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物理学科生が『ビッグバン・セオリー』シーズン7第13話を斬る

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 現役物理学科生が、海外ドラマ『ビッグバン・セオリー』を科学・海外カルチャーの両面から解説をするシリーズ第4弾。今回は、『ビッグバン・セオリー』シーズン7エピソード13「仕事か夢かの法則」を解説していきます。シェルドンにとっては、CERNの加速器の中が落ち着く場所だって?

 

 

 

 

あらすじ

 ペニーが女優業に専念するためにウェイトレスをやめたと聞き、レナードは困惑する。一方で、シェルドンは大学から強制的に休暇を取らされる。エイミーは、地質学者に好かれる。バーナデットは、ハワードのコミックを焦がしてしまったため、スチュアートに同じものを探してほしいと頼む。

 

CERNの衝突型加速器

 シェルドンは、車で瞑想することにしたのですが、そのときに落ち着く場所として「CERNの衝突型加速器の中」と言います。わざわざCERNの衝突型加速器と言っているのがちょっと違和感があるのですが、LHC(大型ハドロン衝突型加速器)のことと考えてまず問題ないでしょう。

 

 そもそもCERN(セルン)とは、欧州原子核研究所のことで、本部はスイスのジュネーブにあります。CERNの地下にLHCは埋まっています。LHCは、全周27kmの円形(山手線と大体同じ大きさ)をしており、スイスとフランスにまたがる形になっています。CERNでは、この円環の中で陽子などの粒子を加速させ、他の粒子と衝突させる実験を行っています。

 

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https://wired.jp/2013/11/18/what-would-happen-if-you-got-zapped-by-the-lhc/

  シェルドンは、このLHCの中が落ち着く場所だと言うのですが、果たして本当なのでしょうか。稼働中のLHCの中では、非常に高エネルギーの陽子線が飛び回っています。陽子線は人体の悪性腫瘍を破壊するのにも用いられることがあり、このときのエネルギーは200~250MeV(メガ電子ボルト)ぐらいだそうです。一方で、LHCでは最大13TeV(テラ電子ボルト)の陽子線を作ることができます。約10万倍ですね。この陽子線が人体に直撃したときに何が起こるかは想像したくないですね(笑)

 

 ただ、陽子線については、直撃さえしなければ問題ありません。さらなる問題はその後にあります。LHCは、粒子を加速させて衝突させるための装置です。2012年のALICE実験では、陽子の200倍程度の質量を持つ鉛の原子核同士を衝突させました。質量が大きくなるほど、その粒子が持つエネルギーは大きくなります(運動エネルギーmv^2/2や、静止エネルギーmc^2からわかります)。

 

 この鉛の原子核同士が衝突したときには、5兆℃を超える温度になりました。太陽の中心ですら1500万℃ぐらいなので、5兆℃というのがどれほどのものか想像もつきません。

 

 現在は、LHCは休止中で、2021年春頃に稼働再開する予定になっています。実験していないなら、LHCの中も居心地が良いんじゃないかって?あなたがエアコンの温度を1K (-272℃)にしているなら、確かにそうですね(衝突が起きているとき以外は、基本的に加速器は液体ヘリウムで冷やされています)

 

ビルに登り、飛行機を叩き落とす

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 エイミーに気がある長身の鉱物学者を揶揄してラージが言った言葉です。これは分かった人も多いかと思いますが、1933年の映画『キング・コング』の有名な1シーンに関連したネタです。

 

 この1933年の映画では、コングがエンパイア・ステート・ビルに登るのですが、後年のリメイク作品では必ずしもそうではありません。ジェフ・ブリッジス主演の1976年版『キングコング』では、コングは世界貿易センタービルに登ります。ピーター・ジャクソン監督の2005年版『キング・コング』では、コングは再びエンパイア・ステート・ビルに登ります。

 

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