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海外ドラマ『バリー』シーズン2感想:俺は……悪人なのか?

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Am I a bad person?

- Barry Berkman in Barry

 

 久しぶりの『バリー』です。お帰りなさい、バリー・バークマン! ずっと待ってました。それから、ありがとうU-NEXT。

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『バリー』シーズン2基本データ

・原題:Barry

・放送局:HBO

・放送期間:2019年3月31日~5月19日

・クリエイター:ビル・ヘイダー、アレック・バーグ

・出演:ビル・ヘイダー、スティーヴン・ルート、ヘンリー・ウィンクラー、サラ・ゴールドバーグ、アンソニー・キャリガン

・予告編:

www.youtube.com

 

『バリー』シーズン2ネタバレ感想&考察

①シリアス with コメディ

 久しぶりに『バリー』を観て思い出したのが、シリアスとコメディが入り交じった独特の雰囲気。例えば、第1話でバリーが初の殺しを告白するシーン。バリーが戦場で初めて人を殺したら、仲間が「天性の殺し屋だ!」と喜び始めまてしまったのです。話している内容は、かなりヘビー。それなのに、バリーが話している場面を劇団員たちが真似をしているのは、ちょっと滑稽なんです。

 

 話している内容はシリアスなのに、やっていることがコメディなので、笑ってしまうんだけど考えさせられるシーンになっています。『バリー』は他にも、そんな場面がたくさん。シリアスパートとコメディパートがある映画・ドラマは少なくありませんが、ここまでシリアスとコメディが同居しているものは珍しいですよね。

 

②バリーはサイコパスか?

 シーズン2は、この初の殺しの話に始まり、バリーの心理に深く踏み込んでいくエピソードが多くなっています。戦場の話だともう一つ、コレンガルでの話がありました。友人が撃たれたときにバリーが何をしたか、という話なのですが、バリーは全然真実を話してくれません。友人のために『ブレイブハート』ばりの演説を始めたという作り話までしているのですが、真実は違います。

 

 実際には、怒りのあまり近くにいたアラブ人を射殺していたのです。そのアラブ人は友人を射殺していないどころか、武装もしていなかったのに。その後、バリーは一時的に精神病院に送られていたといいますが、すぐに退院しています。

 

 ここで、一つの疑問が生じます。はたしてバリーはサイコパスなのでしょうか?バリーは殺し屋ではあるのですが、殺し屋が必ずしもサイコパスとは限りません。軍人や傭兵がサイコパスとは限らないように。しかし、バリーにはサイコパスの可能性があります。なにしろ“人を殺して逃げています”し、人を殺すときにも何も感じていないように見えます。特にシーズン1では他人の気持ちを察することを非常に苦手としているようでもありました。

 

③殺したくない!

 でも、本当はバリーは殺しを辞めたいんです。彼自身、何回も言っています。フュークスにもノホ・ハンクにも言っています。それなのに、ハンクからは気に入らないベトナム人ボスを殺せと言われ、刑事からは元妻の彼氏を殺してくれと依頼される始末。足を洗ったと思ったら、また逆戻りだ!

 

 フュークスとバリーはなんだかんだ長い付き合いのようですが、フュークスがバリーの理解者というわけではありません。シーズン2後半ではかなり強引に闇の世界に引き戻そうとしており、バリーはフュークスを殺そうとします。

 

 最終話の終盤では、バリーの堪忍袋の緒が切れて、フュークスたちがいるところに来て皆殺しにしています。あれだけ殺しはしたくないと言っていたのに、ここでは殺さざるを得なかったようです。それとも、内なるサイコパスの面が出てきてしまったのか?

 

④バリーは悪人か?

 バリーに関する疑問は、もう一つあります。むしろ、こっちが本題。はたしてバリーは善人なのでしょうか?悪人なのでしょうか?

