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海外ドラマ『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』感想

I'm going to make an ice blue terrifying film about people you love.

- Albert S. Ruddy, The Offer

 

 映画史に残る傑作映画『ゴッドファーザー』。ドラマ『ジ・オファー ゴッドファーザーに賭けた男』は、この名作の製作の裏側を描いた全10話のリミテッドシリーズです。このドラマはU-NEXTで配信されているのですが、その紹介文がちょっと面白いので引用します。

 

名作誕生の裏側で実在した「断れないオファー」の連発…史上最も危険な映画製作がはじまる

 

 ドラマ『ジ・オファー』のタイトルは『ゴッドファーザー』の名言「I'm gonna make him an offer he can't refuse.」から取っています。ということで、感想を書いていきます。この記事はネタバレを含みますが、映画『ゴッドファーザー』が歴史的な名作になるという結末は誰でも知っているので、大したネタバレはないかもしれません。でも、一応ネタバレに関しては自己責任でお願いします。

 

基本データ

  • 原題:The Offer
  • 配信:Paramout+(アメリカ)、U-NEXT(日本)
  • 公開日:2022年4月28日~6月16日
  • 脚本:レスリー・グライフ、マイケル・トールキン
  • 出演:マイルズ・テラー、マシュー・グード、ジュノー・テンプル、ダン・フォグラー
  • あらすじ:映画『ゴッドファーザー』を手掛けたプロデューサーのアルバート・S・ラディの実体験を基に名作映画の製作の裏側を描く。

予告編

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 ドラマ『ジ・オファー』はリミテッドシリーズなのでシーズン2はありません。海外の視聴者からは絶賛をもって受け入れられました。米批評サイトRotten Tomatoesの批評家スコアは57%と低めですが、視聴者スコアは95%を獲得。IMDbでも☆8.7となっており、非常に高い評価を受けています。

 

登場人物

アルバート・S・ラディ(マイルズ・テラー)プロデューサー

ベティ・マッカート(ジュノー・テンプル)ラディの秘書

ロバート・エヴァンス(マシュー・グード)パラマウントの制作部門長

フランシス・フォード・コッポラ(ダン・フォグラー)映画監督

マリオ・プーゾ(パトリック・ギャロ)原作兼脚本

チャールズ・ブルードーン(バーン・ゴーマン)ガルフ&ウェスタンの会長

バリー・ラピダス(コリン・ハンクス)ガルフ&ウェスタンの幹部

ジョー・コロンボ(ジョヴァンニ・リビシ)ニューヨークのマフィア

*ガルフ&ウェスタンは、当時のパラマウントの親会社。

 

 

感想

 映画には、プロデューサー、エグゼクティブ・プロデューサー、製作総指揮など、呼び方はいくつかありますが、そういった役職の人がいます。それは、誰もが知っています。でも、プロデューサーが実際に何をしているのかを知っている人は意外と少ないかもしれません。ドラマ『ジ・オファー』では、映画プロデューサーが大活躍しているので、ついにその仕事の中身を知ることができます。

 

 映画プロデューサーのアル・ラディは、『ゴッドファーザー』を手掛ける前は、さほど大物ではありませんでした。コメディドラマを1本ヒットさせ、低予算映画を1本製作しましたが、そのくらい。アカデミー賞とは無縁の存在でした。そんな男に『ゴッドファーザー』は任されました。

 

 この時点で、すでに意外な展開です。映画が公開される前から、マリオ・プーゾが書いた小説の『ゴッドファーザー』はすでにベストセラーでした。となれば、その映画化にも期待が掛かっていたはず。それを、中堅プロデューサーに任せるというパラマウント、というかボブ・エヴァンスのチョイスが絶妙です。マシュー・グードが演じるボブは、陽気でチャラい雰囲気を漂わせていますが、頼れるときは頼れる奴なのがズルい。

 

 アルは、最初に原作者のマリオ・プーゾに映画の脚本を依頼します。ハリウッドでは、原作者に脚本を書かせるなという暗黙の掟があるらしく、この判断はボブたちから反発を受けます。その掟の理由は、なんとなくわかります。原作者は自分の小説にこだわりがありますが、映画では短い時間に収め、より多くの観客に受け入れてもらうために、様々なストーリーをカットしたり改変したりする必要があります。そんなことを原作者ができるとは思えません。

 

 案の定、マリオ・プーゾが脚本を書く手は途中で止まってしまいます。そこで、フランシス・フォード・コッポラの登場です。コッポラとプーゾは、見た目が似ていることもあってか知りませんが、意気投合して脚本執筆もスムーズに進むようになりました。2人の友情は1作目の成功以降も続き、2作目と3作目でも共同で脚本を書いています。

 

 アルはその間も忙しくしています。まず片づけなければならなかったのは、キャスティングの問題。コッポラとプーゾは、マーロン・ブランドアル・パチーノの起用を強く希望しています。しかし、マーロン・ブランドは扱いにくい俳優として有名であり、当時のアル・パチーノは小柄で痩せていたので、ギャング役には向かないと思われていました。スタジオの上役はこの2人を断固として使いたがりません。

 

