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海外ドラマ『Your Honor/追い詰められた判事』シーズン1感想

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 『ブレイキング・バッド』で悪の道に堕ちる化学教師を演じたブライアン・クランストンは、またしても悪の道に堕ちていきます。今度は、息子の罪をもみ消そうとする判事として……。今回は、U-Nextで独占配信中の海外ドラマ『Your Honor/追い詰められた判事』シーズン1のネタバレ感想です。

 

 

 

『Your Honor/追い詰められた判事』基本データ

・原題:Your Honor

・放送局:Showtime

・放送年:2020年~

・シーズン数:1(シーズン2の制作決定)

・話数:10話

・脚本:ピーター・モファット

・主演:ブライアン・クランストン

・あらすじ:

 17歳の少年アダムが、交通事故でギャングのボスの息子を轢き殺し、そのまま逃げてしまった。アダムの父親で判事のマイケル・デジアートは、息子の事件をもみ消すために奔走する。

・予告編:

www.youtube.com

海外ドラマ『Your Honor/追い詰められた判事』はU-Nextで独占配信中。

 

『Your Honor/追い詰められた判事』登場人物

マイケル・デジアート:判事

アダム・デジアート:マイケルの息子

ロビン・デジアート:1年前に亡くなったマイケルの妻

エリザベス・ガスリー:マイケルの義母

ナンシー・コステロ:刑事

リー・デラメール:弁護士

チャーリー・フィガロ:政治家

フラニー・ラティマー:アダムの教師

 

ジミー・バクスター:犯罪組織のボス

ジーナ・バクスター:ジミーの妻

カルロ・バクスター:バクスター家の長男

ロッコ・バクスター:バクスター家の次男

フィア・バクスター:バクスター家の長女

 

ビッグ・モー:黒人ギャング「デザイア」のボス

リトル・モー:デザイアの幹部

コフィー・ジョーンズ:デザイアのメンバー

ユージーン・ジョーンズ:コフィーの弟

 

 

『Your Honor/追い詰められた判事』シーズン1ネタバレ感想

①判事ならどうする?

 物語は、判事の息子のアダムが、轢き逃げ事件を起こしてしまったことから始まります。始まりは、不幸な事故でした。ぜんそく持ちだったアダムは、呼吸器に手が届かず、運転の操作を誤ってしまいます。

 

 交通事故には、運が関わる部分が多くあります。もし、運転の操作をミスしたとしても、誰もいないような場所なら何の問題もありません。たとえ人を轢いてしまったとしても、軽症で済む場合もよくあります。しかし、アダムの場合は、最悪のパターンでした。衝突相手を殺してしまった上に、その相手がギャングのボスの息子だったのです。

 

 アダムは、轢いた相手が助からないと見ると、そのまま逃げてしまいました。言う間でもなく、本来はその場にとどまるべきです。しかし、相手が相手です。素直に出頭したところで、刑務所で殺されてしまうかもしれません。当時のアダムは、相手が誰なのか知らなかったとはいえ、自首して殺されるよりは、とりあえず逃げるのは一つの選択肢だったのかもしれません。

 

 一連の事実を知った判事のマイケル・デジアートは、息子の事件をもみ消すことを決意します。そのために、判事として培ってきた知識をフル活用していきます。例えば、アリバイ作りの話なんかは上手いなぁと思いました。

 

 始まりが交通事故なので、アダムにはアリバイがありません。アリバイを作る必要があります。そこで、判事のマイケルは妙案を思いつきます。今日を昨日(事件が起こった日)だと思って、本来する予定だった行動をするのです。目撃者は、アダムが来たことだけを覚えており、日時まで正確には覚えていないだろうと考えてのことです。また、アダム自身にも、アリバイを問われたときに矛盾のない発言ができるようにするためです。判事として多くの目撃者証言を聞いてきた経験から、この作戦を思いついたのでしょう。

 

 マイケルは、判事の視点から、息子の事件を隠蔽するために様々な策を弄していきます。手慣れた犯罪者や刑事には、思いつかない手段かもしれません。判事として、裁判で証拠や証言を吟味するときに、何が重視されるか、どこでボロが出やすいかを知っているからこそ、息子の事件をもみ消すのも上手い。

 

