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海外ドラマ『スーパーパンプト/Uber -破壊的ビジネスを創った男-』感想

 Uberは、2010年代を代表する企業の一つだと言って良いでしょう。Uberはタクシー業界に大打撃を与えただけではなく、シェアリングエコノミーを世界的に広めた存在でもあります。企業としても、次世代のGoogleやAppleになり得るシリコンバレー最大のユニコーンだと見なされていました。

 

 しかし、ユニコーンは幻でした。Uberは大惨事を繰り広げた挙句、最終的にトラビス・カラニックはCEOを退くことになりました。なぜ、そんなことが起こってしまったのか? このドラマでは、その内幕が明かされます。

 

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基本データ

  • 原題:Super Pumped: The Battle for Uber
  • 放送局:Showtime
  • 放送日:2022年2月27日~4月10日
  • 原作:マイク・アイザック『ウーバー戦記:いかにして台頭し席巻し社会から憎まれたか』
  • 原案:ブライアン・コッペルマン、デヴィッド・レヴィエン(ドラマ『ビリオンズ』)
  • キャスト:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、カイル・チャンドラー、ケリー・ビシェ、ユマ・サーマン

予告編

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 UberのCEOのトラビス・カラニックを演じるのは、ジョセフ・ゴードン=レヴィット。優男のイメージがありましたが、今回はとにかくエネルギッシュで好戦的な人物を熱演しています。

 

 投資家のビル・ガーリーを演じたのはカイル・チャンドラー、ハフポスト創業者のアリアナ・ハフィントンを演じるのはユマ・サーマン、さらにナレーターはクエンティン・タランティーノと、豪華なメンツが集まっています。

 

 個人的には、ドラマ『ホルト・アンド・キャッチ・ファイア』でもビジネスウーマン役を演じており、今回はUberでNo.4の立場にあるオースティン・ガイドを演じたケリー・ビシェにも注目していました。『ホルト・アンド・キャッチ・ファイア』もテック業界の話だったので、キャラクターがだいぶ似ています。

関連記事:80年代の熱きPC開発競争を『ホルト・アンド・キャッチ・ファイア』で目撃せよ - 海外ドラマパンチ

 

 クリエイターは、金融業界を舞台にしたドラマ『ビリオンズ』を手掛けたブライアン・コッペルマン、デヴィッド・レヴィエン。ビジネス系のドラマをやらせるなら、この2人ということでしょうか。音楽担当も『ビリオンズ』と同じなので、ドラマ全体のテイストが似通っています。

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感想

 結局のところ、トラビス・カラニックという男をどう評価するかです。トラビスのアメリカでの好感度は、2017年頃の一連の騒動のせいで著しく低いようです。

 

 Uberのサービスは、開始時から着実に広まっていったので、Uberの名前を知っている人はそれ以前から十分多かったはずです。それでも、Uberに対して明らかな反感を示していたのは既存のタクシー業界ぐらいで、それ以外の反対意見は限定的だったと思われます。

 

 ところが、2017年になると、立て続けにトラビスとUberに関するスキャンダルが明らかになり、一気に嫌われるようになりました。スキャンダルの一部は、以下のようなものです。

 

  • アプリで過剰に個人情報を収集していた
  • 社内に蔓延していたセクハラを放置していた
  • トランプ大統領の顧問団に入った
  • Uberのドライバーを怒鳴りつけた
  • 韓国で性接待を行った

 

 実際に世間で話題になった順番でいうと、トランプ大統領の顧問団に入ったことが最初でしょうか。トランプ大統領の顧問になると、なぜ世間(少なくとも約半数のアメリカ国民)からの好感度が下がるかは、わざわざ書くまでもありません。シリコンバレーでトランプ支持率が高いわけもないので、なおさらトラビスへの反感は強かったのでしょう。

 

 でも、この件に関してはトラビスを擁護したいですね。当時のUberのような未上場の企業のCEOが大統領の顧問団に招待されたら、政治思想は一旦置いておいて、参加してしまうと思います。しかも、もしトランプでなければ、たとえ共和党の大統領であっても、これほどトラビスが反対されることはなかったんじゃないでしょうか。

 

 このことに続いて、JFK空港での事件があって、Uberの好感度は急激に下がっていきます。正直、このJFK空港の政治的な意味が自分にはよくわかっていません。トランプがイスラム教徒の入国を一時禁止にしたことは知っていますが、なぜJFK空港にタクシーで送迎を行わないことが、その政策へ反対の意思を示すことになるのでしょうか?

