが。

 

 2人が計画を進めていく中で、ある事実に気がつきます。ダーリーンとワイアットは、射殺の直前に結婚していました。ダーリーンは、カジノに多くの資金を投入しています。ワイアットの後見人であるルースがダーリーンの資産を相続すれば、カジノの経営権を握ることができるかもしれません。

 

 幸運というのは続くものです。ルースは過去の犯罪歴も抹消できることになりました。過去の犯罪は家族にそそのかされてやったものであり、今はすっかり更生したと判事に納得させることができたのです。

 

 ラングモアの家に生まれたからには、自分は犯罪者になる運命なんだと常々思っていたルースにとっては思いがけない機会です。ついにラングモアの呪縛から逃れることができました。この機に、ルースは一切の犯罪行為から足を洗い、カジノでの資金洗浄も禁止しました。それでも、ラングモアの名前が決して嫌いなわけではなく、家族のことは慕っていました。そのため、名前を変えたりはしていません。

 

歪んだ想い

 ルースが資金洗浄を禁止したことで困るのはマーティです。オマールを釈放させるためには大金が必要です。その洗浄をするにはカジノが必要です。でも、ルースに経営権を握られてしまったので、できなくなってしまいました。

 

 困ったマーティは、バード財団のパーティで資金洗浄をしても良いかとウェンディに相談します。しかし、ウェンディは断固反対。財団はキレイな組織でなければいけないと言うのです。ウェンディにとっては自分の権力の源であり、何があってもこれだけは手放すわけにはいきません。財団で大勢の人々を救うんだとか言っていましたが、あんなのは嘘っぱちです。

 

 マーティの本音としては、財団のことなんかどうでも良いのです。潰れたってどうなったって構わないと思っています。でも、妻が財団に執着しているので、どうしようもありません。マーティは、ウェンディには全く頭が上がりません。特に、ウェンディが政治力を持ち始めたシーズン3くらいからマーティはウェンディの暴走を止めることが全くできず、自分の意に反していても協力させられる存在になっています。

 

 そんなマーティも、ウェンディがオマールの姉をカルテルのボスにする提案をしたときには我慢の限界がきたようです。刑務所から帰る車の中では、わざとウェンディを無視し、後続車の運転手に八つ当たりしてしまいます。それでも、ウェンディを殴るのではなく、ウェンディを侮辱した相手を殴っているのはマーティらしい。どこまで行っても、結局はウェンディを愛しているということでしょうか。

 

 
 
 
 
 
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ウェンディの奇策

 オザークには、ウェンディの父親がやってきました。彼は、娘が麻薬カルテルの資金洗浄をしていることも息子のベンがすでにこの世にいないことも知りません。教会の仲間とともにベンの捜索を始め、私立探偵のメル・サッテムも雇います。

 

 バード夫妻と子供たちの仲が悪いこと、さらに麻薬ビジネスに関わっているらしいことを知ったウェンディの父親は、孫を連れ帰ろうとします。シャーロットとジョナも同意します。裁判所でも孫の意思を尊重するようにとの判決が出て、2人は祖父のもとに行くことがほぼ決定しました。ただし、実は祖父もろくな人間ではありません。酒癖が悪く、ウェンディとベンが子供の頃には2人に暴力を振るっていました。シャーロットとジョナも同じ目にあってしまうかもしれません。

 

 ウェンディは、父親に懇願して子供たちを引き留めようとしますが、願いは叶いません。そこで、自分自身が精神病院に入るという奇策を取ります。こうすれば、シャーロットとジョナが自分のことを心配して心変わりをしてくれるだろうという企みです。思考回路がヤバいです。常人の発想ではありません。

 

 

最終回感想(ネタバレあり)

 ここから最終話の内容になるのですが、始めに言っておきます。どうやら脚本家チームは、前話までで燃え尽き症候群に陥ってしまったようです。不可解な展開が続きます。

 

家族の再生

 ルースの脅迫により、ウェンディの父親は孫を諦めることになりました。シャーロットとジョナは、精神病院にいるウェンディのもとにやってきます。そこで、ウェンディは初めて自分の非を認めます。ベンが死んでしまったのは自分のせいであり、そもそも父親への当てつけでやったことだと。さらに、子供たちも支配しようとしていたと告白します。

 

 
 
 
 
 
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 シャーロットとジョナは、素直にこの謝罪を受け入れ、直後から家族はすっかり仲良しになります。正直な思いを打ち明ければ何でも解決するとは、私には思えませんが。だって、自分の母親が自分たちを支配しようとしていたんですよ。そんな親を今後信用できますか? 自分だったらできません。少なくともそんなにすぐには。

 

 バート一家が乗った帰りの車は、突然事故に遭い、派手に横転します。これは、シーズン4の第1話の冒頭ですでに示されていた場面で、4ヶ月間に渡り視聴者の気を揉ませていました。事故の結果は、誰も大きな怪我をすることはなく、そのまま家に帰ってきました。なんだと!?

