Amazonプライムビデオで配信が始まったドラマ『デビルズ・アワー～3時33分～』は、奇妙な謎に溢れたSFミステリーです。SFと言えども、シーズン1最終話で明かされる真相は説得力があり、あらゆる謎が一気に解決していきます。今回は、最終話で明かされる事件の真相をネタバレありで解説していきます。
関連記事：2022年新作海外ドラマベスト10【作品賞・監督賞・演技賞】 - 海外ドラマパンチ
基本データ
- 原題：The Devil’s Hour
- 配信：Amazonプライムビデオ
- 配信日：2022年10月28日
- 話数：6
- 脚本：トム・モラン
- 製作総指揮：スティーヴン・モファット
- 出演：ジェシカ・レイン、ピーター・キャパルディ
- あらすじ：毎晩3時33分に目が覚めてしまうルーシーは、様々な幻覚や全く感情を示さない子どもの行動に悩まされる。
予告編
＊ドラマ『デビルズ・アワー～3時33分～』は、Amazonプライムビデオで独占配信中。
追記：シーズン2の製作が正式に決定しました！
以下、シーズン１最終話のネタバレを含みます。
真相
すべての真相は、最終話で明かされます。ギデオンは、これまでに何度も死んでおり、その度に生まれ変わることを繰り返していました。というより、実はすべての人間が同じように生と死を繰り返しているのだと言います。しかし、前回の人生を覚えていないので、新たな人生でも全く同じ行動をしています。
ギデオンが特殊なのは、生まれ変わってからも前の人生のことを覚えているからです。前回の人生で、自分が父親によって殺されることがわかっているので、今度は事前に自分で父親を殺しておきます。その後、ギデオンは殺人容疑で警察に追われることになるので、すぐに捕まってしまいます。でも、問題はありません。自分で死んで、再び新たな人生を始めれば良いだけです。
そんな調子で、ギデオンは無事に生き延びました。ある日、偶然出会った少女のエヴリンが、直後に交通事故で死んでしまったのを発見します。自分の能力を使えば、事前に事故を防ぐことができると気づいたギデオンは、次の人生でエヴリンを助けます。
すると、エヴリンのその後の人生は、これまでは存在しなかったはずの新しいものです。エヴリンは、前世でその場に存在していた人や物の幻覚を見るようになります。例えば、エヴリンが住んでいる家は、前世ではエヴリンと家族が死んだ後に他の人の手に渡っていたはずなので、エヴリンは家の中で自分の知らないはずの新たな住人を目撃することになります。
エヴリンは、一時は精神病院に入りましたが、ギデオンが退所させ、すべての事情を説明。その後は、人里離れたところで暮らすようになります。そこならば、前世では誰も存在していなかったので、幽霊を見ることもありません。しばらく後に、エヴリンは、ギデオンが連れてきた子どもを育てるようになります。その子は、前世で両親に殺されていました。
ルーシーの前世は、殺人課の刑事でした。ギデオンを逮捕してから25年後、ルーシーは刑務所でギデオンと面会します。そこで、ギデオンは「人生で最悪の出来事は何か？」と問います。ルーシーは、子供の頃に母親が銃で自殺したことだと打ち明けます。そこで、ギデオンは次の人生で、銃の弾を抜いておき、自殺を失敗させます。それ以降、ルーシーの母親はエヴリンと同様の状態になり、幽霊や存在しないはずのものを見るようになります。
ルーシーの人生もすっかり変わってしまい、今度は児童福祉課に勤めています。ドラマの第1～5話で描かれていたのは、これ以降の出来事です。ルーシーが、様々な人の殺害現場をフラッシュバックのように思い出していたのは、それらの事件を前世では刑事として担当していたからです。前世で、ルーシーが刑事のラビを結婚していたのも、同じ殺人課の刑事だったからでしょう。毎晩3時33分に起きてしまうのは、母親が銃身自殺を遂げた時間だからであり、トラウマになっていたと思われます。
ルーシーは、今世ではラビではなくマイクと結婚して、アイザックを授かっています。前世ではルーシーとマイクは結婚しておらず、その間に子どももいなかったので、アイザックは本来ならば存在しなかったはずの子どもです。つまり、アイザックは生まれたときから、エヴリンやルーシーの母親のような状態であり、前世のその場にいた人や物を見ることができます。
しかも、アイザックの能力はさらに強く、前世に移動することもできます。これで、アイザックの誘拐事件のときに、ギデオンが「誘拐した人物などいなかった」と言っていたことの理由がわかります。アイザックは、前世に行っていたのです。そこを、ギデオンが何かしらの形で救って、今世に連れ戻してきたのだと思われます。