 その気持ちを変えたのが、マーロン・ブランドの家を訪ねたときでした。マーロン・ブランドが、即興で頬に綿を含んでヴィトを演じてみせました。これで、やっとボブたちを納得させることに成功します。このトリビアはかなり有名なので、すでに知っていた人も多いかもしれません。

 

 アル・パチーノとはMGMとの間の契約でわちゃわちゃしていたようですが、代わりにロバート・デ・ニーロを差し出すことでパチーノを獲得します。ご存じの通り、その後、デ・ニーロは『ゴッドファーザー パートⅡ』で若いヴィト・コルレオーネを演じます。デ・ニーロがマイケル役だったとしても、それはそれで見てみたかったですけどね。

 

 アル・ラディが対処しなければならないもう一つの大問題が、ニューヨークのマフィアとの関係でした。コロンボ・ファミリーに目を付けられ、映画の中止を迫られます。これは、脚本を直々に見せて、そこから「マフィア」という言葉を取り除くことで承諾を得ます。脚本をろくに読まずにOKを出していますから、ジョー・コロンボも意外と優しいところがありますね。

 

 その後も、コルレオーネ家のロケ地の問題、シチリアロケの予算の問題など、次々と問題が起こります。アル・ラディと秘書のベティ(めっちゃ有能)は、これらの問題を順に解決していきます。これこそが映画プロデューサーの仕事。最近観た『ハリウッド・スターガール』という映画に、Producers make sure that everyone get what they need.(プロデューサーはみんなの要求を満たす)というセリフがあったのですが、これは端的に的を射た言葉かもしれません。

 

 映画の撮影が始まってからも細々としたトラブルは立て続けに起こっていますが、ここまでくると慣れたもので、サクサクと機転を利かせて解決していきます。その中で、映画『ゴッドファーザー』のトリビアもどんどん明かされていきます。いくつか挙げてみると、

  • 映画冒頭でマーロン・ブランドがなでていた猫は、撮影現場にいた野良猫
  • マーロン・ブランドはカンペを読んでいた
  • コルレオーネ家の壁の一部は張りぼて
  • 最初に撮影されたシーンはマイケルがプレゼントを買って店を出てくる場面
  • ベッドの中の馬の生首は、本物が使用されていた
  • ルカ・ブラージを演じたレニー・モンタナは本物のコロンボ・ファミリーの一員
  • マイケルが銃撃の前にトイレに隠しておいた銃を取りに行くシーンの撮影で、監督はわざと銃を取りにくい場所に置いておいた

などなど。馬の首や野良猫の話は有名ですが、あまり知られていないものもあり、これは本物のアル・ラディが製作総指揮を務めているドラマならではの強みです。なお、トリビアの一部は、以下の映画.comの記事にもまとめられています。

「ゴッドファーザー」がさらに面白くなる50のトリビア【公開50周年記念】 : 映画ニュース - 映画.com

 

 映画製作に関しては先ほどの記事などで裏が取れますが、マフィア関係の出来事については、どの程度真実だったのかは私にはわかりませんでした。アルが、マフィア向けの試写会を行ったのは事実だそうです。でも、ジョー・コロンボとあれほど親密になっていたかどうかは怪しいと思います。あくまでもドラマは実話をもとにした創作みたいなところはあるので、フィクションだとしても構いませんが。面白ければそれで良いのです。

 

 このドラマが最終的にどのようなエンディングを迎えるかはわかりきっています。映画は歴史的な大成功を収め、アカデミー賞では作品賞を獲得します。この結末が最初からわかっているので、映画の製作過程でどれほどトラブルが起こっていても、ドラマの視聴者は気楽に観ることができます。ゆったりとカンノーリでも食べながら観るドラマとしては最適です。

 

 ドラマ『ジ・オファー』を見終わったら、映画『ゴッドファーザー』を観たくて仕方なくなってきます。ドラマでは、実際の映画の場面が絶妙に映らないようになっています。そのため、ドラマで知ったトリビアを確認したり、アル・ラディたちがどのような映画を作ったかを知るためには、改めて『ゴッドファーザー』を観なければいけません。このときは『ゴッドファーザー』に関して新しい視点があるので、また新鮮な気持ちで映画を楽しむことができます。

 

 『ジ・オファー』全10話を観た後に、映画『ゴッドファーザー』本編を観て、エンドロールのproduced by ALBERT S. RUDDYという文字を見つけるまでが一連のセットです。

 

 このドラマを観ると、『ゴッドファーザー』をさらに好きになれるだけでなく、映画そのものをさらに好きになることができます。映画製作の裏側にはこれほど多くの人たちの情熱が関わっており、どんな映画でも多かれ少なかれトラブルを乗り越えて公開されています。それを知ってしまったら、もう映画を好きになるしかありません。

 

 ドラマ『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』は、U-NEXTで独占見放題配信中。映画『ゴッドファーザー』三部作は、U-NEXTを含めていくつかの動画配信サービスで配信されています。

 

 こういった映画製作の裏側を描いたドラマをさらに見てみたいという人には『アントラージュ★オレたちのハリウッド』がおすすめです。

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