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ドラマ『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』はマジで最高だったか?

I'm not the muse, okay? I'm the somebody.

- Daisy Jones, Daisy Jones and The Six

 

 1970年代に一世を風靡したバンドがありました。その名もデイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックス。そのインタビューを基にして製作されたドラマが、この度Amazonプライムビデオで配信されました。ということで、今回はドラマ『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』のレビューです。

 

 

基本データ

  • 原題:Daisy Jones and The Six
  • 配信:Amazonプライムビデオ
  • 原作:テイラー・ジェンキンス・リード『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』
  • 公開日:2023年3月3日~3月24日
  • 話数:10
  • 主演:ライリー・キーオ、サム・クラフリン

予告編

youtu.be

 

 テイラー・ジェンキンス・リードによる原作は、ニューヨーク・タイムズのベストセラーにもなった話題の小説。左右社から邦訳版が出版されています。ちなみに、デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスは、実在のイギリスのロックバンド「フリートウッド・マック」を部分的にベースにしているとか。

 

以下、ネタバレを含みます。

 

バンドの軌跡

 デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスは、その名の通り、デイジー・ジョーンズとザ・シックスが合体してできたバンドです。ドラマの第3話までは、この2組は別々に活動しています。

 

 ザ・シックスは、ビリー・ダンがリーダーを務める5人組のロックバンド。そこそこ成功しているようでしたが、ビリーがドラッグに溺れ、さらに浮気を始めたため、失速してしまいます。よくある話ですね。

 

 一方のデイジー・ジョーンズは、一匹狼でした。孤独に苛まれているような節はありましたが、だからといってチームワークにも向かない人物でしょう。実際、ザ・シックスと合流して曲作りを始めてからも、ビリーと衝突してばかり。10話も続く気配が全くしません。

 

 それでも、デイジーとビリーは互いを、そして自分自身を深く理解することで、アルバム「AURORA」を完成させることができました。ところが、デイジーとビリーの関係は深まりすぎて、ビリーの妻のカミーラからは浮気を疑われてしまいます。

 

 ビリーはあくまでも妻に忠実です。それは、自分がドラッグにハマり、浮気をした後でも、カミーラは離れないでいてくれたからでしょう。デイジーとキスこそしたものの、それ以上の関係に進むことは断じて拒否しています。

 

 カミーラにも、もう少しビリーを信用してやってほしいなと、こっちは何度も思ったのですが、そうはいかないようです。なぜだー! そんなに信用してないなら、1回目のときで、もうビリーのことを許さなくて良かったよ。今からでも、離婚を真剣に考えてほしい。

 

 デイジーはというと、実は本当にビリーのことが好きになり始めていました。しかし、ビリーは、あくまでもデイジーとの関係は見世物に過ぎないと言います。本当は、ビリーもデイジーのことがかなり気になっていたはずです。でも、もう妻を裏切りたくないという思いの方が大きかったんでしょう。

 

 ビリーにフラれたせいで、デイジーはギリシャに逃げてしまいます。行動がいちいち極端です。ロックスターなんて、みんなメンヘラだと言われればそれまでですが、もう少しだけ理性と責任感を持って行動できないものですかね。かつてのルームメイトをはるばるギリシャまで呼び寄せる前に。

 

 なんだかんだデイジーがアメリカに戻ってきて、ツアーが始まります。すると、今度はデイジーは薬物中毒になってしまいます。ビリーと同じですね。もう、これはロックスターの宿命なんでしょうか。しまいには、ドラッグのせいで倒れてしまいます。そして、なぜかギリシャ人の夫は逃げ出してしまいます。

 

 その後、なんとかデイジーはドラッグと折り合いを付け、バンドのツアーは続いています。そして、最終話でもう一度、デイジーとビリーが良い感じになり、カミーラが嫉妬します。これにて、バンドは崩壊します。

 

 この間、ずっと続いていたカレンとグレアムのカップルですが、中絶をめぐって一時的に仲が険悪になります。最終的には、グレアムはカレンの決断を支持し、カレン自身への愛を伝えます。しかし、カレンがもう駄目だと言い、結局、別れてしまいます。いやー、こっちのカップルは上手くいきそうだったのに!

