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英国ドラマ『ステージド』シーズン1~3感想|ロックダウンから始まった究極のモキュメンタリーコメディ

 コロナ禍はほとんど収束したので、今さらロックダウンをテーマにした作品を観るのも気が進まないかもしれません。ほとんどのロックダウン作品はそうかもしれません。でも『ステージド』は、ロックダウン後でも十分楽しめるユニークさを持ったドラマです。

 

 というのも、油断して観ていると、結構驚きの展開が何度もあります。現実と虚構が入り混じる独特な作りにもなっており、決してコロナ禍だからといって妥協して作ったドラマではないのです。今回は、そんなドラマ『ステージド』のレビューです。

 

 

登場人物

 ドラマ『ステージド』では、基本的に登場人物が俳優本人として登場します。主演のデヴィッド・テナントとマイケル・シーンの過去の出演作に関するネタも多いので、2人のことを知っていれば知っているほど楽しめるドラマになっています。

 

 

デヴィッド・テナント

 俳優。イギリスの長寿SFドラマ『ドクター・フー』で10代目ドクターを演じたことでよく知られている。BBCのミステリードラマ『ブロードチャーチ 殺意の町』では、3シーズンに渡って刑事役を演じた。現在は、マイケル・シーンとともにAmazonオリジナルドラマ『グッド・オーメンズ』に主演している。

 

マイケル・シーン

 俳優。シェイクスピア作品の舞台などに出演して評判を得て、特に2006年から上演された『フロスト/ニクソン』(後に映画化)での演技が高く評価されている。映画『トワイライト』『アンダーワールド』シリーズやドラマ『マスターズ・オブ・セックス』などハリウッド作品にもよく出演している。現在は、デヴィッド・テナントとともにAmazonオリジナルドラマ『グッド・オーメンズ』に主演している。

 

ジョージア・テナント

 女優。デヴィッドの妻。『ドクター・フー』への出演がきっかけで、デヴィッド・テナントと結婚している。なお、父親は5代目ドクターを演じたピーター・デイヴィソン。つまり、ドクターの娘であり妻である。

 

アナ・ランドバーグ

 マイケル・シーンと同居しているガールフレンド。2人の間には子どももいるため、事実婚の状態に近い。女優として、舞台などに出演している。

 

サイモン・エヴァンズ

 脚本家。ドラマの中で脚本家を演じているが、実際にこのドラマの脚本家である。姉のルーシー・イートンも出演している。ルーシーは女優であり、実際にサイモンの姉でもある。つまり、2人とも本人役。

 

 

シーズン1

 デヴィッド・テナントとマイケル・シーンが、コロナ禍で延期になってしまった舞台の稽古をZoomでやろうとするが、全然進まないという話。基本的にZoomの画面上しか使わないので、基本はしゃべり漫才みたいな調子です。

 

 デヴィッドとマイケルが、それぞれ『ドクター・フー』や『フロスト/ニクソン』のことをネタにしたり、結構どうでも良いことで言い争いをしていたりするのを見ていると、なんだか2人のプライベートな会話を聞いているような気分になってきます。ただし、デヴィッドとマイケルは喧嘩ばかりしていますが、本当の2人はもっと人当たりが良い人なので(たぶん)ご安心を。

 

 なお、第1話は2020年6月10日に放送されています。コロナ禍が始まったのが2020年3月なので、3ヶ月弱でドラマの企画から放送まで漕ぎつけたことになります。撮影は実際にそれぞれの家で行われているので、デヴィッド・テナントとマイケル・シーンの素敵な自宅も見ることができます。

 

シーズン2

 シーズン2は、シーズン1の『ステージド』のアメリカ版を作るという話が持ち上がり、またしても2人が色々文句を言い合う話です。つまり、ここで一旦、シーズン1はフィクションですよということにして、その後の展開を描いているわけです。大胆な構図ですね。

 

 シーズン2はゲストが豪華。ユアン・マクレガーやケイト・ブランシェット、サイモン・ペグ&ニック・フロストなどなど。英国ドラマに馴染みのある人なら、ヒュー・ボネヴィルやエイドリアン・レスターの顔にもきっと見覚えがあるでしょう。

 

シーズン3

 シーズン3では、デヴィッドとマイケルがサイモンの新たなプロジェクトに参加するようです。ところが、第2話でその話はおしまい。なぜなら、サイモンがその後の脚本を書いていないからです。というわけで、その後は『ステージド』シーズン3が作れなくなったデヴィッド&マイケルらのドキュメンタリーということになるのですが、実際にはやっぱり脚本があるわけです。

 

 シーズン3ともなると、本当に現実と虚構の境目がわからなくなってきます。家中にカメラを設置するシーンがあったり、テナント家の息子のタイ・テナントも出てきたりして、もうほとんど現実なのです。メタ構造への偏執的なまでのこだわりが感じられます。

 

 ちなみに、シーズン3の前半では、デヴィッドが東京にいることになっています。画面の隅にずっと「ごろっとグラノーラ」が映りこんでいたのが、とても印象に残っています。しかも、これ自体が実は伏線にもなっているというのだから堪らない。

 

 

感想

 ドラマのほとんどは、デヴィッドとマイケルがどうでも良いようなことでわめき合って、一緒に脚本家のサイモンをけなりたりするばかりなのですが、なぜかずっと面白く観られてしまいます。なんだかんだ、可愛らしいんですよねえ。

 

 ジョージアとアナも準レギュラーとして出演していますが、特にジョージアが面白い。5人の中で唯一のしっかり者といったポジションで、わがままばかり言うデヴィッドの世話をしたりしなかったりします。今度、シットコムとかに主演してみてほしいですね。

 

 

 そして、このドラマの構造は、私の大好物です。私は、メタ構造フェチなところがあるので。『ステージド』シーズン1は、まだ一般的なモキュメンタリーコメディの形式を発展させた程度のものです。『ラリーのミッドライフ☆クライシス』レベルです。それでも、俳優本人の経歴をネタにしまくるのは新しい。

 

 シーズン2からが本領発揮です。シーズン1はフィクションだったと認めて、そこからさらに物語を展開させます。メタレベルが一段上がっています。しかも、皆さんご存知といったような役者が続々と登場するので、なおさら現実感が高まっています。

 

 シーズン3になると、メタレベルがさらに一段上がります。これには、論理的な理由があります。シーズン3は、第1~2話と第3~6話で世界線が異なります。後半の世界線がシーズン2と同じなのか、あるいはシーズン2よりも一段上なのかを判定するポイントは、ベン・シュワルツのキャラクターにあります。

 

 シーズン2では、ほとんどの役者が本人役で登場するのですが、エージェント役のウーピー・ゴールドバーグとそのアシスタント役のベン・シュワルツだけは別です。このときのベン・シュワルツの役名は「トム」です。しかし、シーズン3では、彼はデヴィッドとマイケルから「ベン」と呼びかけられています。よって、シーズン3の世界線はシーズン2よりもさらに一段上、すなわちシーズン2がフィクションドラマとして存在する世界の話であることが分かります。

 

 だから、シーズン3は、これまでのシーズン以上に”現実っぽい”スタイルになっています。そういうことが分かるのが、メタ構造フェチの私としては、好きだったりします。

 

 ともかく、ドラマ『ステージド』はロックダウンという厳しい制約の中で始まった作品ではありますが、結果的にはロックダウンが終わった後でも十分楽しめるコメディになっていました。結局、面白いドラマができるかどうかは、アイデア次第なんですよねえ。

 

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