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『ドクター・フー』が世界で最も面白いSFになれる理由

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 50年以上の歴史を誇るイギリスの人気SFドラマ『ドクター・フー』。2005年から始まった新シリーズだけでも、すでに13シーズン製作されています。そのエピソード数の多さ、またSFというジャンルゆえに、若干の取っつきにくさを感じている人もいるかもしれません。

 

 歴史が長いこともあり、『ドクター・フー』の魅力や楽しみ方も非常に多岐にわたっているのですが、今回は徹底的に「SF」という観点に注目していきます。さらに『ドクター・フー』のSF的な魅力が見られ10話をチョイス。気になるエピソードから観てみるのもありかも。

 

 

 

 

『ドクター・フー』とは?

 『ドクター・フー』は、1963年にイギリスのBBCで放送開始しました。1989年に一度ドラマ終了しましたが、その後も何本か映画版が作られ、2005年にはテレビドラマとして復活しました。以降、2021年までに13シーズンが製作され、すでに2023年には60周年記念エピソードが放送されることが決まっています。

 

 テレビドラマに限らず、オーディオドラマ、コミック、ゲームなど、様々な形でのメディア展開もされています。世界最長のSFテレビドラマシリーズとしてギネスブックにも登録されている『ドクター・フー』の人気はイギリスだけに留まらず、世界中に「フーヴィアン」と呼ばれるファンを生み出し続けています。

 

 基本設定を、軽く紹介しておきます。主人公のドクターは、見た目は人間なのですが、実際にはタイムロードという種族のエイリアンです。ドクターは、ターディスと呼ばれる青いポリスボックス型の装置で、時間と空間を自由に旅することが出来ます。大抵は1~3人程度の人間とともに旅をしており、この人たちはコンパニオンと呼ばれています。

 

 ドクターは、定期的に再生(リジェネレーション)をして、姿を変えます。要は『007』シリーズと同様に、役者が代替わりします。現在までに13人がドクターを演じています。新シリーズは9代目から始まったので、5人の名前だけ書いておきます。

 

9代目:クリストファー・エクルストン

10代目:デイヴィッド・テナント

11代目:マット・スミス

12代目:ピーター・カパルディ

13代目:ジョディ・ウィテカー

 

 現在、日本ではHuluとAmazonプライムビデオで新シリーズが配信されています。そのあたりの詳細は、以下の記事で。

psbr.hatenablog.com

 

『ドクター・フー』が世界で最も面白いSFになれる理由

 これほど長く続き、ファンの多いシリーズなので、『ドクター・フー』には多くの魅力があります。その中でも、今回はSFとしての『ドクター・フー』の面白さに注目していきます。

 

 『ドクター・フー』には、SFとして圧倒的な強みがあります。これほどSFとしての自由度が高いシリーズは、他にありません。ドクターはターディスを使えば自由に時空を旅することが出来るので、どんな場所、どんな時代を舞台にしても良いのですから。

 

 他のSFシリーズを考えみると、『スター・ウォーズ』は遠い昔はるかかなたの銀河系、『ウエストワールド』は近未来のテーマパークと固定されています。一話完結で比較的自由度が高い『スター・トレック』でも近未来の宇宙、アンソロジーシリーズ『ブラック・ミラー』も近未来の地球が舞台と決まっています。

 

 場所と時代を自由に設定できることは『ドクター・フー』にとって圧倒的な強みになっています。古代ローマ時代、ヴィクトリア時代のロンドン、23世紀の宇宙船、謎の宇宙人が住んでいる未来の惑星、太陽系の終わり……、なんでもありです。

 

 普通は、こういった長期シリーズだと、絶対にやってはいけないことが一つだけあります。主人公を死なせることです。『ドクター・フー』に関しては、それも自由にやって大丈夫です。そもそも、ドクターが代替わりシステムとして定期的に死ぬので、ファンも合意の上で主人公を殺すことすら出来るのです。

 

 『ドクター・フー』は基本的には一話完結で、シーズンを通した大きなミステリーがある場合もあります。後者の方はシリーズの整合性を考える必要がありますが、一話完結の内容はそれぞれの脚本家が自由にSFの発想力を伸ばして書いていくことになります。

 

 エピソードごとに面白さには差がありますが、中には本当に良く出来た素晴らしいSFもあります。そういったエピソードに出会えるのが、『ドクター・フー』を観るのがやめられない理由です。

 

エピソードで見るSF『ドクター・フー』

 ここからは、具体的なエピソードを例に出して、SFシリーズとしての『ドクター・フー』の魅力を探っていきましょう。ここで選んだのは、比較的他のエピソードとの関連が薄いものなので、まずはこの中から何話か観てみるのも良いかもしれません。タイトルがAmazonプライムビデオとHuluなどでは異なることもあるので、ご了承を。

 

憎めないエイリアンたち

 SFと言えば、主人公が敵のエイリアンをやっつけるというのが典型的な構図ですが、『ドクター・フー』ではそうではありません。登場するエイリアンはバラエティ豊か。まずは『ドクター・フー』でしか見られない個性的なエイリアンたちに注目。

 

