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Netflixドラマ『令嬢アンナの真実』ネタバレ感想|真の悪者はだれ?

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Google never forgets.

- Vivian Kent, Inventing Anna

 

 富豪令嬢のフリをしてニューヨークのリッチな人々を騙し続けたアンナ・デルヴェイ。彼女の真の姿を描き出すというNetflixのドラマ『令嬢アンナの真実』は、しかしながら、終始もやもやしたストーリーが続き、真実はいつまで経っても明かされることはありません。

※今回のレビューは辛口であることをあらかじめ記しておきます。

 

基本データ

  • 原題:Inventing Anna
  • 制作:Netflix
  • 公開日:2022年2月11日
  • 話数:9
  • 主演:ジュリア・ガーナー、アンナ・クラムスキー
  • あらすじ:ニューヨークのエリートたちを騙し続けた実在の詐欺師アンナ・デルヴェイ、またの名をアンナ・ソローキンの真の姿を描く。
  • 予告編:

    www.youtube.com

ドラマ『令嬢アンナの真実』はリミテッドシリーズなので、シーズン2はありません。

 

 

感想(ネタバレあり)

 ここでは実際の事件がどうであったかには触れず、単にドラマの話だけをしていきます。あくまでもドラマなので脚色はしてありますし、視聴者としてもその前提を受け入れた上で楽しむものですから。それに、現実の事件を調べるのはファクトチェックが大変なので、自分ではやりません。

 

アンナ・デルヴェイはリッチなのか?

 現実の事件を知らなかったので、事前情報はNetflix公式が出しているあらすじと予告編だけ。高級ファッションを着こなす若い女性が、ニューヨークのエリートたちを騙した実話に基づくドラマだと言います。これは面白そうです。

 

 しかし、実際に見てみると、いくつかの点で期待を裏切られてしまいます。まず、リッチさがないのです。ニューヨークのウォール街が舞台ならば、作品自体もリッチなものになることを期待してしまいます。確かにアンナ・デルヴェイ自身のファッションはリッチなのかもしれませんが、作品としては全くリッチではありません。予算の関係なのかもしれませんが、映像や編集からはむしろチープさを感じます。

 

 例えば、ビデオテープを巻き戻す効果音。時間を巻き戻すシーンで挿入されていますが、これほどチープで使い古された表現もありません。他にも、モロッコのホテルに滞在している場面では、なぜか1回だけカメラが45度傾けられました。理由はわかりません。10年前ならともかく、現代のドラマ、それもミレニアル世代のインフルエンサーの物語で使うような演出とは思えません。

 

どうやってアンナ・デルヴェイになったのか?

 アンナ・デルヴェイのような若い女性が、どうして保守的なウォール街のエリート層から大金を騙し取ることができたのか? これこそが、この物語の核となる疑問です。しかし、これに対しては十分な回答を得ることはできませんでした。

 

 アンナは、第1話の時点でIT業界の若手成功者と付き合っています。つまり、すでに社交界の一員になっているのです。それは良いとして、本当に知りたいのはそこではありません。むしろ、どうやってそこまで至ったかを知りたいのです。

 

 どうして、アンナはIT業界の成功者やファッションデザイナーのような人々と知り合うことができたのでしょうか? 高い服を着て、オークションで自信たっぷりに芸術知識を披露したからなのでしょうか? もしそうなのだとしたら、彼女はどこで高い服を買う金を得て、深い芸術知識を得ることができたのでしょうか?

