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海外ドラマ『DES デス』感想:平凡な公務員の裏の顔

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 『ドクター・フー』や『グッド・オーメンズ』で知られるイギリスの俳優デヴィッド・テナントですが、彼は意外と悪役が似合います。むしろ『グッド・オーメンズ』では悪魔、『Marvel ジェシカ・ジョーンズ』ではメインの悪役なので、 そういう役の方が多いぐらいかもしれません。

 

 全3話の海外ドラマ『DES デス』では、デヴィッド・テナントは実在の殺人犯を演じています。一見すると平凡な男に見える人物ですが、その裏では想像だにしないことを行っていたことが明らかになります。 

 

 

 

海外ドラマ『DES デス』基本データ

・原題:Des

・放送局:ITV

・放送期間:2020年9月14日~16日

・原作:ブライアン・マスターズ『死体と暮らすひとりの部屋ーある連続殺人者の深層』

・主演:デヴィッド・テナント

・予告編:

www.youtube.com

 

感想(ネタバレ)

 『DES』は、犯罪ドラマとしては意外な展開をします。まず、第1話で排水管に詰まった人肉が発見されたことで捜査が始まります。そこで、刑事が容疑者のデニス・ニルセンの部屋に行くと、彼はあっさり犯行を自白。部屋に置かれていた遺体も見つかり、すぐに逮捕されてしまいます。

 

 事情聴取のときも、デスはぺらぺらと自分のことを話します。自分が15人の男を殺害したことを認め、一人一人との”思い出”を語り始めます。ただし、名前はほとんど言いません。本当に覚えていないのか、ただ情報を隠しているだけなのかはよくわかりません。

 

 警察の主な仕事は、被害者の身元特定になります。これが、なかなか難しい。デスは、遺体を焼いてから埋めたりしているので、身元確認が出来るような状態ではないのです。

 

 遺体をただ焼いて埋めるだけというのが、デスの特殊なところですね。死体を切断することや、もて遊ぶこと自体にはあまり喜びを感じてはいないようです。単にそこに死体があるということに、安心感を得ていたのでしょうか。

 

 結局、裁判までに身元を特定できたのは6人、その後さらに2人の確認ができたのみでした。

 

 途中まで、捜査に協力的だったデスですが、徐々に態度を変えていきます。刑事との面会で「裁判で有罪判決が出るまでは、俺は無罪じゃないか!」と言い出し、殺害に関してもノーコメントと言います。そして、罪状認否では自分は無罪だと主張し始めるのです。

 

 15人(裁判で扱われたのは6人)の殺害については認めています。しかし、そのとき彼はまともな精神状態ではなかった、つまり責任能力がなかったと主張しています。基本的に、どの国でも責任能力がないことが認められれば無罪です。精神病院などに入れられることはありますが、刑務所には入りません。

 

 ここらへんは、デスがもともと警察で働いていたこともあってか、抜かりないんです。取り調べでは、始めから動機を話すことはなかったですが、最初から無罪主張をするつもりだったのでしょうか。ぺらぺらと喋っていたのは、自分が警察に与えたい情報だけを与え、他の点から注意を逸らすためだったのかもしれません。

 

 裁判の焦点は、デスが正気だったのか否かになります。ただ、観ている方からすると、デスは明らかに狡猾な犯罪者なので、責任能力ありとして有罪になってほしい思うわけです。一方で、警察が取り調べで事件の動機などについて訊いていなかったため、弁護側が意外と鋭い質問もしてくるのです。

 

 それでも、最後には6人全員について有罪となり、無期懲役が科されました。イギリスでは1969年に死刑が廃止され、デスの事件が起こった80年代も含め、それ以降の最高刑罰は無期懲役になっています。

 

 これで一件落着、かと思いきや、デスは伝記作家に衝撃の事実を告げます。彼が殺したのは15人ではなく、実際には12人だと言うのです。彼がここで嘘を吐いている可能性もありますが、その必要性も感じられないので、本当に12人だったのではないかと思います。

 

 15人が12人になったところで一体何が変わるんだ?という話かもしれません。確かに、どっちにしても無期懲役は宣告されたでしょう。しかし、警察はデスの証言を真に受けて、15人として捜査を進めていました。そもそも、排水管から人肉が発見されたのも、デスが管理人に排水管の掃除を頼んだからでした。

 

 そのことを考えると、すべてはデスの思い通りに進んでいたような気がしてきます。デスは全く普通の公務員であり、取り調べ中も極めて理性的に話をしていました。裁判で証言をしていた生き残りの被害者も、デスは犯行以外ではとても優しかったと述べています。

 

 彼は非常に人を操る能力に長けていたことが想像されます。12人以上の人を巧みに家に誘いこんでいるのですから。それだけでなく、事情聴取での巧妙な話により、警察も彼の話を信じて捜査を進めていました。

 

 彼が、なぜそのような犯行に及んだのかはわかりません。その点について、無闇に推測をするのも意味がないことでしょう。ただし、彼のような人物の危険性は知っておく価値があります。デスのように、巧みに人を操り、自分の思い通りにする人が実在するということを。

 

 

 

 デヴィッド・テナントの演技は見事でした。ドラマで映し出されるデスは、ほとんど警察や伝記作家と会話をしているばかりであり、犯行シーンは全く映し出されません。それであるにも関わらず、非常に恐怖を感じます。『ドクター・フー』や『グッド・オーメンズ』ではチャーミングなデヴィッド・テナントですが、殺人犯役となれば見事に演じ上げます。素晴らしかったです。

 

 ちなみに、ドラマの原作であり、ドラマの中でも登場したブライアン・マスターズの『死体と暮らすひとりの部屋』は邦訳版もあります。原作とは言っても、こっちではデスの過去に注目した内容になっているらしいですね。

 

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