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海外ドラマ『ダーク・マテリアルズ/ライラと黄金の羅針盤』シーズン2感想

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Strength is salvation. Remenber that.

- Marisa Coulter, His Dark Materials season 2

 

 『ダーク・マテリアルズ』めちゃくちゃ好きなんですよ。原作の『ライラの冒険』は読んだことがないのですが、シーズン1の時点で、そのスケールと役者陣の魅力に憑りつかれてしまいました。ついに待ちに待ったシーズン2です。

 

 シーズン2は、原作第2巻『神秘の短剣』の初の映像化になります。2007年の映画『ライラの冒険 黄金の羅針盤』及びドラマ版シーズン1は、第1巻『黄金の羅針盤』の映像化でした。つまり、映画を観ている人にとっても、ここからは未知の内容になってきます。

関連記事:『ダーク・マテリアルズ』シーズン2に残された5つの疑問 - 海外ドラマパンチ

 

 

『ダーク・マテリアルズ』シーズン2基本データ

・原題:His Dark Materials

・放送局:HBO, BBC

・放送期間:2020年11月8日~12月8日

・話数:7

・主演:ダフネ・キーン、アミール・ウィルソン

・予告編:

www.youtube.com

 

感想(ネタバレ)

①異世界を自在に行き来する

 
 
 
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↑ ウィルとライラが初対面するシーン。ウィルの方が体が大きいが、ライラにねじ伏せられる。

 

 『ライラの冒険』の映画版は過去に見たことがあるのですが、シーズン1を観ていて衝撃だったことがあります。それは、ウィルの物語。ウィルは、私たちの世界にいるので、車が走っていて、スマホも使います。

 

 一方、ライラがいたのはスマホも車もなく、動物たちが喋るファンタジーの世界でした。この全く異なる2つの世界が、同時に登場するのは驚きでした。型破りですよね。現実とファンタジーの世界を行き来できるというのは、とても夢があって興奮します。

 

 シーズン2では、さらにスペクターという幽霊がいる第3の世界チッタガーゼが登場します。ウィルとライラは、世界に裂け目を作る短剣を使って、3つの世界を自由自在に行ったり来たりします。

 

 面白かったのが、ライラとコールタール夫人が初めて私たちの世界にやってきたところ。ライラは、車に轢かれそうになっていました。コールタール夫人は、コーヒーを飲んでいました。元の世界には、コーヒーがなさそうだったけど、苦くなかったのかな?

 

 特に興味深かったのは、コールタール夫人の反応です。ダークマターの研究を女性が行っていたことに驚いていました。元々の世界では、どんなに優秀でも、女性は博士になることはできず、研究も出来なかったそうです。(現代のアカデミックの世界でも女性研究者の数はごく僅か。物理学を含む理学・工学の分野では特に少数です。)

 

 コールタール夫人は悪役的なポジションにいますが、そういった背景を知ったり、あるいはライラの母親としての思いを聞いたりすると、人間なんだなぁと思って、嫌いにはなれません。

 

 かといって、自分の猿を蹴っていたりするのを見ると、やっぱり悪い人だと思ってしまうんですけどね。それで良いんです。共感できるけど、悪い人。素晴らしいヴィランです。

 

②ダストの謎

 
 
 
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 シーズン2に入って、ダストの謎は大きく動き始めます。これまでは、ダストは大人だけに付いているものであり、何か邪悪なものだとされていました。しかし、邪悪だというのはあくまでも教権マジステリアムが言っているだけなので、ライラとパンは、実はダストは善いものなのではないかと考えています。

 

 シーズン2では、ダストに関してSF的アプローチが入ってきます。これが、面白いところですよね。元々ファンタジーの世界での話だったのに、現実世界に入ると、それはSFっぽい話になってくるんですから。

 

 マローン博士によると、ダストはダークマター(暗黒物質)、またの名をシャドー分子と同じものだというのです。ライラとマローン博士の実験により、ダストは意志を持ち、未来を予言ができることが明らかになりました。黄金の羅針盤の原理は、ダストだったということです。

 

 最終話では、ダストがアスリエル卿に協力すると宣言しました。教権が仕えるオーソリティーとダストの関係など、まだまだ不明な点は多くありますが、まずは謎の解決に向けて一歩前進です。

 

余談Ⅰ:ダークマターとは

 物理をある程度知る者としては「ダークマター」という言葉の正しい意味を説明しないわけにはいきません。

 

 宇宙の27%はダークマターで出来ています。ダークマターは目に見えず、物質と相互作用をしないため、直接観測することができません。それなのに、なぜダークマターが存在すると言われているのかといえば、例えば、銀河系が安定に存在するためになければならないからです。ダークマターの質量がなければ、銀河系が現在の形を保つことが出来ていることの説明がつきません。

 

 間接的にダークマターが存在する観測結果はすでに得られています。しかし、まだその正体は明らかになっていません。そもそもダークマターが、太陽系の内部にあるのかどうかさえ、まだ未確定です。

 

 ドラマの中では、ダークマターの別名がシャドー分子だと言われていましたが、実際にはそのような呼び方はされていません。おそらく、シャドー分子という言葉を使うことで、現実のダークマターとは異なるものだということを示す教育的な配慮なのでしょう(?)