 

 これは罪深い。シーズン4の最初にあれだけ派手な場面を見せておいて、結局、何事もなかったのですから。ただ視聴者をたぶらかすためだけの場面だったということです。ちょっと危惧はしていたんですけどね。たとえ、この事故でバード家全員が死んでしまったとしても、それはそれで妙な展開です。事故の後に続く合理的な展開など、このドラマには存在しないと思います。そうだとするなら、そもそも事故なんか起こさなくて良かったんじゃないでしょうか。

 

ルースの運命

 バード家の4人は資金集めパーティに出席します。これと同時進行でオマールが殺され、オマールの姉がカルテルのトップになります。オマールの姉は、オマールやハビがFBIと交わしていたのと同じ約束を結んでいます。カジノは、ルースとレイチェルがFBIの監視下で資金洗浄を続けるので、2人が逮捕されることはありません。これで、バード夫妻がやることはなくなり、きれいさっぱり足を洗うことができます。

 

 しかし、一つだけ未解決事項がありました。ハビ殺しの犯人です。オマールの姉は、ハビ殺しの犯人を知りません。パーティの席で、オマールの姉は製薬会社のハンナを問い詰めました。その結果、真犯人はルースだったことを聞き出します。実は、この時点でルースが消えたとしても、すべてのビジネスは問題なく回ります。カジノの経営がルースからレイチェルに引き継がれるだけです。

 

 そんな打算もあったのでしょうか。オマールの姉は、自らの手でルースを射殺しました。これは必然だったかなと思います。ルースがハビを殺すと言い始めた時点で、ルースの運命は決まっていました。カルテルから逃げ切れるわけがありません。

 

フィナーレ

 家に帰ってきたバード夫妻は、私立探偵のメル・サッテムに出会います。彼は、まだベンの件を気に掛けていました。良心が黙っていられませんでした。バード夫妻はなんとかして懐柔しようとするも失敗。そのとき、ジョナが銃を持って現れます。一発の銃声が響いたとき、4シーズンに渡る『オザークへようこそ』の物語は完全に幕を閉じました。

 

 おそらくジョナがメルを撃ったのでしょう。それにしても、もやもやする終わり方です。ジョナがメルを殺すような人間には、どうしても見えません。ジョナが正当防衛でもないのに人殺しをしたなら、完全に両親に並ぶレベルの悪人です。精神病院から出てきたとき、ウェンディと子供たちは和解したのではなく、ウェンディが2人を悪の思想に洗脳してしまったのでしょうか。

 

 別の可能性もあります。ジョナは、メルを撃ち殺しませんでした。彼が撃ったのは、自分の母親です。精神病院から出てきたとき、ジョナは母親の謝罪を受け入れていませんでした。ベンを見殺しにした母親を許すことができず、メルの前でも罪を償おうとせずに金で解決しようとする母親の姿を見て、心を決めたのかもしれません。それならそれで、ウェンディの自業自得という気もします。破壊的だけど、こっちの解釈の方が気に入っています。

 

追記:製作者のクリス・マンディが語るところによると、ジョナは確かにメルを撃ったようです。彼いわく、エンディングはとても予想外のものにして、ジョナを褒めたたえるべきかそうすべきではないのかを視聴者に考えてほしかったのだそう。

参考記事 Ozark’s Ending, Explained: Exclusive Finale Conversation With the Cast and Showrunner | Vanity Fair

 

 

まとめ

 オザークでのバード一家の物語は終わりました。あの群青色の映像を観ることはもうありません。まず言っておきたいのは、シーズン4後半でもルース・ラングモアを演じるジュリア・ガーナ―の演技は素晴らしかった。3か月前には、Netflixのドラマ『令嬢アンナの真実』にも主演していましたが、やはりルースのときの方がずっと良い。演技もキャラクターも。

 

 内容に関しては、シーズン4前半よりもややトーンダウンしてしまったかなと思います。ルースの物語は全体的に良かったですが、カルテル周辺の物語はキレが悪くなっています。ハビやダーリーンのようなすぐにキレ散らかす人もいなくなってしまったので、オザークらしさも減。最終回では、まともな結論を付けることもできませんでした。最終回の監督をしたジェイソン・ベイトマンの腕は確かだと感じながらも、結末には不満が残ります。

 

 ドラマ全体としては、シーズン3を頂点に、とても楽しむことができました。『ブレイキング・バッド』と比べられることの多い作品ですが、妻と子供が積極的に麻薬ビジネスに関わってきたり、政治的な力を活用したパワープレイをしたりするのは『ブレイキング・バッド』では見られなかった要素です。独自性はあると思います。ドラマ史に残るような作品だとも思いませんが、楽しんで観ることができましたし、一見の価値はあったと思います。

 

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