②殺人を無罪にする方法

 とはいえ、秘密はやがてバレてしまいます。ギャングのボスのジミー・バクスターは、マイケルが轢き逃げ犯だと突き止めます。実際の犯人はアダムなのですが、マイケルは息子を守るために、自ら罪を被ることにしました。ジミーに殺されかけたマイケルでしたが、代わりにジミーの息子のカルロが刑務所で起こしたコフィー・ジョーンズ殺しを無罪にすると約束して、一時の難を逃れます。

 

 しかし、この案件は非常に困難です。カルロ・バクスターがギャングのボスの息子であることが、世間ではよく知られています。カルロの周りで人が死んだら、どんな状況であれ、殺人の容疑は非常に濃厚になってしまいます。しかも、今回は刑務所で、コフィー・ジョーンズと一対一だったことが記録されています。カルロは正当防衛を主張しますが、かなり厳しい状況に見えます。

 

 加えて、そもそも個人的に疑問だったことがあります。裁判の結果は判事次第で変わるというのは本当なんでしょうか? 判事はあくまでも裁判の進行をしているだけで、結果は陪審員たちに完全に委ねられています。陪審員が話し合っているところに、判事が入り込む余地はありません。判事には、裁判の結果を左右することなんてできないんじゃないか、と私は思っていました。

 

 その思い込みが間違っていたことが、このドラマを観て、ようやくわかりました。判事には、証拠を採用するかしないかを決める権限があります。証人についても同じです。原則として法や判例に基づくとはいえ、最終的に証拠・証人を決められるのは判事です。もし、証拠に不足があった場合は、陪審員の記憶から消すことができます。違法行為をした陪審員を外すことだってできます。まさに法廷の支配者です。

 

 マイケルは、これらの判事の特権をどんどん使っていきます。でも、傍から見たら、判事は公明正大な裁判を行っているだけにしか見えません。検事や陪審員も気づきません。それなのに、最終結果は見事に判事の思う通りになってしまいます。これが、判事の”殺人を無罪にする方法”です。

 

③なんとしてでも息子だけは……

 判事の行動は、すべて息子を守るためのものだと言っています。多少は、自己保身の意図があったのかもしれませんが、息子が殺されるかもしれないという状況は、善良な判事がこれほどの行動を起こす動機になり得ます。

 

 一方、息子のアダムは、父親に比べると軽率な行動を取りがちです。コフィー・ジョーンズとカルロ・バクスターの裁判は欠かさず見に行き、事件現場にも写真を撮りに戻ってきています。さらには、なんとバクスター家の娘と付き合い始めます!?何してるの!!?? 危機感!!!

 

 さらに悪いことに、以前に付き合っていた学校の教師に、自分が轢き逃げ犯であることを告げてしまいます。教師にしてみれば、格好の脅迫の材料です。バクスター家の娘と付き合っているのが嫌だったら、それとなく真実をバラすと匂わせるだけで良いのです。むしろ、そのくらいした方がアダムのためかもしれません。

 

 アダムが、事件当日にガソリンを入れたりしたのも軽率な行動でしたが、あれはパニくっていたゆえだと考えることができます。ただ、事件当日はまだしも、その後もこれほど間抜けな行動を続けられると困ってしまいます。それほど浅い思慮の持ち主が、本当にニューヨーク大学(NYU)に合格できたのも驚きです。

 

『Your Honor/追い詰められた判事』シーズン1総評

 息子のあまりにも軽率な行動の数々は、ドラマを観ていく上でノイズになっています。しかし、それ以外の要素は、非常にハイクオリティ。ブライアン・クランストンの演技は『ブレイキング・バッド』のときと同様に、完全に信頼できます。映像も、まるで映画のようで見応えがありました。

 

 本来、『Your Honor/追い詰められた判事』はリミテッドシリーズとして、シーズン1で完結する予定でした。しかし、視聴率が良かったとのことで、シーズン2の制作が決定。個人的には、もしドラマがあのような形で終わるのであれば、最終話はあまり上手くなかったと思います。真犯人がマイケルではなくアダムだとわかる展開が急で、その後にマイケルがどうなるのかも判然としません。

 

 でも、これがシーズンフィナーレに過ぎないのであれば、判事のその後を丁寧に描くことができます。さらに良いことに、シーズン2にはアダムがいません。アダムの愚かすぎる行動は、シーズン1の唯一の欠点でしたが、それがすべてなくなります。むしろ、シーズン2の方がシーズン1よりも面白くなる可能性は高いかもしれません。正直、かなり期待しています。

 

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