 

 また、ダスト=ダークマターが未来を予測できるという結果が出ていましたが、これはあながち変な話でもないかもしれません。というのも、量子力学の理論では、時間を逆行する量子の存在があり得ることになっています。ダークマターが、そのような量子的な振る舞いを見せるのであれば、未来予測が可能になります。あくまでも、理論的な遊びとしての話ですが。

 

 

 

③実力派の役者陣

 シーズン1に引き続き、役者陣は非常に魅力的です。まずは、シーズン2になって大活躍しているウィル役のアミール・ウィルソン。ライラとともに走りまくり、短剣を巡る殺し合いをしました。

 

 
 
 
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 シーズン1では画像でしか姿を見せなかったウィルの父親役のアンドリュー・スコットは、満を持しての登場です。とは言っても、あんまり活躍しなかったかな。気球に乗ってテキトーなことを言っていました。

 

 アンドリュー・スコットはドラマ『Fleabag/フリーバッグ』で神父を演じているのですが、このドラマの主演のフィービー・ウォーラー=ブリッジが、彼のダイモンの声優でした。しかし、ダイモンは最終話の終盤で一回「ジョパリ!」と叫んだのみ。あの一言で、誰が声優なのかわかったら凄いですよ。

 

 そして、今シーズンもやはりライラ役のダフネ・キーンとコールタール夫人役のルース・ウィルソンの演技が光ります。ルース・ウィルソンは、前述のように、単なる悪役ではなく、深い過去を持つキャラクターであるコールタール夫人を見事に演じています。

 

 ダフネは、ルース・ウィルソンと直接対決をして負けていないというところが凄い。シーズン2第5話で、ライラとウィルが羅針盤を取り返しに行ったときに、ライラがコールタール夫人と鉢合わせをしてしまう場面がありました。ライラとコールタール夫人は、両者のダイモンが戦う中で睨み合っていましたが、このときのダフネの目力が本当に凄いんだ。鳥肌ものです。

 

余談Ⅱ:コロナ禍の影響

 シーズン2の撮影は2019年後半から始まっていたようですが、2020年に入ってからコロナ禍の影響により一時的にストップしていました。結果的には、2020年末に放送することができたのですが、話数や時間が削減されています。

 

 特に、ジェームズ・マカヴォイ演じるアスリエル卿の場面は、シーズン2ではきっぱりカットされています。登場人物の会話でアスリエル卿の名前がやたらと出てくる割に、最後を除いて全く出演しないのは、そのためです。シーズン2で描くはずだったアスリエル卿の物語は、シーズン3に持ち越しになっている可能性が高いです。

 

 シーズンごとの合計時間を計算してみると、シーズン1は全8話472分だった一方、シーズン2は全7話333分になっていて、全体で2時間以上短くなっています。大規模な戦闘シーンなどもないため、シーズン1と比べるとボリューム感はどうしても足りなく感じます。それでも、十分なクオリティを確保できなくて無駄に引き延ばすようなことをしなかったのは賢明なのかもしれません。

 

 

 

まとめ

 これまた、素晴らしいシーズンでした。『ダーク・マテリアルズ』の強みは、現実世界とファンタジー世界のパラレルワールドを自在に行き来できることだと思うのですが、シーズン2ではその設定がフル活用されていました。コロナ禍という状況もありながら、これだけのクオリティの作品を送り出してくれた製作陣に感謝したいです。

 

 気になるのは、今後のシーズンの状況です。すでに『ダーク・マテリアルズ』はシーズン3をもって完結することが発表されています。原作が全3巻なので、1シーズンで1巻の内容をやっていくというペースですね。

 

 
 
 
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 今年6月には、すでに撮影が始まっています。しかし、イギリスでは2021年7月現在、コロナの再拡大の影響により、一部の映画・ドラマの撮影がストップしています。『ダーク・マテリアルズ』に関しても、例外ではない可能性があります。それでも、来年(2022年)中にはアメリカ・イギリスで放送されると期待したいです。

 

 すると、日本で観られるようになるのは、ざっくり2023年春……。あと2年。マジか。無理だよ、そんなの……。泣

 

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