ドラッグ、パーティー、セックス、フォーーー!!!というハジけまくった青春を過ごす人は、日本にはあまり、海外にもほとんどいないでしょう。実際にそんな青春を過ごすにはちょっと御免ですが、ドラマで観る分には楽しいもの。イギリスのドラマ『Skins-スキンズ』は、そんな青春を切り取ったかけがえのない一本になりそうです。
海外ドラマ『Skins-スキンズ』基本データ
・原題:Skins
・放送局:E4
・放送期間:2007~2013年
・話数:7シーズン全61話
・脚本:ブライアン・エルスリー、ジェイミー・ブリテン
・出演:カヤ・スコデラリオ、ニコラス・ホルト、ハンナ・マリー、ジャック・オコンネル、ダコタ・ブルー・リチャーズ
・概要:
イギリスのブリストルを舞台に、ドラッグ・パーティー・セックスに溺れる高校生グループの日常と苦悩を描く。2シーズンごとに登場人物が入れ替わる。
・予告編(シーズン1&2):
海外ドラマ『Skins-スキンズ』は、動画配信サービスWATCHA(ウォッチャ)で独占配信中。
英国の若者を虜にしたドラマ『Skins-スキンズ』とは?
2007年から全7シーズンが放送されたイギリスのドラマ『Skins-スキンズ』で扱われているテーマは、恋愛、セックス、ドラッグ、セクシュアリティ、生と死など様々。若者たちが経験する苦悩を、エネルギーあふれるハチャメチャなパーティや交流の中で描いています。
近年では『セックス・エデュケーション』『ユーフォリア』『スカム・フランス』などのような若者の悩みと過激な青春を描いたドラマがいくつも人気を集めていますが、『Skins-スキンズ』はそれらの先駆け的な作品とも捉えることができます。
イギリスの若者たちから絶大な人気を獲得した『Skins-スキンズ』は、シーズン4の第1話の放送時には直後の配信と併せて約110万人が視聴し、その半分以上は16歳から24歳の若者だったとされています。その人気はイギリスにとどまらず、アメリカやフランスなど世界各国でも人気を集め、2011年にはアメリカMTVでリメイク版が作られました(こちらは作品としては失敗でしたが)
評価も高く、2008年の英国アカデミー賞では作品賞にノミネートされています。後にハリウッドなどで活躍することになる若手俳優を多く輩出したことでも有名で、一例を挙げると以下の役者たちがレギュラー出演しています。
ニコラス・ホルト 映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
カヤ・スコデラリオ 映画『メイズ・ランナー』シリーズ
デヴ・パテル 映画『スラムドッグ$ミリオネア』
ハンナ・マリー ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』
ジョー・デンプシー ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』
ダニエル・カルーヤ 映画『ゲット・アウト』
ダコタ・ブルー・リチャーズ ドラマ『刑事モース』
『Skins-スキンズ』がイギリスの若者文化に与えた影響は非常に大きく、近年でも若者文化の象徴のようなものとして言及されることがしばしばあります。例を挙げるなら、2021年にイギリスの歌手メイジー・ピーターズが発表した楽曲Outdoor Poolの中にも登場します。イギリスの若者がこのドラマのようなハチャメチャな青春を送っているというわけではありませんが、みんなの憧れとしてこのドラマの存在感は大きかったようです。
全シーズン感想(ネタバレあり)
2シーズンごとに登場人物が入れ替わり、それぞれジェネレーション(Generation)1~3と呼ばれているので、ここでもそれに倣います。なお、ここより下の文章はネタバレを含むので、未見の場合はご注意ください。
ジェネレーション1 シーズン1~2
Gen1を一言で表すならばlovely。キャシーの口癖ですが、本当に彼らはlovely。シーズン1のときは、みんなでパーティ三昧。酒飲んでドラッグやってセックスして、翌朝にはめちゃくちゃになった部屋の中で起床するんですよ。憧れると言うとちょっと変だけど、そこまでグループで仲が良いのはちょっと憧れます。