シーズン1第6話「ダーレク 孤独な魂」

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 『ドクター・フー』の最も有名な悪役と言えばダーレクです。ドラム缶に球状の突起が付いたロボット型エイリアンの姿は、イギリスでは非常に有名で、恐怖の象徴になっています。新シリーズの復活とともに、悪名高いエイリアンも復活しました。鎖で囚われたダーレクは、檻の中のハンニバル・レクターほど怖い。

 

シーズン2第8話「闇の覚醒」

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 球形ランプのようなものを常に持っているエイリアンのウードの初登場回。見た目は怖いのですが、中身は優しいエイリアンです。ウードはこの後も何度か登場するのですが、その優しさの背景にある深い物語が徐々に明らかになっていきます。

 

自在に操る時間トリック

 タイムマシンという題材もSFではお馴染みで、ターディスにも同じ機能があります。それだけでなく『ドクター・フー』には様々な時間に関連したガジェットが登場し、それらを巧みにストーリーに組み込んだエピソードがあります。

 

シーズン3第10話「まばたきするな」

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 見ているときは動かないが、目を離した瞬間だけ襲い掛かってきて、相手を過去に飛ばしてしまう嘆きの天使というエイリアンが登場。この設定からしてSFとして面白く、ホラーとしても優れたものになっています。さらに、時間軸を活用したプロットはシンプルながらも巧みで、非常によく出来た作品に仕上がっています。

 

シーズン9第12話「影に捕らわれて」

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 このエピソードには、ほぼドクター1人だけしか出てきません。時間がループする惑星に送り込まれたドクターは、そこから脱出するための方法を探ります。タイムループが上手く取り入れられた脚本は見事です。12代目ドクターを演じたピーター・カパルディの演技も傑出しており、新シリーズ史上最もよく出来た作品とも言われています。

 

SFは現実社会の鏡

 未来を舞台とするSFは、単なる空想だけではなく、現実社会を反映している場合がほとんどです。中には、現実への風刺要素を込めたストーリーもあり、これもSFの醍醐味と言えるでしょう。

 

シーズン3第3話「大渋滞」

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 大渋滞が起こっている近未来の都市ニュー・ニューヨークが舞台。渋滞はあまりにも長く、中には渋滞の中で生まれ、一生を終える人もいるほど。たぶん渋滞に嫌気が差した人が書いた脚本なのかなとか思ったりもしますが、SFは現実社会の延長にあり、社会風刺の要素を含ませることも出来ます。その好例の一つですね。

 

シーズン10第5話「宇宙での死に方」

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 人間よりも酸素の価値の方が高くなった未来の宇宙船が舞台。資本主義においては、希少なものほど価値が高くなるので、人口が増え続け、人類が宇宙に進出していくならば、そんなことが起こってしまうのかも。これも、現実社会への風刺要素を含むエピソードになっています。

 

次世代に伝えたい歴史

 ターディスは過去にも行くことが出来るので、ドクターとコンパニオンは様々な歴史上の出来事を目の当たりにします。

 

シーズン4第2話「ポンペイ最後の日」

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 紀元79年にイタリアのヴェスビオ山が噴火し、ポンペイの町は消滅しました。ドクターたちは、その直前にやってきて、悲劇を止めようと奮闘します。歴史の事実としてポンペイのことを知っている人は多いと思いますが、そこではもちろん家族や子供たちも亡くなっていました。歴史上の出来事が、より鮮明に頭に刻み込まれます。

 

シーズン11第3話「世界が変わる日」

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 日本ではあまり知られていませんが、アメリカでは公民権運動の立役者として誰もが知っている偉人のローザ・パークス。『ドクター・フー』は、もともとは家族向け番組でもあったので、こういった形でローザ・パークスのような歴史上の偉人を知ることが出来るのも良いですね。

 

感動させる力を持つSF

 SFというのは、あくまでも形式みたいなもので、中身はミステリーやサスペンスなど様々なことが出来ます。『ドクター・フー』には、ヒューマンドラマとして成功しているSFもいくつかあります。

 

シーズン5第10話「ゴッホとドクター」

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 現代では世界で最も有名な画家の一人であるゴッホですが、生前は1枚しか絵が売れませんでした。ドクターとエイミーは、ゴッホのもとを訪れます。映画『アバウト・タイム』のリチャード・カーティスが脚本を手掛けたハートウォーミングな物語になっています。

 

2010年クリスマスSP「クリスマス・キャロル」

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 ディケンズの名作『クリスマス・キャロル』をSFにアレンジしたエピソード。原作でも過去、現在、未来の幽霊が登場するのですが、これはまさしく『ドクター・フー』にうってつけの題材。クリスマスストーリーにふさわしく、エモーショナルな物語になっています。

 

まとめ

 紹介した12話は、一話完結のストーリーとして面白いものなのですが、シーズンを通した大きなストーリーもSFとして非常に面白いことがよくあります。その点では、シリーズ5と7が特に面白いですかね。

 

 今回は、『ドクター・フー』のSFとしての面白さに重点を置きましたが、キャラクターの面白さも大きな魅力になっています。それは、観ていけばおのずと明らかになるので、順番にエピソードを観ていってください。

 

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