 

 このときにUberは混雑時の割増料金をオフにしたので、いわばスト破りみたいな行為をしたとして批判されました。そう……なんですかぁ。やっぱり時期が悪かったのかなという気もするので、Uberに若干同情はしますけどね。だって、そもそもトランプがイスラム教徒の入国禁止などという狂気じみた政策を行わなければ、Uberだって妙な判断を下さずに済んだわけですから。

 

 トランプ関連のスキャンダルは運の悪さも災いしたのに対して、セクハラ体質は完全にUberの問題です。この問題は2017年の2月に、元Uber従業員のスーザン・ファウラーがブログで告発したことにより明らかになりました。ハリウッドでのハーヴェイ・ワインスタインの告発が同年10月なのですが、スーザン・ファウラーの告発は#MeTooの先駆けの一つとも言われています。

 

 そして、韓国での性接待の問題も明らかになります。こうなってくると、Uberの企業体質が疑われてきます。シリコンバレーは基本的に男性優位社会ですが、特にトラビス率いるUberは有害な男らしさが染みついた企業だったようです。

 

 そういえば、日本には「モーレツ社員」なんて言葉もあったように、スーパーパンプトして(超やる気を出して)働くことが美徳とされていた時代がありました。そのまんまUberですね。今はそういった働き方はだいぶ少なくなってきていると思いますが、男女格差の問題はまだまだ残っています。Uberのスキャンダルを対岸の火事として眺めているわけにはいきません。

 

 Uberの企業としての問題だけでなく、トラビス個人の問題も上がってきました。トラビスはもちろん日頃からUberを使っていたわけですが、あるときUberのドライバーを怒鳴りつけてしまいました。しかも、その動画がYoutubeにアップされて炎上してしまったのです。トラビスの性格から考えると、こういうことが起こるのも時間の問題だったのかなと思います。

 

 これらの不祥事が重なったことに加え、同時期に不幸にもトラビスの母親が事故で亡くなってしまいました。かくして、トラビスはCEOを辞めさせられることになります。ビル・ガーリーら取締役は、トラビスの尊厳を保った形で辞任の報道をさせるとトラビスに約束していましたが、実際には辞任に至る泥沼の様子がすっかりニュースになってしまい、尊厳も何もあったものではありませんでした。

 

 しかし、トラビスはドラマの最終話でこんな言葉を視聴者に投げつけます。

 

「お前らは俺を笑っているが、実は俺の恩恵に預かっていることを忘れるなよ」

 

 Uberが企業経営に関して様々な失敗を犯したとしても、社会に大きな影響を与えたのは事実です。そもそもライドシェアというアイデアを生み出し、世界に広めたのはUberです。Uberの成功もあり、ライドシェアのみならずシェアリングエコノミーはこの10年ほどで急速に成長しました。

 

 Uberをどれほど嫌おうと、Uberほど便利なサービスはないので、アメリカの人々は今もUberを使い続けています。これは、他のことに関しても言えるでしょう。例えば、FacebookやInstagramおよびTwitterは、それぞれマーク・ザッカーバーグとイーロン・マスクが運営しています。しかし、お世辞にもこの2人の好感度は高いとは言えません。それでも、世界中の数十億人が(そしておそらくあなたも)これらのサービスを利用しています。

 

 別にUberやTwitterを使うのを辞めろと言っているわけではありません。ただ、その裏には、ほぼ例外なく「嫌な奴」がいるという事実があります。嫌な奴でなければ、それほどインパクトを社会に与えることはできないからです。そういう風に今の社会は回っているんだと思うのです。

 

 なお、ドラマ『スーパーパンプト』はアンソロジーシリーズとしてシーズン2に更新されました。シーズン2では、同じくマイク・アイザックの刊行予定の本を原作とし、Facebookのことを扱うようです。

 

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