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海外ドラマの攻めのフィナーレ/守りのフィナーレ~終わり良ければすべて良し?~

 最近、立て続けに海外ドラマの最終回を観てしまいました。寂しさばかりが募るのですが、その寂しさを紛らわすために、今回は数々のドラマの最終回だけ抜き出してまとめてレビューしていきます。それぞれの作品の盛大なネタバレを含むので、未見の場合はお気を付けください。

 

 

 

前説

 海外ドラマの最終回は、視聴者からの相反する要求に答えなければいけません。一つは、納得のできるエンディングにすること。視聴者は、自分が長く見続けたキャラクターたちの物語に納得の行く結末が付くことを期待しています。

 

 同時に、視聴者は何かしらのサプライズがあることも期待しています。予想通りのエンディングだと、悪くはないけれど物足りない気分になってしまうことがあるからです。そんな視聴者たちの理不尽な要求に答えるべく、脚本家たちは最終回には非常に力を入れています。

 

 2つの要求のうち、より大事なのは、納得の行くエンディングにすることです。これができていない最終回は酷評されがちです。次に大事なのがサプライズです。サプライズが上手くいけば、作品の評価は格段に上がります。ということで、ここでは私の主観をもとに、サプライズが少なかったと感じた最終回(守りのフィナーレ)から衝撃のサプライズで終わった最終回(攻めのフィナーレ)へと、順に紹介していきます。

 

『テッド・ラッド:破天荒コーチがゆく』

 先日完結したドラマ『テッド・ラッソ』の最終回にほとんどサプライズがなかったのは、ドラマの性質を考えれば必然かもしれません。イギリスのサッカーチームを題材に、一貫して心温まるコメディドラマをやってきた『テッド・ラッソ』は、最後もすべてのキャラクターにハッピーエンディングを与えています。75分間、最初から最後まで最終回らしいエモさでいっぱいです。

曲:Ed Sheeran "A Beautiful Game" (original)

 

『シッツ・クリーク』

 こちらもハートウォーミングなコメディである『シッツ・クリーク』は、最終話の2話前から涙なしでは観られない感動的な展開が続きます。LGBTQ+コミュニティから特に親しまれていた作品として、最終回も多幸感に包まれるものになっています。「ハッピーエンディング」にまつわるネタは、最終回にしてはなかなか攻めていましたが、最後までちゃんとコメディをやってくれる意気があるのは嬉しい。

曲:The Zombies "This Will Be Our Year"

 

『ホルト・アンド・キャッチ・ファイア』

 すべてがあるべきところに収まったという感じのする『ホルト・アンド・キャッチ・ファイア』の最終回。あれだけ強烈なカリスマの持ち主であるジョー・マクミランが、最終的にあの職に就くのは意外ではあるものの、様々な経験をしてきたからこそ、そういう決断もあり得るでしょう。個人的に、エンディングの曲がとても好きです。

曲:Peter Gabrielle "Solsbury Hill"

 

『ボードウォーク・エンパイア』

 悪党が主人公のドラマ、すなわちアンチヒーロードラマの最終回には、わかりやすい傾向があります。『ボードウォーク・エンパイア』もまさにそのパターンです。同様のエンディングを迎えた先行作品がいくつもあるので、このような終わり方をするだろうことは容易に想像できます。ただ、それをサプライズとしてというよりは、主人公が受け入れるべき結末として描いていたので、ドラマチックでありながら納得感も高い結末になっていました。

 

『THE WIRE/ザ・ワイヤー』

 『THE WIRE/ザ・ワイヤー』のエンディングは、それまでのシーズンフィナーレと大体同じです。何も変わらないことをまざまざと見せつけられます。もやもやが残るところもありますが、それこそが現実なんだと突きつけられているような気分です。最後のモンタージュでは、ドラマではなく現実のボルティモアのシーンを入れていたのが印象的でした。このことで、ただでさえリアリティのあるドラマが、本当にリアルな出来事になったかのように錯覚してしまいます。

曲:The Blind Boys of Alabama "Way Down in the Hole"

 

『アトランタ』

 『アトランタ』の最終話のタイトルは、まさかの「It Was All a Dream(すべて夢だった)」です。単なる夢オチで終わるわけではありませんが、夢オチの可能性を大いに残している点は大胆だと言えます。過去にも同様のエンディングの映画がありましたが、『アトランタ』でポイントになるのがコマではなくジュディ判事なのには、ちょっと笑ってしまいます。ラストシーンがダリウスなのも良い。

曲:Funkadelic "The Song is Familiar"

