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海外ドラマ『インベスティゲーション』感想:事件と真摯に向き合う

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 デンマークで実際に起こった潜水艦殺人事件の捜査を描く北欧ドラマ『インベスティゲーション』。 既存の刑事ドラマや犯罪実録ドラマとは一線を画すこのドラマの感想を紹介します。

 

 

 

海外ドラマ『インベスティゲーション』基本データ

・原題:The Investigation

・放送局:TV2(デンマーク), SVT(スウェーデン), BBC Two(イギリス), HBO(アメリカ) 

・放送時期:2020年

・話数:6

・脚本・監督:トビアス・リンホルム(映画『アナザーラウンド』『偽りなき者』脚本)

・主演:ソーレン・マリン(ドラマ『THE KILLING/キリング』)

・あらすじ:

 ある個人が所有する潜水艦の中で、女性ジャーナリストが殺害された。しかし、遺体は発見されず、捜査は困難を極める。

・予告編:

www.youtube.com

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プロフェッショナルに徹する刑事たち

 『インベスティゲーション』は、一応刑事ドラマというジャンルにはなりますが、他の刑事ドラマとは明らかに異なる点がいくつかあります。例えば、登場する刑事たち。

 

 刑事ドラマの主人公といえば、事件に熱中しすぎるあまり、感情的になる人物が非常に多い。取り調べをすれば、だいたい容疑者に向かって叫んでしまいます。でも、本当にそんなことをしたら、取り調べが無効になってしまうかもしれません。

 

 このドラマに出てくる刑事たちは、常に冷静です。その事件の凄惨さが明らかになっても、大声を上げたりはしません。自分たちのやるべきことを、ひたすら粛々とやっていきます。

 

 刑事たちは、何も感じていないわけではありません。一人の女性が惨殺されたという事実を重く受け止めて、犯人を起訴するために、プロフェッショナルとして全力を尽くしています。遺族にはできないことを代わりにするのが、刑事のプロとしての仕事なのです。そのためには、冷静に地道に捜査をしていくしかありません。

 

起訴できなければ意味がない

 犯罪捜査の最終目標は、犯人を起訴することです。他の刑事ドラマも建前はそうなのですが、実際には起訴には程遠い捜査しか描かれていません。本来は、細かいところまで、緻密な捜査が必要になってきます。

 

 『インベスティゲーション』では、常に検事の視点が入り、捜査過程を観ているときも、最終的に起訴できるかどうかを意識させられます。例えば、刑事たちの仮説を聞いているときに、検事は弁護側から想定されるであろう反論を次々に述べています。仮説の弱さを指摘し、本当に起訴して有罪にすることができるのかを何度も検討しているのです。

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

潜水艦を巡るミステリー(ネタバレ)

 ドラマで描かれる事件は実際に起きたことなのですが、実話だとは俄かに信じ難い特殊なケースです。潜水艦の持ち主が犯人だということは、最初からほとんどわかっています。その男が、ジャーナリストの女性を潜水艦の中で殺したことはほぼ確実なのですが、その方法がわかりません。

 

 まず、遺体の探すのに大変な苦労をします。潜水艦の中を探しただけでは見つからず、数日後に発見されたのは切断された胴体のみ。切断遺体なら殺人に決まっているじゃないか! と思ったのですが、そう簡単ではないようです。容疑者の主張によると、潜水艦の中で事故で亡くなってしまった女性を外に出すために、やむを得ず切断したというのです。

 

 そんな主張は明らかに嘘に聞こえるのですが、反証ができません。疑わしきは罰せずなので、反証が出来ないならば無罪です。後に、頭や四肢も見つかるのですが、それでも死因がわからないというのです。厳しい!

 

 刺殺や撲殺だったら、明らかな外傷があるので、死因はわかると思うんです。でも、死因がわからなかったということで、可能性として残っているのは、内蔵にダメージを与える事故死(容疑者は潜水艦の中で一酸化炭素中毒を起こしたのだと説明していた)か、身体の切断自体が死因だったということです。

 

 真相は、後者でした。犯人は、被害者が生きているときに切断を行いました。これは、本当に本当に極悪な人間にしか行えない所業です。もはや人間とも言えません。刑事と検事が、なんとしても容疑者に重い量刑を与えようとしていた理由がわかります。

 

実録犯罪ドラマの在り方

 自分は、犯罪ドラマは非常によく観るのですが、実話ものは苦手です。実在のシリアルキラーを主人公にした作品はよくありますが、そういったものを観ることで、本物のシリアルキラーが話題になって、そいつが調子に乗ってしまうのが嫌なんですよね。刑務所の中だとしても。

 

 また、実話を映像化するにあたっては、多少はエンターテインメントとしての見どころを作る必要があります。ときに、それが事件の凄惨さだったりするのは嫌なのです。海外ドラマ『ハンニバル』はフィクションだから良いのですが、もし実際の事件だとしたら、あのようにグロテスクさを前面に出したエンターテインメントにされるのは気持ちの良いものではありません。

 

 しかし、『インベスティゲーション』には、そのような嫌らしさはありません。そこには、事件と真摯に向き合う制作陣の姿勢と、ジャーナリストだった被害者の遺志を継ごうとする事件関係者の姿が見えます。

 

  ドラマの中では、一度も被害者の遺体の映像がありません。被害者の生前の写真なども映し出されません。容疑者に関しても、取り調べの情報が刑事から語られるのみで、一度もその姿を表しません。

 

 つまり、事件の内容を語るのに、被害者や容疑者の姿は必ずしも必要ではないのです。このドラマで描かれるのは、事件に誠実に向き合った刑事たちと遺族の姿なのです。

 

 この誠実な姿勢は、製作陣にもそのまま当てはまります。製作陣は、実際の事件を扱うということの意義を十分に理解し、必要な描写と不必要な描写を丁寧に選んでいます。それでも、巧みな脚本と映像のおかげでエンターテインメントとしても見どころのある作品になっており、観ていて退屈するようなことはありません。

 

 加えて、これほどリアリティのあるドラマを作るためには、実際の遺族や警察の全面的な協力なしには不可能だったでしょう。そこには、ジャーナリストだった被害者の遺志を継ごうとする、共通した思いがあったに違いありません。

 

まとめ

 『インベスティゲーション』には、HBOのドラマ『チェルノブイリ』に近いものを感じます。ドラマは、実際の事件を忠実に描き、過度に悲劇的にしたりすることはありません。

 

 これは、実際に起こった事件を映像化するという点でも、最も的確な手法でもあります。実話であるというだけで十分に重みがあるので、わざわざ過度な脚色をする必要はないのです。それは、むしろわざとらしさにも繋がり、逆効果ですらあります。

 

 事実を淡々と、それでも部分的に謎を残しながら視聴者の興味を引き付けていくことで、最終的には真に伝えたいメッセージを多くの人に届けることができます。『インベスティゲーション』には、実話を基にした作品の新たな可能性を見ることも出来ます。

 

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