Look, I wanted to be an individual but my ma wouldn’t let me.
- Erin Quinn, Derry Girls
この世の中は、青春を美化しすぎです。青春はそんな綺麗なものではありません。中には、クールでオシャレで甘酸っぱい青春を過ごした人もいるかもしれません。でも、実際には青春を思い返してみると、そのときのダサさとアホらしさを感じる人も多いのではないでしょうか。カッコつけたくても失敗し、どうでも良いことで悩み、でもなんだかんだ楽しかった青春です。
映画やドラマの中で描かれる青春は、とても美しく、ときに深刻な問題に向き合っています。あくまでもフィクションですから、憧れとともにそういったものを楽しむのは自分も嫌いではないですが、もっとリアルな青春が描かれても良いと思うのです。ここまで書いたことに少しでも共感できるところがあったなら、『デリー・ガールズ』はあなたのためのドラマです。
今回は、Netflixで配信されているドラマ『デリー・ガールズ~アイルランド青春物語~』をネタバレなしで紹介していきます。
基本データ
- 原題:Derry Girls
- 放送局:Channel 4(イギリス)
- 放送期間:2018~2022年
- 話数:18(3シーズン×各6話)
- 脚本:リサ・マッギー
- テーマ曲:Dreams by The Cranberries
- 予告編:
登場人物
エリン・クイン
自信家。ときに皮肉屋。意中の男性の前だと奇行ををしがち。歌舞伎のような大仰な口調と表情で主張をする。
オーラ・マックール
エリンの従姉妹。不思議ちゃん。奇妙な言動をすることが多い。しゃべっていなくても、常に何かをいじっている。
クレア・デヴリン
規則を守りたい真面目派。グループの中では一番まともな人間なので、ツッコミをすることが多い。だが、真面目さゆえに焦りがち。
ミシェル・マローン
行動派。仲間をそそのかして行動を起こし、たいていはろくでもないことに発展する。
ジェームズ・マグワイア
ミシェルの従兄弟。イギリスからやってきた女学校に転校してきた唯一の男子生徒。ゲイだと思われている。男子の友達がいないので肩身が狭そうだが、なんだかんだ上手くやっている。
この他にも、それぞれの親や女学校のシスター、生徒会長などがレギュラーで出てきます。学校の朝礼で、生徒会長が謎の歌やダンスを披露し、その後にシスターが出てきて毒舌評を下すのが恒例。
飾らない青春
舞台は、北アイルランドのデリー。IRAが北アイルランドの独立を目指している中、カトリック系の女学校に通う5人の物語です。IRAの戦いは物語の重要な背景になってはいますが、5人組が軍事的なことに直接関わることはありません。もっと日常的なこと。アルバイトや転校生といった出来事を大きなトラブルに変えることにかけては、彼女たちに敵う者はいません。
そこまで妙なトラブルを巻き起こすことはないかもしれませんが、多くの人の青春でも、大人になってから思えばちっちゃなことやどうでも良いことで大騒ぎをしていたと思います。『デリー・ガールズ』の青春には、どこか素朴さを感じるのです。
学園ドラマといえば、美男美女がオシャレをして恋愛をしていたり、殺人事件やドラッグの過剰摂取が起きて大問題になったりと、夢の世界になりがちです。それはそれで確かに面白いものもあります。ドラマですから。夢でもファンタジーでも面白ければそれで良いのです。
でも『デリー・ガールズ』はその対極にあります。彼女たちがオシャレなのかどうかはともかく、このドラマにはカップルが登場しません。恋愛をしたいと思っていたりはするのですが、あまり上手くいきません。殺人事件も起こりません。ドラッグをやろうと思っても、これも上手くいきません。
そういう点で『デリー・ガールズ』は、他の青春ドラマと比べると、私たちの青春に近いものを感じます。このドラマで起こるトラブルほどではないとしても、若いときにはこんなアホらしいトラブルにも遭遇したことがあるかもしれません。もしかしたら、あなたの青春はとてもオシャレで、ドラッグ使用の問題もあったかもしれませんが、少なくとも私の青春は『デリー・ガールズ』です。
『デリー・ガールズ』の青春は華やかではないかもしれません。しかし、その素朴な青春は誰しもの青春にも共通するところがあるはず。だから、おすすめしたい。あなたの青春も『デリー・ガールズ』かもしれないから。