でも、それだって良いことだけじゃなかったりします。あまりにも関係性が近いので、どんどんカップルが出来て三角関係が出来てしまいます。ミシェルとトニーが付き合っていて、シドは昔からミシェルのことが気になっていて、キャシーは密かにシドのことが好きで、色々あるわけです。
それだけなら普通の青春ドラマ。もっと深刻な事態がいくつも起こるのが『スキンズ』です。トニーは途中から運動障害になり、クリスは就職して、ジャルは妊娠。ほとんどの親はすでに離婚しているか、離婚寸前の状態です。恋愛関係はさらにややこしく、ミシェルとシドが付き合い始めちゃって、いつの間にかクリスとジャルも同棲しています。マキシーは、スケッチという狂信的なストーカーに付き纏われます。
あれやこれや、シーズン2ではみんなツラいことを経験していくのですが、最終的にある程度は落ち着くところに落ち着くのです。トニーとシドがハグするところは泣ける。キャシーがニューヨークに行ったのは驚いたけど、それはそれで彼女らしい。かけがえのない青春時代という感じで、ノスタルジックな思いになります。
Gen1はキャストがとても豪華。ニコラス・ホルトとデヴ・パテルは今やハリウッドスターで、ハンナ・マリーとジョー・デンプシーは『ゲーム・オブ・スローンズ』で重要な役を演じていました。キャシー役のハンナ・マレーが可愛かったなぁ。
ジェネレーション2 シーズン3~4
最初から仲良しグループだったGen1とは異なり、高校入学とともに仲良くなるGen2。そのため、Gen1ほどグループとして仲が良いわけではないですが、個々の関係性がとても堅い。以前から友達だったエフィとパンドラ、ケイティとエミリーの双子、クックとフレディとJ.J.の幼馴染三銃士、パンドラとトーマスのカップル、エミリーとナオミのカップルあたりですね。
シーズン3でその関係を築いて、シーズン4に突入していくのですが、これがとってもヘビー。ケイティはエフィに殴られたことで大怪我を負い、さらには子供を産めない体であることが発覚。エミリーに隠れてナオミと知り合った女性は自殺をしてしまいます。クックは刑務所に入り、エフィは精神的に病んでしまいます。
ティーンエイジャーには背負いきれないほどのツラい出来事が次々と襲い掛かってきます。ツラいんだけど、そこで改めて双子や三銃士の友情を頼りにして生きていくのです。それが観られるのは良かった。とてもダークで、ドラマとしてもとてもよく出来ていると思います。
ジェネレーション3 シーズン5~6
これまでとは異なり、ドラッグでハチャメチャパーティ!!!という感じは薄く、その意味では現実にもいそうなところがあるGen3。ハードな展開も抑えられ、見やすくなっています。それは、若干『スキンズ』らしさがなくて物足りなかったりもするのですが。
最高なのはアロとリッチの2人組。最初は2人とも童貞でモテねぇなぁとか言ってるわけですが、そのうち恋愛をして、ツラい経験を乗り越えた後、悟りを開いたのか良い奴らになっていきます。アロは、グループ一番の盛り上げ役でもあったから、楽しかった。
グレースの死とか悲しいこともあるけど、全体的にハートウォーミングな展開も多い。最終話も、これまでのような続きを感じさせる終わり方ではなく、ハッピーエンディングで終わらせています。
キャストとしては、フランキー役のダコタ・ブルー・リチャーズは好きですね。それ以前に映画『ライラの冒険』に出ていたらか、当時もすでに有名だったんじゃないかな。今はドラマ『刑事モース』にも出ていて、こっちでも馴染みがありました。フランキーのファッションも好きだったな。
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シーズン7
これまでに登場した3人のキャラクターをメインに、大人になった彼らの姿を描く最終章。ファンサービス的なシーズンと思っていたが、その中身は相変わらずダークで、必ずしもハッピーエンディングが待っているわけではありません。
