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Netflixドラマ『クラーク・オロフソン』感想|破天荒すぎる実話に笑いが止まらない

 ストックホルム症候群という言葉を知っている人もいると思います。監禁事件の被害者が、犯人に対して好意的な感情を抱いてしまう現象のことです。この現象が言われるきっかけとなった事件には、クラーク・オロフソンという男が関わっていました。実は、この男、ストックホルムの事件以上に破天荒な半生を送っています。今回は、そんな彼の真実と嘘に基づくNetflixドラマ『クラーク・オロフソン』の感想を書いていきます。

 

 

基本データ

  • 原題:Clark
  • 配信:Netflix
  • 配信日:2022年5月5日
  • 話数:6
  • 主演:ビル・スカルスガルド

予告編

youtu.be

※リミテッドシリーズなのでシーズン2はありません。

 

感想

職業は銀行強盗

 こんなに笑える実話犯罪ドラマは初めてです。クラーク・オロフソンのあまりにも破天荒な半生には、笑いが止まりませんでした。クラークの職業は銀行強盗。空き瓶1本でもあれば、銀行からお金を頂戴することができます。むやみやたらに人を殺したり騒ぎを起こすことなく、スムーズに強盗を実行する様は、さすがプロなだけあります。

 

 彼は、超が付くほどのプレイボーイでもあります。見た目も良いので、気になった女性をすぐにその気にさせることができます。銀行強盗の最中であっても、プレイボーイであることには変わりありません。可愛い子を見つけたら、色目と口説き文句を使って連れ帰ってしまいます。

 

 そんな破天荒な男が逮捕されないわけがありません。クラーク・オロフソンは、少なくとも18回は逮捕されています。決まった家を持たないクラークにとって、刑務所は自分の家のような場所になっています。

 

 刑務所が自分の家ならば、できるだけ快適な場所にしたいものです。ときは1970年代。スウェーデンでもヒッピーは流行っており、その中には犯罪者であっても刑務所の中に閉じこめるのではなく、自由を与えて更生させるべきだと主張する若者たちがいました。その一人が、マリアでした。クラークは、彼女に一目惚れします(彼はたいていの女性に一目惚れしていますが)。

 

 マリアの助言のもと、クラークは刑務所の中で囚人の権利向上を訴える運動を起こします。この運動は自分がいるところ以外の刑務所にも波及していきます。囚人たちでハンガーストライキなどを行った結果、刑務所の状況はかなり改善されます。後年にクラークが入った刑務所には、ベッドや机、テレビが付いており、下手なホテルよりも設備が整っていました。こんな刑務所なら、自分から進んで入りたいくらいです。

 

ノルマルム広場強盗事件

 服役中だったクラーク・オロフソンは、突然、銀行に連れていかれます。ここでクラークが関わることになるのが、ストックホルム症候群という言葉のもとになったノルマルム広場強盗事件でした。銀行では、ヤン=エリック・オルソンというクラークの刑務所の友人が、人質4人とともに立てこもっていました。政府と警察は、ヤンの要求に従い、クラークを銀行に送り込んだのでした。しかも、拳銃を持たせて。正気の判断とは思えないのですが、なぜかこの計画は実行されます。

 

 銀行の中でヤンと落ち合ったクラークは、その場の流れで、2人で一緒に立てこもりを続けることになります。クラークは、人質の中にいたキッキという女性に一目惚れしてしまいます。ヤンはアホすぎていつ人質を傷つけるかわかりませんし、警察も人質事件に慣れていないのか、ヘマばかりしています。そんな中で、クラークはキッキおよび他3人の人質を傷つけないために様々な工夫をします。それは結果的に上手くいきました。

 

 こんな状況では、クラークに対して好意的な感情が芽生えるのもわかる気がします。クラークは、このときに限らず、意図的に人を傷つけることはあまりありません。そんな人が、親身になって頭のおかしい強盗犯と何をやり出すかわからない警察から守ってくれたわけですから。吊り橋効果と見た目の良さも相まって、クラークはなかなか魅力的な男に見えたのではないでしょうか。

 

クラークの本性

 その後も、クラークは釈放されたり銀行強盗をしたり逮捕されたり脱獄したりしています。が、ある時点で急に犯罪をやめようと思い立ちます。クラーク自身は、警察署の隣のレストランに行ったことに特に意味はないと言っていましたが、本当は捕まりたかったのだと思います。その刑期の途中で、一時帰宅の際に傷害事件を起こしていますが、最終的には刑期をまっとうして釈放されます。今度こそ、息子のために良い父親になろうと決心します。

 

 それでも収入源は必要です。密輸業を行ったことで、またしても逮捕されてしまいました。クラークは、暴力的で子供のことを全く顧みなかった自分の父親を反面教師とし、自分の子供は愛情をかけて育ててあげようと思っていましたが、失敗してしまいます。

 

 ここまで、すべての話はクラークのナレーションとともにクラークの視点で語られます。それらはとても愉快な話で、豪快な武勇伝の数々は聞いていて楽しいものです。ただし、その裏にはいつも見捨てられた人々がいます。クラークが愛を誓った女性たちは、いずれもクラークの都合の良いように利用され、最初の2人の子供に関しては1回も登場しません。一番付き合いが長かったマリアでさえ、最終的にはクラークが見捨て、その後も二度と会うことはありませんでした。

 

 クラーク・オロフソンは、相当なクズ人間です。自分のことしか考えておらず、他人とは都合が良いときだけ友人や恋人となり、適当なときに離れていきます。それほど自己中心的な人物だからこそ、自分のあらゆる欲望を満たす破天荒な人生を送ることができたとも言えます。未だにクラークは、そのことを全く反省していません。しかし、ドラマを観ている私たちには、彼の有害性を十分に見ることができます。

 

総評

 ドラマ『クラーク・オロフソン』は、実話とは信じがたいほどの破天荒さと笑いが散りばめられています。このドラマの内容がどれほど真実かは定かではありませんが、それは問題ではありません。ドラマは思いっきりコメディに振り切り、ダンスあり、アニメあり、セックスありのエンタメ性100%のドラマになっています。

 

 それと同時に、クラーク・オロフソンの有害性を繰り返し描くことで、決してクラークを称えるような作品にはなってはいません。頭を空っぽにして楽しめる作品であるとともに、音楽や編集など作り手のセンスはとても良く、楽しんで観ることができました。

 

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