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アンソニー・ホロヴィッツ作品をさらに楽しむための『刑事フォイル』基礎知識

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 ここ数年、推理小説界隈で大注目されているイギリスの作家がいます。彼の名前は、アンソニー・ホロヴィッツ。2018年に日本で刊行された『カササギ殺人事件』以降、4年連続で年末のミステリランキングを独占しています。異例中の異例。驚異の記録です。

 

 そんなアンソニー・ホロヴィッツ作品は、もちろんそのまま読んでも抜群に面白い。アガサ・クリスティー作品を想起させる本格ミステリーのスタイルは、近年の海外ミステリーでは珍しいのではないかと思います。

 

 一方、特に『メインテーマは殺人』と『その裁きは死』は、メタ的な構造を持っています。著者自身が小説内に登場することは珍しくないものの、実際の経験をそのまま物語に落とし込んでいるので、妙にリアリティがあります。

 

 そのリアリティをさらに楽しむためには、アンソニー・ホロヴィッツのプロフィールをある程度知っていると良いのです。中でも、ホロヴィッツが脚本を手掛けたドラマ『刑事フォイル』は、イギリスで大ヒットしていたため、イギリス国民の多くが知っている作品です。ホロヴィッツの小説には、ドラマの撮影現場なども登場するので、『刑事フォイル』のことを知っておけば、さらに作品が楽しめること間違いなし。

 

 今回は、アンソニー・ホロヴィッツのプロフィールとドラマ『刑事フォイル』の基礎知識、さらにドラマ版『カササギ殺人事件』の最新情報を紹介します。

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アンソニー・ホロヴィッツのプロフィール

 アンソニー・ホロヴィッツは『カササギ殺人事件』以前から多くのドラマの脚本や小説を著しています。1990年代には、イギリスの国民的ドラマ『名探偵ポワロ』や『バーナビー警部』の脚本を担当しました。

 

 小説家としては、2000年に刊行したYA(ヤングアダルト)小説『女王陛下の少年スパイ!アレックス』シリーズで人気を博します。2006年には『アレックス・ライダー』というタイトルで映画化され、2020年からは同名でドラマ化されています。

 

ドラマ『アレックス・ライダー』予告編

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 2002年からは、ドラマ『刑事フォイル』の放送が始まります。ホロヴィッツは、このドラマで全話の脚本を担当しています。ドラマは高い評価を受け、2015年まで全8シーズンが製作されました。2004年には、英国アカデミー賞の作品賞にもノミネートされています。

 

 小説家としての実力とドラマの脚本家としての器用さを買われてか、ホロヴィッツは有名小説シリーズの執筆も行っています。2011年には『シャーロック・ホームズ 絹の家』、2014年には『モリアーティ』、2015年には『007 逆襲のトリガー』をそれぞれ発表しています。

 

 2016年には、イギリスで『カササギ殺人事件』を刊行。同じく編集者スーザン・ラインランドを主人公とする『ヨルガオ殺人事件』が、2020年に刊行されています。その他に、元刑事のダニエル・ホーソーンと作家のアンソニー・ホロヴィッツが事件に挑む『メインテーマは殺人』『その裁きは死』があります。

 

 この4作は、いずれも「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「本格ミステリ・ベスト10」「ミステリが読みたい!」で1位を獲得。前代未聞の4年連続4冠を成し遂げています。

 

 

ドラマ『刑事フォイル』とは?

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 『刑事フォイル (原題 Foyle’s War)』は、主に1940年代のイギリスを舞台に、警視正のクリストファー・フォイル(マイケル・キッチン)が事件を解決していくミステリードラマです。巡査部長のポール・ミルナー(アンソニー・ハサウェル)と、運転手のサマンサ・”サム”・スチュアート(ハニーサックル・ウィークス)が同僚として、ともに事件捜査に臨みます。

 

 このドラマには「戦時下で多くの人が死んでいるにも関わらず、被害者が1人や2人しかいない殺人事件をわざわざ捜査する必要があるのか?」という大きなテーマがあります。ミステリーとしてよくできていることに加え、戦時下という背景が取り入れられたストーリーも面白いものになっています。

 

予告編

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 『刑事フォイル』は、イギリスのITVで放送されました。ITVは、英国内ではBBCと並んで影響力のある放送局として『ダウントン・アビー』『名探偵ポワロ』『主任警部モース』などの制作・放送も行っていました。

 

 主演のマイケル・キッチンは、映画『007 ゴールデンアイ』と『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』で幕僚長のビル・タナーを演じていたので、見覚えがあるかもしれません。彼のキャリアの中でも一番の当たり役は、もちろん刑事のフォイル。本作では、Consultant Producerとしてもクレジットされているので、おそらく製作にも多少は関わっていたと思われます。ホロヴィッツの脚本に文句を付けることもできたということですね。悪い意味じゃないですよ。ドラマの脚本なんて、みんなでいちゃもんを付け合って完成させるものですから。

 

 なお、日本では『刑事フォイル』は、AXNミステリーでたまに放送されることがあります。動画配信サービスでは、配信されていません。レンタルDVDは存在しますが、おそらくレンタルビデオ店に並べられるほどの在庫はないので、宅配レンタルで借りることをおすすめします。

 

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ホロヴィッツの今後のプロジェクト

 人気作家であり人気脚本家でもあるアンソニー・ホロヴィッツには、今後も楽しみなプロジェクトがたくさんあります。まずは、2022年2月からイギリスで放送予定のドラマ『カササギ殺人事件』。あの小説『カササギ殺人事件』のドラマ化です。ドラマの脚本は、ホロヴィッツ自身が手掛けています。絶賛されたミステリー小説が、脚本家としても確かな実力を持つ著者自身によって映像化されるのですから、これは期待大です。

 

 また『メインテーマは殺人』の中でも書かれていた、映画『タンタンの冒険』の続編の企画もまだ生きているはずです。映画は、2011年に一作目が公開され、しばらく後に続編の企画がスタートしたのですが、最近は全く噂を聞きません。2018年には、スティーブン・スピルバーグ(一作目の監督)が企画はまだ生きていると話しており、監督がピーター・ジャクソンになることも決まっています。

 

 小説の方も、続々刊行されています。2021年には、ホーソーン・シリーズの3作目『A Line To Kill』が発表されました。2022年8月には、4作目『The Twist of a Knife』の刊行が決まっています。ホーソーン・シリーズは全部で10作あるとも語っていますが、このペースなら10年ぐらいで完結しそうです。日本の新本格作家と比べると速筆ですね。

 

 ともあれ、今後も楽しみな企画が数多く待っているアンソニー・ホロヴィッツには、これからも期待しかありません。

 

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