第1,2話のFIREはエフィの話。ナオミとエミリーのカップルも登場。ヘッジファンドトレーダーになったエフィだが、またしても男たちを惹きつけてしまい、自分と彼らを振り回すことになる。ナオミとエミリーという友人に対しても、上手くやっていけないのは相変わらず。ツラい。
第3,4話のPUREはキャシーの話。高校時代のようなドラッグ・パーティ・セックスの生活からは一変し、おとなしい生活を送ることを決める。高校時代にあれほどの経験をしていれば、それはそれでわかるなぁ。
第5,6話のRISEはクックの話。ドラッグの売人となったクックは、自分の彼女とボスの彼女とともに逃避行に繰り出す。完全にハードボイルド物語になり、最終的にダークヒーローとなるクックがカッコいい。シーズン4のエンディングはかなりもやもやしてしまったが、その後日譚としてもとても面白かった。
エフィー・ストーネムを語りたい
個性的なキャラクターが多い『Skins-スキンズ』の中でも、圧倒的な魅力を持つのがカヤ・スコデラリオ演じるエフィー・ストーネム。トニー・ストーネムの妹として最初のシーンから姿を見せ、その後シーズン1~4, 7に登場しました。登場話数は最多であり、まさにこのシリーズを代表するキャラクターです。
エフィは、シーズン1からカリスマティックでとってもカッコいいんです。中学生だったので昼は制服を着ているけど、夜になったらオシャレな服に着替えてパーティに出かけます。ときには、パーティ慣れしていないパンドラなどをその世界に誘っていく人物でもあり、もの凄く魅惑的。
そんなエフィの姿に男たちは例外なく恋に落ちてしまいます。実を言うと、自分もシーズン1からエフィのことが大好きでした。シーズン3では、フレディもクックがもれなくエフィに恋します。J.J.も恋しているのですが、エフィからの愛は得られずともサポートしていきたいという姿勢ですね。J.J.は良い奴。
エフィも、自分の魅力が男たちを惹きつけることは十分わかっています。しかし、そのことが原因でトラブルが起きてしまうこともわかっています。親友だったはずのフレディとクックは、ほとんど絶交状態になります。エフィは、自分ではそのつもりはないのに、どうしても自分の周りでそのような状況が出来ることに苦しみます。
エフィは、パンドラを自分の世界に引き込んだのですが、そのせいでさらに人間関係はややこしくなっていきます。エフィはそれほどに強力な魅力を持ったキャラクターとして描かれているのですが、そのルックとファッションは説得力を与えています。
結局は、誰もエフィの本質を見ず、その姿に憧れ惚れてしまうので、深い関係が誰とも築けなくなっています。エフィ自身も、堅い殻を築いてしまいます。唯一、その殻を破ることが出来たのがフレディだったのです。
大人になってからも、エフィは全く同様の問題で苦労することになります。そこには、救いはないのですが。このような複雑で魅力的なエフィ・ストーネムというキャラクターを生み出したことは『Skins-スキンズ』の最大の功績の一つです。
まとめ
『Skins-スキンズ』のストーリーはパワフルで、キャラクターたちが魅力的であり、とても中毒性の高いドラマです。正直、ツッコミどころはいくらでもあるのですが、それ以上にキャラクターが好き。エフィを筆頭に、キャシー、シド、クリス、クック、J.J.、パンドラ、フランキー、アロ、リッチなどなど、彼らのことは忘れられません。
今後は、このようなドラマが作られることはないでしょう。今は『ユーフォリア』や『セックス・エデュケーション』など洗練された青春ドラマの時代なので、『Skins-スキンズ』のような、なんと言うか……汚い高校生たちの姿を描いたドラマはありませんから。洗練されているより汚い方が現実感があって、自分は好きなんですけどね。
それでも『Skins-スキンズ』出身の俳優の中には、今後も活躍を続ける人もいるでしょうし、それを観ていきたいなという気持ちにはなります。自分は、日本でこのドラマの配信がなかった頃に存在を知ったので、わざわざ海外のDVDセットを買ってまでして観ました。その価値はあったと思っています。