 

これは架空のバンドの話

 最終的に、インタビュー主の正体がビリーとカミーラの娘であったことが明かされます。それで、今は亡きカミーラは偉大だったとみんなが振り返る展開になって終わります。要は、普通は注目を浴びない存在であるバンドのボーカルの妻が、実際にはとても重要な役割を果たしていたのだという結論にしたいのでしょう。そういえば、序盤のエピソードでも、ザ・シックスの6人目だとか言われてたりしました。

 

 でも、私としては、このドラマを観ても、どうしてもカミーラがそれほど重要人物だったとは思えないのです。ビリーの邪魔をしてばかりに見えます。

 

 主人公の行動の邪魔をする妻というようなキャラクターは、15年ほど前のドラマにはよく出てきました。『ブレイキング・バッド』のスカイラーとか『マッドメン』のベティとか『デクスター』のリタとか。最近は、そういった女性キャラクターはだいぶ減ってきています。ところが、カミーラはまるっきりその通りであるどころか、それ以上に共感しにくいキャラクターです。

 

 現実のロックバンドでは、もしかしたらボーカルの妻は、やっぱりそれほど重要な存在ではないのかもしれません。でも、別にデイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスは現実のロックバンドではありません。カミーラの役割を引き立てるストーリーは、いくらでも用意できたはずです。

 

 このドラマは、架空のバンドを扱っているのに、なぜか実話をベースにした作品特有の脚本の苦しさを感じます。ロックスターが薬物中毒になって、様々な人に面倒をかけるなど、あまりにもありふれたストーリーです。それが、このドラマには2回あります。

 

 現実にありそうだからこそ良いんだという意見もあると思います。ただ、私としては、せっかく架空のロックバンドの話なのだから、もう少し自由にストーリーを作ってほしかったなと思います。ビリーとデイジーが健全なプラトニックな関係を築けても良かったじゃないですか。破壊的な性格だからといって、すべてを(カレンとグレアムの関係までも!)破壊する必要はないでしょう。

 

 このドラマのリアリティに関しても、やっぱり言いたいことはあります。このドラマは、バンドの元メンバーたちにインタビューをして、後日譚という形式を取っているます。リアリティを高めるためでしょう。でも、だったらインタビューされる人とストーリー中の人を演じる役者は別にした方が良かったと思うのです。

 

 通常のインタビューを考えてみてください。このとき、過去の出来事は、何かしらの記録映像か再現ビデオで示されるはずです。このドラマでは、バンドメンバーのプライベートな場面がたっぷり描かれているので、記録映像ではないはずです。つまり、再現ビデオでなければいけません。そして、再現ビデオの中にはインタビューされる人ではなく、インタビューされる人に扮した役者が出ているはずです。

 

 再現ビデオと言うと安っぽいのであれば、実話ベースのドラマということで良いです。どっちも同じようなものです。つまり、インタビューされる人は、ストーリーの中の役者(ライリー・キーオ、サム・クラフリンら)ではなく、一回りほど年上の別の役者を起用するべきだったと思うのです。そうすれば、全体のリアリティはぐっと上がったでしょう。

 

曲こそが本作の存在意義

 ドラマとしては、残念ながら私の好みではなかった『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックス』ですが、音楽として見ればそれほど悪いものではないのかなと思います。そして、音楽こそが今回のドラマで最も重要なポイントだったのかもしれません。

 

 原作がベストセラー小説ですが、そこには音楽が付いていません。これまでは、1970年代に一世を風靡したデイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスの話を読んでも、肝心の音楽を聴くことは叶いませんでした。それを、今回のドラマは可能にしました。ドラマで流れるデイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスの曲は、すべてオリジナルです。曲はいずれも、デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックス名義で現在リリースされています。

 

 私は音楽に詳しいわけではないので、デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスの曲が「1970年代に一世を風靡」するほどのものであるかどうかはわかりません。でも、良い曲だとは思いました。1970年代といえばパンクロックのイメージがあったので、だいぶバラード寄りの曲だったのは意外でしたが。

 

 ちなみに、収録されている曲は、すべて実際に俳優のライリー・キーオとサム・クラフリンが歌っています。どちらも音楽経験はほとんどなかったらしいですが、このために特訓したようです。あのエルヴィス・プレスリーを祖父に持つライリー・キーオが、これまで音楽活動をしたことがなかったことの方が驚きですが、今回は上手くやっていました。むしろ、バンドメンバー役の人たちの方が音楽経験が豊富で、特にカレン役のスキ・ウォーターハウスは歌手としてもそこそこ知られています。

 

 ドラマの内容はともあれ、デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスの「AURORA」というアルバムがリリースされたのは事実です。小説の中で描かれた架空のバンドが、その後にドラマの中で生まれ、本物の曲が出来上がりました。ひょうたんから駒というか、不思議なこともあったものです。

 

↓ 本物はここにある!

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