 

 第8話がアンナの子供時代の話ですが、ここで得られる答えは肩透かし以外の何物でもありません。アンナの両親いわく、彼女は子供のときからそうだったというのです。これでは何の説明にもなっていません。例えば、アンナは高校時代から高級な服に興味を持つようになったと言います。では、その高級な服を買ったのは誰なのでしょう? 両親、彼氏、あるいは自分で稼いだのでしょうか。

 

 その後に関しても疑問が残ります。アンナは、両親を捨てて単身アメリカに経ったことが明らかになりました。ならば、資金援助は一体誰がしていたのでしょう。高級な服がそこらへんに落っこちているわけはありません。IT起業家のチェイスと付き合い始めた後は良いのですが、そこまでの元手が必要です。そうでなければ、自分がドイツの令嬢だと信じ込ませることができないはずです。

 

 深い芸術知識についても疑問が残ります。自分でせっせと勉強したのかもしれませんが、だったらその場面を描いてほしいものです。生まれつき芸術に詳しいわけがありませんから。

 

 ドイツの令嬢になりすますために、自分で服の代金を稼いだり勉強をしたりしていたなら、アンナは単なるおバカなお嬢さんではなく、計画的でよく練られた犯行を行った詐欺師だと言えます。しかし、このドラマを見る限りでは、なぜかよく知らないけどニューヨークの社交界に入り込み、あとはクレジットカードが使えないのは銀行のせいだと騒いでいただけです。アンナがあのような犯行を成功させたのは事実であるはずなのに説得力がありません。

 

アンナ・デルヴェイは利用されただけなのか?

 最終話では、ちょっと奇妙な結論に辿り着きます。裁判では、詐欺の被害者だったレイチェル(Vanity Fairの記者でアンナの元友人)が、雑誌記事やテレビ出演で大金を稼いだことが明らかになりました。記者のヴィヴィアンも今回の件で出世し、弁護士も知名度を高めました。だから、実はアンナは大した詐欺師というわけではなく、周りの人々に利用されて、不当に大きく祭り上げられていただけだというのです。

 

 でも、アンナは詐欺師です。毎度、ホテルでぎゃあぎゃあ騒いで、自分では一銭も払っていません。妙な情けをかけるのもおかしな話です。なぜ、レイチェルやヴィヴィアンのような一般人を責めるのでしょうか?

 

 確かに、レイチェルの裏切りは人道的には褒められたものではありません。でも、アンナは人々から大金を盗んでいるわけですから、責められるべきはアンナではないでしょうか。その他の記者や弁護士にしても、結果的にはアンナを利用したのかもしれませんが、どちらかというと仕事をしていただけです。完全に合法であり、仕事の範囲を逸脱するような非人道的なことをしていたようには見えません。

 

 批判の向かう先は、アンナ、あるいはウォール街の富裕層であるべきです。富裕層ならば、不当な金融取引で稼いでるとか、政策が金持ちに甘いとか、何でも良いんですけど。レイチェルだって、結果的にはお金を稼げましたが、それ以前はさほどお金があったわけではないんですから。お金がなければ、アンナを警察に突き出すのも仕方ないと感じてしまいます。

 

 最大の矛盾は、アンナ・デルヴェイ事件で誰よりも稼ごうとしているのが、他ならぬNetflixだということです。話題になった最新の事件をいち早くドラマ化したのですから。それが悪いことだとは思いません。そういう業界ですし、Netflixだって注目を集められる作品を作ることで収益を上げているわけですから。でも、だったらなぜ記者と弁護士をやんわり批判するのでしょう? 自虐のつもりでしょうか?

 

総評

 実際の事件がどうだったかはともかく、ドラマ『令嬢アンナの真実』を見ていると、詐欺師アンナ・デルヴェイは小物でおバカな犯罪者に過ぎないかったかのように見えてきます。ありきたりな演出とセリフはドラマ全体をチープなものにしており、一貫性のない脚本には混乱すらさせられます。

 

 それでも、いくつか良かった点も挙げておくのがフェアというものでしょう。前半には、それなりに好きなところもあります。プライベートジェットを盗む話は、とても興味深かった。高級そうな服を着て、社長の友人であれば、クレジットカードがなくてもプライベートジェットをチャーターできるということですから。第5話で描かれるホテルコンシェルジュの話も良かったです。

 

 とはいえ、やはり全体を通して出来が良いとは言えず、残念な仕上がりになっていると言わざるを得ません。あくまでこれは私個人の感想です。あまり深刻に受け取られませんように。

 

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