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物理学科生が『ビッグバン・セオリー』シーズン9第3話を斬る

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 コメディドラマ『ビッグバン・セオリー』をご存じでしょうか?このドラマは、4人のオタク物理学者たちを主人公とするシットコムです。私自身も現役の物理学科の学生で、しかも海外カルチャーのオタクということで、彼らとは何かと共通点が多いのです。

 

 そこで、今回は『ビッグバン・セオリー』シーズン9エピソード3「独身さよならパーティーの法則」を科学・海外カルチャーの両面を解説していきます!

 

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あらすじ

 ハワードとラージは、レナードをバチェラー・パーティーに連れ出す。ついでに、シェルドンも。そして、4人はリチャード・ファインマンがかつて乗っていたバンで、彼の別荘に向かう。一方で、ペニーは結婚のことをまだ父親に話しておらず、エイミーは別れたことをまだ母親に話していなかったことが判明したため、それぞれ報告をすることになる。

 

リチャード・ファインマン

 『ビッグバン・セオリー』には、シェルドン・クーパーが尊敬する数少ない科学者の一人としてリチャード・ファインマンの名前がしばしば出てきます。S9EP3では、シェルドンら4人がファインマンの車に乗って、彼の別荘に向かうという話です。

 

 何を隠そう、私もリチャード・ファインマンさんは大好きです。ファインマンは、主に量子力学の分野で活躍した物理学者で、1965年には朝永振一郎らとともにノーベル物理学賞を受賞しました。後年には、スペースシャトルチャレンジャー号爆発事故の調査委員会にも参加し、原因解明に尽力しました。物理学科生には、『ファインマン物理学』の著者としても知られています。

 

 ただ、ファインマンはその功績よりも、むしろその人柄でよく知られているのかもしれません。興味のあることには、周りの目を気にせずとことんのめりこむ純粋さを持つ一方で、科学に対しては偽りのない姿勢で臨むことを何よりも大切にした人です。自伝『ご冗談でしょう、ファインマンさん』は、彼の半生がコミカルに、ときに真面目に書かれている名著です。

 

 今回のエピソードに出てくるファインマンのバンには、ファインマン・ダイアグラムが書いてあります。ファインマン・ダイアグラムとは、ファインマンが発明した図式のことで、これを用いると素粒子などの粒子の反応が非常にわかりやすく表せます。自分はそこを見て「マジか⁉」って思ったんですけど、ドラマに登場したものは実際のファインマンのバンらしいです。ファインマンも、相当面白い人ですね。

 

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http://azjauthor.blogspot.com/2015/10/science-and-big-bang-theory-richard.html

 これは、ファインマンの家族と彼が乗っていたバンの写真です。バンは今もスミソニアン博物館にあります。

 

I'm too getting old for this crud.

 シェルドンが、オープニングで身代金を要求されたら「I'm too getting old for this crud.」と応えると言っていました。crudとは、「汚い」という意味があります。元ネタは、おそらく映画『リーサル・ウェポン』でマータフ刑事が放った「I’m too getting old for this shit.」という言葉でしょう。最後の単語が違うのですが、これは放送禁止用語を避けるためかもしれません。

 

怪しい伝説

 バンのナットを外そうとするときに、ハワードは腐食作用を用いた方法を思いつきます。これに対して、シェルドンは「MIT(マサチューセッツ工科大学)の教育をなめていたよ」と褒めるのですが、ハワードは「科学番組で見たんだ」と答えます。字幕では出ていないのですが、実際には「MythBustersで見たんだ」と言っています。

 

 MythBustersは、日本では『怪しい伝説』というタイトルでディスカバリー・チャンネルなどで放送されています。毎回、巷に出回る怪しい伝説を科学の力で検証します。実験のときには派手な爆発が伴うのが定番となっていて、アメリカの科学番組の中でも抜群の人気を誇っていました。めちゃくちゃ面白いので、機会があったらぜひ観てみて下さい。

 

ラマーズ法

 ラージがタイヤのナットを回すときに、やたらと息を荒くしています。このとき、ラージは「ラマーズ法だよ」と応えます。ラマーズ法とは、出産の際に妊婦が行う呼吸法のことです。日本では、「ヒッ、ヒッ、フー」という呼吸法として知られます。

 

テルミット反応

 4人は、ナットが外れなくて困るので、最終手段として熱で溶かしてしまおうと考えます。そこで、車体を削って鉄さびとアルミニウムの粉末を集め、火を付けます。結果、車は大炎上。

 

 テルミット反応酸化還元反応の一つで、例えば次のような反応が起こっています。

  Fe2O3+2Al→Al2O3+2Fe

 この反応の際に多量の熱が発生するため、鉄の溶接などに使われています。見た目にも迫力があるため、しばしばサイエンスショーなどでも行われる人気の実験です。でも、彼らはそもそもナットを溶かしてどうするつもりなんだという話ではあるんですけどね(笑)

 

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↑でんじろう先生のテルミット反応実験。少量でも、かなり激しく反応することがわかります。

 

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