コメディドラマ『ビッグバン・セオリー』を、現役物理学科大学生が科学・海外カルチャーの両面から斬る!今回は、スカイウォーカー・ランチにターディスと、オタク要素満載な『ビッグバン・セオリー』シーズン8エピソード19を解説します!
あらすじ
共著論文の講演のため、バークレー大学に呼ばれたシェルドンとレナード。その道中にスカイウォーカー・ランチがあることに気づき、二人は寄り道をする。一方で、他の面々は、ハワードの実家のガレージの片づけをしていた。そこで、ハワードがかつて購入したターディスが見つかり、これを捨てるか否かでハワードとバーナデットは争うことになる。
観測不可能ゲーム
車の中でシェルドンは「観測不可能ゲーム(I Can't Spy)」をやろうと言い出します。一般的には「I Spy」というゲームがあり、これは出題者が身の回りにある何かのヒントを出し、他の人がそれが何かを当てるという非常にシンプルなゲームです。シェルドンは、このゲームをアレンジして何かよくわからない説明を加えていますが、要は身の回りにある目に見えないものを当てるゲームのようです。
ここで、シェルドンは「僕たちを通過している観測不可能なものは何?」というヒントを出します。これを聞いて、私がパッと頭に浮かんだのはニュートリノだったのですが、その通りでした。レナードももちろん正解し、シェルドンは不機嫌になります。ちょっとー!手加減しすぎだよ、シェルドン!
ニュートリノというのは、電荷は0でとても軽い素粒子の一種です。ニュートリノは、超新星爆発や放射性崩壊のときなどに発生し、宇宙空間を無数に飛び回っています。1秒間に約100兆個のニュートリノが、私たちの体を通り抜けているとも言われます。しかし、ニュートリノは他の物質とほとんど反応しないため、人体を通っても何の影響もありません。
ニュートリノは、他の物質とほとんど相互作用をしないため、観測も非常に困難です。しかし、小柴昌俊博士はカミオカンデという巨大な装置を作り、ニュートリノを観測することに成功しました。小柴昌俊博士は、この功績で2002年にノーベル物理学賞を受賞しています。
ターディス
出ました、『ドクター・フー』ネタ!『ドクター・フー』は、イギリスBBCで現在まで50年以上に渡り放送されている国民的SFドラマです。ターディスは、『ドクター・フー』のドラマの中で、主人公のドクターが乗って時空を旅する宇宙船です。外見はただの青い箱なのですが、中身は想像以上に広いことが特徴です。
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今回のエピソードの最後では、シェルドンが4代目ドクターのコスプレをして、ドクターになりきっています。ドクターは世襲制なので、定期的に演じる人が変わり、その度にキャラクターも変わります。この4代目ドクターは、1970年代にトム・ベイカーが演じたドクターなので、シェルドンも相当コアなフーヴィアン(ドクター・フーのファン)ですね。
ちなみに、ペニーがターディスを送り返してやると言っていたギャリフレイ(ガリフレイ)とは、ドクターの出身惑星のことです。ペニーがどんどんオタク知識を身につけていてビビる(笑)
ラッセルのパラドックス
シェルドンが、車の中で「ファンキーな曲を聞きながら、ファンキーな曲を求めるのは、ラッセルのパラドックスだ」と言います。ラッセルのパラドックスとは、自分自身を含む集合について言及する際に起こるパラドックスの一種です。
ラッセルのパラドックスは、理髪師の例とともに紹介されることが多いです。これは、「自分で髭を剃らない人すべての髭を剃る理髪師がいる。このとき、理髪師の髭を剃るのは誰か?」というものです。
理髪師が自分で剃ってしまったしまったら、自分で髭を剃る人を剃っていることになってしまい、矛盾です。他の人に剃らせたら、理髪師自身が自分で髭を剃らない人になってしまい、どちらにしても矛盾するのです。
実は、これって理髪師が女性ならパラドックスが解消されてしまうんですよね。だから、個人的にはこれはあんまり良い例ではないと思っているのですが、すでに有名になってしまったのでどうしようもありません。
ちなみに、このときにシェルドンとレナードが聞いていたのは、Wild Cherryの「Play That Funky Music」という曲です。
スカイウォーカー・ランチ
字幕では「ジョージ・ルーカスのスタジオ」と言われていますが、実際にはスカイウォーカー・ランチと言っています。スカイウォーカー・ランチは、ルーカス・フィルムの本社がある場所のことで、原則非公開になっています。
スカイウォーカー・ランチには、ジョージ・ルーカスが関わった映画『スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』の撮影で使われた小道具などが展示されています。ファンにとっては、一生に一度でも良いから行きたい憧れの場所になっています。
決闘裁判
ハワードとバーナデットは、ターディスを賭けてそれそれ代理を立て、卓球で勝負をさせます。エイミーは、これを「まるで決闘裁判のようだ」と言い、ペニーは「『ゲーム・オブ・スローンズ』で観たことある!」と言います。
決闘裁判とは、中世のヨーロッパで実際に行われていた裁判方法の一つです。原告と被告が、それぞれ代理人(チャンピオンと呼ばれる)を出し決闘させ、勝った方の主張が通るというものです。とんでもないですね。
この決闘裁判は、『ゲーム・オブ・スローンズ』でも何回か出てきます。ペニーがこのシーンで言及しているのは、シーズン4第8話で行われるオベリン・マーテル(別名:赤い毒蛇)とグレガー・クレゲイン(別名:山)の決闘です。オベリンはティリオンの代理人、グレガー・クレゲインはサーセイの代理人でした。この決闘は衝撃の結末を迎えるのですが、それは観てのお楽しみです。
ちなみに、ペニーは「『ゲーム・オブ・スローンズ』は、ドラゴンとセックスが出てくるから好き」と言っていましたが、これはアメリかではよく言われるジョークです。そして、あながち嘘ではない(笑) もちろん、実際にはストーリーの面白さや映画を超えるスケールあっての『ゲーム・オブ・スローンズ』なので、未見だったらぜひ観てみて下さい。