ギデオンは、そんなアイザックには魂がなく、感情を持たないと考えていました。しかし、母親のルーシーは、そうではないと考えています。アイザックは、母親である自分を愛しているはずだと。アイザックからの電話を聞いたルーシーは家に急いで向かい、燃え盛る家の中に飛び込みます。そこにはアイザックはもう存在せず、ルーシーは死亡してしまいます。
次の人生で、ルーシーは再び刑事になります。それで、たぶん火事から家族を救いました。それか、前世の記憶を思い出し、殺人事件の捜査に生かすようになりました。ここらへんは、よくわかりません。適当に想像してください。
感想
この真相は凄いんですよ。長々と書きましたが、メインのトリックは非常にシンプル。ギデオンは、タイムループをしていたのです。
タイムループは、最近流行っているジャンルの一つです。古くは映画『恋はデジャ・ブ』、最近は映画『ハッピー・デス・デイ』『パーム・スプリングス』、ドラマ『ロシアン・ドール：謎のタイムループ』がヒットしました。日本でも、漫画『東京卍リベンジャーズ』が大ヒットしましたし、今年10月に公開された映画『カラダ探し』と『MONDAYS／このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』は両方ともタイムループものです。
関連記事：Netflixドラマ『ロシアン・ドール：謎のタイムループ』シーズン１感想：人生は時間軸の詰まった箱 - 海外ドラマパンチ
タイムループものは、設定の詰めが甘いことが多いのですが、『デビルズ・アワー』はその点、しっかり考えてあります。まず、タイムループとは、あくまでも記憶の問題であると明言しているのが良い。しかも、本当は全員がタイムループをしているんだけど、前の人生のことを覚えている人がいないだけ、という設定がすっきりしていて気持ちが良い。
従来のタイムループものでは、主人公が死んだら、誕生日や結婚式など、特定のどこかの時点に戻ります。この「どこかの時点」について、まともな説明がされている例を見たことがありません。なんとか説明をこじつけようとして、超常現象だったり、スピリチュアルなものが出てくることもあります。でも、『デビルズ・アワー』では、生まれた瞬間に戻るので、わかりやすい。
それでも、なぜギデオンだけは前世の記憶を覚えているのか、ギデオンは赤ん坊の頃から前世の記憶を持っているのか、といった疑問は湧いてくるわけですが、それは仕方ない。SFですから。
このよく考えられたタイムループ設定を、犯罪ミステリーのオチとして持ってくるのも面白い。タイムループものが流行っている現代だからこそ、説得力のあるオチになっています。だから、皆さん、気を付けてください。くれぐれも、このドラマを他の人に紹介するときに、タイムループものだと言ってはいけません。それは、とんでもないネタバレになってしまいます。
ピーター・カパルディもさすがですね。彼は、ご存じの方も多いかもしれませんが、イギリスのSFドラマ『ドクター・フー』で12代目の主人公を演じていました。『デビルズ・アワー』の製作総指揮を務めているスティーヴン・モファットも、『ドクター・フー』シリーズ5～10を手掛けていた人物です。
関連記事：『ドクター・フー』が世界で最も面白いSFになれる理由 - 海外ドラマパンチ
しかも、『ドクター・フー』はタイムトラベルSFなので、ギデオン（ピーター・カパルディ）が時間がどうのこうのという話をしていると、完全にドクターにしか見えない。自分は『ドクター・フー』の歴代ドクターの中では、12代目が断トツで一番好きなので、これは嬉しかったです。自分では良いことをやっているつもりなのに、執着心が凄すぎてヤバい奴に見えるのが堪らない。クセ強すぎて好きなんです。
と、ここまで絶賛しておいて今さらですが、『デビルズ・アワー』はドラマとしての満足度はさほどではなかったなと感じます。タイムループを犯罪ミステリーのトリックに使おうというアイデアは素晴らしいですが、その真相が明かされるまでが退屈です。第1～5話は、ルーシーのフラッシュバックと不気味なアイザックをずっと見させられることになりますが、さすがに長い。途中で何度か観るのを辞めようと思ったほどです。
6時間のドラマなので、もっと内容を膨らませるべきだったでしょう。これでは、せっかくの良いトリックにたどり着く前に脱落してしまう視聴者がいても不思議ではありません。
ともかく、制作陣はシーズン2の制作も望んでいるようです。タイムループの仕組みが明らかになった今、どんな物語になるのかは、改めて楽しみだったりします。なお、シーズン2に更新されるかどうかは現時点では未定です。
＊追記：シーズン2の製作が正式に決定しました。