 

 バリーは殺し屋でした。しかし、シーズン2では最後までほとんど殺しをしていません。テコンドーの達人に関しては、なんとかして逃がそうとして必死でした。ベトナム人ボスのときも、殺しのあと一歩のところまで行ったのですが、結局逃げ出してしまいました。サリーの元夫も殺そうとしていましたが、これも中止しています。

 

 バリー自らも、自分が悪人かどうかの問いを何人かにしています。ノホ・ハンクは、もちろんそうだと答えます。バリーは正真正銘の極悪人だと。クジノー先生は、全くそんなことはないと答えてくれました。人は変わることができると。

 

 ただね~、この2人はどうもテキトーに答えているようにしか見えない。ノホ・ハンクはもちろん、クジノー先生も全然信用できない。それなのに、バリーはクジノー先生のことをどんどん信用し、自分の唯一の理解者だと思うようになります。 

 

 バリーは、どうしても誰か自分を理解してくれて、何か生きる指針を与えてくれるような人が欲しいように見えます。バリーがノホ・ハンクの手下たちを指導して、チェチェン音楽を贈られた後に「ボスのおかげで生きる目的ができました」という言葉を掛けられたときには、バリーもちょっと嬉しそうだったり。

 

⑤見たいものを見る

 ここで、サリーの話もしておきます。自意識過剰の骨頂のようなサリーですが、彼女の心理面についてもシーズン2では探られています。サリーは、元夫に暴力を振るわれていた話をするときに、毅然とした態度を取っていたと周りに見せようとします。自分の弱さを見せたくという理由で。題材が題材なので、気持ちはわかります。

 

 このことに関しては、実はサリーと観客の気持ちは一致しています。サリーは自分の弱さを見せたくないし、観客は(舞台の)サリーが(舞台の)元夫に対して立ち向かうことを期待しています。元夫に屈する姿など、サリーも本当は見せたくないし、観客も見たくありません。

 

 要するに、観客は真実を求めていると口では言っていても、実際には自分たちの見たいエンターテインメントを求めているのです。

 

 もう少し一般化をすると、これは話している者と受け取り手の解釈の不一致の話になります。受け手は解釈したいようにするので、話し手が意図しないような解釈をすることがあるということです。

 

 例えば、バリーとクジノー先生の関係。クジノー先生にとってはバリーは生徒の一人に過ぎないのですが、バリーにとってはクジノー先生は唯一の理解者です。それは、クジノー先生が実際の理解者であるというよりは、バリーがそのように思いたがっている、と考えるのが良さそうです。

 

 

⑥アクション!

 シーズン2のアクションに関しては、ビル・ヘイダー監督回のものがとても良かった。第5話と第8話です。第8話は、先ほども書いた通り、最後のバリーぶち切れシーンです。シーズン2では全く殺しをしていなかったバリーが、ついに殺しをする瞬間であり、本当にバリーは凄腕の殺し屋なんだと再確認させられました。

 

 第5話は、バリーとフュークスがテコンドーの達人を殺しに行く話です。妙な話でしたね。殺さないと言っているのにも関わらず、バリーはテコンドーの達人に蹴りを入れられ、戦闘が始まってしまいます。2人の戦いをすべて見せるわけではなく、部分的に見せながら周りの物なども使った見せ方が上手い。

 

 その後に、バリーとフュークスは達人の娘と遭遇してしまうのですが、ここからがとんでもなかった!娘がめちゃくちゃ強いんです。強いとかいうレベルではありません。ミュータントなんじゃないかというぐらいです。一体、何なんですかね?いや、本当に何なの?笑

 

まとめ

 『バリー』でしか得られない何かがあります。こんなにユニークなドラマは他にありませんから。殺し屋が役者をやりたいという設定からそうだし、シリアスとコメディが同居するところだったり、微妙に読み取りにくい主人公の心情だったり。

 

 このドラマの推進力は、主人公のバリーが謎に包まれていることにあると思うんです。バリーがどのような人物なのか、2シーズン経っても私たちにはよくわかっていません。シーズン2になって、彼のアイデンティティに踏み込むエピソードがいくつか描かれましたが、それでもまだ謎が多い。だから、『バリー』は面白い。だから、目が離せません。

 

 『バリー』はすでにシーズン3の製作が決定しており、シーズン4の脚本もある程度できているとか。楽しみです。

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