 

『ビッグバン☆セオリー』

 シットコムは、ハッピーエンディングで終わらせれば良いのでしょうか? 確かに『ビッグバン☆セオリー』のエンディングはハッピーですが、その直前までの展開は私にとっては意外でした。というのも、主人公のシェルドンが、友人たちへの過去の言動を真に反省するのです。アンチヒーロードラマだったら、必ずと言って良いほど最終回で主人公が過去の罪と向き合う場面があるのですが、まさかそれがシットコムでも観られるとは思っていませんでした。

曲:Barenaked Ladies "Big Bang Theory Theme" (acoustic)

 

『マッドメン』

 派手な展開がほとんどない『マッドメン』らしく、最終回でもそれほど大きな出来事が起こるわけではありません。ただ、最後に流れるあの1分弱の映像にはちょっとした驚きがあります。一つは、そこに繋がってくるのか!という驚き。そして、もう一つは、主人公がそういう決断をしたという驚きです。特に後者をこういった形で見せるのは、とてもこのドラマらしく、洒落ているなと思います。

 

『ベター・コール・ソウル』

 『ベター・コール・ソウル』は『ブレイキング・バッド』の前日譚なので、最後にどうなるかは誰の目にも明らかだと思われていました。しかし、想定していたフィナーレは、最終話の4話手前で行われてしまいます。それ以降は『ブレイキング・バッド』の後日譚になります。予想外と言えなくもないですが、むしろ非常に納得感の高い最終回でした。

曲:Dave Porter "Saul Done" (original)

 

『ブレイキング・バッド』

 『ブレイキング・バッド』の最終回では、久しぶりに髪のあるウォルターの姿を見ることができます。フィナーレは衝撃的ですが、なんとなく予想が付くものではあります。でも、このドラマの最終回は、それ以上にやり切ったなという感慨を感じさせます。この最終回をもって『ブレイキング・バッド』はテレビドラマの一つの完成形を示したのです。

曲:Badfinger "Baby Blue" 

 

『デクスター:ニュー・ブラッド』

 『デクスター』はフィナーレに苦戦したドラマでした。2013年に放送されたオリジナルシリーズの最終回は、史上最悪の最終回という不名誉な称号を付けられています。納得感が薄く、悪い意味でのサプライズもあったあのフィナーレは、そう言われても仕方ないのかもしれません。でも、8年ぶりに復活した『デクスター:ニュー・ブラッド』は、前シリーズの批判を受けて反省したのか、全体を通してあのフィナーレへのアンサーのような内容になっています。では、今度のフィナーレはどうだったかというと、実際、オリジナルよりは潔いものでした。でも、若干モヤモヤが残るところもあり、相変わらず苦労の跡が伺えます。

 

『メディア王~華麗なる一族~』

 誰が次期CEOになるのか。それこそが、このドラマの命題でした。ついに最終話でその答えが出ます。この人物を予想できた人はいないでしょう。もちろん最後にもちゃんと裏切りがあります。それも、かなり大きなものが。現代の資本主義を強烈に皮肉るドラマらしいフィナーレには納得感もあり、巧みな最終回だったと思います。

曲:Nicholas Britell "Succession -Andante Resoluto" (original)

 

『ゲーム・オブ・スローンズ』

 誰が鉄の玉座に座るのか。それこそが問題でした。最終話で明かされる答えは、しかしながら、世界中の人々を失望させることになります。驚きの展開ではありますが、納得感がありません。ファイナルシーズン全体がサプライズを重視しすぎて、納得感をないがしろにしてしまった印象を受けます。

曲:Ramin Djawadi "The Last of the Starks" (original)

 

『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』

 全く不可解なフィナーレで視聴者を納得させることができたら、それに勝るものはありません。『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』は、それを成し遂げた稀有な作品です。最後の展開は誰にも予想できないどころか、前代未聞ですらあります。でも、同時に不思議と妥当な結末に思えるのです。それは、脚本家のサム・エスメイルがそれまでに仕掛けてきた周到な伏線のおかげです。

曲:M83 "Outro"

 

『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』

 ピークTVの嚆矢となった大ヒットドラマは、その衝撃的なフィナーレで伝説になりました。あまりにも大胆なラストシーンは、当時、大きな話題になったそうです。そのときは批判的な意見も多かったようですが、15年以上経った今でも人々があのフィナーレについて語り続けていることを踏まえれば、脚本家のデヴィッド・チェイスの賭けは成功したと言って良いでしょう。

曲:Journey "Don't Stop Believin'"

 

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